ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年12号
特集
リサイクル物流の真実 静脈物流のビジネスモデル

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DECEMBER 2001 32 リサイクルやこれを支える静脈物流の発展に対する 社会の期待は大きい。
すでに法整備も進んでいる。
し かし、廃棄物問題は根本的には何も解決されていない。
静脈物流も基本的には旧態のままである。
そこで本稿 では欧米の事業モデルなどを参考にしながら、同分野 の行政やビジネスの抱える課題と将来の方向性を検討 する。
広域化は避けられない そもそも静脈物流の?あるべき姿〞とはどのような ものだろうか。
これを探る一つの手段は、より自由な 市場を実現している欧米の廃棄物・リサイクル業界を 見ることである。
社会における静脈物流の理想形を、現存するしがら みにとらわれずに白紙から描いてみるとどうなるか。
まず廃棄物の処理施設における投資効率を高めるため には、ある程度の広域エリアのなかで集中的に処理す る必要がある。
具体的には従来の日本のような市町 村+αといった狭い単位ではなく、「郡」程度のエリ アで処理する方が経済性に適っている。
ダイオキシン対策のように環境的により高度な処理 を行おうとすると、施設の大規模化や集中化の必要 性はいっそう増す。
市街地の地価の問題や、「NIM BY現象(Not In My Back Yard: 総論では賛成だ が自らの近くには置いて欲しくないという住民感情)」 もある。
このため欧米では、廃棄物処理の広域化は避 けられないものとなっている。
ただし、収集運搬の効率という観点から考えると、 運搬距離はできるだけ短い方がいい。
従って現状では、 処理と運搬のコストが折り合う点で、広域性と近隣 性のバランスをとっている。
そのうえで、例えばガラ ス瓶やプラスチック容器、スチール缶などを「容器」 として排出点では一括収集し、後に集中分別するとか、 紙と庭木草とゴミを分別したまま一括収集するために トラックの荷台を三分割してルート回収する、といっ た工夫を行っている。
こうして社会的に最適な廃棄物処理を実現するた めには、それと同じ程度以上の広域で効率を追求でき るような企業体へのサービス委託が欠かせない。
ある 企業体が自らの事業範囲の中で利益を生み出そうと する経営努力が、社会の効率化・サービス向上にもつ ながるようにすべきなのである。
これが欧米では実現 できており、日本における廃棄物処理との最も顕著な 違いとなっている。
欧米との大きなギャップ 翻って日本の廃棄物・リサイクル業界の状況を見 ると、欧米のそれとはかなりのギャップがある。
産業進化論的に考えると、日本の同業界の置かれ ている現状を理解しやすい。
一般に、一つの産業の誕 生は、開拓者が新サービスを発明する、あるいは社会 のニーズによって新たにサービスが調達されることか ら始まる。
その産業のために必要な技術やノウハウは、 やがて後続者にも理解され、新規参入が増えていく。
結果として、主流のサービスを提供する大手から、 様々な個別領域を追求するニッチ業者が生まれること になる(ポイント1)。
その後、業界内での過当競争から収益性の追求が 起きる。
これによって合従連衡のような再編と淘汰が 進む。
この過程では、技術の高度化などによる競争も 行われる。
結果として市場全体が一握りの企業(もし くは企業連合)による準寡占状態となる。
ニッチプレ ーヤーもそれなりの発展を遂げて、例えばニッチの全 国版のような存在になり、最終的には、業界内の競争 「静脈物流のビジネスモデル」 日本の廃棄物処理行政は、いまだに業界保護の発想から抜け出せ ずにいる。
規制に阻まれてロジスティクスの最適化もほとんど進め られてはこなかった。
しかし、もはや抜本的な規制改革の実施は時 間の問題だ。
欧米先進国との比較から、日本の静脈物流の今後の方 向性を考察する。
アーサー・D・リトル(ジャパン) 山口勝洋シニア・マネジャー 寄稿 33 DECEMBER 2001 リサイクル物流の真実 特集  は大企業レベルの投資によるものに落ち着く。
日本の廃棄物・リサイクル業界は、上記のポイント 1で止まっている状況にある。
