ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年2号
特集
物流企業番付 平成19年版 電気硝子物流サービス

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

FEBRUARY 2006 14 在庫の責任を明確にする ――親会社の日本電気硝子の売り上げが上下するなか で、なぜ御社の業績は伸びているのでしょう。
「なにも自力で新しい仕事を増やしたわけではあり ません。
今まで取り込めていなかった親会社の仕事、 具体的には梱包資材の調達などを任されるようになり、 その分売り上げが増えたんです。
会社設立から二〇年 経ちますが、やっとここ数年で物流の基礎ができたと ころです。
まあ、親会社からある程度認められるレベ ルになったという程度の話ですがね」 ――大きく変わった二、三年というのは、杉本社長が 就任してからです。
何か特別なことをしたのですか。
「 社長に就任する前、親会社では、主力事業である ディスプレイデバイスの事業本部長を務めていました。
それまではずっと営業畑で工場のことは何も知らなか った。
それなのに、事業本部長になったからと言って 工場長の頭越しにあれこれ口を出し、現場を混乱させ てしまった。
そんな苦い経験があるんです。
今度は全 く畑違いの物流の世界に来て、何も知らないのに社長 になってしまった。
工場で味わったのと似たような気 持ちになりました。
それで、同じことは繰り返すまい と思った。
だから実務には一切口を出しませんでした。
この会社には、物流 一筋で四〇年くらいやっている専 務がいるわけです。
そこに私がのこのこと入っていっ て乱したらいけない」 「社長就任後に何をしたかと言うと、まず現場を知 るために、三、四カ月かけて倉庫を全部回りました。
さまざまな原因で何年も放置されている在庫が、倉庫 にはたくさんあるんです。
営業の見込み違いで売り切 れずに残った在庫、お客さんのキャンセルを断れず行 き先を失った在庫、まとめ生産で工場が作りすぎた在 庫。
いろんな事情が重なり合って生まれた在庫は、誰 も責任を取らな いまま、うやむやにされてしまうこと が多いんです。
話はうやむやになっても物としての在 庫は消えません。
だから一つひとつの在庫について、 親会社の営業担当者を調べてその担当者名をラベル で貼っていったんです。
物によっては一〇年経ってい る在庫もありますから、当時の担当者がもう営業に在 籍していないこともあります。
その場合は後任者の名 前を貼りました。
その人には申し訳ないけれど、仕方 がありませんでした」 「在庫というのは生販のエゴを映す鏡ですからね。
在 庫が増えれば倉庫は儲かりますが、こんなのはおかし な話で、喜ぶべきことじゃない。
問題の当事者が在庫 の存在を無視 できない環境を作りだすことで、ムダな 在庫や保管スペースを減らしていく。
そうすれば親会 社に貢献できると考えたんです」 ――他にはどんなことに取り組みましたか。
「親会社に対しては、もう一つやったことがありま す。
子会社といえども一つの会社ですからね。
きちん と利益を上げていかなければならない。
ところが、そ れまでは親会社の言いなりで、ただ働きみたいな業務 も結構多かったんです。
だから親会社と交渉して、や った仕事に対しては正当な利益をもらえるようなシス テムにしました。
仕事をしている限りはただ働きはし たくありませんとはっきり言ったんです。
そうしたら、 どのくらいほしいのか計算してみろと言われまして、 一定レートを要求した わけです」 「昔は、親会社で要らない人が子会社へぼんぼん出 されていました。
しかしだんだんとそういう時代じゃ なくなってきた。
物流というのは非常に重要な仕事で す。
物流をどのようにやっていくかによって、企業の 業績そのものも大きく変わってくる時代なんです。
そ 与えられた仕事をこなすだけだった物流子会 社に変化を起こした。
親会社に対等の立場で物 を言い、社内と協力会社には競争原理を取り入 れた。
親会社からの仕事の取りこぼしをなくし て売り上げが増加。
今後は外販を本格化して物 流会社として自立を目指す。
(聞き手・森泉友恵) 注目企業トップが語る強さの秘訣 電気硝子物流サービス ――トップ営業で親会社の物流を丸呑み 総合3位 総合4位 杉本宏 社長 「意識を変えれば 会社は変わる」 15 FEBRUARY 2006 ういう意味で、親会社が物流子会社に期待している 部分はあると思います」 社内の意識改革に成功 ――社内に向けてはどんなことをしたのでしょう。
「貢献と利益をテーマとする打ち合わせを定期的に 始めました。
