ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2002年4号
メディア批評
なぜかタイミングよく騒がれる不審船小泉純一郎こそ平和主義への抵抗勢力

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

北朝鮮の脅威といったことが喧伝される。
「悪の枢軸」などと決めつけてそれを煽るアメ リカが拍車をかけている。
しかし、北朝鮮か ら見たら、恐いのはむしろ、アメリカとその 尻馬に乗る日本だろう。
『ダカーポ』の三月六日号でジャーナリスト の魚住昭が興味深い発言を引いている。
いわゆる不審船事件は、最初、一九九九年 春に起こった。
時あたかも、ガイドライン関 連法案の国会審議中である。
それから二年半ほど経った昨年秋、当時の 官房長官、野中広務がこんな打ち明け話を披 露したという。
「私は、世の中に明らかにしてませんが、官 房長官在任中に北朝鮮の不審船事件に遭遇し、 小渕総理の許可を得て史上初の海上警備行動 を海上自衛隊に出した張本人です。
けれども あの時、北朝鮮からの麻薬を運ぶ船は常に日 本に来ていたと思います。
後から考えますと、 なぜあの時に発覚したのか、未だに不思議で なりません。
あの時は防衛庁の調達業務の不 祥事が次から次へと出てきて、ガイドライン 法案が国会審議を混乱に陥れている時期でし た。
日本人はあの不審船で一挙にそういう問 題から目を閉じてしまうことになりました」 率直な告白だろう。
魚住の指摘する如く、 「偶然にしてはあまりにタイミングが良すぎ る」のである。
東京国際大教授の前田哲男によれば、北朝鮮の船が近海に出没しているのは、何十年も 前からの常識だった。
見つけるたびに日本側 は武力を使わずに追い払っていたのである。
「それが突然、九九年になって計画射撃し、 爆弾まで投下したのだから不自然ですよね。
それに二つの事件(二度目は昨年暮れ)はい ずれも情報ソースは米軍の偵察衛星で、米軍 から防衛庁に情報が入って最後は海上警備の 不十分さを見せつけて終るという共通点があ る。
世論操作のために誰かが仕組んだ疑いは 十分あると思います」(前田) 小泉純一郎はこうしたことを考えて行動す る人間ではない。
とにかくイケイケ型で、有 事法制の成立にもご執心である。
やるべきことをやらず、やらなくてもいい ことに血道を上げる。
野中は?抵抗勢力〞の 代表視されているが、日本国憲法の平和主義 にとっては、小泉こそがそれを崩そうとする 抵抗勢力である。
とにかく管理強化が好きなタカ派の小泉は 住民基本台帳とセットになった個人情報保護 法も成立させようとしている。
個人情報保護 法とは名ばかりで、中身は権力者保護のスキ ャンダル暴露封殺法である。
二月二三日、ジャーナリストの桜井よしこ (「国民共通番号制に反対する会」代表)に誘 われて、東京は数寄屋橋で、住民基本台帳ネ ットワークシステムの廃止を訴える該当演説 とビラまきをしたが、俳優の三田佳子や辰巳 琢郎も参加したこともあって、翌日付の『朝 日新聞』はこう書いた。
〈政府は「全国どこでも住民票の写しが取れ るようになる」など利点を強調しているが、 「個人情報の国家管理につながり、流出・流用 の懸念もある」との反対論も根強い。
評論家の佐高信さんは「桜井よしこさんと 私が共通の立場で反対するということはほと んどないが、とんでもない制度なんです」と 語り、聴衆を笑わせた〉 保守派の桜井が先頭に立ったこともあって、 『週刊新潮』までが、この日の行動を取り上げ た。
しかし、有事法制反対では、桜井と私は 共闘できない。
盗聴法反対運動などでも、いわゆる保守の 人間が加わっていないと、メディアはあまり 報じなかった。
メディアにとっては、自らの 生殺与奪の権を政府に売り渡すことであるの に、個人情報保護法反対のキャンペーンを張 れないのである。
メディアがどっぷりと保守 になったからだろうか。
佐高信 経済評論家 65 APRIL 2002 なぜかタイミングよく騒がれる不審船 小泉純一郎こそ平和主義への抵抗勢力

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