ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2013年4号
物流不動産Biz日記
第1回“不動産屋のような真似をするな!”

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

53  APRIL 2013  ?物流不動産?という言葉が一般的に使わ れるようになりました。
実は、この言葉は、 私が倉庫会社の営業マンだった十数年前に、 先輩から「不動産屋のようなことはするな!」 と怒られて返し文句として口から出た言葉 なんです。
「不動産じゃない。
?物流不動産? だ! オレは物流施設を有効に活用する方 法を提案しているんだ」って、私は言い張 りました。
先輩はあきれていましたけど。
 当時、私は、上司や先輩の忠告には耳を 貸さず、空いている物流施設の情報を集め て回っていました。
倉庫会社の営業マンと いえば、自社施設に入れる荷物の情報を集 めるのが常識でしたから、他社の空いてい る倉庫を探し回っていた私は確かに業界の 異端児でした。
 それでも、そんな私と嫌がらずに付き合っ てくれる他の倉庫会社の営業マンもゼロでは ありませんでした。
そんな数少ない同士た ちと、空き倉庫の情報を密かに共有しまし た。
各社とも自社倉庫では対応できないお 客様の情報を持っているので、うまくニーズ を合致できないか互いに情報交換するんです。
成約すれば、再寄託や紹介料などで会社の 売り上げになります。
これが今、イーソーコ グループでやっている「物流不動産Biz」 の原型です。
 倉庫会社の営業マンの成績って分かりや すいですよね。
荷物が倉庫にあるか、ない か、ですから。
物流不動産Bizは違います。
自社倉庫に荷物がある、なしにかかわらず、 売り上げが上がる。
当然、周りは「アイツ は何をやっているんだ?」と思う。
それで「不 動産屋」って怒られたんでしょうね。
 物流不動産Bizの基本は、空いている 倉庫の情報と、倉庫を探している情報のマ ッチングです。
当初は紹介料という形で売 り上げを作っていましたが、正式にビジネス にするために、二〇〇〇年に宅地建物取引 事業として開始しました。
それがイーソーコ 株式会社の始まりです。
 現在は、倉庫の借り手に対して重要事項 説明を行い、仲介料を頂いています。
家を 借りたり買ったりするときに、不動産会社 のスタッフが宅地建物取引主任者を証明す るカードを取り出して、説明するでしょう? それと全く同じことを物流不動産Bizは しています。
 そして、このビジネスを飛躍的に成長さ せたのがマスターリースです。
自分で倉庫を 借り上げて他のテナントに貸すことで、賃料 の差を収益とします。
仲介は契約した時だ けしか売り上げが立ちませんが、マスターリ ースは継続的に収入があるので経営が安定 します。
 倉庫業界には「再寄託」という商慣習が 古くから根付いています。
自社施設に空き スペースがないときに、寄託を請け負った荷 物を別の倉庫会社に再寄託して保管しても らうんです。
この場合、荷主から収受する 保管料や荷役料と再寄託料との差額が自分 の収益となります。
 マスターリースはこれを倉庫施設の賃貸借 契約で行ったものと考えることができます。
倉庫会社にはなじみやすく、サービスメニュ ーが増えることで、お客の幅、営業の幅を 格段に広げることができます。
条件の良い 物流施設であれば、自社で借りてそのまま 運用することもできます(当社は物流事業 免許がないのでやっていませんが)。
 ただし、単純に借りて貸すだけの「転貸」 では、オーナーも荷主テナントもいずれ離れ ていきます。
物流と不動産の両方の知識を 持って両者の間に入り、調整役としての役 割をしっかり果たしていくことで初めて継 続的なビジネスが可能になります。
 実際に物流不動産Bizを行っていく上 で、カギになるのは情報です。
それも荷主 テナント情報ではなく物流施設情報が重要 になります。
多くの物流施設情報を持って いる会社には、おのずと物流施設を求めて いる荷主テナントや不動産会社が集まってき ます。
 そんな物流不動産Bizのリアルな姿を、 次回から私の体験を基に紹介していきます。
大谷巌一(おおたに・いわかず) 1957 年生まれ。
高千穂商科 大学卒。
81年、東京倉庫運輸 入社。
同社物流部門、不動産部 門を経て2003 年、イーソーコ 副社長就任(現職)。
2010 年、 イーソーコドットコム会長に就 任。
現在に至る。
著書に『これ からは倉庫で儲ける!! 物流 不動産ビジネスのすすめ』(日 刊工業新聞社)など。
PROFILE 第1回“不動産屋のような真似をするな!”

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