ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2004年8号
ケース
ヤマト運輸――環境対策

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2004 40 ハイブリッド車を選んだ理由 「どこの地域で使っても燃費が三割よくな る。
これがハイブリッド車の本格導入に踏み 切るための絶対条件だった」――。
ヤマト運 輸で車両管理に携わっている椎名孝幸ネット ワーク部車両担当課長はこう振り返る。
過去 には低公害車のなかで脇役に過ぎなかったハ イブリッドのトラックについて、同社の社内 で検討したときに課した条件である。
二〇〇三年九月、ヤマトは二〇一二年まで に二万台の集配車両をハイブリッド車を中心 とする低公害車に切り替える計画を明らかに した。
その二週間前には日野自動車が、世界 で初めてハイブリッドの二トン車を全国発売 すると発表していた。
両社の軌を一にする動 きは、二〇〇二年十二月にヤマトが日野のハ イブリッド二トン車をテスト導入した時点で 表面化した。
その後、実地テストを繰り返す なかで燃費を三割向上できると確信したこと が、ヤマトの決断につながった。
一般に低公害車とは、従来のディーゼル車 やガソリン車に比べて、NOX(窒素酸化物) やPM(粒子状物質)、CO2(二酸化炭素) などの排出量が少ない車両を指す。
営業用ト ラックの分野では、これまでにメタノール車 やLPG車などが実用化されてきた。
ここ五 年くらいをみると、天然ガスを燃料とするC NG車が急増している。
しかし、ヤマトにはCNG車を本格導入で ハイブリッド集配車の導入を本格化 2012年までに2万台購入する舞台裏 低公害車の主役争いが混沌としてきた。
陸運業界では近年、NOxやPMの排ガス規 制に対応するため、天然ガス自動車(CNG 車)の導入が急増している。
ところが昨秋、 ヤマト運輸が2012年までにハイブリッド集 配車を2万台導入すると発表。
ハイブリッ ドへの注目度が一気に高まった。
ヤマト運輸 ――環境対策 41 AUGUST 2004 きない理由があった。
「小規模の営業所を全 国展開している当社は、配送車への給油を町 中のガソリンスタンドと契約して行っている。
他の運送会社のように、自社ターミナルに専 用スタンドを構えれば済むというわけではな い。
低公害車を導入しようにも、給油のため のインフラが整っていなければどうしようも なかった」(椎名車両担当課長) 同社はこれまで、あらゆる低公害車の導入 に取り組んできた。
九一年に電気自動車をテ スト導入すると、その後はメタノール車、L PG車、ハイブリッド車、CNG車を試した。
燃料補給のインフラ不足に苦慮しながらも、 九八年には「二〇一〇年までに毎年二〇〇車 両ずつ、合わせて二四〇〇台の低公害車を導 入する計画」を発表。
タクシー業界で使われ ていることで比較的インフラが整っているL PG車を中心に導入を進め、二〇〇二年には 計画を八年前倒しして達成した。
二〇〇四年三月末にヤマトが保有していた 低公害車の数は累計三四五一台。
内訳は、L PG車が三二七〇台(全低公害車の九四・ 八%)と圧倒的に多く、CNG車は一六四台(四・八%)でしかない。
そしてこの段階で はハイブリッド車は累計一七台に過ぎず、ま だ試行の域を出ていなかった。
それが昨秋、ヤマトは今後の低公害車の主 力をはっきりとハイブリッドに絞りこんだ。
それまでのLPG車からハイブリッド車へと シフトした理由は、前述したインフラの問題 に加えて、ヤマトならではの車両の使い方に あった。
ハイブリッド車の最大の特徴は、減速時に エネルギーを「回生」(制動時に発電機を回 してエネルギーを回収する)する点にある。
つまり、加速と減速を繰り返すことではじめ て本領を発揮する。
逆に、遠距離を一定速度 で走る幹線輸送のような使い方では、エネル ギーを回生する効率が悪くハイブリッド車の 強みは発揮できない。
ヤマトの集配車の使い 方は、まさにハイブリッド車にうってつけだ った。