そうしたら皆の意識が変わってきたんで す。
それまでは、日本電気硝子から言われたことだけ をやっていればいいという雰囲気だった。
それが、親 会社のために何をすべきか、自分の所属している会社 のために何をすべきかということを、だんだんと考え るようになってきました」 「滋賀県に三、福井県に一、神奈川県に一の計五カ所 ある事業所を専務と私が毎月まわって、そこの所長や 責任者と話をしました。
その毎月の打ち合わせの中で、 親会社への貢献と自社の利益 の両方で何ができたかを 報告させるようにしたんです」 ――親会社への貢献として何が挙げられましたか。
「競争という概念を強く取り入れてきた成果が出て います。
従来は慣行として、この仕事はここに任せる、 これはこっちに任せるというのがだいたい決まってい たんです。
従来ほとんど一社に決まっていた仕事を、 二〜三社で競争させて安いところに話を持っていくと いうスタイルに改めました。
新しく始めた梱包資材の 調達でも、できるだけ多くのところから見積もりを取 ったり、競争入札を行ったりしました」 「また、新しい取り組みと して、仕事の作業分析を 始めました。
同じ仕事でも、一方では一〇人でこなし、 他方では五人でこなしている場合があることに着目し たんです。
作業ごとの適正人数を把握することで、余 分な作業員を減らすことができました」 「一挙に内部改革をやれば、もっといろいろなやり 方があるのは確かです。
極端なレベルの改革をしない のは、そこまで追いつめられた状態ではないというこ とですね。
親会社の業績が安定しているなかで、子会 社にまだ甘えがあることは否定できません」 外販五割が目標 ――外販についてはどのようにお考えですか。
「昨年、倉庫の空きスペースの外販を始めました。
在 庫が減って倉庫が空いたのなら、空いた部分を有効に 活用する方法を考えなくてはいけません。
借りている 倉庫だったら返せばいいんです。
でも自社倉庫を埋め るためには、外販のような努力をしなさいということ を言っているわけです」 ――外販の拡大には人材育成が欠かせません。
「日本電気硝子は、子会社が人を採用するのをもう 原則的に認めていません。
仕事が増えたら協力会社に 頼めと言い、一方で出向者は受け入れ てくれと言う。
しかし本来は子会社が独自に必要最小限の優秀な人を採用して、そういう優秀な人でもできない分だけ協 力会社に任せた方が仕事は効率的になります。
一般 的に言って、一番給料が安くて一番よく働くのは、組 織としては下のほうなんです。
つまり協力会社の人た ちが一番優秀です。
次に子会社が採用したプロパー社 員と出向者を比較すると、プロパー社員のほうが優秀 なんです。
気持ちの持ち方が違います」 「親に一〇〇%頼るのはもうダメです。
親会社への 依存度を五〇 %以下にしてしまわないといけないんで す。
倉庫の空きスペースの外販は小さな第一歩であっ て、外販としてはその次の展開に進まなければいけま せん。
日立物流などの進んだ物流会社がやっているよ うに、他社の物流を一括で引き受けるレベルまでいか ないといけません」 特集 《平成18年版》 売上規模 100 80 60 40 20 0 利益伸び率 利益規模 売上高 伸び率 1人当たり 収益 累積 利益率 【業績】電気硝子物流サービス   【企業概要】 (単位:百万円) 売上高 利益 解 説 不要な倉庫の削減に取り組む  液晶とプラズマ向け基板大手である日本電気 硝子の物流子会社。
親会社の国内事業所は滋 賀県を中心に五カ所。
これにあわせて事業所を置 き、倉庫管理、構内作業、梱包資材調達、輸送業 務など、親会社の国内向け物流業務をほぼカバー している。
社員114人のうち6割が出向者。
現場作 業は協力会社の50社700人が請け負っている。
 親会社が主力事業だったブラウン管向けガラス の生産を海外にシフトした影響で、国内倉庫には 空きが目立つようになった。
倉庫を経由せず工場 から直接出荷する構内積みも増加傾向にある。
こ うした取扱貨物量の減少にあわせ、不要倉庫の 削減に取り組んでいる。
2002年に12万坪あった 倉庫は2005年には約4割減った。
その一方で、自 社倉庫の空きスペースを外販し始めた。
今後は外 販の本格展開を図る。
本社所在地 滋賀県神崎郡 設立 1985年 資本金 5000万円 主要株主 日本電気硝子(100%) 営業種目 貨物自動車運送業、自動 車運送取扱事業、倉庫業、 倉庫賃貸業ほか 主要販売先 日本電気硝子 03.03 13,329 390 04.03 18,934 599 05.03 21,384 722

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