ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年12号
特集
SCMの現場 米国編 現場改善――ウォルト・ディズニー

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

DECEMBER 2002 18 リゾート全体を八センターでカバー 毎年、日本をはじめ世界各国からたくさんの観光客 が訪れるフロリダ州オーランドの「ウォルト・ディズ ニー・ワールド・リゾート」。
敷地面積一二二平方キ ロメートルはJR山手線の内側の約一・五倍。
カリフ ォルニア州のサンフランシスコ市とほぼ同じ大きさと いう世界最大のリゾート施設だ。
「マジックキングダム」や「アニマルキングダム」と いった四つのテーマパークのほか、ゴルフ場、ホテル、 ショッピングセンターなどで構成されている。
カップ ルや家族連れの子供たちが目立つ華やかなリゾート施 設の舞台裏を、高齢の現場スタッフを中心としたロジ スティクス部門が支えている。
テーマパークのアトラクションで使用するコスチュ ームや照明など機材の保管。
食材やナプキンなど消耗 材のレストランへの供給。
花火など危険物の管理――。
これらリゾート内の各施設の物流を敷地内に設けられ た八カ所の物流センターで処理している。
すべてウォ ルト・ディズニー社が自社運営する拠点で、現在計五 五〇人がオペレーションに従事しているという。
八つの物流センターのうち最も規模が大きいのは 「DC ―2」と呼ばれるセンターだ。
延べ床面積は約四 二万平方フィート(約一万二〇〇〇坪)。
テーマパー ク内の土産店など計三五〇カ所にミッキーマウスのぬ いぐるみやキーホルダーといったキャラクターグッズ を供給している。
取扱アイテム数は二万四〇〇〇S KU。
二四時間三六五日体制で、一日当たり約一万 ケースを出荷している。
中国や東南アジアなどから送られてくる商品を、生 産工場からのASN(事前出荷情報)を基にスキャ ン検品。
その後、フォークリフトを使ってラックに格 納する。
ケース単位で出荷する商品のピッキングは電 動台車を活用した「ピック・ツー・カート」方式で処 理。
ピッキング後、手作業で配送ルート別に商品を仕 分ける。
一方、キーホルダーやバッジなどピース単位 で動く商品は袋詰めや値札付けなどの流通加工を施 した後に出荷スペースまで搬送する。
店舗への配送は主に夜間と早朝に行われる。
ただし、 ドライバーが直接店頭まで届けるわけではない。
配送 は施設ごとに用意されているドロップポイント(集積 場)まで。
各店舗の販売員がドロップポイントに商品 を取りに行き、台車などを使って店頭まで運び込むル ールになっている。
作業員の主力は中高年 米国の一般的な物流センターに比べ、「DC―2」で 働く従業員たちの平均年齢は高い。
流通加工の細か い作業を行う女性。
そしてフォークリフトや電動台車 を操っている男性の年齢はいずれも四〇後半〜五〇 代後半だ。
このセンターで働き始めてから二〇年以上 というベテラン作業員が揃っている。
当然、会社側の人件費負担は重い。
作業員一〇〇 〜一五〇人程度で年間に約九〇〇万ドル(約一〇億 八〇〇〇万円)の人件費予算を計上している。
それ でも「こうしたベテランの中高年作業員たちが先頭に 立って現場改善に取り組み、物流コスト削減につなが る提案を次から次へと出してくれる。
決してコスト高 だとは思っていない」とブルース・テリー所長は説明 する。
実際、「DC ―2」ではQC活動が盛んだ。
荷受け・ 検品、ピッキング、配送などオペレーションごとにチ ームを編成し、週一回のペースで全員参加のミーティ ングを開催。
そこで各職場の問題点を洗い出し改善 CaseStudy 現場改善――ウォルト・ディズニー Walt Disney 世界最大のリゾート施設を、敷地内計8カ所の物流セン ターが支えている。
すべて自社でオペレーションをコントロ ールしている。
子供のはしゃぐ華やかな表舞台とは裏腹に、 ロジスティクス担当者の多くは中高年。
かなりの年輩者も 少なくない。
策を練る。
効果が期待できそうな提案であれば、すぐ に実行に移す、という手順で現場改善を進めている。
例えば荷受け・検品チームでは最近こんな改善に着 手した。
中国や東南アジアの生産工場から送られてく る商品のケース(段ボール)を逆さまにしてパレット に積み付けて納品するように指示。
それによって、作 特 集 《米国編》 19 DECEMBER 2002 業員が無線ハンディでバーコードを読み込むスピード を上げた。
従来はケースのバーコードの位置がバラバ ラな状態で納品されていたため、スキャン検品の作業 に時間が掛かりすぎていたという。
荷受け・検品チームだけではない。
配送チームでは ドロップポイントへの納品にカゴ車を使用していたの を、プラスチックパレットによる納品に改めた。
配送 トラックの積載効率を高めるためだ。
さらに、ピッキ ングチームではもともとパレット一枚積みだった電動 ピッキングカートを二枚積みできるように改良。
ピッ カーがラック〜出荷スペースを往復する回数を減らす ことに成功した(写真参照)。
自動化センターに刷新 現在の「DC―2」はマンパワーを前提としたオペ レーション設計になっている。
センターに導入されて いるマテハン機器はラックやコンベア程度。
地道な改 善を重ね、無駄な投資を抑えることで、ローコストオペレーションを実現してきた。
ところが、作業員の高齢化や取扱商品アイテム数の 増加などの影響で、現行体制の維持に限界が見えて きた。
ウォルト・ディズニー社では今後数年以内に 「DC ―2」のオペレーションを刷新。
自動仕分け機や 大型コンベアなどを採り入れた自動化センターに切り 替える計画を打ち出している。
「出荷精度と在庫精度を高めることが目的。
しかし、 一番の狙いは高齢化した従業員たちの作業負担を減 らすことにある」とブルース・テリー所長。
まずは従 業員の若返りを進めることでコストセーブを図り、マ ンパワー中心のオペレーション体制を維持しようとす るのが普通だが、「従業員は重要な資産である」と謳 う同社にはそういう発想はないようだ。
事例1 生産工場に対し、商品のケース(段ボール)を逆さま にしてパレットに積み付けて納品するよう指示。
作業 員が無線ハンディでバーコードを読み込みやすくした 事例2 配送トラックの積載効率向上のため、カゴ車の使用 を中止。
専用のプラスチックパレットを導入した 事例3 ピッキングカートを改良して動線の短縮化 を実現した 事例4 手書きのリストからフォークリフト搭載型の無線端 末を使う格納方法に改めた 「DC―2」での改善事例

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