意外に古いハイブリッドの歴史 ヤマトにとってハイブリッド車が魅力的で あることは、理屈の上では以前から明らかだ った。
しかし昨秋まで同社の集配車で多用し ている二トンクラスのハイブリッド車は存在 しなかった。
ヤマトが低公害車の主力をハイ ブリッド車にするためには、自ら車両開発に 主体的に関与し、なおかつ多岐にわたる難問 の解決が不可欠だった。
陸運会社はトラックメーカーにとって最大 の顧客である。
だが一般的な陸運会社は、車 両メーカーが開発するトラックの中から最善 の選択をしようとするだけで、自ら車両開発 にまで深入りしようとはしない。
その点、ヤ マトと車両メーカーの関係は特殊だ。
ヤマトはかつて「宅急便」の商品化を進め るなかで、トヨタ自動車と組んで「ウォーク スルー車」を開発した経験を持つ。
このとき ヤマトの要請に対してトラックメーカー各社 がいずれも消極的だったなかで、取引関係の まったくなかったトヨタだけが応じ、苦労の 末にウォークスルー車を開発。
以降、ヤマト は集配車の大半をトヨタから独占的に購入し 続けてきた。
今回のハイブリッド二トン車の ヤマト運輸の椎名孝幸車両担当 課長 全車両数に占める低公害車の状況 1998 1999 2000 2001 2002 2003 40,000 35,000 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 29,004 30,223 31,922 33,511 34,528 37,334 10.0 9.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0 (台) (%) 車両数 低公害車の占める比率 252 0.9 1.6 3.4 5.8 7.7 9.2 490 1,077 1,951 2,657 3,451 全車両数 低公害車 低公害車の比率 開発でもヤマトは、トヨタグループの一員で ある日野自動車と二人三脚で話を進めた。
現在、ハイブリッド車の代表格はトヨタの 乗用車「プリウス」だ。
ただ同じハイブリッ ド技術を使っていても、トラックのそれは構 造的にかなり異なる。
今回、ヤマトが採用を 決めたハイブリッド二トン車は、日野の独自 技術に裏打ちされた車両といえる。
日野の持 つ技術に、トヨタが「プリウス」で培った強 さを付加したというほうが正しい。
そもそもハイブリッド車の実用化に取り組 んだ歴史は、トヨタより日野の方がずっと長 い。
日野は七〇年代前半に都市の排ガス問題 に対応する狙いで電気バスを開発した。
とこ ろが電気だけでは実用に耐えられなかったこ とから、ディーゼルエンジンとの併用によるハイブリッド車に着目。
早くも七〇年代後半 には具体的な研究に着手していた。
九一年には世界で初めてハイブリッドバス を実用化。
現在に至るまでに都市バスや観光 バスとして累計約三〇〇台の納入実績を持つ。
トラックについても、九三年に四トンのハイ ブリッド車を市場に投入したが、いかんせん 車両価格が高すぎた。
公共的な意味合いの強 いバスではある程度まで許容されても、営業 用トラックとしては通用しなかった。
しかし、 この状況は、九〇年代のさまざまな出来事を 通じて徐々に変化していくことになる。
様変わりする低公害車の定義 日本では低公害車の定義そのものが、最近 一〇年間ほどで様変わりしている。
八〇年代 までの日本で排ガス規制の対象になっていた 主要物質は、七〇年代に光化学スモッグの元 凶と名指しされたNOX(窒素酸化物)だっ た。
行政による規制の主なターゲットもNOX で、これについては世界的にみても厳しい数 値基準が設けられてきた。
その一方でPM(粒子状物質)に関する日 本の規制は甘かった。
九〇年代までの技術の 常識では、NOXとPMはどちらかを減らせ ば他方が増えてしまうという二律背反の関係 にあった。
にもかかわらずNOX規制だけを 厳しくした結果、日本におけるPMの規制値 は欧米に比べると圧倒的に甘くなってしまい、 この状況が以後二〇年近く続いてきた。
