ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年12号
特集
SCMの現場 米国編 IT活用――ザ・ティンバーランド・カンパニー

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

DECEMBER 2002 24 IT活用――ザ・ティンバーランド・カンパニー The Timberland Company 「Timberland」のブランドで知られる靴・衣料品メーカー のザ・ティンバーランド・カンパニーは、数年前まで現場の オペレーションを3PLに任せていた。
しかし、ミスの多さ とサービス品質への不満から、3PLとの契約を解消。
内製 化に切り替えた。
これを機にWMSを導入してオペレーション の改善を進めている。
3PLの利用を改め内製化 ザ・ティンバーランド・カンパニーは「Timberland 」 ブランドの靴、アウトドア向けアパレル製品、アクセ サリー類などを製造する中堅メーカーだ。
年間売上高 は約一一億米ドル(一三七五億円)。
自社製品を卸や 小売りに販売するほか、自らも卸売事業、直営店を 手がけている。
日本を含め現在、世界九〇カ国以上でビジネスを 展開している。
総本社は米国ニューハンプシャー州。
アジア本社はシンガポールに置いている。
物流センタ ーは北米に八カ所、欧州に五カ所。
このうち北米市場 ではカリフォルニア州オンタリオ、ケンタッキー州ダ ンビルの二つの物流センターを中央物流拠点として位 置付けている。
これらのセンターには全て、マンハッタンアソシエ イ ツ 社 の W M S ( Warehouse Management System: 倉庫管理システム)「PkMS 」を導入してい る。
情報システムのプラットフォームはIBMの 「 iSeries 」。
ERP(Enterprise Resource Planning: 統合業務パッケージ)にはSSAの「BPCS 」を採用 している。
ロスアンゼルスのダウンタウンからハイウェイで一 時間ほどの距離にあるオンタリオ物流センターは、延 べ床面積三九〇〇平方メートル、一万四六五二SK Uを保管している。
一日当たり処理量は受注件数で 平均五四〇件(ピーク時一〇〇〇件)。
月間の出荷量 は平均六万四〇〇〇ケース。
ただし、クリスマス商戦のピーク時には月間四三万 四〇〇〇ケースに出荷量が跳ね上がる。
またシーズン 性の高い商品が多いため、返品処理は月当たり平均 七〇〇〇ケースに上る。
こうした繁閑差への対応や、 返品処理業務の効率化が同社の物流管理上の大きな 課題となっている。
同社のジョセフ・シャンペン・ディストリビューシ ョン・オペレーションズ・シニアディレクターは「以 前は現場のオペレーションを3PLに任せていたが、 どうしても繁忙期のミスが減らない。
そこで数年前に 契約を打ちきった。
現在は当社のスタッフと、当社が 直接雇用したパートタイマーで現場を回している」と いう。
3PLから内製化に切り替えたのを機に、オペレー ションの標準化と簡素化を図った。
九八年にまずケン タッキー州ダンビルのセンターに「PkMS 」を導入。
続いてオランダのセンターにも導入し、両センターの 安定稼働を確認した後で、より複雑な管理を求められ るオンタリオ物流センターへの導入を進めた。
オンタリオでは出荷機能を手始めに、入荷機能へと 段階的に適用範囲を拡大する形で「PkMS 」の各モジ ュールを導入していった。
昨年四月には約一カ月をか けてバージョンアップも実施。
現在、同センターでは 出荷システム、在庫管理システム、入出荷用無線シス テム、小包システム、輸送&貨物管理システムのモジ ュールを運用している。
同センターの入荷のフローは以下の通り。
まず出荷 工場もしくはベンダーから、ASN(Advanced Shipping Notice: 事前出荷情報)がティンバーラン ドのホストコンピュータに送信される。
物流センター に納品のトラックが到着する前に、WMSにASNを ダウンロード。
