ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年1号
特集
世界水準のロジスティクス 最も小さな企業でさえグローバル化する

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JANUARY 2002 26 情報・金融機能を統合する ――UPSは極めて大規模な組織であるにもかかわら ず、これまでビジネスモデルを柔軟に変化させ続けて きました。
それが可能だったのはなぜですか。
ご存じの通り、当社の企業文化はとてもユニークで す。
当社の創業は九七年前のことですが、二年前に株 式を公開するまではずっと非公開企業でした。
九九年 に初めて株式を公開しましたが、市場に放出したのは 全体の株式のうち一〇%に過ぎません。
残りの九〇% の株式の大部分は依然として当社の取締役たちが保 有しています。
取締役が会社のオーナーという状況だと、経営のメ ッセージや方向転換、ビジネスモデルの変換といった ことが非常にクリアになります。
いったん方針が決ま れば、全員が集中して全力を尽くします。
こうした企 業としての特殊性がビジネスモデルの変化をスムース に進めさせたという側面はあると思います。
――現在のUPSは国際宅配会社から、何の会社に 変化しようとしているのですか。
二つの答えがあります。
一つ目は単なるスモールパ ッケージサービスの会社だというイメージを払拭する ことです。
例えば企業Aが企業Bに何かを送るとしま す。
そこには単にモノが動くだけでなく、情報のやり 取りや金融決済などの行為が当然、発生します。
従 来、我々はモノが動く部分について、つまりロジステ ィクスのサービスしか提供できませんでした。
しかし、 これからはモノの移動に付随する情報、金融の部分も 含めた複合的なサービスを提供する企業になっていき ます。
二つ目は本当の意味でのグローバル企業になること です。
課題はアジア地区の基盤整備。
この地域に関し ては二〇〇二年から四年間をかけて、これまで以上に 経営資源を投下し、営業展開を強化していくつもりで す。
――二つ目のアジア戦略についてですが、具体的には どのような策を今後打ち出していくつもりなのでしょ うか。
まず二〇〇二年四月に、フィリピンのクラーク空港 に新しいハブ拠点をオープンさせる予定です。
このハ ブ拠点の稼働によって日本を含めたアジア地区の顧客 に対するサービスレベルは飛躍的に向上します。
具体 的にはこれまでよりも遅い集荷時間設定が可能になる など、利便性が高まります。
もちろん、これに合わせ てアジア地区への航空機投入台数も一気に増やす計 画です。
アジア地区の営業体制を強化するタイミング は今がベストだと認識しています。
――現在、物流サービスのグローバル化と3PL化は、 同時に進行していると解釈していいのでしょうか。
その二つは同時に進めなければならないテーマだと 思います。
今、何が起こっているか。
小さな企業でさ え、グローバル化を迫られているのです。
例えば、テ ーブルの上にあるこの小さなコースターを作っている 日本のメーカーは現在、シンガポールやオーストラリ ア、アメリカなどにも顧客を持っている可能性があり ます。
しかし、一〇年前はそうではなかった。
全ての 顧客が国内にいたのです。
国内だけでビジネスをしていて何の問題もなかった のに、それが今では大きな頭痛の種を抱えることにな ってしまった。
オーストラリアに輸送しなければなら ない。
どうしたらいいだろう。
請求書も違う、梱包方 法も異なる。
これがグローバリゼーションです。
最も 小さいベンダーでさえグローバル化に対応する必要が あるのです。
「最も小さな企業でさえグローバル化する」 世界最大の物流企業であるUPSは宅配会社から、情 報、金融機能などを含めた複合的なロジスティクスサ ービスを提供する企業に生まれ変わろうとしている。
相次ぐ企業買収によって機能強化を図ると同時に、新 商品の開発を進めている。
今後4年間はアジア地区の 基盤整備に積極的な投資を行うという。
UPSヤマトエクスプレスジェームス・R・オーエンス代表 第4 部外資系物流業者の日本展開 27 JANUARY 2002 当社がグローバルなネットワークの構築を急いでい るのは、そうした顧客をサポートするために不可欠だ からです。
我々がネットワークを持たなければ顧客は 違うプロバイダーを見つけます。
そうした状況にはし たくない。
当社はあらゆるサービスを顧客に提供でき るプロバイダーになりたいのです。
私が二五年前に当社で働き始めた頃、UPSは基 本的にドメスティックな会社でした。
それが今や、サ テライトやホテルなど、様々な事業に着手しています。
航空会社としても世界第九位の位置にいる。
入社当 時にそんな計画はまったくありませんでした。
このよ うに時代も顧客のニーズも変化しているのです。
企業 にはそれに対する適応力が問われています。
止まるこ とは許されない。
常に成長していくことが求められて いるのです。
――UPSは非常に統制の厳しい組織だと言われてい ます。
それには一長一短あって、例えば日本のマーケ ットに適応するといったローカリゼーションの面では 課題になるのではないでしょうか。
そのことはUPSにとっても、そして私個人にとっ ても最大のチャレンジになります。
UPSは二〇〇一 年、フレキシビリティの向上を図るため、企業買収を 相次いで実施しました。
まず三月に郵便物やファクス の受け取り、コピーサービスや文具販売などをフラン チャイズ方式で展開するMBE(Mail Boxes Etc )を 買収。
続いて六月には世界約二〇〇カ国でビジネスを 展開している航空フォワーダーのフリッツを傘下に収 めました。
一連の企業買収によってUPSにはなかった企業 文化が社内に取り入れられました。
これまで以上にフ レキシビリティは増したと自負しています。
柔軟な組 織を維持していくのは重要ですが、同時にとても困難 なことでもあります。
しかし、ビジネスを成長させる ためには不可欠な要素だったのです。
――外部の血を入れたことによる相乗効果は実際に生 まれていますか。
新しいサービスが続々と生まれています。
二〇〇二 年の春頃には「インポート・レート・サービス」を開 始する予定です。
このサービスは例えば日本の顧客企 業が商品を輸入する際、他国のレートをベースにして ロジスティクスのサービスを利用できるというもので す。
――二〇〇一年の一〇月に日本に進出している外資系 キャリア三社(DHL、TNT、FedEx)と 「 Japan Express Association (JEA)」を組織しま したね。
改めてその狙いを説明して下さい。
JEAはもしかしたら日本の市場やコミュニティー にとっては目新しいものだったかもしれません。
しか し、我々としてはエクスプレス企業としての声、明確 な考えを一つにまとめる必要性を感じたので団体を設立したのです。
航空貨物フォワーダーは我々の業務と 近いことをしていますが、基本的なサービスは別物で す。
エクスプレス・キャリア以外には語れないことも あるのです。
JEAのキートピックスは非常に重要で、例えば通 関手続きなどがそれに当たります。
我々の荷物はとて も時間に敏感です。
スピードが命であり、かつ正確さ も求められます。
日本の税関は我々が専門とするエリ アに関して、もう少し耳を傾けて欲しい。
我々は日本 のコミュニティーにサービスを提供しているのです。
良いサービスを提供できなければビジネスをたたむし かありません。
今後、税関と話し合うべきテーマはい くつかありますが、それは我々のためだけでなく、日 本のコミュニティーのためでもあるのです。
UPSは2002年春、「インポート・レート・サービス」を開始する

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