ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年12号
特集
SCMの現場 米国編 クロスドッキング――オフィス・デポ

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

DECEMBER 2002 22 クロスドッキング――オフィス・デポ Office DEPOT 世界最大のオフィス用品チェーン。
米国で約820店舗を展 開している。
今年6月、ジョージア州アトランタに店舗への 商品補充と顧客への直接配送という2つの物流を処理できる 大型物流センターを開設した。
これまで機能別に用意してい た物流拠点を統廃合していくことで、商品在庫の大幅削減を 狙っている。
機能別に増えてしまった物流拠点 世界最大のオフィス用品販売チェーン、オフィス・ デポ(Office DEPOT )は一九八六年に創業した。
誕 生からまだ二〇年に満たない企業だが、年商はすでに 一〇〇億ドルを超えている。
二〇〇一年度の売上高 は約一二〇億ドル(約一兆四四〇〇億円)。
業界二位 のステープルズと世界最大手の座を競い合うように成 長してきた。
九七年には日本市場にも進出。
現在、東 京や横浜などの主要都市を中心に計十二店舗を展開 している。
オフィス・デポの米国内での商品販売ルートは、大 きく二つに分かれている。
一つは自社店舗を使った販 売で、メーカーから直接、大量仕入れした商品を廉価 で販売している。
これらの店舗面積は平均二五〇〇 平方メートルと日本の文具店とは比較にならないほど 広い。
こうした店舗が米国内に約八二〇カ所ある。
世 界一〇カ国に展開している店舗数の合計は約一〇〇 〇を数える。
米国内でのもう一つの販売ルートは、同社が?コン トラクトデリバリー〞と呼ぶものだ。
事前に契約を交 わしている顧客企業や個人ユーザー向けに、商品を直 接販売、直接配送している。
日本でアスクルやカウネ ットが展開しているサービスと似ていて、カタログを 見ながらインターネットや電話、ファクスなどで午後 五時までに注文を出すと、翌日には商品を入手するこ とができる。
これまでオフィス・デポは、店舗販売と直販でそれ ぞれ別々に物流体制を構築してきた。
店舗販売ではケ ース単位で商品が動くのに対して、直販ではピース単 位の処理も必要で、物流のオペレーションがまったく 異なるためだ。
だが、その結果、同社の米国内での物 流センターの数は、店舗販売向けと直販向けで計二 四カ所(子会社バイキングの物流センターも含む)に も膨れ上がってしまった。
しかも、このままでは展開する店舗数と顧客数が増 えるたびに物流拠点を新設する必要がある。
物流体制 の見直しが急務だった。
同社のビジネスサービス部門 でシニアマネージャーを務めるデビット・ニゼル氏は、 「コスト増に歯止めを掛けるために出されたアイデア が、店舗販売向けと直販向けの二つの機能を兼ね備 えた物流センターの構築だった」と振り返る。
一日五万ケースをクロスドックで処理 今年六月、オフィス・デポはジョージア州アトラン タに新たな物流センターを稼働した。
店舗販売と顧客 直送の二つの物流を処理できる初の多機能型センタ ーで、延べ床面積は五万平方メートルを超える。
同社 にとって最大規模の施設である。
土地、建物はリース でまかなったが、マテハン機器と情報システムには自 ら約一三〇〇万ドル(約一五億六〇〇〇万円)を投 じている。
同センターは米国南東部を担当地域としている。
エ リア内に展開する一二四の自社店舗への商品供給と、 コントラクトデリバリーの顧客への商品配送を担う。
年間の出荷金額は店舗供給分が七億七〇〇〇万ドル (約九二四億円)、顧客直送分が二億五〇〇〇万ドル (約三〇〇億円)を計画している。
店舗向けの物流については全物量の約九割をクロス ドッキングで処理している。
これはセンターに納品さ れる商品をその場で仕分けて配送する、いわば通過型 の物流である。
ここにセンターで在庫している約一割 の商品を組み合わせて、店舗向けに出荷している。
施設内では各ベンダーから納入される商品と、他地 CaseStudy 特 集 《米国編》 23 DECEMBER 2002 域の自社物流拠点から横持ち輸送される商品、そし てセンターで在庫している商品を、それぞれ店舗別に 仕分けてミックスパレット(混載パレット)に仕立て ている。
これを自社トラックで各店舗に配送する。
一 日当たりの出荷処理量は約五万ケースに上る。
一方、直販の商品については、ピッキング、梱包、 方面別仕分けなどの工程を経て出荷している。
ピッキ ング方法は、大きく分けてパレット単位、ケース単位、 ケース以下(ボールまたはピース)の三つからなる。
ラックに格納、もしくはセンター内に平置きされて いるパレット商品はフォークリフトを使ってピッキン グ後、そのまま出荷スペースへと運ぶ。
ケース商品は ラックからピッキングして、コンベアで自動仕分け機 に搬送。
方面別に仕分ける。
ボールおよびピース単位 で処理する商品はピッキングの後、ウェイトチェッカ ーを使って検品を施す。
そして、納品書などを入れて 梱包し、自動仕分け機に投入するという手順になって いる。
このピッキングの精度は九九・八五%。
無線端末 などを利用していない割に精度は高い。
リストやラベ ルを見ながらのピッキング作業でありながらミス率が 低いのは、ウェイトチェッカーを導入しているからだ。
予め設定した重量に対して、プラスマイナス三%の誤 差が生じると、商品の入った段ボール箱が自動仕分け 機を通じて検品スペースに送られるという仕組みを導 入している。
直販商品の配送についても、店舗供給と同様に自 社トラックの利用が基本だ。
ただし、遠隔地について はUPSのLTL便(less-than-trackload= 路線)を 活用している。
出荷時間は午前八時から午後五時半 まで。
一日当たり約六〇〇〇ケースを出荷しているが、 定時配送(on time delivery )の達成率は九七・五% と高水準を維持している。
思惑通りには減っていない商品在庫 前述した通り、これまでオフィス・デポでは、店舗 への商品補充と顧客への直販とで、それぞれ別々に物 流センターを用意してきた。
これを一カ所に統合する 最大の目的は、在庫の削減にあった。
現在、取扱アイ テム数は店舗販売が約八〇〇〇SKUなのに対して、 直販は約一〇〇〇〇SKU。
多少の差はあるが、取 扱アイテムはかなり共通している。
これを一括管理す る体制に移行すれば、在庫水準の引き下げが可能にな るという読みがあった。
ところが、現状では新センターでの在庫削減は思惑 通りには進んでいない。
実はまだセンター内では、店 舗への商品補充のためのクロスドッキングと、顧客へ のダイレクトデリバリーのオペレーションを、まった く異なるシステムで管理している。
在庫管理システム もそれぞれ異なる。
このためセンターでは、いまだにかなりの割合の商品在庫が重複しているのだという。
デビット・ニゼル・シニアマネージャーは、「店舗 向けと直販の物流を一カ所で処理するのは当社にとっ て初めての試みだった。
本当にうまくいくのか、現場 が混乱してしまうのではないかという不安があった。
そのため従来から使用してきた二つの管理システムを、 並存させるかたちでオペレーションをスタートした。
ただし、このままの状態では商品在庫は一向に減らな いことは明らかのため、早い時期に両システムを統合 して在庫を一元管理する体制に移行させるつもりだ」 という。
当然、そのためにはセンターレイアウトの見直しも 必要になってくる。
理想的な稼働状態に漕ぎ着けるま でには、もうしばらく時間が掛かりそうだ。
デビット・ニゼル シニアマネージャー アトランタの新物流センターは南東部地域の124店舗に商品を供給する

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