ASNが利用できない場合は、到着し た荷物のラベルをキー入力する。
入荷検品にはバーコード端末を使う。
ASNと実 際に納品された商品を照合すると、納品の正否を示す メッセージが端末のディスプレイに表示される。
バー CaseStudy 特 集 《米国編》 25 DECEMBER 2002 コードが付いていない場合は、ラベルを添付し、量と 個数を紐付けする。
検品が必要な商品は、無線端末の指示に従ってパ レットに積み付ける。
そのパレットを検査エリアに運 び、ロケーションのバーコードを読み込む。
そして検 査担当者もまた、ケースのバーコードを読み込むこと で検査結果をWMSに送信する。
こうしてASNに 対応した全ての商品の入荷処理を完了することで、ホ ストコンピュータに在庫が計上される。
無線端末&WMSで業務を標準化 出荷では、まず出荷指示情報をホストコンピュータ からWMSにダウンロードする。
この指示情報によっ て、それぞれのオーダーが処理される自動仕分け機の シュート口が決まる。
最初にその日に出荷する全ての 荷物の配送ルートを決定する。
小売業者からの要望を ベースに適正な輸送キャリアとサービスを選択。
可能 な場合は混載も検討する。
次に各ルートの出荷時間に基づいて、ピッキングの スケジュールを立てる。
さらに、このスケジュールを 自動仕分け機の稼働能力に応じた詳細なスケジュール に落とし込む。
その後で在庫を引き当てる。
この在庫 引き当ては、リザーブ在庫をピッキングエリアに補充 する指示としても機能する。
ピッキングの前に各オーダーに使用するケースを確 定する。
それぞれのケースごとに出荷ラベルと内容を 示すラベルをプリントアウトする。
これらのステータ スが確定すると、必要な情報がWMSから二種類の 自動仕分け機にダウンロードされる。
一つは欧州メー カーのCrisplant 社のチルトトレイ式でバラ商品の仕 分けに使う。
もう一つがクロスベルト式でケース仕分 けを行う。
ケース単位で出荷する商品は、担当者が無線端末 の指示に従いリザーブラックからケースを取り出し、 ラベルを添付してコンベヤに流す。
このケースは途中 で自動計測器にかけられる。
計測器のスキャナーがラ ベルを読みとり、WMSに送信。
適正な重量を確認す る。
ミスが見つかれば、専用レーンに排出する。
複数のオーダーに分配するためのケースと、ピッキ ングエリアに補充するためのケースもリザーブラック からコンベヤに流す。
複数のオーダーに分配するため のケースはその後、クロスベルト式の自動仕分け機に 運ばれる。
補充用のケースはピッキングエリアへ運ば れて、補充担当者がそれをピッキング用のラックに格 納する。
ピッキングエリアではバラ単位のピッキングを処理 する。
無線端末の指示に従ってピッキングラックから 商品を取り出し、専用コンテナに投入。
専用コンテナ をコンベヤでチルトトレイ式の自動仕分け機へ移す。
シュート口に備えられたケースに商品を投入。
ラベルを貼って、ケースをコンベアに流す。
仕分けエリアに到着したケースと、リザーブラック でピッキングしたケース出荷商品は、いずれもクロス ベルト式の仕分け機によって適切な出荷レーンに運ば れる。
また納品先専用荷札が必要な荷物は別の専用 レーンに弾かれる。
混載輸送業者に渡すケースは、パレットに乗せる時 に改めてバーコードをスキャン。
これによって出荷を 確定する。
出荷処理が終了したら、WMSが出荷確 認情報をホストにアップロード。
請求書等が自動的に 発行される。
こうして同社では無線端末とWMSを現 場のオペレーションにフル活用することで、ミスを減 らし、業務の効率化を図っている。
ザ・ティンバーランド・カンパニーの ジョセフ・シャンペン・ディストリビ ューション・オペレーションズ・シニ アディレクター 作業品質の向上を目的にWMSを活用して業務の標準化を徹底した

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