産業としては長い歴史 があるにも関わらず、多くの参入があった黎明期の状 態のまま現在に至っている。
これは基本的には、従来 型の?業者側視点〞による行政の規制によるものだ。
行政の規制とその運用が産業の進化を停止させてきた のである。
現在日本では、様々な分野で規制緩和が行われて いるが、廃棄物処理に関しては、いまだに行政が?受 益者(納税者)視点〞の発想に転換できてない。
市 場規模が一〇兆円規模であるにも関わらず残された、 数少ない大物レガシーといえる。
もちろん心ある行政 官は気付いてはいるのだが、なかなか現実の抵抗力が 強くて、思い切った手を打てずにいる。
規制緩和の進まない理由 ではなぜ、これまで日本の廃棄物業界の規制緩和は 進まなかったか。
いくつかの要因を敢えて直視してみ よう。
歴史的に行政にとっては、廃棄物のように従来は3 K的だった業務を引き受けてくれたことに対して、業 界への「借り」のような意識があるのだろう。
その後 は、不法投棄などの社会問題に意識の中心は移り、不 正業者を入れないとの観点から自治体による前例実 績主義が強く根付いた。
これは廃棄物処理業のサービ スが、構造的には実はコモディティであり、極めて参 入障壁が低かったことに起因する。
通常であれば、こうした構造の業界は価格競争にな る。
だが不正業者の問題に対処し切れないことから、 行政は、競争をしない公共事業の立場を取った。
結 果として官業にまつわる様々な問題点も発生した。
まず自治体職員の雇用が発生し、前述したような 欧米型の大企業委託モデルに移行するためには、雇用 問題の解決が欠かせなくなった。
方策は考えられるは ずなのだが、多くの自治体は退職を待った自然減のシ ナリオを描いている。
既に新規雇用をしていないのだ から、本来の自治体職員として必要なポジションでは ない。
しかし、事後的な解決のために一〇年単位の時 間をかけようという、民間にない官の発想である。
民間業者への委託は広く行われているが、競争ベー スでないため、勢い「政治的」な地元主義と複数主義 というルールが支配的になっている。
官の視点からす れば、納税のある地元業者を採用するのは自然であり、 一社を「儲けさせる」のはひいきであるから、二社以 上を採用する。
しかし、このことが結果として、事業 規模の細分化を招き、民間企業の経営努力の裁量を 奪っているのである。
業界構造変革のシナリオ その一方で、ダイオキシンなどのように、廃棄物処 理が住民の健康を脅かす問題が表面化してきた。
まさ に現在進行形で、従来の業界の枠組みでは対応し切 れなくなってきているのである。
ダイオキシン対策のためには、大規模で高温の炉の 使用が半ば必須で、大型の設備投資が欠かせない。
こ のことが一つの炉の受け持ちエリアの広域化につなが り、収集運搬へも影響も及ぼしつつある。
自治体が設備投資の全額を負担するならともかく、 昨今の財政事情では、PFI(民間資金などを活用 した社会資本整備)を活用したり、自由参入によって 民間に任せるケースが増えている。
いずれ民間の中小 の焼却炉の経営は立ち行かなくなり、大企業に事業を 明渡すことになる。
このことは収集運搬の業界にも波  白紙から静脈物流のトポロジーを設計した場合、単純 化すると処理施設に同心円状に収集範囲が存在する形 になる。
範囲の広さは物によりその処理施設の技術経 済性によるが、概して広域である。
ただし、そのような 同心円をいくつ持つかは重要な最適化課題である。
リ サイクル品目毎に収集運搬を行っては、薄い同心円が いくつも重なることとなり、輸送量がすぐに増えてしま う。
リサイクルのサービスレベルを損なわない形で、混 載や後分別等の方策を現実的に検討すべきであろう。
《物流のトポロジー》 DECEMBER 2001 34 紋を投げ掛け、すでに既存業者の組織化などの模索が 行われているところである。
筆者は、今後のシナリオは次のようになるのではな いかと見ている。
ダイオキシン問題などに対応するための設備の大型 化は、日本の廃棄物処理業界の近代化を進めるきっ かけになる。
あるレベルで既存業界との融和を図りな がらも、規模を追求するための組織化が今後は徐々に 進められていくはずだ。
こうした動きや初期的な成功を見せられた国民・市 民の問題意識は、ある時点で閾値を超える。
