ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2013年10号
メディア批評
なりふり構わず小沢一郎を追いつめた検察その片棒を担ぐメディアの役所至上主義

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高 信 経済評論家 OCTOBER 2013  88  小沢一郎の時代は終わったと言われる。
確かにそうかもしれない。
しかし、検察と ともに、あるいは検察権力に乗っかる形で 反小沢のキャンペーンを展開したメディアの 責任は問われていない。
 青木理、辻恵、宮崎学の『政権崩壊── 民主党政権とはなんだったのか』(角川書店) に収録されたインタビューが、その問題を鋭 くえぐる。
小沢を呼び出した検察は銀行に 資料を出させて、預金口座のカネの出入り を把握していた。
別に捜査令状がなくても 電話一本で検察には見せてしまう銀行に対 して、小沢は怒るというより呆れる。
 「銀行はわれわれに対しては弁護士を通じ てでもなかなか資料は出さないのに、向こ うにはひと声で全部出しちゃう。
正に官尊 民卑の日本社会の典型ですね」  過去の検察は政治家をやるにしても選挙 前とかは避けるのが普通だった。
それが遮 二無二強行したのはなぜか? 小沢は語る。
 「だから完全に政権交代を防ぐためでしょ うね。
阻止するためです。
それ以外に民主 主義社会で選挙の五、六カ月前に野党の第一 党の党首を何の証拠もなしにやるなんてい うことはあり得ないことです。
民主主義が 成熟していない、ほとんど独裁国家のやる ことだと思います」  小沢の批判はそれからメディアに向かう。
 「メディアは役所次第ですよ。
新聞、テレ ビなんて役人の言いなりです。
表向きは役人・ 官僚はけしからんなんてきれいごとを言っ てますけども、やりすぎると役所に出入り 禁止になって情報を得られなくなりますから。
さらには本気で役所とけんかをすれば、新 聞・テレビの事業そのものができなくなり ます。
日本はそれほど官僚の力が強い国な んです。
例えばこれは諸外国じゃあり得ない、 民主主義国家じゃあり得ないことなんですが、 日本では取り調べ中の情報がどんどん出る でしょ。
メディアはいつも捜査当局が意図的 にリークした情報をそのまんま報道していま すね。
もうどうしようもないですね、日本 のメディアは」  宮崎が『朝日新聞』が社説で「民主党執 行部は小沢を切れ」と主張したことを問題 にすると、小沢は、  「一番官僚的で一番体制派だから、朝日は。
きれいごとを言っているけど、一番官僚主 義がはびこっているとこですから」  と吐き棄てる。
反小沢の新聞は売れ、『日 刊ゲンダイ』が擁護の論陣を張ったら、部数 が落ちた。
それを宮崎は「戦前の朝日新聞 が反戦記事を載せた場合はダメで、戦争賛 美の紙面にしたときは部数が伸びたという のと同じような構造を、メディアはまだずう っと引きずっている」と指摘する。
 小沢はメディアを拒否してはいなかった。
ただ、フリーの記者と大手紙の記者を平等 に扱って、大手紙の記者から反感を買った のである。
特別扱いが当然だと思っている 大手紙の記者には「平等」は耐えられない ことだった。
 証拠改竄や捜査報告書を捏造してまで小 沢を追いつめようとした検察に対して、小 沢は憤激しつつも、こう語る。
 「有印公文書を偽造した検事が何の罪も受 けないでほったらかしになっている。
こん な馬鹿な国家はないですよ。
一般の人がや れば、すぐに罰を受けるのに。
どうかして いる。
それを黙ってるんだから国民もおか しいんです。
でもまあ、日本人はそれほど 馬鹿じゃないから、たぶん気がついている と思います。
僕は希望を持っています」  私はそう楽観視していないが、私が講演 などでいつも言っているのは、「検察(警察 を含む)は悪い奴を捕まえるところではな くて、捕まえた奴を悪い奴にするところだ」 ということである。
しかし、多分、国民と メディアはそう思っていない。
なりふり構わず小沢一郎を追いつめた検察 その片棒を担ぐメディアの役所至上主義

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