ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年4号
Interview
コクヨ専務取締役 黒田康裕

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

APRIL 2001 54 ――インターネット通販の開始や特約 店網の再編など、このところビジネス モデルの転換を本格化させていますね。
コクヨがビジネスモデルを意識し始め たのはいつ頃からでしたか。
「九五年です。
当社にとって九五年 というのは非常に重要な年でした。
こ の年をピークに、過去ひたすら増え続 けてきた日本の就業労働人口が減少に 転じたんです。
これによって我々のオ フィス・マーケット(文具事務用品の 市場)も減少に転じた。
つまり我々の ドメインそのものが成熟期から衰退期 に入ったわけです。
そうである以上、 当社が九五年までとってきた戦略と、 九五年以降にとるべき戦略は明らかに 違ってこなければならない。
そう私は 考えてきました」 ――オフィス用品におけるコクヨのシ ェアはどれくらいなのですか。
「それはモノによっていろいろです。
たとえばノートでしたら三〇%ぐらい。
伝票帳票類になりますと九〇%近いシ ェアになります。
オフィス家具となり ますと、だいたい二五〜二六%ぐらい。
あくまでメーカー出荷ベースの数字で すがね」 ――ざっくり三割といったどころでし ょうか。
典型的なガリバー企業のシェ アですね。
そうなると確かにマーケッ ト規模そのものが経営に響いてきます ね。
それで九五年にマーケットが減少 Interview コクヨ 黒田康裕専務取締役 「流通在庫をゼロにして卸機能を排除。
サービスと物流軸に新たなモデル作る」 文具業界のガリバー、コクヨがビジネスモデルの転換を急いでいる。
この1月には「アスクル」に対 抗して文具ネット通販の「カウネット」を立ち上げた。
並行して昨年から支社と全国の特約店の統合に も着手している。
物流網も刷新する。
新たに全国10カ所に大型物流センターを立ち上げ、80カ所あっ た特約店の倉庫を集約。
在庫を全てメーカーに引き上げ、完全な「商物分離」を断行する。
コクヨと特約卸の共同出資によって新たに設立された物流子会社「オフィス・サプライ・ロジスティ クス」には、工場からバラの状態で商品を入荷し、顧客の要求に合わせた荷姿で出荷する流通加工機 能を持たせる。
近い将来、財閥系倉庫会社と同レベルの倉庫面積を誇るアセット型3PL業者が文具 業界に誕生することになる。
55 APRIL 2001 Interview に転じたとき、まず経営陣は何を考え たのでしょうか。
「とりわけ私は流通に近いスタンスで 仕事をしてきましたので、やはりこれ からの流通業について考えました。
と くに当社の場合は、我々が『総括店』 と呼んでいるコクヨ製品しか販売しな い特約卸が全国に約六〇カ所あります。
この総括店が今後も今の形のまま流通 業として生き残っていけるかというこ とを、まず考えました」 特約店制度はもはや維持できない 卸の凋落が流通再編の引き金に ――総括店とはどういう制度ですか。
「総括店制度の根幹は四つありまし て、一つはコクヨ製品の専売であるこ と。
二つ目は再販という卸形態をとっ ていること。
三つ目はテリトリー制を 敷いていること。
四つ目は?一帳合い〞、 つまりテリトリー制とも重なるんです が、メーカー・卸・小売りの三段階の なかで、この小売店はこの総括店から しかモノを買えませんと決められてい るんです」 「しかし、社会がどんどんネットワー ク化していくなかで今後もテリトリー 制などが許されるのかと、一つひとつ の条件を考えていくと、これまでのや り方ではもはや成り立たないという結 論になってしまう。
実際、総括店はコ クヨ製品だけでは飯が食えなくなって きている。
しかも卸という業態自体が 今後は市場から排除されていくでしょ う。
ようするに、卸では食っていけな くなったわけです」 「当社の根幹をなす販売パートナー の業態が成り立っていかないというこ とは、イコール、当社もそこにしかモ ノを売らないわけですからコクヨ自身 もダメになってしまう。
