ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年6号
素朴な疑問
和製ソフトVS輸入ソフトの優劣は?

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JUNE 2002 68 トを作ったり、簡単な会計ソフトのプログラムを組むことができるようになってきました。
そこからプログラマーならぬ「アマグラマー」 という言葉まで流布しました。
つまり、プログラムを作ることので きる層が飛躍的に広がったのです。
そうした変化が日本では八〇年 代に一気に進みました。
ただし、物流や流通システムに関しては、それよりもやや遅れて、 日本の場合、八〇年代後半から九〇年代初頭にかけて、POSシス テムが爆発的に普及したことが契機になりました。
セブン ―イレブン を始めとするコンビニエンスストアがPOSをベースにした情報シ ステムを構築したことが出発点になっています。
これが物流にも大きな影響を与えました。
コンビニに納品するた めに、バーコードの使用が求められるようになったのです。
コンビニ と取引するためにメーカーや卸は、商品にバーコードを印刷し、そ れを処理する物流システムを構築することを迫られたわけです。
こ うした動きに合わせて、たくさんの物流ソフトが日本で開発される ようになりました。
コンピュータも含めて、これらの一連の技術はもともと欧米から 輸入されたものです。
ただし、日本の場合には留意しなければなら ない点があります。
それはPOSでもバーコードでも、日本では欧 米とは異なる独自の使われ方をしている点です。
実際、米国から入 ってきたセブン ―イレブンが日本で独自の発展をして、最終的には米 国のセブン ―イレブンを救済するまでに成長した背景には、POSシ ステムの利用に対するアプローチの違いがあります。
米国でPOSが開発された最大の狙いは、従業員による盗難の防 止や計算のミスをなくそうというものでした。
しかし、日本の場合 はもともと米国とは比較にならないほど従業員による盗難や計算ミ ロジスティクス関連の様々な輸入パッケージソフトが日本でも販 売されるようになった。
同じ分野の和製ソフトと比較して、輸入ソ フトには果たしてどんなメリット・デメリットがあるのか。
「和製ソフト VS 輸入ソフト」の問題を考えるには、コンピュータ が開発されてきた歴史を簡単に抑えておく必要があるでしょう。
そ もそもコンピュータは、従来なら算盤を使っていたような仕事を機 械に置き換えるところから始まっています。
当初は大量の金勘定や、 構造設計などの数値計算を必要とする産業だけで使われていて、そ の使われ方も電子計算機に過ぎませんでした。
その後もしばらくは 給与計算や税務、売上げの集計などの事務処理がコンピュータの仕 事でした。
当時はそれを「MIS(Management Information System )」と呼んでいました。
このMISの時代には、アプリケー ションソフトは世界のどの国でも基本的に国産であり、独自開発で した。
コンピュータの基本ソフトであるOS(オペレーション・シ ステム)は世界共通でも、その上に載せるアプリケーションは各社 でそれぞれ作るしかなかった。
日本の会社であれば日本人が作るし かありませんでした。
税制や会計の仕組み自体が国や会社によって 違うので必然的にそうならざるを得なかったのです。
大型コンピュータがオフコン(Office Computer )になり、さらに パソコンの時代になって、こうした環境に変化が訪れました。
パソ コンを始めとした小型のコンピュータで業務用のアプリケーション・ プログラムが開発できるようになったことで、従来は大企業のIT 部門やITの専門企業でしかできなかったシステム開発が、中堅企 業や小さなソフトハウスでも可能になったのです。
アマチュアでも技術レベルの高い人であれば、自分でゲームソフ フレームワークス田中純夫社長 和製ソフト VS 輸入ソフトの優劣は? 69 JUNE 2002 明らかに階層のギャップがありました。
経営の統合をテーマとして 登場したERPと、それまで現場レベルで積み上げてきたソフトと の間にミッシングリンクとも呼ぶべき隙間が生じるようになってし まったのです。
