ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年8号
素朴な疑問
なぜITプロジェクトは失敗するのか

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

79 AUGUST 2002 みずほフィナンシャルグループのシステム障害が 世間を騒がせています。
これには私も随分、考えさ せられました。
金融分野に限らずSCMの分野でも、 大規模なシステム統合というのは、成功している例 が極めて少ない。
成功例としてマスコミで紹介され ているケースほど、実は上手くいっていない。
統計 をとったわけではありませんが、それが私の実感で す。
ただし、みずほのように失敗例が表に出てくる ケースは希です。
その意味で、みずほ問題はSCMを 考える上でも貴重な材料になると思います。
多くの人手と資金を投じた統合が、なぜ失敗して しまうのか。
やはり第一にはマネジメントの問題が あります。
システム間の連携や同業他社との協業、 親会社と子会社の統合などを進める場合には、最初 にプロジェクトが立ち上が ります。
ところが多くの場 合、プロジェクトのオーナ ーシップとリーダーシップ が曖昧になっている。
みずほの失敗も、この両方が 機能しなかったせいだと私は見ています。
オーナーというのは、そのプロジェクトの最終的 な責任者です。
文字通りのCIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)です。
これに対して、プ ロジェクトチームの具体的な活動をひっぱる指揮官 がリーダーです。
この二人が十分に役割を果たさな い限り、プロジェクトは成功しません。
実際、問題が起こったケースを検証すると、往々 にしてオーナーが現場の状況を把握していない。
大 組織になればなるほど、その傾向が強くなります。
とりわけSCMで重要になる物流現場の状況ともな ると、オーナーサイドはかなり軽んじているのが実 情です。
SCMやロジスティクスの失敗は経営的に命 取りになりかねない重要な要因であるにもかかわら ず、それがまだ十分に理解されていないのです。
プロジェクトを成功させるには、チーム編成に当 たって優秀な人材を最優先で投入する必要がありま す。
さらにチームリーダーにしかるべき役職を与え、 権限を委譲しなければなりません。
強いオーナーシ ップがあって、初めてそれが可能になります。
オー ナーシップが不十分だと、プロジェクトチームは機 能しません。
このことが何より大事なポイントです。
次にリーダーシップについて。
ここには評価の問 題が横たわっています。
そもそもSCMの成功と失敗 はどこで判断すればよいのでしょうか。
誰が見ても 分かる指標としては、業績や利益、ROI(Return On Investment:投下資本利益率=(経常利益+ 支払い利息)÷(借入金+社債発行額+株主資本)) などがあります。
いくら最新のシステムを導入した といっても、基本的な経営指標にその効果が現れて こないと成功したとはいえません。
従ってマクロ的 な指標はハッキリしています。
一方、SCMプロジェクトには、残業時間やミスが 減った、倉庫がキレイになったなど、現場レベルで 確認できるミクロ的な判断基準もあります。
つまり 経営レベルと現場サイド では目に見えるモノサシが ある。
問題はその中間層 です。
ミドルのための管理 指標が現状では不明確なままになっています。
そのためSCMが成功した、失敗したという判断を、 現場か、もしくはいきなりトップレベルで下さざる を得なくなってしまう。
いくら今日のミドルが経営 的な視点を求められているといっても、いきなり ROIをプロジェクトチームの活動指標にするのは飛 躍があります。
しかし、あまり現場べったりの数字 でもカバーできない。
この問題をクリアすることが、プロジェクトを成 功に導くカギだと私は考えています。
まずミドルマ ネジメントのための適切なインデックスを準備する。
これによって、段階的に成否を確認しながらSCMを 進めていくことができるようになる。
その結果とし て、活動成果が最終的な業績となって現われる、と いう一連の流れができ上がるわけです。
なぜITプロジェクトは失敗するのか プロジェクトマネジメントのツボは オーナーシップとリーダーシップ たなか・すみお 物流企業系シス テムハウスを経て、91年に独立。
エ クゼを設立し、社長に就任。
製造・ 販売・物流を統合するサプライチェ ーンシステムのソリューションプロ バイダーとして活動。
2001年10月 に「フレームワークス」に社名変更 フレームワークス 田中純夫社長

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