そこで、まず 流通というものを作り変える必要があ った。
この五年間はずっとそういうこ とをやってきたつもりです。
まだ完成 はしていないし、これからもっと作り 変えていかなければならないんですが」 ――トップ企業であるコクヨの場合、 業界内には手本がありませんね。
新し いビジネスモデルを考える上で何をヒ ントにしたのでしょうか。
「どこかにサンプルやモデルがあった わけではありません。
市場のなかでコ クヨが評価されるには何をしたらいい のかという、そもそもの出発点から考 えてきました。
ただし、部分、部分で は見本になるような事例はありました。
花王さんや松下さんがそうですね」 ――とくに松下はこれまでのコクヨの モデルに似ているように思います。
「似ていますよね。
ただし、あちらは 全国に二万の販売店網を抱えていらっ しゃる。
店そのものが松下と一気通貫 になっていますよね。
当社の場合は、 顧客と接する最終の販売店までは一気 通貫になっていません。
当社は卸まで は専属ですが、その先に『コクヨ・シ ョップ』があるわけではない。
そうい う意味では多少、われわれの方がやり やすいという面はあるでしょう」 ――街中で見かけるコクヨという看板 を掲げている文具店と、松下のナショ ナルショップはどう違うのでしょうか。
「松下さんのナショナルショップは松 下製品しか扱っていませんが、コクヨ の看板を掲げている文具店にはキング もあれば三菱鉛筆もあります。
つまり 専売店ではありません。
あれは当社が お金を出して、看板を掲げさせてくだ さいとお願いしたんです」 「実は今から五〇年も前にスタート した話ですが、街の文具店にコクヨと いう看板を掲げてもらうことによって、 文具=コクヨというイメージを市場に 定着させることをひたすらやってきた んです。
とくに学校の前には必ず文具 店があるので、そこには徹底してお願 いしました。
そうやって、この店の中 にあるのは全部、コクヨ製品であるか のように消費者に徹底的に刷り込んだ んです。
今でいうブランド戦略です」 「だから、お年を召した方によく『い やぁ、私は子供の頃、コクヨ製品には よくお世話になりましたよ。
鉛筆とか ノートとかね』と言われるんですが、 実はコクヨはその頃、鉛筆もノートも 作っていなかった。
でも全部、コクヨ だと思っていただいている。
結果とし てコクヨのブランドの浸透率やバリュ ーは、この業界のなかで圧倒的に高い んです」 ――そういえば、かつての八〇年代後 半の「SISブーム」の時に、情報端 末による販売店の囲い込みというのが ありました。
ほとんどが失敗に終わっ たなかで、コクヨは数少ない成功例と 言われていましたね。
あれも専売店で はなかったから囲い込みに意味があっ たわけですね。
「そうです。
あれはいまでも機能して ますよ。
『クロス』と呼んでいますが、 約四五〇〇の販売店にEDI端末を使 って頂いています。
四五〇〇ものディ ーラーと真面目にEDIをやっている 例は、少なくても文具業界ではありま せん。
他業界でもないんじゃないでし ょうか。
もっとも、EDIだけのクロ ーズドな仕組みで全世紀の遺物みたい になってしまいましたので今度、仕組みを変えますけどね」 特約卸を含めて流通在庫をゼロ化 営々と築き上げた物流網にもメス ――当時として大きな先行投資だった のではないですか。
「情報システム自体よりも、それをし っかりとサポートする精度の高い物流 の仕組みを作るという意味での物流投 資は大変なものだったと思います。
基 APRIL 2001 56 本的には販売店が持つべき在庫を、で きるだけ上流に吸い上げようという仕 組みです。
流通在庫をできるだけ圧縮 し、小売店は在庫なしで販売できるよ うにした。
そうすることによって、小 売店がコクヨ製品をどんどん積極的に 扱ってくれるようにしたんです」 「他社の製品はある程度まとめて購 入しなければ安くしないのに、コクヨ は値段こそ決まっているけれど一個か ら商品を届けてくれる。
しかも極めて デリバリーの精度が高い。
だから儲か るし、コクヨの売り上げ構成を上げれ ば、さらにコクヨから奨励金が出る。