しかし、九〇年代になると、日本でもPM に対する風当たりが一気に強まった。
きっか けはディーゼル車の排出するPMと、アレル ギー症状やガンといった健康被害との間に高 い相関関係があるとする研究結果だった。
こ うした研究に世の中が敏感に反応し、九四年 になると日本のPM規制もようやく強化の方 向に動き始めた。
技術的に難しいこともあっ て欧米並みには程遠い規制値だったが、日本 でもPMを抑制しようという動きが遅ればせ ながら顕在化した。
その後もPMに対する見方は厳しさを増し 続けた。
全国各地で相次いだ大気汚染公害訴 AUGUST 2004 42 ■ 低公害車導入の推移 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 (予定) 2012 (予定) 4,000 3,000 2,000 1,000 0 (台) 30 42 135 252 490 426 1,077 1,951 2,657 3,451 20,000 4,242 205 33 53 14 11 80 8 989 18, 26 24, 94 32,2, 70 3,542 553 118 157 6 164 17 167 7 その他 CNG車 LPG車 ハイブリッド車 ※2002年までは「その他」 にハイブリッドを含む (年度) 主にハイブリッドだが内訳は未定 導入・開発時期 低公害車の種類と開発内容 1991年7月 1993年4月   ″  5月   ″  8月 1995年3月 1997年7月 2000年2月 2000年6月 2002年 2003年   ″  9月 メタノール車(2t貨物自動車)テスト導入 ハイブリッド車(3.5t貨物自動車)テスト導入 LPG車(ワンボックスバン750?)テスト導入 ヤマト仕様のLPG車(2tウォークスルー車)を開発し 実用テストを開始、以後大量導入 電気自動車(ワンボックスバン250?・軽自動車200 ?)テスト導入 ヤマト仕様のCNG車(2tMPバン)を開発し実用テ ストを開始、以後導入 ヤマト仕様のCNG車(2tウォークスルー車)を開発 し実用テストを開始、以後導入 ハイブリッド車(2t集配車)を16台テスト導入し、全国 的に検証を実施 ハイブリッド車(2t集配車)を開発し、12月に1台をテ スト導入 エコクール車(クール対応型電気式MPバン)の開発、 以後導入 「ヤマト運輸地球温暖化防止目標」を策定し、2012 年までにハイブリッド車を中心に2万台の低公害車を 導入すると発表 ■ 低公害車の開発と導入 ヤマト運輸における低公害車導入の歴史(同社資料より本誌が作成) 43 AUGUST 2004 訟でディーゼル排ガスが改めてクローズアッ プされた影響も大きかったが、とどめは九九 年に石原慎太郎東京都知事が黒いススの入っ たペットボトルを振りかざしたパフォーマン スだった。
このとき東京都は「ディーゼル車 NO作戦」と銘打った一連のキャンペーンを 張り、国に先んじてディーゼル車の排ガス規 制を尖鋭化していった。
国もPM規制の強化に乗り出した。
二〇〇 三年から二年間の「新短期規制」では、PM の規制値をより厳しいものへと見直し、もと もと厳しかったNOX規制もさらに強化した。
次段階として二〇〇五年から施行される「新 長期規制」では、NOXだけでなくPMにつ いても世界一厳しい基準になることが決まっ ている。
九〇年代を通じて日本では低公害車 の前提そのものが変わったのである。
もっとも陸運業者の立場では、そのときど きに最善と判断した低公害車を導入するしか 手はなかった。
前掲のようにヤマトは主にL PG車とCNG車を導入してきた。
LPG車 とCNG車はPMをまったく出さず、NOX の排出量も当時のディーゼル車の約五分の一 に過ぎなかったためだ。
九〇年代半ばの低公 害車の定義に照らせば、それ以外の選択肢は ありえなかった。
それが九〇年代後半になると、また低公害 車の前提を覆す動きが出てきた。
直接的な引 き金は九七年に開催されたCOP3(地球温 暖化防止京都会議)だった。
