ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年7号
特集
物流子会社の不安 調達から静脈まで物流は全部やる

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JULY 2003 16 商物分離促し売り上げ倍増 ――物流子会社社長としての任期が一〇年を超えまし た。
その間に売り上げをほぼ倍増させています。
その 理由を教えて下さい。
「実は社長に就任する前、私はリコー本体の取締役 としてリコーロジの社外取締役を八年間に渡って兼務 していました。
しかし、その頃は年一回の株主総会に 顔を出すくらい。
正直な話、この会社がどんな仕事を しているのか、まったく理解していなかった。
リコーの 看板を掲げているのだから、リコーの物流の仕事は一 手に引き受けているのだろう。
その程度の認識でした」 「しかし、実際にこちらにきてとても驚いた。
当時 リコーロジの仕事はリコーの工場の構内物流、そして 工場から販社倉庫までだけ。
そこから先、つまり販社 からエンドユーザーまでの配送はノータッチだった。
その部分は各地の販社が地場の物流業者に委託する か、もしくは販社が自分で処理していた。
そこで私は 就任後すぐに各地の販社に出向き、この部分の仕事を 当社に任せてくれないかと働き掛けていったんです」 ――販社の反応は? 「グループの方針として物流子会社を用意しておき ながら、それを活用しないのは明らかにおかしいと訴 えました。
が、現実はそんなに甘くなかった。
販社は 『今の業者よりも安くてサービスが良ければ、リコー ロジに任せても構わないよ』という態度だった。
言わ れてみれば確かにその通りです」 「それならばと、各県に最低一カ所、大都市圏には 五〜六カ所、全国で計八〇カ所の物流拠点を設置す ることにしました。
トナーなどのサプライ品は八〇拠 点から、そしてコピー機などのマシンはこのうち一七 拠点から、販社を通さずにエンドユーザーに直送でき 「調達から静脈まで物流は全部やる」 調達から販売、使用済み製品の回収リサイクルに至るまで、親会 社のサプライチェーンで発生する全ての物流機能をカバーする方針 を打ち出している。
そこで蓄積したノウハウを海外の現地法人にも 提供していくことで事業拡大を図る。
河路鎰夫 リコーロジスティクス社長 る体制を作ったんです。
そうやって絶対安くなる体制 を組んだ上で販社を説得した。
商物分離を進めて、営 業マンを販売活動に専念させるべきだと訴えた。
最初 は大消費地の販社から口説いて回りました。
彼らが当 社を使うようになれば他の地域は自然となびいてくる と目論んだのです」 ――それが成功して売り上げが急増したわけですね。
「私が当社に赴任した時点で、販社のマシン関係の 物流はリコー販社全体の一五%ぐらいしかもらえてい なかった。
それが現在は四〇%近くまで増えました。
サプライ品については今や八八%を当社の拠点から直 接エンドユーザーに配送しています。
それがそのまま 当社の売り上げ増につながっています」 「もっとも残りの十二%は依然として商物一体です。
販社が自分たちで配送する体制を変えない。
なかなか 物流を手放そうとはしない。
私もセールスの人間でし たから、その気持ちは分かるんです。
手が空いている 営業マンがいるなら、彼らに商品を届けさせれば支払 物流費がいらなくなる。
そう考えている。
しかしそれ は間違いです。
営業マンの人件費は決して安くない。
営業マンは営業の仕事に特化すべきです」 ――現在ではリコー商品に関するすべての物流をカバ ーするようになりました。
調達物流から販売物流、そ してマシンを回収してリサイクルするといった静脈物 流にまで守備範囲を拡げています。
「当社では調達からリサイクルまで丸ごと請け負う ことを?一気通貫〞型の物流と呼んでいます。
部分 部分で仕事を委託してもらうより、トータルに委託し てもらったほうが物流コストを安くできる。
理屈では なく、最初は直感でそう思いました。
