ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年2号
特集
物流企業番付 当社を真似できる物流業者はいない

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

FEBRUARY 2003 20 「当社を真似できる物流業者はいない」 高い収益力と豊富な資金力を背景に新たなステップを踏み出そ うとしている。
伸び悩みの続く個人市場から法人市場に営業ター ゲットを移行。
さらに長年の夢であった海外進出も検討している。
同業他社を寄せつけない高い成約率と作業ノウハウを武器に業績 拡大を狙う。
サカイ引越センター田島憲一郎 会長 贅沢しないから儲かる ――引っ越し専業の有力三社(アート、サカイ、引越 社)の業績を並べてみると、サカイだけが経常利益率 ではいつものように二桁をマークし、当期利益率でも 五%強を毎年コンスタントに出している。
ライバル企 業とは何が違うのでしょうか。
「オーナーが違いますよ(笑)。
ライバル企業の社長さ んは東京に滅多に足を運ばないでしょう? 私はほと んど東京にいる。
毎朝六時には営業所に出社して仕 事を始める。
色々な営業所に足を運んで市場の動きを 確かめる。
まずオーナーの行動力が違います」 「もう一つは贅沢したいと思わない点。
運送屋のオ ーナーというのは酒を飲むのが好きで、外車に乗って いるというイメージがある。
しかし私は夜の街には出 ない。
社員を連れて食事には出掛けるけれど、クラブ やバーなど女性のいるところにはほとんど行かない。
自分の私生活が乱れてしまいますから。
車もホンダの シビック。
ここが他社とは違う。
私は贅沢しません。
会社のお金と、個人のお金をびしっと区別しています。
きれいなもんですよ」 ――サカイの成約率(営業活動を行って実際に受注 できる比率)は九割くらいで、他社よりも高いと言わ れてきました。
現状はどうですか? 「変わっていません。
ただし、関東は八八%くらい で、他の地域よりも少し低い。
引越社との競争に負け ている。
いま関東では引越社が一番強いんじゃないか な。
当社が西関東ブロックと呼んでいる東京の国立支 店の稼働率(保有車両の稼働状況)をみると、昨日 の数値がサカイ七七・六%に対して引越社は六八・ 四%。
一月に入ってからの累計は、サカイ六七・〇% なのに対し、引越社は六三・二%。
最近ではだいぶ盛 り返していますが、引越社が関東進出を果たして以来、 押され続けているのは事実です」 ――他にもサカイの強みはありますか。
「資金力です。
当社は借金が六〇億円しかないのに 対し、資産が二〇〇億円を超えている。
他社は売り 上げと同じくらい借金があったりして苦労している。
かつて私もかなり借金を背負っていましたから、気持 ちがよく分かります。
昔は会社の名前で銀行から借金 できなかった。
だから個人保証をして借りた金を会社 に貸し付ける必要があった。
九〇年頃には私とカミさ んの名前で一〇億円借りていましたよ。
しかし、今は そんな心配もない。
大証二部に上場してから資金繰り が楽になった。
上場してからは個人補償もする必要が なくなった。
今では金を貸してくれるところはいくら でもあります」 「今年中をメドに現在の大証二部から、東証二部と 一部への上場を果たそうと思っている。
東証への上場 で数十億円を手にすることができる見込みですが、今 回は金集めが目的ではない。
信用度を高めることです。
信用度が変わって、人の見る眼が変わると、人がチャ レンジできないようなことができるようになる」 ――具体的には? 「一つは海外進出です。
現在、当社は海外に拠点を 持っていません。
ロンドン辺りに拠点を置いて日系企 業の海外赴任者の引っ越し需要を掴まえようと考えて います。
イギリスには日本企業の駐在員が約三万人い ます。
彼らはだいたい二年か三年で一度日本に帰国す る。
つまり年間に一万人が移動する計算になります」 ――このタイミングで海外に出るのは日本国内の伸び に限界を感じているためですか。
「いいえ。
まだまだ国内には開拓の余地が残されて いる。
