ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年8号
特集
定温ビジネスの誤算 定温の個建て輸送を強化する

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

「定温の個建て輸送を強化する」 AUGUST 2001 34 外販八割の物流子会社へ ――外販比率が七〇%を超えています。
もはや物流子 会社と呼ぶのは相応しくないかもしれませんね。
「ここまで外販比率が高まったのは親会社の厳しい 教育があったからだと思いますよ。
一九六六年に当社 の前身であるキユーピー倉庫が創業したのですが、そ の頃から『親会社の仕事に頼らない子会社になれ。
内 向きの仕事だけをすればいい物流子会社などあり得な い』と繰り返し言われてきました。
親会社からの出向 も七〇年に打ち切られ、以降はすべて転籍です。
片道 切符ですから、みんな一生懸命に仕事をする。
その結 果が外販比率の高さにも結びついているのではないで しょうか。
今年度は単独ベースで外販比率が八〇%を 超える予定です」 ――物流子会社の多くが外販比率を高めることを目 標に掲げていますが、苦戦しています。
御社と他の物 流子会社とではどこが違うのでしょうか。
「品質管理レベルの高さでしょうか。
食品メーカー 系の物流子会社はどこでもそうだと思いますが、品質 管理レベルは親会社の基準に合わせたものなんです。
食品を扱っているだけあって、その基準は非常に厳し い。
仕事のやり方を少し加工してマニュアルを作れば、 簡単にISOなんて取得できちゃうわけです」 「親会社の品質管理に関する厳しい教育は、今とな ってはとても有り難いことだったと思っていますよ。
これが差別化につながって仕事に結びついているわけ ですから。
純粋な物流企業として歴史を刻んできた会 社だと、そうはいかないでしょうね」 親会社をうまく利用する ――親会社が株を五〇%保有していますが、ここまで 外販比率が高まると親会社との関係も変わってくるの ではないでしょうか。
「キユーピーが親会社であるという認識は変わりま せん。
ただし、仕事上では?一荷主〞として見ていま す。
親会社向けの仕事だけをディスカウントするよう なことは一切しません。
こうした姿勢が他の物流子会 社とは違うのかもしれませんね」 「当社は物流子会社ですが、親会社から押しつけら れることは何もありません。
言葉は悪いかもしれませ んが、むしろ親会社をうまく利用しているほうではな いでしょうか。
親会社が工場を新設する際に隣接地に 倉庫も作ってもらってそれを賃借する。
こうやって投 資を抑えているわけです。
現在、拠点の割合は自社倉 庫が三分の一、親会社の倉庫が三分の一、外部の倉 庫が三分の一です」 ――昨年、キユーピーからキユーソーに社名変更しま した。
親会社からの自立宣言だったのでしょうか。
「キユーピーからの自立という意味ではありません。
キユーソー会という協力運送会社の組織があるのです が、こことの結束力を強めるために社名を変えただけ です。
親会社は独立してほしいと願っているため、社 名の変更にも賛成してくれました」 ――親会社のキユーピーはキユーソー流通システムに 物流を丸投げしている格好です。
それでは親会社のほ うに物流のノウハウが蓄積されないという弊害がある のでは? 「当社が引き受けている庫内作業や配送など細かい オペレーションの部分のノウハウが蓄積されないとい う問題はあるでしょうが、基本的には親会社と共同で 物流について研究しているので大丈夫でしょう。
もち ろん、キユーピーグループが物流面で将来どの方向に 進むかという大きな絵は親会社が描いているわけです キユーソー流通システムは加工食品メーカーであるキユーピーの物流 子会社。
親会社から学んだ品質管理のノウハウを武器に次々と外販荷主 を獲得してきた。
すでに外販比率は70%を超えている。
求車求貨システ ムの草分け的存在の「QTIS」も安定稼働中。
車両などの資産をほとん ど持たないノンアセット型の3PLである同社の当面の課題は小口貨物を 扱う「スルー便」を新たな収入源として育成することだ。
