ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2004年4号
メディア批評
「俺と組め。俺の案なら官僚も呑むぞ」 猪瀬と小泉という二人のエセ改革者

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高信 経済評論家 61 APRIL 2004 『新潮 45 』は二月号で櫻井よしこの「猪瀬直 樹の仮面を剥ぐ」を載せ、続く三月号では櫻 井の「ジャーナリズムを否定する『猪瀬直樹 の作法』」と猪瀬の「櫻井よしこをふたたび論 破する」を載せている。
私はこれまで『噂の真相』などで、猪瀬を 「有名病患者の権力亡者」と批判してきたが、 櫻井によってかわいそうなくらいにそれが明 らかにされた。
「仮面を剥ぐ」で櫻井は、猪瀬の書いた『道 路の権力』(文藝春秋)をこう茶化している。
〈『道路の権力』の頁をめくると、「僕を主役 にして! 主役は僕だよ」という著者の声が 聞こえてくるかのようだ。
随所に幼児性が覗 いていて、小さな子供の世界を見ている気分 になる。
つい、「一体、君は何が欲しいの、僕」と尋 ねてやりたくなるような書だ〉 辟易するような猪瀬の自己顕示欲に櫻井は 「幼児性」を見たわけだが、いわゆる道路公団 民営化推進委員会の冒頭、こんな行動をとっ たというのには唖然として言葉もない。
同委員会の委員長代理だった田中一昭の 『偽りの民営化』(ワック)によれば、こうで ある。
「先ほど委員長代理の話がありましたが、私 は委員長代理が二人いても構わないと思うの で、もし指名していただければやりますけれ ども」 いきなり、猪瀬がこう切り出したと言うの である。
委員になった時からそう思い、他の 委員にも働きかけていたらしいが、田中なら ずとも「冗談だろう」と思うだろう。
しかし、 猪瀬は本気だった。
この件は結局、 「七名で少ないからいいんではないですか」 という小泉首相の発言で幕となったという。
『道路の権力』では、これには「まるでなか ったかのように全然触れていない」が、それ について田中はこう皮肉っている。
「自分の成果だけでなく、自分の不成功につ いても描かないことには、?正確無比な歴史〞 とはいえないだろう」 問題なのは、そうした?患者にして亡者〞 の猪瀬を小泉や財務省が見事に利用している ことである。
『噂の真相』の三月号には「猪瀬を知る週刊 誌関係者」のこんな証言が載っている。
「たしかに、いまや猪瀬と財務省はベッタリ の関係です。
猪瀬は『日本国の研究』で当時 の旧大蔵省理財局の財政投融資をかなり時間 をかけて研究したんだが、その取材の過程で 理財局をはじめ、財務省の幹部たちと親しく なり、徐々に人脈ができていったと聞いてい る。
実際、当時から西麻布の猪瀬事務所には 理財局長などの財務省幹部がよく出入りして いたし、税制調査会や行革断行評議会など、 猪瀬が政府の審議会に関わるようになったの も財務省との結びつきがきっかけだった」 こうした背景の下に、櫻井がスッパ抜いた 猪瀬のこんな発言が出てくる。
「俺と組め。
俺の案なら、国交省も財務省も 呑むぞ」 猪瀬を起用した小泉の最大のブレーンは財 務省であり、郵便局民営化なども財務省や銀 行が望んでいるものに過ぎない。
官僚のなか の官僚の財務官僚によって操られている小泉 が官僚政治の改革者であるわけがないだろう。
田中一昭は前掲書の第六章「政府与党案づく りに踊った『フィクサー作家』」の「なぜ自ら 擦り寄るのか」という一説で、『産経新聞』が 書いた「首相補佐官に猪瀬氏」という説を紹 介している。
これを読んで田中が、おめでと うという電話をかけたら、猪瀬は、 「いや、まったくデタラメの記事ですよ。
前 にはあったんだけどね‥‥」と答えたとか。
自己肥大症ともいうべき猪瀬を、小泉はう まく利用している。
利用する人間が悪いのか、 利用される?病人〞がバカなのか。
いずれに せよ、二人とも改革者ではない。
「俺と組め。
俺の案なら官僚も呑むぞ」 猪瀬と小泉という二人のエセ改革者

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