この会議で採択 された「京都議定書」では、先進国に対し、二〇〇八年〜二〇一二年までに温室効果ガ スの排出量を九〇年比で一定割合(日本六%、 米国七%、欧州八%)で削減することを義務 づけた。
この国際公約を実現することが開催 国である日本にとって不可避となった。
日本で温室効果ガスの九割以上を占めるC O2は、地球温暖化の元凶とされる物質だ。
し かも運輸部門におけるCO2の排出量は日本 全体の約二〇%を占め、最近も増加傾向にあ る。
細かく見れば運輸部門の七〇%を占める 自家用車のそれが増加しているのであって、 営業車からの排出は減っているのだが、車両 運行を生業とする陸運業者にとってCO2の 排出抑制はもはや無視できない課題だ。
こう して直近の低公害車の定義には、NOXとP Mに加えて、CO2の排出抑制(燃費向上と ほぼ同義)が加えられることになった。
ヤマト流の車両購入術 世の中の変化に応じてヤマトが低公害車に 求める要件も変わってきた。
NOXとPMの 排出抑制を主眼としていた当時は、なかば消 去法でLPG車を選んでいたのだが、LPG 車の燃料補給インフラが万全でないことは明 らかだった。
このため九八年に発表した低公 害車の導入計画を二〇〇〇年初頭に達成で きるメドが立ったとき、ヤマトは改めて時代 のニーズに合う低公害車とは何なのかを再検 討した。
「CO2も減って、NOXとPMも減って、な おかつ当社で使える車両は何かを考えた。
そ こから当時すでにモーターショーなどに出さ れていたハイブリッド車に目をつけた」とヤ マトの椎名車両担当課長は振り返る。
早速、 ハイブリッド車の研究で実績のあった日野に 声を掛け、日野は「プリウス」で実績を積ん でいたトヨタとともに二トンクラスのハイブ リッド車の開発に本腰を入れた。
車両開発の課題の一つは価格だった。
一般 的な二トン車の車両価格は安いところでは三 〇〇万円台からあり、中大型トラックと比べ るとかなり安い。
日野が従来のハイブリッド 技術の延長線上で二トン車を作ろうとすると、 この低価格の実現が極めて高いハードルにな っていた。
コスト高の原因の一つはバッテリーにあっ 2002年12月にテスト導入したハイブリッド集配車 AUGUST 2004 44 た。
日野が過去に開発したハイブリッド車は 鉛バッテリーを使用していたのだが、これは 重くてかさばるうえにコストも高い。
そこで ハイブリッド二トン車では「プリウス」でト ヨタが使っているニッケル水素バッテリーを 流用することにした。
鉛バッテリーに比べて 性能が良いうえ、量産効果もあって調達コス トは格段に安い。
ディーゼルエンジンにも最新の技術を投入 した。
日野が「DRP」と呼ぶ仕組みでは、 一昔前には技術的にトレードオフと言われて いたNOXとPMの両方を同時に減らせる。
日 野によると新車両は、二〇〇三年から二年間 の「新短期規制」の規制値に対してNOXを 五〇%以上減らし、PMにいたっては八五% 以上も減らせるのだという。
もっとも、このディーゼルエンジンが本来 の機能を発揮するには、使用燃料に含まれる 硫黄分が五〇PPM以下であることが前提に なる。
過去の日本でPM規制が甘かった背景 には、日本で流通する軽油が、欧州のそれに 比べて圧倒的に硫黄分が多いという事情があ った。
このことがPMの除去を技術的に難し くし、結果として日本でディーゼル車を悪者 にしてきた。
ところが昨今の?ディーゼル叩き〞は、こ の状況をも一変させた。
ディーゼル排ガスの クリーン化を目指して、国は二〇〇四年末ま でに硫黄分を五〇PPM以下に規制すること を決定。
これを受けた石油業界が自主的に低 硫黄化を進めた結果、国の規制時期を大幅に 前倒しする二〇〇三年中に全国で低硫黄軽油 の販売をスタートした。
このように複数の要因が変化したことで、 トラックにおいてもハイブリッド車がCNG 車やLPG車と並ぶ低公害車として認められ る素地が整った。
これまでのように単純にデ ィーゼルを悪者扱いするのではなく、欠点を 補うことで、熱効率が高い(=燃費がいい) というディーゼル本来の優位性を活かす道が 見えてきたのである。
