ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年2号
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日立物流

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

FEBRUARY 2002 66 モノレール譲渡は得策 二〇〇一年四月、日立物流は「改 革とスピード」を経営姿勢とした中期 経営三カ年計画をスタートさせた。
そ の中で、ロジスティクス・ソリューシ ョン・ビジネスやグローバルビジネス を主軸にした受注の拡大、管理部門 の生産性向上やシステム投資推進に よる企業体質の強化を重点施策に掲 げている。
経営目標としては、二〇〇 四年三月期の連結売上高三五〇〇億 円、連結経常利益一〇九億円を打ち 出している。
既に発表済みの二〇〇一年九月期 決算は、国内物流事業および国際物 流事業の不振が響き、連結売上高一 三五一億円(前期比二・七%減)、連 結経常利益二七・九億円(同二六・ 八%減)の減収減益となった。
この スタートでの躓きによって、同社が経 営計画の見直しと、より踏み込んだ リストラ策の実行を迫られることにな るのは必至だ。
スローガンでもある 「改革とスピード」を貫かなければ、経 営目標は単なる努力目標に終わって しまう可能性もある。
目標達成の確度はどのくらいか。
そ れを測るには五つのポイントがある。
?日立製作所グループ向けビジネス の収益動向、?一般顧客向けのシス テム物流の進捗状況、?航空フォワ ーディングなど海外関連事業の動向、 ?間接部門のコスト管理施策、?連 結関係会社の取捨選択(リストラ)状 況――である。
このうち、直近では? の連結関係会社のリストラが実行さ れた。
昨年末、同社は一〇〇%連結子会 社である東京モノレールの株式譲渡 を発表した。
譲渡先と譲渡比率はJ R東日本に七〇%、親会社である日 立製作所に三〇%。
譲渡金額は一〇 〇億円で、今年三月末までの間に株 式異動が行われる予定だという。
振り返れば、東京モノレールは一九 五九年、東京オリンピックの開催(一 九六四年九月)に際して発足した。
都 心(浜松町)と東京国際空港(羽田) を結ぶ交通機関として、長年にわた ってその役割を果たし続けてきたが、 七八年に成田空港(新東京国際空港) が開業、さらに九八年には京浜急行 電鉄の羽田空港乗り入れなどもあり、 近年ではかつての?あこがれのモノレ ール〞という様相も薄れ、業績も下 降傾向にあった。
東京モノレールの二〇〇一年三月 期の売上高は一五五億円、経常利益 一・五億円。
これに対して、総資産 六八二億円、純資産七三億円という バランスシートだった。
何らかのテコ 入れ策が必要だと以前から指摘され てきた会社だっただけに、今回の事 業譲渡はポジティブな判断だったと いえるだろう。
?鉄建公団に対する 未払金五二五億円を含む約七〇〇億 円の総資産圧縮で、資産効率の改善 が図られる、?モノレール事業の譲 渡によって、日立物流はコアビジネ スである物流事業に専念できる――か らだ。
ただし、今回の東京モノレールの事 業譲渡だけでは物足りない面もある。
連結子会社である日立千葉エレクト ロニクス、日立トラベルビューローな ど本業以外の会社についても、同様 の対処が早急に必要になってくるだろ う。
そのほか四つのポイントを順に見て みよう。
まず第一に、日立製作所グ ループ向けビジネスだが、親会社日立 製作所の電子デバイス事業に代表さ れるITや半導体関連部品等の輸出 第11回 日立物流 日立物流は昨年四月、中期経営三カ年計画をスタートさせた。
3PL事 業であるシステム物流や国際物流の分野での業績拡大を目指す一方、コス ト管理の徹底を進めていくという。
外販比率が高まっているとはいえ、同 社には依然として日立製作所グループの物流子会社であるという色合いが 濃い。
日立グループとの関係を再考すべき転換点を迎えている。
北見聡 野村証券金融研究所 運輸担当アナリスト 年三月期の国際関連の売上高は五七 八億円(うち中国関連は一四七億円) だったが、二〇〇四年三月期までに 七一七億円(うち中国関連二〇〇億 円)にまで拡大させるという目標を掲 げている。
最後に、コスト管理施策だが、同 社は先述したように国際物流関連の 要員補強を進め、営業力強化を図る 方針だ。
しかし一方で、本社人員を 削減し、管理部門一人当たりの売上 高を増加させるとともに、グループ内 のパート社員比率を二〇〇一年三月 期の三二%から、二〇〇四年三月期 には四八%程度まで高め、固定費の 変動費化を進めるという。
輸送環境 は予想以上に悪化しており、こうした 施策をこれまで以上にスピーディーに 進める必要があるだろう。
最近、日立グループの経営に関し て、収益改善シナリオが見えないとい う指摘が少なくない。
そのため、グル ープ各社に対する株式市場の関心が 薄くなっているといわれている。
日立 物流も例外ではない。
実際、子会社 のリストラ施策の発表があったが、株 価の反応は鈍かった。
脱・日立グル ープか、それとも日立グループの抱え 込みか。
果たして現在のままの資本構 成で問題はないのか。
同社は転換点 を迎えている。
経営者の今後の舵取 りに注目していきたい。
67 FEBRUARY 2002 向け商品の生産低迷が影響し、減収 を余儀なくされているのが実情だ。
単 独ベースでは、日立グループ向け売上 高は同四・〇%減。
収入構成比は前 年度が四六・〇%だったが、二〇〇 一年九月期は四四・九%にまで低下 している。
通期ではさらに落ち込み、 収入構成比は四〇%程度まで低下す ることが予想される。
中期計画では、同社のロジスティクスソリューショ ン統轄本部が日立 製作所の流通シス テム事業部や産業 システム部と連携 を取りながら、3 PL事業を拡大さ せる方針を打ち出 している。
ただし、 同社は日立グルー プ各社の物流全体 を担っているわけ ではない。
日立グ ループ内における 事業拡張のチャン スは少なくないは ずである。
日立グ ループ内の物流子 会社等の統廃合も 含めて、総括的に 旗を振る役割が必 要なのではないか と感じている。
次に、一般顧客 向けビジネスだが、 この分野は比較的 堅調に推移してい る。
「システム物流」事業の売上高は 二〇〇〇年九月期が二九九億円だっ たが、翌二〇〇一年九月には三二二 億円にまで増加した。
流通、情報通 信、医療福祉関連業界など成長分野 に属する企業からの新規受注に成功 しており、今後もこれらの分野を攻め る方針だという。
選別受注が当面の課題 二〇〇四年三月期、システム物流の売上高は九六〇億円(二〇〇一年 三月期は六一六億円)を計画してい る。
同社のノウハウを駆使すれば、目 標は達成可能な数字だ。
しかしなが ら、一般顧客向けビジネスという観点 からすれば、重量物輸送などシステム 物流以外の分野で、選別受注や生産 性改善をどれだけ進めることができる かが当面の課題となるだろう。
続いて国際物流だが、今年の春先 から夏場頃までは苦戦が続くだろう。
日本の輸出産業の業績不振によって、 航空貨物などの輸送数量自体が減退 しているからだ。
ただし、中国のWT O加盟などもあり、中国関連の貨物 の荷動きは中期的には大きな成長が 見込まれる。
実際、日立物流でも国際物流の分 野は短期的には苦戦は続くが、長期 的には有望であると見ており、要員の 補強などを目論んでいる。
二〇〇一 日立物流の過去5年間の株価推移 (円) 出来高

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