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「問屋不要論」はどうなった?

「問屋不要論」はどうなった?

 “問屋不要論”って、どうなったのでしょう。もう何十年も前から、折にふれて耳にするけれど、実際には問屋がなくなる気配などありません。不思議です。

 インターネットのビジネス利用、いわゆる「eコマース」が拡大すれば、既存の中間流通業者はいらなくなるーー パソコンとインターネットの普及が拡大した九〇年代の初頭から、そんな IT時代の“常識”が世間的に幅を利かせていました。ところが実際には、その後も中間流通業者はいらなくなるどころか、むしろバブル後の不況下にも増収増益を続け、事業規模を拡大している大手卸が日本には少なくありません。

 食品卸最大手の国分は直近の二〇〇一年一二月期決算で、経常利益こそ八期ぶりに前期比〇・八%の微減となったものの、売上高は前期比六・一%増の一兆八三五億円を確保。同分野二番手の菱食に至っては、一六期連続で増収増益を更新しています。同様に日用雑貨品業界ではパルタックとダイカ(あらた)の二大卸が、いずれも急速な勢いで事業規模を伸ばしています。

 こうした大手卸の業績を見る限り、中間流通業者はいらなくなるという“IT時代の常識”は、全く事実と反していると言わざるを得ません。インターネットは広く普及したにも関わらず、依然として商品分野ごとに大規模な中間流通業者、つまり問屋が存在している。それが日本の流通の実情なのです。

 過去を振り返ると、日本では流通改革の必要性が叫ばれるたびに、「問屋不要論」が浮上し、そしていつの間にか沈静化するという歴史が繰り返されてきました。メーカーの工場から出荷された製品が小売りの店頭に並ぶまでに、卸、2次卸、3次卸と多段階の中間流通を経由するのが日本の流通の特徴です。これに対して欧米では大手メーカーと大手小売業者が直接、取引するケースが少なくありません。

 流通な複雑なぶんだけ日本の流通は効率が悪いに違いない。日本でも中間流通をカットして、メーカーと小売りが直接、取引するようにすれば、最終的な商品価格を下げることができる。それが「問屋不要論」の理屈です。

 最初は昭和三〇年代のスーパーマーケットの台頭がキッカケでした。地元の商店街にある八百屋や魚屋、雑貨屋など、それまで小売業の中心的プレーヤーだった家族経営の小規模店に代わり、ダイエーやイトーヨーカ堂などの経営者たちが、米国で台頭したスーパーマーケットを日本に持ち込んだのです。

 既存の小規模店に比べ、スーパーマーケットは一店舗当たりの規模が大きく、しかも全国に多店舗展開するため、大きな購買力を持ちます。小さな卸と比べれば、よっぽど規模が大きい。そのため卸を通さず、メーカーから直接、商品を仕入れることができる。中間マージンを排除したぶんだけ小規模店より安く売りことが可能になる。「流通革命」と呼ばれたビジョンです。

 実際、その後、日本にもスーパーストアが増えていったのは皆さんご存知の通りです。ただし、日本の場合、欧米と違って、メーカーと小売りの直接取引による問屋の“中抜き”は起きませんでした。欧米ほど小売市場の寡占化が進まなかったことが一つの理由です。

 日本で最大手とされるイトーヨーカ堂でも、小売市場に占めるシェアは一〇%以下に過ぎません。これに対して欧米では大手のチェーン小売業数社で50%以上のシェアを持つほど寡占化が進んでいます。なかでもイギリスは大手五社で80%以上のシェアを握るほど寡占化しています。

 こうした欧米の大手チェーン小売業は、商品の大部分をメーカーから直接、仕入れるか、もしくは自社専用のプライベートブランド(PB)を企画する形で、中間流通を完全に排除しています。しかし、それほどのシェアを持たない日本のチェーン小売りが同じことをするのは難しい。現状のシェアであれば、むしろ店舗運営以外の業務を卸に任せることで、販売に特化したほうが得策というわけです。

 それでは今後も日本市場だけは、例外的に中間流通業者が生き残っていくのでしょうか。専門家の間では二つに意見が分かれています。一つは、遅ればせながら日本でも小売りの寡占化が進み、欧米のような問屋の“中抜き”が起こる。つまり流通革命による「問屋不要論」が近い将来、現実のものになるという見方です。ジャスコを全国展開するイオングループや、カルフール、コストコなど日本市場に新規参入した外資系大手チェーンストアが、そうした立場で経営を進めています。

 これに対して、卸チャネルを重用するイトーヨーカ堂や大手卸自身は、日本では欧米のような“中抜き”は起こらない、寡占化は限定的で今後も地域スーパーや商店街の小規模店は残っていく、という見方をしています。日本の消費者は昔から毎日、地元で買い物をしてきました。こうした習慣は今後も根強く生き続ける。いくら時代が変わっても、日本人の買い物が週に一回、まとめて大型店で買い物して自動車で持ち帰る欧米型のような形にはならないという発想です。

 どちらの見方が正しいのか。予断はできません。しかし、日本人の商習慣が日本の流通構造に影響を与えることは間違いなさそうです。その一方、世界規模のチェーン小売りが日本市場だけを素通りするとも考えにくい。結局、日本市場は欧米型と従来の小規模店乱立型の中間で落ち着くことになりそうです。

 つまり、問屋は生き残る。もちろん超大型チェーンは問屋を使わなくなる。しかし、中小規模の小売業者が存続する分、問屋は利用される。そうなると問屋は今後、中小の小売業者向けに自らの機能をシフトしていく必要が出てきます。「問屋不要論」は暴論であっても、問屋が自己変革することなしに昔のままで生き残れるわけではないのです。(2002/12執筆)

 


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