それが ?官業の論理〞から発想転換をともなう規制改革に つながる。
それまでの限定的な組織化努力を事後承認 的に後押しして、晴れて正式なモデルとして認知する 日が来るであろう。
望ましい規制緩和の方向性についても、既にいくつ かの重要側面を指摘することが可能だ。
まず「性能規 制」対「構成技術規制」の観点がある。
技術の発達 した現代では、求められる環境性能と安全性能だけを 官が示せば、後の解決法は業者が裁量のなかで創意 工夫するべきものである。
規制緩和によって、その余 地を与える必要がある。
「市民・国民が顧客という視点」対「業者保護視点」 (産官癒着あるいは遠慮)という考え方も重要だろう。
これは前経済企画庁長官の堺屋太一氏が指摘した通 り、行政は市民(納税者)の利益を代表するべきで、 コストとサービスが最善の業者を注意深く選ぶ努力を すべきである。
競争的にみて最善ではない業者を、結 果的に保護している現在の行政の役割は間違っている。
心ある経営者が、より力を発揮できるように機会を均 等にすべきである。
ロジスティクスという面では、トラック利用の効率 性を高めるために、創意工夫の自由度を付与するべき だろう。
往きと帰りで違うものを積んだり、動脈物流 との組合せによって有効なルーティングを実現できる 可能性は高い。
現状では「構成技術規制」であるトラ ックの廃棄物専用規制を、安全衛生面だけを指定す るような「性能規制」に変えるべきだろう。
民間に、 洗浄や積載容器などの工夫について発明する自由度 と裁量が与えられれば、良いアイデアも出るのではな いだろうか。
一方で不正対策については、行政の監視・法施行 機能(警察的)を必要に応じて強化すべきである。
た だ、その実施に当たっては、技術の利用による効率化 も併せて進める必要がある。
例えば、廃棄物に混ぜられる極小の自発信センサー に排出者の履歴を持たせるとか、化学的指紋付け技 術を用いて排出者を識別可能にするなどが考えられる。
かなりの集積度の半導体チップが一個一〇〇円で作 られる時代になっているのだから、不正投棄後の追跡 を可能にする工夫の余地はある。
また、不法投棄を行 った排出者や業者については、処罰を重くするなどの 社会コストとのバランスも取る必要があるだろう。
将来の静脈物流モデル 廃棄物・リサイクルの問題は十分に複雑である。
こ のため、既にいくつかの分野でリサイクルの法制化な どの対策が打たれているものの、部分課題解決の面が 否めず、ビジョンなき前進を続けている状況となって いる。
そこで次の項では、一歩立ち返って静脈分野で の本来の流通のあり方を検討してみたい。
ロジスティクスを専門とする本誌の読者の立場から すれば、過去になされた個々の問題対処を考えるより、 まずは「循環型社会」の将来モデルを描いて、それに • • • • • • • • • • • • • • • • リサイクル物流の真実 特集  35 DECEMBER 2001 向かうという発想であるべきと考える。
ここではそう した将来モデルにつながるいくつかの視点を取り上げ て、方向性を考えていく。
(1) 3R(リデュース、リユース、リサイクル) よく使われる3Rとは、物の使用の削減、物のその ままの再利用、物の再生利用、を意味する言葉だ。
物 の節減・廃棄物削減のための、いくつかの道と優先順 位を示したものである。
3Rの実施には、物の利用者の心掛けの問題から、 リサイクルの高度技術まで、様々な解決法のレベルが 含まれている。
社会ロジスティクスとしては、リユー スとリサイクルそれぞれのレベルでのループと流通を 構成する必要があり、利用用途まで統合した形でのロ ジスティクスに期待される役割は大きい。
具体的には、粗大ゴミとして自治体が処分に運んで いたものを、再利用のためにリサイクルショップに集 め、誰かが使い道を見つけて新たな利用場所に運んで いく、という具合である。
こうした仕組みを本格的に 社会に導入するとなると、かなりのロジスティクスの 仕事量となることは容易に想像していただけるであろ う。
3R自体は物の節減目的には正しく、その意味で は追求されるべきモデルである。
ただし同時に、トレ ードオフとしての仕事量、ひいては社会のコストやエ ネルギー消費、二酸化炭素排出などの面があることを 認識しながら、最適化問題として解かなくてはならな い。
