ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年12号
特集
SCMの現場 米国編 物流子会社――ベライゾンロジスティクス

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

DECEMBER 2002 20 物流子会社――ベライゾンロジスティクス Verizon Logistics 米国最大の電話・通信会社、ベライゾンの物流子会社。
た だし現在、親会社に対してはまったく物流サービスを提供し ていない。
親会社のライバル企業、ベルサウスを主要顧客と している。
外販比率100%という異色の物流子会社の目下の 課題は、親会社の物流を取り戻すことだという。
電話・通信分野の物流に特化 ベライゾンロジスティクスは、米国最大手の電話・ 通信会社であるベライゾンの物流子会社として、九七 年に設立された。
だが現在、親会社およびグループ企 業には一切物流サービスを提供していない。
昨年まで は携帯電話の物流を担当していたが、それも同業他社 に奪われてしまった。
物流子会社でありながら、親会 社の仕事はゼロ。
外販比率一〇〇%という異色の物 流子会社である。
しかし、当の本人たちは親会社の仕事を失ったこと にそれほど落胆していない。
同社のアルトン・ボーナ ー倉庫運営責任者は、「親会社にとってわれわれはコ ストセンターではなく、プロフィットセンターという 位置付けだ。
新規顧客を開拓するよう常に発破を掛 けられてきた。
さすがにグループ企業向けの業務がゼ ロになるとは予想もしていなかったが、外販で減収分 をきちんと補てんできるようになってきたので問題は ない」と言い切る。
親会社からの自立を目指してきたベライゾンロジス ティクスはこれまで、主に電話・通信業界を外販のタ ーゲットとしてきた。
親会社向けの業務を通じて蓄積 してきた物流ノウハウを最大限に活用できると考えた からだ。
会社発足以来、外販営業部隊は電話・通信 会社に積極的にアプローチを試み、その結果、米国内 をはじめ中南米の電話・通信会社からの業務受託に 相次いで成功した。
現在、ベライゾンロジスティクスの最大の取引先は 米国南東部地域をカバーする電話・通信会社のベル サウスだ。
同社との取引額が売り上げ全体の半分以 上を占めているのだという。
物流センターでケーブル や補修部品を在庫管理し、オーダーに応じて工事現 場や営業所にジャストインタイムで供給する、という サービスを主に提供している。
ベルサウスとベライゾンは本業では完全にライバル 関係にある。
にもかかわらず、ベルサウスが物流のパ ートナーとしてベライゾンロジスティクスを指名した のは、アウトソーシングによって物流センターの作業 生産性、納品先の満足度などあらゆる面での改善が 期待できたからだ。
さらにベライゾンロジスティクス には労働組合がないため、物流センターで働く作業員 の人件費上昇を抑制できるというメリットがあったこ とも決め手になった。
徹底したオペレーション管理 ジョージア州スワニーに、ベライゾンロジスティク スが保有する延べ床面積約三万七〇〇〇平方メート ルの大型物流センターがある。
同社の施設の中で最大 規模を誇るこの拠点は、荷主企業七五社が入居する 汎用型物流センターという位置付けになっている。
し かし、その実態はベルサウス向けの専用センターに近 い。
センターでの全取扱貨物量の八〇〜九〇%がベル サウスと、そのグループ企業向けの業務で占められて いる。
センターが稼働したのは九七年だった。
当初は主に 親会社のベライゾン向けに利用しており、一部のスペ ースだけを外販に使っていた。
ところが昨年、親会社 がアウトソーシング先を変えため大幅に空きスペース が出てしまった。
ここを現在ではベルサウスのために 活用している。
約一一〇人が日々オペレーションに従事している。
週六日、二四時間の稼働で、一日を三シフト制で運 営している。
センターは入荷ドックと出荷ドックが左 右に分かれている「フロースルー型」となっている。
CaseStudy 特 集 《米国編》 21 DECEMBER 2002 同センターで特徴的なのは、WMS(倉庫管理シス テム)や「VISION」と呼ばれる基幹システムを 活用して、作業員の生産性をきちんと管理している点 だ。
例えば、ある作業員が一時間当たりの目標ピッキ ング数を下回った場合には、何が原因でそうなったの かを細かく調査する。
また、生産性が上がらない作業 員を再訓練するためのプログラムなども用意している という。
作業の生産性をここまで厳密に徹底するのは、決め られた目標値が達成できなかった場合、顧客企業から ペナルティーが課せられるルールになっているからだ。
「あえてそういう厳しい内容の契約を交わすことで、セ ンターの緊張感を保っている。
米国の物流業界では約 束を果たせなかった場合にペナルティーを支払うのは 常識」とIEスーパーバイザーを務めるフランシス・ アンタラ氏は説明する。
情報システムやマテハン機器の導入で投資は嵩んだ ものの、顧客企業の満足度や物流センターのサービス レベルは年々改善される方向にある。
例えば、ベライ ゾンロジスティクスが提供する物流サービスに対する ベルサウスの満足度は、二〇〇〇年度八八%だったが 翌二〇〇一年度には九〇%へと二ポイント改善した。
作業面でも二〇〇一年度、「ベンダーから商品を荷受 けしてから二四時間以内に顧客に出荷できる体制が 整えられたかどうか」という項目で達成率一〇〇%を 記録したという。
半減した売り上げを取り戻すのが課題 スワニーの物流センターでの作業フローは次のよう になっている。
まずは荷受け作業。
各部品ベンダーか らは事前出荷情報(ASN)が送られてくる。
それを 基にセンターではバーコードラベルを発行しておく。
作業員は商品入荷時に無線ハンディでバーコードをス キャンして検品。
ラベルに印字されているロケーショ ンにそれぞれ商品を格納する。
ピッキングと方面別仕分けの作業は商品特性に合 わせて、それぞれに処理している。
?ケーブルのよう にコイル状で重量のある商品はパレットに載ったまま の状態でフォークリフトを使ってピッキングした後、 直接出荷スペースまで運ぶ。
?ケース単位で動く商品 はフォークリフトでピッキングした後、コンベアに搬 送。
自動仕分け機を使って方面別に仕分ける。
?ネ ジなど細かい商品はデジタルピッキングシステムを活 用してピッキング。
商品の入ったプラスチックコンテ ナはケース商品と同様に、自動仕分け機を通じて方面 別に仕分ける――という三パターンに分かれている (写真参照)。
もっとも、こうしたオペレーションのレベルアップ は着実に進んでいるものの、物流センターは現在、フ ル稼働状態にはない。
ラックのスペースには明らかに余裕があるし、ほとんど動いていないマテハン機器も 随所に見られる。
担当者の強気なコメントとは裏腹に親会社の物流 を失った影響は決して小さなものではなかったようだ。
センターの出荷金額は二〇〇〇年度約七億ドル(約八 四〇億円)だったが、それが二一〇〇年度には約四 億ドル(約四八〇億円)へと大幅に減少してしまった。
同センターの当面の課題は携帯電話の物流で新た な顧客を獲得することだ。
もともと親会社向けに用意 していた携帯電話の物流システムを有効活用する狙い がある。
「もちろん顧客対象には親会社のベライゾン も含まれている。
いずれにせよ、一刻も早くセンター をフル稼働状態に戻したい」とアルトン・ボーナー倉 庫運営責任者の鼻息は荒い。
出荷前検品を行うスペース 部品など細かい商品はデジタル ピッキングで処理する

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