ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年8号
ケース
サッポロビール――共同配送

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2001 58 サッポロビールは酒類メーカーや酒類卸と いった同業界での共同配送を拡大する方針だ。
その第一弾となる取り組みが昨年一〇月、北 海道地区で始まった。
パートナーは清酒、焼 酎を扱う宝酒造。
サッポロが札幌工場内に新 設した「サッポロビール共配センター」で宝 酒造製品を管理し、自社製品と積み合わせて 道内の得意先(サッポロ約二五〇カ所、宝酒 造約三五〇カ所)に向けて出荷している。
宝酒造はサッポロとの共同配送を機に、道 内に設けていた自社物流センターを廃止し、 原則としてこの共配センターから得意先へ出 荷する体制に切り替えた。
製品の仕分け、ピ ッキングなどの庫内作業や配送業務はサッポロビールを元請 けに、物流子会 社であるサッポロ 流通システムに 全面委託してい る。
宝酒造は毎 日締め切り時間 までに受注情報 を同センターに送 るだけで済む。
つ まり、サッポロに 道内の物流業務 をアウトソーシン グしたわけだ。
それまで宝酒 宝酒造の道内物流を全面受託 輸送手段の使い分けで配送費低減 得意先が共通する酒類メーカー、酒類卸などと の同業種共配に乗り出した。
系列会社との共同配 送だけではトラックの積載効率アップに限界があ るからだ。
第一弾となった宝酒造との共同配送で は出荷量に応じて共配便、車建て、路線便をうま く使い分けることで、物流コストの削減を目指し ている。
サッポロビール ――共同配送 サッポロビール共配センター 「そもそも国産酒類出荷量の構成比はビールが七割、清酒・焼酎・ワインなどが三割。
物量がまとまらないため、路線便利用を余儀 なくされている酒類メーカーが結構多いので はないか、というのが共同配送を本格化する きっかけだった」と大川幹雄ロジスティクス 事業部長は説明する。
配車はすべて手作業 サッポロ製品、宝酒造製品は共配センター から大きく分けて三パターンで出荷される (図1参照)。
一つは「札幌共配」と呼ばれる方式。
札幌 市内、石狩市、小樽市、余市町、倶知安町向 けにサッポロ製品と宝酒造製品を混載して運 ぶ共同配送だ。
全物量の二〇%がこの方式で 配送されている。
続いて、「恵庭共配」。
これは共配センター からサッポロビール北海道工場内にある恵庭 物流センターに宝酒造製品を横持ち輸送した 後、得意先に共同配送する方式だ。
全物量の 四八%を占めている。
最後が「直送」だ。
ここで言う「直送」と は車建て出荷と路線便出荷を指しており、全 物量に占める割合は三二%。
宝酒造製品だけ でトラック一台分の物量が確保できる場合に は車建て扱い、発注単位が小さい製品で共配 が不可能な場合には路線便扱いで出荷する。
59 AUGUST 2001 造の道内配送は路線便への依存度が高く、配 送コストの負担が大きかった。
道内の得意先 に納める全物量のうち、路線便利用は実に約 四〇%にも上っていた。
路線便に頼らざるを 得なかったのは、一回当たりの発注ロットの 小さい得意先が多いからだ。
宝酒造がメーン で扱う清酒や焼酎は、ビールのように回転率 が高く、大量一括で動くような製品ではない。
一回の納品でトラック一台分の物量がまとま るのは大、中規模の酒類卸など、ごく少数の 得意先に限られていた。
サッポロは共同配送を提案するに当たって、 この路線便利用率の高さに着目していた。
サ ッポロと宝酒造とでは道内におよそ二〇〇カ 所の共通届け先がある。
ビールをベースカー ゴにして、その空きスペースに清酒や焼酎を 混載すれば、宝酒造の路線便利用率を低く抑 えることができる。
サッポロの試算によると、 共同配送によって宝酒造の路線便利用率は全 物量の一〇%以下になり、年間で数千万円の コスト削減効果が見込めた。