そういうことを繰り返してきた結果、 全国の販売店におけるコクヨのポジシ ョンは飛躍的に高まった」 ――そうやって営々と作り上げてきた サプライチェーンを今、抜本的に変え ようとしている。
「そうです。
総括店の体制を作り変 えるだけではなく、物流そのものの仕 組みも作り変える必要があります。
さ っきも申し上げた通り、総括店という のは基本的に卸です。
在庫を持ってそ れを販売していくというのが、コクヨ の総括店の機能でした。
しかし、在庫 を持っていたらいつまでたっても卸業 から抜け出せない」 「そこで卸を含めた流通在庫を基本 的にゼロにしようという改革を今、進 めています。
総括店の再編を進めなが ノ」というのは、いろいろなサービス だとかサポートまでも含んだ商品の価 値を顧客に提供することで初めて満足 してもらえるという形になる。
そうい う商品がどんどん増えていくと思うん ら、順次、総括店の在庫を引き上げて、 メーカー在庫にしています。
これによ って流通在庫を極小化し、あわせて物 流コストを下げる。
さらに今後、要求 されることになる高品質のデリバリー に対する投資をできるだけ抑えていく。
総括店がそれぞれ単独に物流投資をす れば大変な額になりますから、これを コクヨがまとめてやることで投資を圧 縮する」 ――ようは「商物分離」ですよね。
「おっしゃる通りです。
従来、総括 店の倉庫は全国に八〇カ所ありました。
これを全国十二カ所に圧縮するという 計画を現在、進めています。
統合され た倉庫にある在庫はコクヨの在庫です、 総括店の在庫ではありません。
総括店 というかたちは残りますが、在庫はゼ ロ。
つまり卸という形ではなくなると いう形態を目指しています」 ――しかし、商物分離をした後にも、 果たして卸は必要なんでしょうか。
卸 から物流機能を取り上げた時、何の機 能が残るのか。
「それはどなたからもよく聞かれます ね(笑)。
しかし、コクヨの総括店に は地域に密着している強さがあります。
今回の『カウネット』の顧客登録でも、 わずか二カ月足らずで二〇万もの登録 を集めることができました。
これは総 括店の持っている地域密着パワーに他 ならないと思うんです」 ――卸の業態が具体的にどう変わるこ とになるのですか。
「当社自身はメーカーですから、製 品を作って、それを顧客に提供するの が本業です。
ただし、これからの「モ ネットコクヨ 販売店 カウネット ネットコクヨ 300人以上の大企業 (2000億円) 30人以上の中堅企業 (4500億円〜5000億円) 小規模事業所 SOHO (4500億円〜7500億円) 低コスト購買 システム購買 低価格購買 手軽な購買 べんりねっと 流通支援機能を持つ 購買管理ASP C-Business 事務用消耗品のカタログ通販 (販売店支援ツール) カウネット オフィス消耗品の カタログ通販 DELIVO オフィス家具 カタログ通販 IT総合サービス 利便性 コスト 事業の主体 顧客ニーズ コ ク ヨ 図1 コクヨのクリック&モルタル戦略(事務用品のみ) コクヨの販売ネットワーク コクヨ 直接販売 ( 15 %) 間接販売( 85 %) 総括店 59店 代理店 108社 量販代理店 73社 家具代理店 14社 直接取引店 大型量販店(KJM) 4,248社 中小販売店 量販店 家具店 カメラルート、その他 大手ユーザー (大企業) 企業・個人 個人 ※( )内は事務用消耗品の市場規模 カタログ訪販 (システム納品) 通信販売 57 APRIL 2001 Interview です。
そうなった時に総括店の持つマ ンパワーは、当社の大きな強味になる。
コクヨの社員ですべてのサービスを網 羅できるわけではありません」 「そのため今、我々は『卸業からサー ビス業への転換』を総括店に対するメ ッセージとして送っています。
サービ ス事業として新しい総括店を組み立て ていきたい。
しかも全国の水準を揃え て、どこで注文してもきちんとしたサ ービスを提供できます、という形にす るのが今の狙いです。
総括店を残して いる意味は、そういうことです」 ――今後、総括店はコクヨ以外からも 製品を仕入れることになるわけですね。
「どんどん仕入れてもらいます。