海外に進出するのは国内事業のほかにもう一つ Interview 総合20位 サカイ引越センターの業績の推移 エリア別売上高の推移 (%) ※グラフ中の数字は売上高(億円) 売上高・経常利益(億円) 対売上高経常利益率(%) 350 300 250 200 150 100 50 0 97年 98年 99年 00年 01年 02年 16 14 12 10 8 6 4 2 0 売上高 経常利益 経常利益率 100 80 60 40 20 0 東北 中国・四国 九州 中部・東海 関東 近畿 91 44 57 66 77 86 94 90 84 93 99 102 21 FEBRUARY 2003 経営の柱を築きたいから。
引っ越しという枠内で総合 化を目指すという戦略です」 ――しかし、海外事業はそれほど収益には貢献しない でしょう? 「確かにその通りです。
海外引っ越し事業への進出 は当社の?夢〞の部分ですよ。
アートさんはずっと赤 字を出しながらも海外で事業を展開しているじゃない ですか。
だからこそ当社は何とかして黒字化させたい。
しかもアートさんのように大手海外事業者の傘下に入 って仕事をするのではなく、サカイの看板でやりたい」 ――最近では不動産ディベロッパーと組んで新築マン ションへの引っ越しを請け負うといった「法人向け営 業」も強化しています。
「昨年は関東の法人課だけで四〇〇〇戸(去年三月分) を受注したのですが、既に今年は現在までで七〇〇〇 戸(今年三月分)を受注済みです。
関西でも六〇〇 〇戸(同)くらい受注しているはずです」 日通、ヤマトから法人客を奪う ――法人に力を入れ始めたのは最近のことですよね。
「三年くらい前からです。
現在、売り上げの約二 五%は法人です。
個人需要が伸び悩んでいるため、法 人市場で日通やヤマトからシェアを奪っているところ です」 ――法人を伸ばすコツは? 「優秀な営業マンが、優秀な実績データを提示すれ ば簡単に受注できますよ。
当社の場合は成約率が他 社に比べて圧倒的に高い。
他社は六〇%とか七〇% だけれど、うちは九〇%弱ある。
この成約率がデベロ ッパーから評価されています」 「デベロッパーが大規模マンションを新築する際に、 入居者の引っ越しを一棟まるごと請け負う。
先日も四 百数十戸の仕事を受注しました。
経営規模が小さか った時には相手にされなかった。
それが今ではマンシ ョン一棟から発生する需要を丸々受けられるようにな った」 ――個人市場と法人市場では扱い荷物の違いなどによ る引っ越し技術の違いはないのですか? 「当社の技術力というのは凄いからね。
互角に渡り あえる業者は日本には存在しません。
例えば、当社は タンスの中身を入れたままでの作業が可能です。
引き 出しというのは当然、出したら元に戻すという手間が 発生する。
同じ人が出し入れをしても、同じようには 納まりません。
中身を出さずにそのまま移動するやり 方を当社は三〇年前から実行しています。
しかも作業 員全員ができる。
真似できる業者はいません」 ――作業に自社社員以外は使わないのですか? 「一切使っていません。
それは今や常識ですよ。
か つては傭車を使って、ピーク時に売り上げを伸ばして いた時期もありましたが、現在ではすべて自社でやる。
自社の作業員で賄えない仕事は受注しません」 ――インターネット受注も本格化しています。
「他社の数字は知らないけれど、(引っ越し専業者の なかでは)当社の実績が一番なんじゃないかな。
既に インターネット経由で月間一億円の受注があります」 ――ただし、インターネット経由で寄せられる見積も り依頼というのは成約率が悪い。
現場の営業マンにと っては業務の効率が落ちるため厄介な存在なのでは? 「確かにそういう面はあります。
インターネットによ る申し込みの決定率は五割程度に過ぎません。
現在、 関東の決定率は八八%ですが、ネット見積もりがなけ れば、この数字はもっと高くなっているはずです。
そ れでもインターネットによる受注というのはこれから 凄いピッチで伸びていくでしょうね」 79年設立の引越専業者。
もともとは関西地区を中心に営業展開していた が、関東にも進出を果たすなど徐々に勢力を拡大してきた。
2002年3月期 の業績は売上高297億円、経常利益35億円。
売上高経常利益率は10.9%。
高収益企業として株式市場での注目度も高い。
会長自ら企画に加わるという 強烈なインパクトのテレビCMが有名。
CM好感度調査では常に上位にラン キングされている。
品質保証のISO9002を5年前に取得。
業界に先駆けて 環境ISOも取得している。
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