ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2002年10号
メディア批評
静かに排除された長渕剛のアフガン反戦歌またも危うい体質を露呈した放送メディア

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

長渕剛という歌手に格別の思い入れがある わけではない。
しかし、彼の歌う「静かなる アフガン」がNHKなどで放送を自粛されて いると聞いて、俄然、興味が湧いた。
『放送レポート』の九月号に、この歌の「静 かな?排除〞」というレポートがある。
アメリカが育てたテロリスト ビンラディンがモグラになっちまってる ほら また 戦争かい 戦争に正義もくそもありゃしねえ この歌の通りではないか。
親子二代の?オ イル・プレジデント〞であるブッシュがやみ くもにイラクを攻撃しようとし、単純で無知 な小泉がそれに追随しようとしている時、 ?本 当の歌〞が流れては都合が悪いのだろう。
六月二四日の文化放送の深夜番組に出て長 渕はこう語ったという。
「もう深夜だからフランクに話したほうがい いけど、おれがむかしDJやってたころ、一 〇のうち六、七はバカな話をしてた。
でも、 いつも一つはテーマを考えて悩んだり、ハガ キを一枚取り上げて、何週間にもわたって答 えを模索したりとかね。
そういうのがラジオ の持つ魅力だよね。
最近そういうパーソナリ ティとリスナーとの結びつきみたいなものが だんだんなくなって、エンターテイメント性 ばかり追っかけて‥‥面白ければいい、笑え ればいいというのではなくて、中には何か一 つテーマを決めてやればいいと思う」 正面から拒否するのではなく、「放送上なじ まない」とかいう言葉で排除されてしまう。
森達也の『放送禁止歌』(解放出版社)に森 とデーブ・スペクターの対談がある。
「クリーデンス・クリアーウォーター・リバ イバルの『雨をみたかい?』って曲があった よね? あの曲のなかで歌われる雨は、実は ナパーム弾のことだと聞いたことがある。
ベ トナム反戦を歌ったもので、アメリカでも放 送禁止になったと聞いたのだけど?」 森がこう問いかけると、デーブは答える。
「ベトナム戦争を肯定する人は放送したくな いと考えるだろうし、実際そういう局やプロ デューサーはいたと思う。
でもその判断はあ くまでも、それぞれ表現する側の自由裁量に 任されている。
一九六〇年代から七〇年代、 ロックとドラッグが反戦思想と結びついて権 力側から規制された時代は確かにあったよ。
実際にジョン・レノンやドアーズのジム・モ リソンがFBIの取調べを受けたという記録 も残っている。
でも、だからといってドアー ズやビートルズの局が放送禁止になったとい うことじゃない」 フランスの大統領候補として話題を呼んだ 極右のルペンのように、いまや?アメリカのル ペン〞(ついでに言えば?日本のルペン〞は石 原慎太郎)と化したブッシュに大きな支持を 与えているアメリカだから、状況はあの当時 とは変わっているかもしれない。
しかし、アメ リカではなく、この日本で、なぜ、 「静かなるア フガン」が?排除〞されなければならないのか。
民間放送はスポンサーの圧力があるという が、では、NHKは国家がスポンサーなのか。
もちろんNHKは、公式的には、放送は控え ていない、と言っている。
この歌を「あえて、いまの時代状況の中で 唄おうという心意気を非常に高く評価したい」 と語るFM・NACK5常務の田中秋夫は、 また、こんな風にも話している。
「以前アフガニスタンで、祝砲を砲撃と間違 えて結婚式場に爆弾を落としたという米軍の 誤爆がありましたね。
たとえば、ああいうニ ュースがあった時に流すのは非常に説得力が あるし、自然ではないかと思う」 ブッシュはビンラディンやフセインを狂気 の人だとし、声高に非難する。
しかし、ブッ シュの方がよほど狂気の度は高いのではない か。
それにしても、長渕剛だけでも、こうし た歌を唄っていることに救われる。
後に続く 歌手は現れないのか。
佐高信 経済評論家 63 OCTOBER 2002 静かに排除された長渕剛のアフガン反戦歌 またも危うい体質を露呈した放送メディア

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