今ま ではコクヨ製品しか扱わなかったわけ ですが、これからはオフィス業界とい うマーケットのなかで流通業者として 自立していくわけですから、コクヨ以 外からもどんどん仕入れてもらう。
総 括店である以上、メーンの商材はコク ヨにしてもらいますが、別にコクヨだ けにこだわる必要はない」 規模で企業顧客を三つに分類 ニーズごとにチャネルを構築 ――コクヨは一部ではメーカー直販も やってきました。
「大手ユーザーの家具やオフィスの設 計については直販しています。
それが 全体の一五%ぐらいあります。
昭和四 〇年代に始めた当初は小売店とすった もんだもあったようですが、今は完全 に認知されるようになり ました。
それ以外の消耗 品については、ほぼ一〇 〇%総括店のチャネルで 販売されています」 ――これからは市場を起 点にしてチャネルを考え る必要がありますね。
「その通りです。
当社で は企業の顧客を、従業員 三〇〇人以上の大企業、 三〇人以上の中堅企業、 そしてそれ以下のSOH Oの三つに分類して考え ています。
この三つの層 は、それぞれ要求しているものが違い ます」(図1) 「大企業は今、オフィスで使う消耗 品の調達コスト全体を見直したいとい うニーズを持っている。
これまでは必 要なものを一円でも安く手に入れたい というニーズだったんです。
それが今 は、本業に特化するために、余計なバ ックオフィスの仕事をアウトソーシン グしようとしています」 「これまでは事業所が複数カ所あっ て、事業所ごとに購買担当者がいて、 在庫もあった。
出入りの業者もバラバ ラです。
それを見て、なんで消耗品・ 事務用品を調達するのに、こんなに人 手をかけなければならないんだと考え るようになった。
つまり購買コスト全 体を見直す提案を求めていらっしゃる。
当社はこの部分に応えるため『べんり ねっと』という仕組みを作りました」 ――その下の「C ―Business」とい うのは?。
これはカタログ販売ですね。
「三〇人以上の中堅企業がどうなっ ているかというと、ここは購買におけ るコストも気になるけれど、やはりモ ルタル的な利便性も捨てがたいという ニーズを持っている。
ボールペン一本 でも、電話したらすぐに持ってきてく れるといった細かい注文にきちんと応 えてくれるサービスを欲しています。
今まで大企業にはそういうサービスを していましたが、中堅企業に対しては 『わかりました。
明日お持ちします』と か『いま在庫が切れてますのでメーカ ーから取り寄せます』というような対 応だった。
そこに対して我々は『C ―B usiness』というかたちでニーズ に応えています」 「小規模事業者がどうなっているか というと、ここは『アスクル』だとか 『カウネット』などのネット通販の市場 です。
これまでは、納品店が来てくれ ないから小売店に足を運んでいたけれ ども、店に行かなくても発注できるし、 価格の公平性もあるという形でご利用 頂いている。
将来的にはまた変わるか もしれせんが、いまはそうなっていま す」 ――そのすべてのチャネルに販売店や 総括店が必要なわけではありません。
「確かに大企業にとっては販売店は 不要でしょう。
我々が今すぐ販売店の 梯子を外すわけにはいきませんが、今 後は大企業の支店などでの購買活動は変わるでしょうね。
これまでその地方 の文具店から購入していたのが集中購 買に代わり、東京本社で一括購買する ということになっていきます。
そうな ると、地方にある文具店は排除されて しまうでしょう」 ――そうなった時には総括店と大型販 売店の業態の差がほとんどなくなりま す。
「それは、おっしゃる通りですね。
た APRIL 2001 58 だ販売店は、意識としてまだ物販の域 を出ていない。
事業の中味そのものも、 モノを売るという感覚から抜け出して いない。
これからは単なる物販だけで は飯を食っていけなくなるとは考えて いないでしょう」 ――企業向けは分かりましたが、残る 個人ユーザーのマーケットというのは、 どれくらいの規模なんでしょうか。
「だいだい四〇〇〇億円ぐらいです ね。
ここで街の文具店だとか、量販店、 ホームセンター、コンビニなどが販売 しているわけです」 計一〇六カ所の倉庫を十二カ所に集約 チャネルごとに物流網も再構築 ――物流の話を伺います。