現行の各種リサイクル法に危惧されるのも同様のエ ネルギー消費面の負担増である。
この最適化を行うた めの指標が求められている。
現時点では未熟と言わざ るを得ないLCA(ライフサイクル・アセスメント) があるのみで、誰も最適解を導けない状態にある。
あ る割り切りの下に社会的に広く適用できる指標の採 用を敢えてし、その時々の社内ニーズや技術進歩によ り動的に変えていくアプローチが現実的と考える。
(2) ゼロエミッション ある意味で3Rの方向性を究極化した概念が「ゼ ロエミッション」である。
その中でも特に産業クラス ターと称されるような物質連関のモデルが注目される。
これは自然界の産物は、食物連鎖やミミズ・きのこ等 の分解者により、様々に有効利用されつつ分解されて いくという考え方である。
これを産業界に当てはめる と、一社の廃棄物が、他社のインプットとして活用さ れることを指す。
これは本来的にエネルギーレベルの高い物質である、 有機物系廃棄物でより適用可能性の高いモデルと考 えられる。
有機物はよりエネルギーレベルの低い有用 物質に変換し利用することや、そのエネルギーを利用して換金作物(きのこ等)を栽培したり、最後にはエ ネルギーを取り出すなどの多段階の有効活用の可能性 がある。
これに近い、より具体的な定義として、バイオマス の5Fというのが東京大学の山地憲治教授により定 義されている。
すなわち、Food (食べ物)、Fiber (繊 維)、Feed (飼料)、Fertilizer (肥料)、そしてFuel (燃料)といった、価値の高い順の段階的利用を指す。
これを行うには3Rと同様の、あるいはそれ以上の細 やかな社会ロジスティクスを組むことが必要となる。
かなり複雑で、かつその時その場合の相対価値に応じ た柔軟なトポロジーとなる。
ロジスティクスの出番は 大きいが、利用用途との統合が一層重要であり両者 あいまって初めて実現するものである。
DECEMBER 2001 36 (3) 集中焼却型(人工鉱山モデル) 3Rや5Fとは対極的な考え方に、芝浦工業大学 の武田邦彦教授らの提唱する集中焼却モデルがある。
全物質に対して、高度な「焼却」(=物質の究極の減 量化と安定化及びエネルギー回収)を一律に行い、濃 縮された灰分は将来の利用のために「人工鉱山」とし て集中保管するという考え方である。
個別対応のリサ イクルによるロジスティクスや、物質を細かく分別す る際に費やすエネルギーを憂慮したものだ。
ある工学的関数によると、仕事の投入量は、リサイ クル率の向上や、収集源での物質の分散度などにより 急激に増える関係にある。
日本の道路事情などを加 味すれば、ロジスティクスの仕事量への影響度はさら に大きいと考えることができる。
この人工鉱山モデル の場合、ロジスティクスは究極的には一重の広域の円 となり、3Rモデルでの多重かつ大きさの違う同心円 と比べると圧倒的にシンプルになる。
つまり、ロジス ティクスはぐっと簡易化される。
ただし、筆者の見解では、消費者の心掛け一つによ って容易に分別の仕事が行えるなど、少ない仕事量で 分別・収集を進める工夫はまだまだ潜んでいると思わ れる。
その限りにおいて3Rは進められるべきである が、この際には、社会的に大きなエネルギー消費の方 向に進まないような監視手法の開発と実施が望まれる。
トレードオフによる最適点は、社会的に正しく認知さ れるべきものであろう。
これが具体化されて税のよう な経済的インセンティブとなるのが本来のあるべき姿 と考える。
実は、利用用途や処分などのオペレーションを含め たロジスティクスの最適化問題は、これまで社会とし てほとんど解かれていない。
各側面における技術の一 段の進歩も必要で、その上の高度な次元で何が経済 的・環境的に最適かを解いていくわけだが、いかんせ ん未熟な分野である。
当面はリサイクル法などの強権的手法によって一方 に振り、それに対する自治体の反発や、あるいは無言 の反発(リサイクル率の低いことの黙認)などによっ て、あるバランスが取られることになる。
決して本来 的姿ではないものの、当面のシナリオはそうなるであ ろう。
新規参入のポイント 処理や運搬を始めとした、リサイクル関連サービス に対する社会的なニーズは極めて大きく、新規参入者 にも十分なビジネスチャンスがある。
