ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年4号
キーマン
物流キーマン「私の仕事、私の情報源」

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

APRIL 2001 40 「デマンドチェーンに発想を切り替える」 味の素 鎌田利弘営業ロジスティックスセンター センター長 ――ロジスティクス・ビジネスに 求められる人材とは。
経営センスを備え、新しいビジ ネスモデルを知っていて、なおか つITに理解のある人材でしょう。
残念ながら日本の物流業界には本 当に少ない。
五年ほど前、ある米 国人が「日本の物流業界の状況は 米国の一〇年前と同じ」と言って いたのを覚えています。
逆に言えば米国でも、一五年前 にはそうした人材がロジスティク ス業界には存在していなかったと いうことになります。
八〇年代半 ばになって、MBA保持者や経営 コンサルタントなど、いわゆる目 端の利く人たちが、3PLの台頭 とともにこの分野に入ってきたわ けです。
日本もだんだんとそうな ってはきていますね。
――ロジスティクスに関する情報 をどこから入手していますか。
大きな流れをつかむという意味 では、やはり米国の情報を重視し ています。
最初は米国の大学の教 科書を読みました。
専門誌の 「 Logistics Management 」 や 「 SCM management 」などにも目 を通します。
日本国内の情報につ いては、コンサルティングの実務 に加えて、荷主から物流業者に関 する調査依頼があるので、格好の 情報源になっています。
基本的に は物流コンペのための調査依頼で すが、こうした機会に主要な物流 業者にインタビューして回ると、 とても勉強になる。
問題はマクロ的な情報が日本で は入手できないこと。
日本の物流 専門メディアには、インフラなど に関する統計的なデータが少なす ぎます。
むしろ小学生向けの教科 書の方が、宅配便の仕組みや港湾 の整備状況などが分かり易く掲載 されている。
大人向け、専門家向 けの媒体にこれがないのは不思議 です。
――ロジスティクス・ビジネスの 醍醐味とは。
私は基本的に現場が好きなんで す。
もともとIT分野の出身で、 これまで狭い意味での物流にこだ わってきたつもりはないのですが、 モノを作り、運ぶという一連の作 業の現場は何といっても面白い。
九九年のクリスマスにアメリカの インターネット通販業者が物流の 混乱で大失態を見せたことで、I ――味の素は近年、ロジスティク スを大きく変えました。
そもそも の問題点は何だったのでしょうか。
当社は調味料からスタートして、 徐々に商品範囲を拡大してきまし た。
それに合わせて最適のロジス ティクスを作ってきたわけです。
しかし、この間に世の中の環境は 大きく変わり、市場の需給バラン スも変化しました。
供給過多にな ってくると同時に、小売業の成長 によって一括納品の要請が出てき ました。
結果として、メーカーが 作り上げてきた縦型の物流網が機 能しなくなってしまったんです。
川下からの要請に対して、物流 という切り口で我々が何を提供で きるかが問われていました。
デマ ンドチェーン・マネジメントの発 想を取り入れるべきだ、と。
そこ で我々は需要予測の精度を上げる ことによって、効率的な生産計画 につなげよう。
そうすれば過剰在 庫や欠品も防止できるのではない か、と考えたんです。
まさに発想 の一大転換ですね。
これが当社が SCMシステムの開発に着手した 最大の理由です。
――もともと鎌田さん自身は物流 とは無縁でしたよね。
それまでは支店の営業でした。
しかし、営業の立場にいても、社 内にとっての最適システムと、顧 客にとっての最適システムが違う ことは私も感じていました。
営業 畑の私をプロジェクトリーダーに したのはもちろん上司の決定です が、私が加わったことによって、 少し川下向きになったかなとは思 います。
実際、営業部門が需要予 測の最終を担うようなコンセプト に変えましたから。
――何かお手本のようなものはあ ったのですか。
システムを作る上で、生産から 販売までのどこに軸足を置き換え るかを考える必要がありました。
しかし、どちらにシフトするかは、 私の経験から考えるしかなかった。
私は入社から五年間は工場勤務、 それから本社で二年、次に営業で す。
情報システムも少しかじって いましたから、その経験を元に判 断しました。
――IT化は、ますます進みそう です。
ロジスティクス分野の人間には、情報システムを使いこなすことが 求められます。
しかし、最近のI Tの話はほとんど黎明期のものば かり。
今は全体を見渡しながら、 何が残るのかを見極めることのほ うが重要です。
新しい技術も大事 ですが、振り回されてはいけない。
アメリカン・スタンダードが全世 界で通用するとは限りません。
「ビジネスモデルの知識とITの理解が必須」 アクセンチュア 前田健蔵 パートナー 物流キーマン 「私の仕事、私の情報源」 T分野でも物流に対する認識は高 まっています。
今後、eビジネス が普及していくにつれて、ますま す物流の現場が注目されるように なるはずです。
41 APRIL 2001 ――日本の流通業界の情報化をど う見ていますか。
圧倒的に遅れています。
日本で 普及しているEDIを世界で使お うとしても、何一つコミュニケー トできません。
国内でしか通用し ない。
いま欧米では規格統一の動 きが急速に進んでいます。