それを一歩ずつ 進めてきたんです。
同時に私はいずれ環境対応型の物 流を要求される時代が訪れると確信していました。
そ 17 JULY 2003 こで社長に就任した直後に、調達から静脈まで『リコ ーに関係する物流は全部やる』と宣言したのです」 ――特定の物流分野に集中して、そこで横展開を図る という選択肢もあったはずです。
「われわれはあくまでもリコーの物流子会社である ということを忘れてはならない。
親会社の物流を代行 する目的で設立されたわけですから、親会社のビジネ スがうまくいくように物流面から支援するのが最大の 使命です。
現在、リコーグループではリサイクルまで を含んだSCMに取り組んでいます。
そのSCMに対 してQCD(クオリティ、コスト、デリバリー)の面 から貢献していかなければなりません」 ――しかし、親会社だけの物流ではスケールメリット が出ない。
「物流子会社は外販を伸ばして自立することが最優 先されがちですが、それは正しくない。
むしろ親会社 向けの業務がきちんとできていれば、外販は後から自 然とついてくる。
例えば当社は国内に八〇拠点を用意 した。
同業他社と比べると、多過ぎるという印象を受 けるかもしれない。
しかし、そうした細かなネットワ ークを気に入ってくれて、当社に仕事をお願いしたい と言ってくる一般顧客(外部荷主)も出てきている。
リサイクル物流に関しても同じです。
親会社と当社の 取り組みを見て、同じインフラを使いたいと声を掛け てくれるケースが少なくありません」 リサイクル物流で欧州進出 ――国際物流については? 「手は打っています。
まず九五年に国際物流を担当 していたリコーインターナショナルシステムズを当社 に吸収しました。
しかしリコーインターナショナルの 仕事は日本で生産した商品を海外の現地法人に送る、 といった通関業務が中心でした。
これをもう一歩先、 つまり現地の販売代理店までの輸送や、エンドユーザ ーへの直送にまで領域を拡げようとしています」 ――親会社のリコーはライバルのキヤノンやゼロック スなどと比べてグローバル化では立ち後れているとい う印象がありますが。
「それは否定しません。
だからこそ物流子会社にと ってはチャンスだとも言える。
日本国内で蓄積してき たノウハウを海外で活かすチャンスなんです。
モノづ くりのアジア化は今後も進んでいく。
アジアから日本 への販売物流もさることながら、今後は生産ラインま での調達物流のニーズが拡大していくでしょう」 ――具体的な対策は? 「中国の深 では、現地法人のリコーアジアインダ ストリーと当社の合弁で『理光通運』を設立していま す。
IPO、国際調達の会社です。
欧州でもフランス で部品ベンダー四社を対象にしたVMIを展開してい ます。
ミルクラン方式で部品ベンダーからパーツを集めてきて生産ラインに投入するサービスです」 ――VMIは日本国内でも手がけているのですか? 「工場調達部分のVMIには非常に期待を寄せてい るのですが、部品の正味価格と物流費を丸裸にされる ことを嫌うベンダー側の抵抗もあってなかなか浸透し ていかないというのが実情です」 ――静脈物流のノウハウは海外で通用しそうですか? 「リコーヨーロッパは近くフランスにEGC、ヨー ロッパ・グリーン・センターを設置します。
これに合 わせて当社が日本のリサイクル物流の仕組みを持って いく。
欧州は環境対策に関しては先進地区と言われて いますが、実際に調べてみるとそうとも言えないこと が分かった。
日本で当社が展開している静脈物流は欧 州でも必ず通用するはずです」 特集 96 年 3 月 97 年 3 月 98 年 3 月 99 年 3 月 00 年 3 月 01 年 3 月 02 年 3 月 03 年 3 月 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 (単位:千万円) リコーロジスティクスの売上高推移 リコーロジスティ クスに社名変更 全国98行政区で 産廃収集運搬業 ロジスティクス大賞 技術賞を受賞 (決算期)

購読案内広告案内