ただし、従来制 度の存在など様々な複雑要因があるのも確かで、単純 に自身の事業案を描けるものでもない。
そこは工夫が 必要な部分である。
まず第一に、既存業者が顧客をすでに掴んでいる ことから、既存の業界と賢く融和しながら、同時に 社会ニーズに応える革新をもたらしていくというパズ ルへの解が必要である。
既存業界と一口に言っても 一様ではない。
どんな旧態依然とした業界であっても、 経営改善やサービス改善を目指している有志の経営 者は必ず存在する。
付き合うべき相手を注意深く選 び、既存の業界に蓄積された様々なスキルや顧客資 産を尊重し、活用できる賢明な道を見つける必要が ある。
第二に、「経済性の作りこみ」が重要になる。
事業 の経済性は、企画段階できちっと作り込むべきもので ある。
と言うのは、廃棄物・リサイクル事業の自然な 収益性などは存在しないからである。
処理施設を持つ のであれば、いかに高い稼働率を安定確保するかのビ 出典:『リサイクル幻想』武田邦彦著 リサイクル物流の真実 特集  との連係など、大企業の研究開発や投資力を背景と した経営革新が今、大いに求められているのである。
静脈物流の特徴は、物流と処理などのオペレーショ ンを合わせた「最適化問題」である。
すでに動脈側で は、そうした取り組みが数多く行われている。
小売チ ェーンの物流拠点の最適化などはその好例だろう。
こ れを物流業者は小売というオペレーションを持つ側と 共同で行い、ロジスティクスを革新してきた実績を持 つ。
そういった協業的な最適化のノウハウを、物流業 者は蓄積しているはずだ。
大いに出番が期待される。
《参考文献》 ●「リサイクル幻想」 武田邦彦 著 ●「アップサイジングの時代が来る」 グンター・パウリ 著 ● http://eco.goo.ne.jp/navi/files/baio02.html 山地憲治 著 37 DECEMBER 2001 プロフィール やまぐち・かつひろ 八八年東京大学工学部化学工学科卒業、 九五年シカゴ大学経営大学院にてMBA取得、同年アーサー・ D・リトル社に入社、環境・エネルギー分野、技術と事業の イノベーション分野担当し約十一年間にわたり経営コンサルテ ィングに従事、静脈物流関係では事業化戦略の立場からコン サルティングを実施。
著書に『環境ビジネスの成長戦略』(九 七年ダイヤモンド社)がある。
ジネスモデルを、営業面と収集運搬面とを合わせて組 むなどの創造的なアプローチを自ら考え出す必要があ る。
その結果として、収益性がある不確実性の範囲内 に収まるように検討を深め、「経済性を作り込む」こ とが現実的なアプローチである。
第三に、複雑な利害関係をうまく調整する能力が 求められる。
これは環境ビジネス全般に言えることだ が、とくに静脈ビジネスに特徴的なのは、複数の利害 関係者とステークホルダーが存在している点である。
ロジスティクスを強みとして参入を図る場合でも、処 理や利用用途の部分における先進性を、いかに自らの ビジネスモデルに取り込むかが重要なポイントとなる。
先進的な他業種の参入者と協業的に新分野を開拓し ていくための考え方・方法論として、ADL社の「イ ノベーション・プラットフォーム」が参考になるはず だ。
これは創造的な事業案(ディール)に向けて、技術 や新事業の開発を、一流のリソースを合わせた形で創 発的に行える場を設けることを基本的な考え方として いる。
効果としては構造的革新も含む大きな新事業 分野の開拓と速い展開が期待できる。
特に静脈ビジネ スのように複数のステークホルダーを動かす必要があ る場合には、アプローチとして有効というだけでなく、 むしろ必須である面が大きい。
本誌の読者は主に動脈物流に携わる方々で、大企 業に所属する方も多いと思われる。
ここまでに述べて きた社会モデルを実現するためには、大企業による広 範な経営効率化投資をともなう活動が求められる。
仮 に既存の業者との組織化をする場合であっても、全体 のシステムのコントロールを集中的かつ広域に行うべ きなのは変わらない。
その際の最適ルーティングの指 令や、トラックの多目的化、あるいは高度な処理施設 5

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