とは言え、理屈の上でさまざまな条件が整 っても、現実に存在していなかったハイブリ ッド二トン車を実用化するのは簡単ではない。
ウォークスルー車の開発がそうであったよう に、ヤマトが日野に突きつけた要求も生半可 ではなかった。
絶対にクリアしなければなら なかった条件の一つが、冒頭で述べた燃費の 三割向上だった。
ヤマトの椎名車両担当課長は、「簡単に燃 費の三割向上を実現できたわけではない。
最 初は思うような結果が得られず、走行状況な どを詳細にチェックしつつ改良を繰り返す必 要があった。
ようやく達成できるようになっ たため、全国で試してみようと二〇〇三年に 段階的に各地に一六台のハイブリッド車を導 入した」と述懐する。
ハイブリッド商用車は本命か? ヤマトとの取り組みは、日野にしてみれば 大きなビジネスチャンスだ。
ヤマトという大 口顧客に認められれば、ハイブリッド二トン 車の量産効果は一気に高まる。
「トヨタと日 野を合わせると、現状の二トン車クラスの国 内での販売シェアは二五%くらい。
これをト ヨタの乗用車の国内シェアと同様の四〇%に 何とかもっていきたい」(日野自動車の大野 建一広報グループ主査)と意気込む。
現在でもハイブリッド二トン車の価格は、 同じクラスのディーゼル車に比べると約一一 〇万円ほど高い。
それでも低公害車として国 や業界団体から補助金が出るため、ユーザー の負担額は三〇〜五〇万円増に収まる。
これ くらいの差額であれば、燃費がいいなどのラ ンニングコストの安さによって数年間で回収 できると日野はアピールする。
さらにハイブリッドならではの副次的な効 果も期待できる。
ハイブリッド車の制動時に はエネルギーを回生するためにエンジンブレ ーキと同様の力が強く働く。
その結果として、 従来は一年半ほど車を走らせると交換が必要 だったブレーキの寿命が相当伸びるのだとい 日野自動車の柿沢秀幸チーフ エンジニア 45 AUGUST 2004 う。
また、従来のディーゼル車にはない大容 量のバッテリーとモーターを積んでいること も、興味深い特徴を生み出している。
「普通の車はキーを回すとエンジンの始動 音がする。
ところがハイブリッド車はモータ ーで始動するため、ほとんど音がしない。
こ の機能を上手く利用することで、信号待ちな どで勝手にエンジンが停止するアイドリング・ストップを実現した。
信号が青になって クラッチを踏み込むと、何事もなかったよう にエンジンがかかり車が動き出す」と、日野 で小型トラックを担当している柿沢秀幸チー フエンジニアは説明する。
将来的には、過去の常識を覆す使い方も実 現するかもしれない。
例えば、これまで定温 車両では、冷蔵のための専用ユニットを別に 搭載する必要があった。
これがハイブリッド 車では、すでに積んであるバッテリーなどを 上手く利用することで従来は考えられなかっ た冷蔵車両への道が拓ける可能性がある。
ヤ マトの「クール便」にとっても大きな可能性 を秘めている。
ハイブリッドのウォークスル ー車が登場するのも時間の問題だろう。
日野のハイブリッド車は、すでにヤマト以 外にも食品メーカーなどが導入している。
と くにコンビニなど小売りチェーンへの配送で 強みを発揮している模様だ。
陸運業界でも西 濃運輸がかなりの台数を導入している。
もは やハイブリッドトラックは、低公害車として 一時的なつなぎの存在ではない。
少なくとも 二〜四トンの集配車の世界に限れば、CNG 車と並ぶ低公害車の主役の座に躍り出たとみ ていい。
一方、ディーゼルエンジン自体も、燃料の 低硫黄化や技術革新によって一時期の悪玉説 を乗り越えつつある。
熱効率の高いディーゼ ルは本来、エネルギーの有効利用という意味 で優位性がはっきりしている。
これとハイブ リッド技術が結びついたことで、インフラ整 備の欠かせない他の低公害車より早く普及す る可能性すら出てきた。
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