新しい物流 構想「OSL(オフィス・サプライ・ロジ スティクス)」の概要を説明して下さい。
「消耗品の場合、従来は工場から出 荷した製品を工場の隣接倉庫、もしく は全国二カ所の『ダム倉庫』と呼んで いるセンターで保管していました。
そ こから二四カ所の地区配送倉庫に持っ ていくまでがコクヨ本体の物流です。
その先は全国八〇カ所の総括店の倉庫 に行き、最終的に総括店が販売店に納 品していたわけです」 「これに対して、いま進めているOS L構想では、まず工場から、ダム倉庫 に運びます。
このダム倉庫からOSL に送って、そこから一部は販売店へ届 になります」 卸の物流スタッフを子会社に吸収 豊富な資産背景に3PLも視野に ――すべてのOSLが完成した時点で、 持ち株会社のような組織を作ることに なるわけですか。
「恐らくそういうかたちになるでしょ うね。
今は、それぞれ別の会社ですが、 OSLとしては一本化したものにでき ると思います」 ――恐らく文具業界最大の商社になり ますよね。
「他メーカーのものもOSLに入れる ようになれば、そうでしょうね。
でも 今のところ、倉庫のオペレーションし かやりませんけどね」 ――物流のオペレーションを担う人材 はどう確保しますか。
「我々にはコクヨロジテムという物流 子会社があります。
ドメスティックで すけれども全国に対応している会社で す。
そこで人材は確保できます」 ――しかし、OSLとコクヨロジテム は全くの別会社ですよね? 「そうです。
コクヨロジテムは今まで 地区倉庫の業務と、家具の物流を担っ ていました。
地区倉庫を減らしてOS Lに移していけば、コクヨロジテムの 売り上げは減ってしまいますので、い ずれはOSLの仕事をやることになる かも知れません。
しかし、そのことは ける。
一部は販売店をとばして直接ユ ーザーに送ります」 ――先ほどのユーザー規模別のビジネ スモデルとは、どう対応するのでしょ うか。
「さきほどの図とは対応していません。
OSLというのは、コクヨの基幹部分 の物流構想であって、総括店が卸から 脱却していくために進めている新しい 物流の仕組みです。
この他に例えば、 『C ―Business』は紙文機共配(文 具メーカー同士の出資による共同配送 業者)を利用していますし、『カウネ ット』にはカウネット物流という独自 のシステムがあります」 ――なぜ基幹部分の物流システムとそ れ以外のチャネルの物流を分ける必要 があったんでしょうか。
「理由は単純です。
チャネルによって 事業化を進めていくスピードが違った からです。
ある時点までくれば、全部 統合することになるはずです。
実際、 OSLはユーザー配送もできますし、 従来の販売店仕入れにも対応できます。
まだ具体的な計画はありませんが、最 終的にはすべてのユーザー配送機能を OSLに持たせていきたいと考えてい ます」 ――OSLの具体的な機能は? 「工場からOSLへは、外箱を使わ ず『通い箱』を使ってバラの状態のま まで納品します。
そしてOSLでユー ザーが要求する荷姿に流通加工します。
今までは総括店まで段ボール箱で運び、 そこで顧客の注文によって内箱単位に ばらしたり、単品にばらしたりしてい ました。
この総括店への横持ちの段ボ ール代だけで年間約一〇億円かかって いた。
さらに横持ちのための運賃が数 十億円かかっていたわけですから、流 通加工の機能をOSLに移すことで大 きなコスト削減が可能になるわけです」――今後は他社製品もOSLに入って くるわけですか。
「今は入っていませんが、いずれそう なります。
紙文機共配と同じ形になり ます。
ここの特徴はすべてメーカー在 庫なんです。
コクヨだけでなく、ぺん てるもキングも全てメーカー在庫とし て保管しています」 ――OSLの運用自体は誰が担うんで すか。
「現時点では総括店とコクヨの共同 事業になっています。
ブロックごとに 現在、北海道、関東、東京、近畿、中 国まで立ち上がっていますが、それぞ れ別会社で、その地区の総括店とコク ヨが折半で出資して独立法人として運 営しています。
全国のOSL体制が整 った段階で、すべてをコクヨの在庫に 移します。