Interview キユーソー流通システム伊規須武尚 社長 食品物流の担い手に訊く 食品物流企業トップ 第1部 第3部 第2部 35 AUGUST 2001 し」 ――メーカーと小売業の関係が変わってきましたが、 その影響を受けることはありませんか。
「従来、メーカーの物流は自社の物流センターから 問屋の倉庫に入って、小売業のセンターに入るという のが主流でした。
しかし、最近では一括物流に代表さ れるようにメーカーから直接、小売業のセンターに入 るようになってきた。
それに伴い、キユーソー流通シ ステムの仕事も徐々に変化しています」 ――車両を持たない、つまり資産を持たない経営を続 けています。
「余計な資産を持たない、身軽な経営が今の時代に は合っているでしょう。
当社は倉庫会社から出発して いますから、もともと保管や荷役は得意。
しかし配送 にはそれほどノウハウを持っていなかった。
餅は餅屋 ではないけれど、得意分野以外は機能分担ということ で協力会社に任せたほうがいいと判断してきました」 ――現場を持っていないと不安だという物流会社も多 いようです。
「丸投げしているという意識はありませんね。
実際 に倉庫という現場を持っていますし。
社員にも必ず現 場を経験させるようにしています」 ――数字でマネジメントするだけではダメですか。
「現場を見ながらモノを考えないとうまく行かない。
いい会社とは現場の意識と本社の意識が一致している 会社でしょう」 ――ここ数年で社員数が徐々に減り、パートタイマー やアルバイトの比率が高まってきていますね。
「正社員の数は理想とする水準にまで減少してきた と思います。
ピーク時は一四〇〇人でしたが、現在は 八〇〇人ですから。
荷役や保管の仕事をどんどん作業 子会社に委託して、本体をスリム化してきました」 定温は儲からない ――食品の物流は儲かるという印象があるようです。
「実際にやってみると、食品物流って、こんなに儲 からないものなのかと思いますよ」 ――キユーソーと言えば求車求貨物システムが有名で す。
同様の事業を立ち上げようとする企業は多いので すが、あまりうまくいっていないようです。
「当社はトラックをほとんど持っていないため、地 場の協力運送会社に配送業務を委託してきました。
協 力会社のトラックを効率的に運用するために開発した のがQTISです。
求貨求車システムそのもので稼ご うというベンチャー企業とは、そもそも出発点が違い ます。
QTISで年間一〇〇億円強の売り上げがあ りますが、このビジネスはそう簡単にはいきませんよ。
ポイントはITありきではなく、マッチングに人を介 在させて需給をうまく調整することでしょう。
QTI Sに参加する協力会社から不平不満がでないように、システム全体をバランスよくマネジメントできる能力 が求められます」 ――小口便である「スルー便」を開始しましたね。
「定温の分野でも小口貨物のニーズが増えてきました。
これに対応するのがスルー便です。
当社はもともと、貸 し切り便が主体の会社ですから、小口貨物を扱うため にはネットワークの網の目をより細かくする必要があ った。
スルー便を開始したことで配送先の数は従来よ りも一桁以上増えましたからね。
このサービスを始め るにあたって協力運送会社の数を増やしました」 ――スルー便は宅配便にまで発展するのですか。
「それはないでしょうね。
宅配便を扱うには現在の何 倍もの拠点や協力会社が必要になるでしょうから。
扱 うのはあくまでも企業向けの小口貨物です」 特集定温ビジネスの誤算 冷凍配送部門 28.3% 23,152百万円 一般配送部門 21.6% 17,674百万円 ティス・スルー配送部門 19.3% 15,814百万円 冷蔵庫部門 12.5% 10,196百万円 普通倉庫部門 10.7% 8,764百万円 関連部門 7.6% 6,257百万円 ●キユーソー流通システムの部門別売上高構成比(2000年11月期)

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