ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年5号
SCC報告
「サプライチェーンを測定する

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MAY 2001 88 サプライチェーン・マネジメント(SCM) を実施せよ――。
上司からそう命じられたも のの、具体的に何をしたらいいものかサッパリ 分からない。
どうやら指令した上司のほうでも、 よく分かっていないようだ。
とりあえず、現状 でも整理してみるか。
と、そこでまず壁に突き 当たる。
サプライチェーンをどう整理すればい いのか。
現状をどう評価すればいいのか。
その 手段としてSCCでは「SCOR」の活用を 提唱している。
プロセスで現状を把握する SCMとは、どうやら情報システムの話で はない。
SCCジャパンのボードメンバーの 一人は、米国のSCMマネジャーとの会話か ら、そのことを痛感したという。
「アメリカの人たちとSCMの話をしても、 システムがどうとか、モジュール構成がどう などとは誰も口にしない。
その代わりに『ビ ジネスプロセス』という言葉が繰り返し、繰 り返し出てくる。
当時(九〇年代末)の日本 の常識からすれば意外だった」 プロセス。
そのまま日本語に訳せば「課程」。
輪郭のあいまいな言葉に聞こえる。
しかし、 サプライチェーンとは、そもそも複数の会社 にわたるビジネスの課程の連なりだ。
サプラ イチェーン全体の「リードタイム」とは、サ プライチェーンを構成する各プロセスのリー ドタイムを全て足したものであり、「オーダー 充足率」は各プロセスの充足率の掛け算で決 まる。
従ってどういうプロセスが、どういう順番 で繋がっているのかを確認しない限り、SC Mも手の付けようがない。
一言で「リードタ イム」といっても、それがどのプロセスのリ ードタイムを指しているのか明確でなければ 議論さえできない。
結局、SCMを実施する ためには、その前 提としてプロセス の連なりを示す表現方法が必要に なる。
それがSCC の提唱する「SC O R ( S u p p l y Chain Operating R e f e r e n c e Model )」だ。
S CORによって、 まず現状のサプラ イチェーンをモデ ル化し、パフォー マンスを測定する。
次にその結果をベストプラクティスやライバ ルと比較する。
さらには改善のカギを見つ出 し、プロセスの連鎖を組み直すことで、目標 第2回 「サプライチェーンを測定する」 89 MAY 2001 とするパフォーマンスに近づいていく。
そん なSCMのアプローチをSCCでは推奨して いる。
具体的にはサプライチェーンのモデル化の 方法として、SCORでは「調達(Source )」 「生産(Make )」「配送(Deliver )」という順 序で連なる三つのプロセスと、それを「計画 ( Plan )」するプロセスをワンセットにして、そ のセットが幾重にも連なったものとしてサプ ライチェーンを表現する。
(ただし、「生産 ( Make )」機能のない流通業者や物流業者の 場合は、「調達(Source )」と「配送(Deliver )」 だけになる) もちろん、実際のサプライチェーンはもっ と複雑な構造を持っている。
そもそも厳密に見れば、全く同じサプライチェーンなど世の 中に二つと存在しない。
そのため実際のサプ ライチェーンそのものは、他と比較するとい うことができない。
そこでSCORではサプ ライチェーンを比較可能なレベルにまで抽象 化しているのだ。
SCMの進め方 基本となる四つのプロセスのうち「計画 ( Plan )」とはビジネスを実行するのに先だっ て行うものだ。
需要を予測し、それに応える ために必要な経営資源のキャパシティのデー タを集め、サプライチェーン全体を調整する。
さらに、ビジネスを実行した結果をフィード バックして再度、調整を行う、という手順を 一般的には繰り返す。
これに対して「調達(Source )」「生産 ( Make )」「配送(Deliver )」と続く三つのプ ロセスは、ビジネスの実行である。
サプライ チェーンを測定する時には、この実行部分の 処理能力を測ることになる。
具体的には「納 期遵守率」、「在庫日数」、「オーダー充足リー ドタイム」、「予測精度」といった指標をプロ セスごとに測定する。
そこで得た結果が、そ の会社のサプライチェーンの現状を示す基礎 データになる。
ここまでやって初めて、自社の現状の能力 をベストプラクティスと呼ばれるサプライチ ェーンやライバルと比較し、目標を設定する ことができる。
いわば、SCMの前提が整う。
実際の改革はその先にある。
それぞれのプロ セスをさらに詳細なプロセスに分解し、どう すればプロセスを減らせるか。
またプロセス をどう組み替えたら目標を達成できるのかを 分析し、改革する。
また、同じプロセスでも能力が違うのは何 故か。
そこに注目して具体的な課題を発見し ていく。
パフォーマンスを測定する対象とな った「調達(Source )」「生産(Make )」「配 送(Deliver )」というプロセスは、あくまで も抽象的なモデルに過ぎない。
そこでは実行 のやり方までは規定されていない。
例えば同じ配送というプロセスであっても、 トラックで運ぶのか、それとも船か、飛行機なのかということまではモデルに反映されて はいない。
要は現場のオペレーションの方法 であるが、これをSCORでは「Enable 」と 呼ぶ。
会社によって同じプロセスでも能力が 違うのはEnable が違うからだ。
Enable の違い が、どれだけのパフォーマンスの違いとして 現れているか。
SCORを利用することで、 それが確認できる。
これまで日本企業には、こうしたビジネス プロセスを管理する部署が存在しなかった。
しかし、企業の競争優位は情報システムの機 能で決まるのではなく、むしろビジネスプロ セスのパフォーマンスで決まる。
その数値を 改善しようというのがSCMの狙いであり、 その方法論としてSCCではSCORを提唱 しているのだ。
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