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コーポレートブランドとは?

コーポレートブランドとは?


 いくら不景気であっても一部のブランド品は飛ぶように売れていると聞きます。そのせいか最近では「コーポレートブランド」が経営テーマとして、あちこちで採りあげられているようです。しかし、企業名をマネジメントするとは一体どういうことなのでしょうか。



 一般にブランドと言えばルイ・ヴィトンやグッチなどのファッションブランドを思い起こす人が多いと思いますが、今日その必要性が叫ばれているブランドマネジメントはもっと広い射程を持っています。一般消費財の製品名としてのブランドだけでなく、産業財や生産中間財などの企業名、すなわちコーポレートブランドまでその対象に含まれます。

 嗜好品ならともかく、産業向けに製品やサービスを提供している企業の名前をマネジメントするということになると、バブル景気の頃の「CI(コーポレート・アイデンティティ)」ブームを思い起こす方もいらっしゃるかも知れません。実際、バブル期には、一般消費者を相手にビジネスをしているわけではない企業の多くが、洗練されたロゴマークの作成やイメージ広告に大金を投じ、企業認知度と好感度の向上に躍起になりました。

 しかし、今日のブランドマネジメントは、その狙いも具体的なアプローチも、かつてのCIとは全く異なっています。CIがバブル期の人手不足を背景に、企業イメージの向上による大学新卒者の確保を主な目的としていたのに対し、現在のブランドマネジメントは企業の業績そのものを維持・改善することが直接的な狙いです。

 米インテル社が「インテル・インサイド(インテル・入ってる)」というキャンペーンを世界的に展開しているのはご存じでしょうか。インテルはパソコンの部品の一つであるCPU(中央演算装置)を製造するメーカーです。直接、彼らの顧客になるのはパソコンの組立メーカーですから、本来ならインテルは最終ユーザーに自分の存在が見えなくても一向に差し支えないはずです。

 ところがインテルは「インテル・インサイド」のコピーや宣伝画面を、各パソコンメーカーの広告費を一部肩代わりすることで、各メーカーの製品宣伝のなかで展開する、という変わったキャンペーンを実施しました。これによって消費者の目を、パソコン製品自体だけでなく、中身の部品にまで向けさせることが狙いでした。

 この戦略がズバリと当たりました。キャンペーンによって、CPUのブランドでパソコンを選ぶユーザーを生み出すことに成功したのです。その結果、インテルはそれまでの組立メーカーに部品を供給するだけの下請的な立場から抜けだし、組立メーカーとの関係を事実上、逆転させました。その後、インテルはパソコンの組立メーカーが激しい価格競争で収益の悪化に苦しんでいるのを尻目に、高い収益性を維持しながら急成長を遂げています。

 このCPUのケースでもそうですが、一般にトップブランドと二番手以降のブランドでは、同じ機能であっても価格に二割程度の差が付くと言われています。こうしたブランドの持つ力は、決算書の数字などの目に見える形では現れてきませんので「無形資産」と呼ばれます。市場が成熟化し、製品自体で差別化することが難しくなってくるに従って、無形資産はますます大きく業績に影響するようになります。

 そのため近年では企業の実力を評価する尺度として、各種の経営指標の他に、ブランド力を中心とした企業の無形資産を重視するようになってきました。さらに日本ではブランドの凋落から解散に追い込まれた雪印食品のようなケースが出たことで、リスク管理という側面からもコーポレートブランドに、にわかに注目が集まるようになりました。

 その具体的なアプローチとして、米国では「コンテンツ(Contents)と「コンテクスト(Context)」という二つの軸でコーポレートブランドを管理する方法が提唱されています。コンテンツとは、その会社が提供するサービスや製品の具体的な機能、つまり商品の「中身」です。一方のコンテクストとは、直訳すると「文脈」です。製品そのものではなく、その製品を利用することで得られる価値、ソリューションの総体と説明されます。

 レストランチェーンであれば、メニューの一品いっぴんの味と値段がコンテンツ。一方、メニューの構成や装飾、サービス、店で流れる音楽など、顧客がそのレストランで享受するサービスの総体がコンテクストになります。同じように自動車部品メーカーであればコンテンツは実際に納品している部品の品質・スペックと値段であり、組立メーカーへの技術協力や新たな解決策のアドバイス、信頼性など、顧客との「関係性」がコンテクストになります。

 このコンテンツとコンテクストのバランスは、顧客のニーズによって異なります。しかもニーズは常に変化していきます。現在はコンテクストの比率が大きくなる方向へのシフトが続いています。新製品であってもすぐに陳腐化してしまう今日のような時代には、その時々の商品の中身よりも、顧客との長期的な関係性のほうが大事だというわけです。

 こうした環境の変化に適応して、コンテンツとコンテクストのバランスを適切に管理していくことが、ブランドマネジメントの基本です。さらに、そこで定義されたブランドに基づいて企業のあらゆる活動を統制する。それが今日、有効とされているコーポレートブランド経営なのです。(2002/6執筆)

 

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