この三パターンをうまく使い分けているの はサッポロ流通システムの配車係だ。
配車係 はまず宝酒造から寄せられる出荷情報に基に 注文重量の多い得意先を抽出し、車建て扱い が可能であるかどうかを検証する。
可能な場 合は「直送」に決定。
物量がまとまらず車建 大川幹雄ロジスティクス事業部長 図1 共同配送のパターン 宝酒造 東日本受注センター 宝酒造 北海道支社 出荷情報 製品 受注情報 サッポロビール 共配センター 得意先 (特約店・量販店) サッポロビール 札幌工場 札幌物流センター サッポロビール 北海道工場 恵庭物流センター ?札幌共配20% 宝酒造 札幌工場 宝酒造 松戸工場 宝酒造 楠工場 宝酒造 東日本物流センター 宝酒造 西日本物流センター ?直送(車建て・路線便)32% ?恵庭共配(転送)48% AUGUST 2001 60 てが不可の場合は共同配送便の候補とする。
次に、車建てにできない半端な物量の宝酒 造製品の届け先がサッポロ製品の届け先と共 通するかどうかを検索する。
見事にヒットし た場合は原則として共同配送便扱いとして配 車する。
一方、届け先が共通しない場合は?トラッ クによる納入が可能かどうか、?着時間指定 があるかどうか――などを勘案した上で、同 一市区町村内に複数の届け先があるかどうか、 つまりルート配送を展開できるかどうかを確 認。
近距離で小型トラック一台分、遠距離で 中型、大型トラック一台分の物量が確保でき る場合は車建て扱いで処理する。
それでも共 同配送便を仕立てることができない場合は路 線便を利用して出荷するという仕組みになっている。
サッポロ流通システムではこうした複雑な 配車業務にすべて手作業で対応している。
配 車係はサッポロ、宝酒造の双方の出荷情報を 一つひとつ照合して、最適な輸送手段を選択 する。
製品アイテム数はサッポロが八〇〇、 宝酒造が五〇〇。
配車係はこれら製品群の重 量が受注単位によってどのように変化するか を見極めて、効率的な組み合わせを決めてい くわけだ。
輸送手段が決まったところで、ようやく庫 内作業が始まる。
「サッポロビール共配センタ ー」から出荷されるまでの作業フローはこう だ(図2参照)。
まず、共配センターでは宝酒造の北海道支 社から午前十一時までに寄せられる受注情報 を基に、午後一時までにピッキングリストを 作成する。
作業員はリストに従って午後一時 から午後八時までの間に荷揃え作業を行う。
ピッキングは?北酒連LC向け及び恵庭(北 海道工場)積み置き分、?路線便及びコンテ ナ分、?恵庭早朝到着分、?札幌市内共配分 ――の順番で進める。
三階建ての共配センターではそれぞれ一階 パレット単位製品、二階ケース単位製品、三 階バラ製品という具合に製品特性に応じて保 管場所が区分けされており、作業員は三階か ら順番に製品をピッキングしていく。
ピッキング終了後、製品は一階部分の平積み場にい ったん置かれる。
共配の場合、トラックは平 積み場の宝酒造製品をピックアップした後、 ビールを積んで得意先に向けて出発する。
ビール四社の共配は無理 サッポロと宝酒造の組み合わせのように同 じ業界のメーカーや卸が互いの製品を持ち寄 り、共通の得意先に一括して納品するかたち の共同配送を、一般に「同業種共配」と呼ぶ。
国内ではカゴメ、中埜酢店、日清製油の加工 食品三社が九六年に開始した取り組みが同業 種共配の先進事例として有名だ。
本来であれば、ビール四社が商品を持ち寄 って一括で納品するのが最も効率的なはず。
?専用端末で出荷情報を受信し、 ピッキングリストを作成する ?バラ、ケース、パレット単位の順番で宝酒造製品を ピッキングしていく ?ピッキングされた製品はセンタ ー1階部分の積置き場に ?ビールと混載して得意先に向け て出発する 図2 共配センターの作業フロー 61 AUGUST 2001 各社それぞれ特約店制度という縦割りの流通 チャネルを持っているとはいえ、ビールの届 け先はほぼ共通しているからだ。