それを埋める形で開発されたのが、WMS(Warehouse Management System ) や T M S ( Transport Management System )などのSCE(Supply Chain Execution )、そしてSCP (Supply Chain Planning )などのパッケージソフトです。
これらのパッケージ開発では明らかに欧米、とくに米国が先行しました。
個別のシステムをみると日本は名人芸とも言えるような優れたシ ステムを開発しています。
しかし、誰かが経験したことを汎用化し、 パッケージ化するという部分では、米国はとても優れている。
それ が現在、日本にも輸入されるようになっているわけです。
そこで問題になるのが、果たして欧米のオペレーションをベース にしたソフトが日本の環境に適応できるのか という点です。
事実この部分では、いまだに 国産ソフトに分がある。
なかなか差は埋まっ ていません。
しかし、逆に国産ソフトにはドメ スティックにはまり過ぎてしまって、新しい発想ができない、グロ ーバルな仕組みと連携しにくい、といった問題があるのも事実です。
現状では一長一短があるわけです。
今後は欧米のソフトがどこまで現地化できるか。
そして国産ソフ トがどこまでグローバル化に対応できるのか。
この二つのせめぎ合 いという形になると思います。
ただし現場のオペレーションは、ど うしてもその地域の商慣習の影響を受けるため、経営レベルのレイ ヤーほど普遍化できません。
WMSの機能は、大きく整理すると 入庫と出庫、そして振り分けの三つに集約されます。
それ自体は 世界共通ですが、実際のオペレーションは千差万別です。
少なくと も現状では、世界中全く同じ仕組みでオペレーションを動かすとい うのは現実的ではない。
そのためERP同様の極端な寡占化がW MSやTMSなどの分野でも起きるとは今後考えにくいと思いま す。
(談) スが少ない。
それでもPOSが広く普及したのは、米国とは違う使 われ方をしたからです。
つまり従業員の不正やミスを管理するので はなく、POSによって集めたデータ自体を、どうやって活用する かというところから日本のPOSはスタートしたのです。
そうした形でのPOS開発で、日本はむしろ先行者だったと思い ます。
もちろん現在は米国でもPOSデータをSCMに積極的に活 用しています。
むしろ日本より進んでいる部分も多いけれど、彼ら はPOSを導入してデータがたまってきたところで、始めてデータ の活用に目を付けるというアプローチでした。
同じことが物流のバーコード活用にもいえます。
バーコードの仕 組み自体はとても簡単なものですが、その登場は物流管理上のエポ ックメーキングだったと言えます。
しかもバーコード活用は日本で 独自の発展を遂げました。
バーコードもまた欧米では間違いをしな い、不正をさせないことが当初の狙いでした。
ところが日本では物 流においても、間違いや不正は圧倒的に少な かった。
昔ながらのリストピッキングでも、か なり正確に処理されていました。
そのため日本では、単に正確性を高めるだ けでなく、もっと違ったバーコードの活用方法があるはずだと当初 から指向されていました。
私自身八〇年代の後半から九〇年代の初 頭にかけて、バーコードを使った試行錯誤を経験しました。
無線シ ステムの開発、自動倉庫やロボットの活用、POSとの接続など、 時には定規でバーコードを一本一本測って、様々な応用ソフトを作 ったことを覚えています。
そうやってバーコードを活用した小さなソフトが日本でもたくさ ん開発されました。
ただし、それはあくまでもオペレーション・レベ ルでの話であって、経営層まで届くものではありませんでした。
経 営者にとっては、あまり関心のない話だったのです。
日本の経営層 にとってソフトウェアが本格的な関心事になったのは、やはり九〇 年代中頃にERPが登場してからです。
基幹業務を統合するERPの導入は、まさしく経営マターでした。
そのERPと、それまで日本人が作り上げてきたソフトウェアには たなか・すみお 物流企業系シス テムハウスを経て、91年に独立。
エ クゼを設立し、社長に就任。
製造・ 販売・物流を統合するサプライチェ ーンシステムのソリューションプロ バイダーとして活動。
2001年10月 に「フレームワークス」に社名変更 POS、そしてバーコードシステムは 日本市場で独自の発展を遂げました

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