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今度の中国ブームは本物ですか?

中国進出ブームは本物か?


 取引先との雑談の席などで、このところよく中国ビジネスが話題になります。実際、日系企業の中国進出は大企業だけではなく、中小零細企業にまで拡がっていると聞きます。果たして今回の中国進出ブームは本物なのでしょうか。


 日本企業による中国進出ラッシュは、実は今回が初めてではありません。そのため中国経済の専門家たちは、二〇〇〇年以降の現在の進出ラッシュを「第三次ブーム」として位置づけています。中国政府が改革・開放路線に転換した七八年から八〇年代にかけての進出ブームが「第一次」。その後、トウ小平が「南巡講話」によって開放路線の促進をアピールした九二年からが「第二次」。そして今回が第三次というわけです。  このうち前回の「第二次ブーム」は、わずか数年で沈静化してしまいました。実際、九〇年代の後半には日本企業による対中投資が減少しただけでなく、在中日系企業の撤退・縮小が相次つぎました。各種の公式資料には、九七年に起きたアジア通貨危機と日本経済の低迷が、その原因として挙げられています。  しかし、実際に当時、中国ビジネスに携わっている人たちの多くが「日系企業が中国から撤退した本当の理由は何といっても儲からなかったからだ。儲かる見込みもなかった。結局、中国は日系企業からノウハウを奪うことしか頭にない。そのことがハッキリと分かってしまったことが撤退の原因だった」と振り返ります。  それが改めて息を吹き返すことになったのは、昨年十二月の中国のWTO(世界貿易機関)加盟が一つのキッカケになっています。これによって中国で各種の規制緩和が進み、過去に見られたような政府や自治体による不透明なビジネスへの介入が排除されること。さらには中国が今後、米国に次ぐ巨大市場として成長していくことなどを、多くの日本企業がビジネスチャンスとしてとらえたわけです。  実際、日本企業による対中投資は中国のWTO加盟が確実となった二〇〇〇年を契機として爆発的に拡大しています。九六年以降、減少傾向にあった投資件数が二〇〇〇年に前年比三八%増の一六一四件と逆転。投資の先行指標となる契約金額も同四二%増の三七億米ドル(四四四〇億円)と、大幅に前年を上回りました。  続く二〇〇一年には投資件数が二〇〇〇件を突破。契約金額は五四億米ドル(六四八〇億円)で四五%増。投資実行額は四六億米ドル(五五二〇億円)に上り、前年比五七%という飛躍的な伸びを示しました。今年に入っても増加傾向は続いており、件数ベースで前年比三割増し、金額ベースでも同一割増しのペースで推移しています。(日中投資促進機構資料より)  今日の中国が世界でも他に例のない成長市場であることは、今や誰の目にも明らかです。その規模も既にGDP(国民総生産)で世界第七位という地位にまできています。しかも今後、少なくとも北京オリンピックの開催される二〇〇八年までは、現在の経済成長が続くと目されています。  「中国ビジネスは儲からない」というかつての“常識”も既に過去のものになろうとしています。昨年、JETRO(日本貿易振興会)が実施した調査によると現在、中国に進出している日系企業のうち七五%は既に黒字化しています。国内市場の収縮に頭を悩ませている多くの日本企業の目に、中国が目の前に吊された“おいしい市場”として映るのは当然と言えるかも知れません。  しかしその一方で、中国ビジネスに精通した人ほど、いまだ悲観的な意見を口にするのも事実です。その一例として挙げられるのが、外貨持ち出しの問題です。現状の法制下では、いくら日系企業が中国で利益を上げても、それを日本に持ち帰ることができません。唯一、現地法人の配当という形でキャッシュを受け取ることはできますが、そこには厳しい制限がかけられています。事実上、儲けは中国に再投資するしかありません。  これに対して、外資系企業の拠点進出に当たっては必要な資材設備のほとんどを日本や欧米諸国から持ち込むことになります。つまり円やドルを投資する必要があります。中国がWEOに加盟したといっても今後、外資持ち出しの規制が撤廃されるという保証はありません。回収の見込みのない投資が果たして合理的判断と言えるのかどうか。意見の分かれるところです。  輸出入インフラにも、まだまだ不安を抱えています。港湾や道路網などのハード面では近年、急速に整備が進んでいますが、運営面での対応は後手に回っているようです。実際、外資系企業が集中する新センの通関拠点では、手続き待ちのトレーラーが長蛇の列を作っています。当然、その分だけリードタイムが長くなり、在庫を多く持たざるを得ません。こうした問題を嫌気してソニーは、いったん日本から中国にシフトしたビデオカメラの生産を、今年に入って改めて日本に戻すことを決定しています。  さらに中国の国内市場向けビジネスでは、現地に全国をカバーする中間流通業者が存在しないため、外資系企業が自分でチャネルを用意する必要があるなど、輸出入以上に課題が山積しています。今日の日本企業にとって中国は無視することのできない重要な市場です。しかし、中国ビジネスは、それほど甘いわけではないようです。(2002/9執筆)
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