グローバル・カスタマーと称する 大手小売りによる取り組みがまず 起きて、これを大手メーカーが受 けとめるかたちでGCI(Global Commerce Initiative )という枠 組みが動き始めています。
こうい う時代だからこそ、ロジスティク スが重要なんです。
これを分から ずに情報分野の話だけを先行させ ると、必ず失敗します。
――情報源は何ですか。
日本にはロジスティクスの情報 がほとんどありません。
私の場合 は当社の株主である米クラフトフ ーヅ社から全てを学んでいるとい っていいでしょう。
これが圧倒的 に勉強になります。
すべてを真似 することはありませんが、ヒント は全てここにあります。
――いま欧米の大手メーカーの最 大の関心事は何ですか。
米国では大手小売りの寡占化が 進みつつあります。
ウォルマート 一社だけをみても五年前に五、六 兆円だった売上高が、昨年は約一 七兆円に急増している。
買収の繰 り返しです。
欧米で進んでいるの は準大手クラスの買収合戦。
この 波は日本にも押し寄せています。
メーカーはもう国別に対応して いる時代ではありません。
クラフ トに限らず、欧米の大手メーカー は皆、同じような考え方をしてい ます。
国際本部のような組織を作 ってカスタマー別に管理する体制 を整えつつある。
クラフトも昨年 一月にグローバル本部を作り、売 り上げ上位二〇社別に組織を組み 替えました。
顧客によってロジス ティクスや情報システムは違いま すから、個別に対応しています。
日本を除いて、全世界が同じ方 向に変わってきています。
ですか ら今は大手顧客二〇社の動向を注 視しながら、競合メーカーとより 深い同盟関係を築こうと努めてい ます。
その際の絶対的な戦略の一 つがロジスティクスです。
ますま す、そこに特化しています。
――グローバルカスタマー二〇社の するに把握していないんです。
――物流コストを算出できないの はなぜでしょうか。
財務に出てこないからです。
日 本の財務会計そのものが、ロジス ティクス・コストを洗い出す仕組 みになっていない。
本当の調達コ ストとかロジスティクス・コスト というのは、管理会計に連動させ なければ出てきません。
管理会計 がしっかりしている米国では、こ れが可能なんです。
――それが御社のソフトのセール ストークでもあるわけですか。
私は一つのシナリオを持ってい るんです。
セールス先の経営トッ プから「そのソフトを入れると、どれくらい物流コストが下がる の?」とか「物流センターの作業 効率がどれくらい上がるの?」と 言った話が出た場合には、どんな に魅力的な企業でもお付き合いを 断ることにしています。
すると、相手はキョトンとしま す。
でもね、私は「基本的な経営 コンセプトを見直すツールとして 当社のソフトを導入しませんか」 と言っているのであって、物流コ ストがどうのという話をしている わけではないんです。
生意気なよ うですが、ロジスティクスという のは生産や販売と同じくらい企業 にとって重要な基幹業務です。
そ の点を真摯に考える経営者でなけ れば改革などできません。
――情報源は何ですか。
多いのは社内の情報ですね。
当 社はロータスノーツを使って、例 えばアメリカでどういう商談があ って何が評価されたといった情報 を、全社で共有しています。
各地 のマーケットニーズやそれへの対 処方法が良く分かります。
結局は、 取引先とのコミュニケーションが 情報源なんでしょうね。
――仕事の醍醐味とは。
サプライチェーン改革の事例に 数多く接してきて感じるのは、一 言でいって「スゴイ」ということ です。
企業にとってロジスティク ス改革は、当事者が考えている以 上に大きなインパクトがある。
八 〇年代に日本企業に負け続けていた米国企業が復活した大きな要因 の一つは、間違いなくサプライチ ェーン改革です。
日本企業が復活 するためには、とくに流通業では ロジスティクスへの認識が不可欠。
新しい経営戦略というのは必ずそ こに連動してきます。
ロジスティ クス事業に携わる側も、そこまで 理解する必要があるのです。
「製販同盟のカギはロジスティクス」 味の素ゼネラルフーヅ 川島孝夫 理事 情報システムセンター長 ――最新ソフトを導入したが、動 かないという話をよく聞きます。
一般論として、日本企業は財務 会計には強いんです。
でも管理会 計は全くダメですね。
私は、当社 のソフトの導入を検討してくださ る企業に、必ず「御社の物流コス トは今どれくらいなんですか」と 尋ねます。
売上高物流費比率でも いいし、物流コストの総額でもい い。
ようはシステムの導入によっ て、どれくらいのコストダウンを狙 っているのかを知りたいと言うん です。
すると「うーん物流コスト ねぇ。
ざっくりとした数字で‥‥」 という答えが必ず返ってくる。
要 あいだにも効率に差はあるのでは。
ウォルマートが一番、安く売っ てるじゃないですか。
それで一番、 儲けてもいる。
その理由はリプレ ニッシュメントの仕組みが違うか らです。
米国ではロジスティクス改革に着手する前に、必ず最適生 産ロットについて議論します。
包 装過程のことまで踏み込んで、ど んな生産ロットが最適かを徹底的 に話し合います。
互いに原価を公 開し合い、極めて深いレベルの関 係構築をします。
しかし、そんな こと日本では、まだどこもやって いませんね。
「まず経営者の改革意識を問う」 イーエックスイーテクノロジーズ 津村謙一 社長

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