ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年4号
キーマン
物流キーマン「私の仕事、私の情報源」

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

83 APRIL 2001 物流キーマン 「私の仕事、私の情報源」 ――低温物流事業の環境変化につ いて教えてください。
四年ぐらい前から、流通革命の 荒波が及んできました。
冷蔵倉庫 の原点は、原材料の保管にありま す。
つまりメーカー主導の物流で す。
しかし最近、イニシアチブが川 下に移ってきた。
それまでも川下 の力は大きかったんですが、物流 についてはそれほどうるさくは言 わなかった。
単に持ってきてくれ ればいいという感じでした。
しか し、この部分のニーズが変わって きました。
いかに安く、安全・正 確に店舗に製品を持っていくか。
このニーズが問屋やメーカーへの 強烈な要求として表れました。
従来の管理手法のままでは、在 庫を圧縮するか、料金を下げるし か対応のしようがありません。
こ れは冷蔵倉庫業者にとっては減収 でしかない。
物流品質の高度化と、 多頻度小口配送への対応も、我々 にとっては大変なコストアップ要 因です。
構造的に従来のような冷 蔵倉庫業は難しくなってしまった んです。
――最近、注力している3PLの ヒントはどこにあったんですか。
九四年ぐらいでしょうか。
ニチ レイの社内で「リフレッシュ低温 物流」と呼ぶキャンペーンを張っ たんです。
単純に言えば、いかに 売上高と品質を高め、コストを下 げるかを狙ったものです。
このと き具体的にどうやって売り上げを 伸ばすかと考えたとき、3PLに 着目したんです。
しかし、こうしたニーズに応え ようとすると、短期的には当社の 物流事業の売り上げは減少しかね ない。
顧客にとっての物流コスト が、我々にとっては売り上げです から。
それでも、躊躇していては、 我々自身が巨大な下請け業者にな りかねないという危機感を強く持 っていました。
そこで保管や輸送 といった個別の機能ではなく、サ プライチェーン全体の効率化を図 れなければダメということになっ たんです。
――椎橋さんはノンアセットの3 PL子会社、ロジスティクス・プ ランナーの社長を兼務しています ね。
ニチレイの資産を使わないこ ともあり得るんですか。
ロジスティクス・プランナーと しての収入は、ニチレイを使おう と使うまいと、荷主の物流を改善 してナンボです。
そもそも自社の アセットに拘って逡巡するのはや めよう、というのが我々の3PL 事業の原点。
この姿勢を明確にし たのが今回の分社化です。
少なく てもニチレイの経営層はじめ幹部 は十分に理解してくれています。
企業寄りだったのです。
例えば、 自分が所属する証券会社が担当企 業の主幹事などを務めていると、 思い切った意見が出せなかった。
ところが、外資系証券会社の参入 などによって競争に晒されたこと で、こうした馴れ合いの関係が解 消されつつあります。
偏った報告書を出すアナリスト は結局、評価されません。
投資 家は中立な立場、視点での分析 データを求めているのです。
当然、 辛口の論調も必要になる。
好き なことを書ける、アナリスト本来 の仕事ができる環境が整ってきた と言えるでしょうね。
――情報収集はどのように。
一般紙や専門紙には必ず目を通 すようにしています。
仕事柄、経 営者に直接話を聞く機会が多いの で、生の情報も仕入れています。
インターネットは主にUPSやフ ェデックスなど海外の物流企業の 情報を入手する際に活用していま す。
しかしインターネットは便利 な反面、怖い部分もあります。
先 日もインターネット上のある掲示 板で「日興ソロモンの運輸アナリ ストがこういっていたぞ」という 根も葉もない書き込みがあって、 驚いたことがありました。
――物流業界でウォッチすべき点 は。
例えば、コンピュータ業界であ れば、パソコンの販売台数見込み からチップや半導体の生産数をあ る程度予測できます。
ところが、 物流は数カ月後とか、数年後の市 場動向を予測しにくい。
マーケッ トの規模そのものが掴めない。
加 えて、市場全体の需給バランスを 見るのも難しい。
調査会社や各種 団体が発表する運賃の市況も調査 対象企業の選定に偏りがあって信 憑性に欠ける。
今後の市場の方向 性については、各アナリストとも 見解が分かれています。
ただ一つ言えるのは、この一、 二年で業界再編が一気に加速する だろうということです。
欧州、米 国ではグローバル規模で物流企業 の買収、提携が相次いでいます。
日本企業もこの流れを避けて通れ ない。
現在、ネットワークや輸送 モードの面でグローバル展開して いるのは日本通運のみ。
追随する ヤマト運輸と佐川急便がどのよう な国際戦略を打ち出すのか。
日本 での再編の中心的な存在となりそ うな二社だけに、その動きに注目 しています。
「巨大な下請けになりかねない危機感をバネに」 ニチレイ 椎橋治男 取締役 低温物流企画部長 ――運輸アナリストの仕事とは。
運輸に限らず、かつてアナリス トは担当企業のコメントやニュー スリリースをそのまま投資家に伝 えることが役目でした。
つまり、 「経営者の資質、戦略性を重視する」 日興ソロモン・スミス・バーニー証券 松本直子 株式調査部ディレクター

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