それによって総括店間の在 庫の横持ちがなくなる。
全てがメーカ ー在庫になれば、ユーザーにとって一 番近いOSLから出荷すれば済むよう 59 APRIL 2001 Interview まだ役員会の中でも話題に上っていま せん」 ――物流子会社にとっては厳しい環境 ですね。
場合によっては売上高が半分 ぐらいになりかねないでしょう。
「物流コストとしては家具のほうがか かっていますので、コクヨロジテムの 売り上げが半分になることはないでし ょう。
ただ三分の一ぐらいは減る。
し かし、そこまで先のことを考える前に 片づけなければならない課題がありま す」 「OSLは総括店との共同事業であ り、総括店の物流スタッフもすべてO SLに吸い上げています。
そうするこ とによって総括店は倉庫要因を抱える 必要がなくなり、かなりの経営の合理 化ができる。
最終的にはメーカー在庫 に切り替えていくなかで、総括店の資 本を減らしていきたいと考えています が、それまでにはまだ時間がかかりま す」 ――今後、OSLもしくはコクヨロジ テムは大手企業のインフラをベースに した3PLを展開していくと考えてい いのでしょうか? 「今の段階では、そこまでの体制には ありません。
ただし、家具については 八二年以降、流通在庫をすべてメーカ ー在庫にしてユーザー配送するという 仕組みで運用してきました。
その後、 九三年頃に再度、作り変えてSCM的 な考え方を導入したんです。
それまで は倉庫にある商品にしか引き当てがで きなかったんですが、それを生産ライ ンに引き当てられるようにした。
これ によって家具の倉庫がだんだん空いて きています。
この空いたスペースをコ クヨ以外の荷主企業に利用してもらお うということで、3PL的な営業活動 も一部では始めています」 「さらに今度は二四カ所の地区倉庫 が空く。
当社は全国を合わせると三井 倉庫に匹敵するぐらいの倉庫面積を持 っていますので、これを運用していく ことも考えられます。
工場からバラで 入れて、OSLでユーザーが望む荷姿 に代えて出荷する仕組みが上手く外販 できるようになってくれば、もっと能 動的に動くけるようになるかも知れま せん。
ただし、まだ具体的な計画はあ りません」 ――黒田専務はオーナー一族なわけで すよね。
痛みを伴う改革に抵抗感はあ りませんか。
「それは、ありますね。
痛みもともな うし、恨みも買う。
月夜の晩も歩けな くなるかもしれません。
だからといっ てこのまま放置していたら、僕らの次 の世代が大変な?お荷物〞を抱えるこ とになります。
やはり次の時代にも通 用するような健全な形に作り替えて、 次世代に引き継いでいくことが僕らに 与えられた責任だと思っています」 「幸い今の総括店制度を作り上げて きた当社の会長も、流通の仕組みを作 り替えていくということに対しては極 めて積極的です。
当社の基本理念には 『常と変』という考え方があります。
よ うするに企業経営には、ぜったい変えてはいけないものと、どんどん変える べきものがある」 「企業理念や、物事の考えた方、事 業の目的といったことは絶対に変えて はいけません。
しかし、それ以外は組 織であれ、制度であれ、どんどん作り かえて行くべきだという考え方です。
総括店にしても倉庫にしても販売店に しても工場にしても、全部『変』にあ たると私は考えています」 北海道OSL 東北OSL 関東OSL 東京OSL 中部OSL 四国OSL 九州OSL 実施済み 沖縄OSL 近畿OSL 中国OSL H13年度以降 従 来 新体制 工場 総括店倉庫 (80カ所) 販売店 (約2万店) ユーザー 地区倉庫 (24カ所) 工場 販売店 (約2万店) ダム倉庫 ユーザー (2カ所) ダム倉庫 (2カ所) OSL (10カ所) 総括店の利益圧迫要因である物流費の削減 コクヨ在庫になるので全国どこでもユーザー(ディーラー)に近いところから出荷できる。
またリード タイムが短くなる(当日、翌日配送の実現)。
ダンボールなどの梱包材の削減(10数億円) ? ? ? OSL(オフィス・サプライ・ロジスティクス)構想

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