ところが、ビール四社による共同配送は未 だ実現していない。
正確にいうと、構想の具 現化に向けた四社の話し合いの場は過去に何 度か設けられているが、最終的には折り合い がつかず白紙に戻っているというのが実情だ。
あるビールメーカーの物流担当者は「各社 の担当者の間では『物流は共同化して、製品 開発や営業の面で競争すればいいのではない か』という意見でほぼ一致している。
ところ が、販売サイドの社員は共同配送についてな かなか首を縦に振ろうとはしない。
ビール各 社は日々、熾烈なシェア争いを繰り広げてお り、それだけに前線の営業マンにしてみれば、 ライバル会社との協業である共同配送には依 然として抵抗があるのだろう」と四社の共同 配送が前進しない理由を説明する。
サッポロが宝酒造との同業種共配を選択し たのは、こうした関係が今後も当分続くと見 ているからだ。
今回の取り組みの場合、サッ ポロはビール、宝酒造は清酒・焼酎をメーン に扱っており、両社は直接的なライバル関係 にない。
しかも、道内に約二〇〇カ所共通の 得意先を持っているなど同業種共配を展開す るうえでの条件が揃っていた。
さらに、サッポロには共配をどうしても推 進したい理由があった。
これまでにビール各 社が実施してきた共同配送は「グループ共配」と呼ばれる方式が主流だった。
自社商品を積 んだトラックの空スペースに、洋酒、清涼飲 料水などを扱うグループ会社の商品を混載し て納品先まで運ぶことで、トラックの積載効 率を高めてきたわけだ。
キリンビールはキリンビバレッジ、ハイネ ケン、小岩井乳業と、アサヒビールはアサヒ 飲料、ニッカウヰスキーと、それぞれグルー プ共配を展開している。
そして、清涼飲料水 と洋酒の事業を持つサントリーは元々、ビー ルとこれら商品を混載して配送している。
こ れによって、三社の配送トラックは毎日ほぼ 満載の状態で走っているという。
サッポロも同じく傘下の企業とグループ共 配を実施してきたが、その一方で悩みも抱え ていた。
出荷ボリュームがまとまらないため、 他社に比べトラックの積載効率が劣るという 点だ。
「二〇〇三年に予定されている酒販免許の 自由化に伴い、多頻度小口配送のニーズが拡 大するのはほぼ間違いない。
そうなると、積 載効率がさらに低下する恐れがある。
系列以 外の企業との共配は避けられない選択だった」 と萩野芳則ロジスティクス事業部部門管理グ ループ課長代理は説明する。
共配の武器は情報システム 現在、サッポロでは九月稼働を目指して共 同配送用の情報システムを開発している。
主 に自動配車機能、倉庫管理機能、料金計算機 能の三つの機能で構成されるシステムだ。
このうち自動配車機能は手作業で行ってい た配車業務を一気に簡素化するツールとして 期待されている。
具体的には、サッポロ製品 と他社製品の出荷情報を入力すると、自動的 に最適な輸送手段や配送ルートを弾き出す仕 組みになる。
「ベテランの配車係でなくても、共配便、車 建て、路線便の選択が簡単にできるようにす るのが狙い。
このシステムが完成すれば、比 較的容易に同業種共配を立ち上げることが できるようになる」と荻野課長代理は期待する。
サッポロでは昨年一〇月の宝酒造を皮切り に、今年三月には三和酒類、黒川商事との共 配事業を立ち上げている。
さらに、今秋には 新たに大手酒類メーカーとの取り組みが始ま る予定だという。
新情報システムは共同配送 を拡大していく上での最大の武器となる。
サッポロはロジスティクス事業部と子会社 であるサッポロ流通システムとを統合し、数 年後に分社化することを決定している。
稼ぐ ロジスティクス部門としての自立が求められ ている。
コストセンターからプロフィットセ ンターに生まれ変わることができるのか。
外 販という意味合いの強い共同配送はその試金 石となりそうだ。
(刈屋大輔)

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