ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2004年3号
特集
中国の第三者物流 ハマキョウレックス――中国式・日替わり班長制度

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2004 20 ハマキョウレックス ――中国式・日替わり班長制度 日本の「しまむら」や「赤ちゃん本舗」などに納品するアパレル製 品の検品センター事業で中国に進出した。
取扱量の拡大を受けて今年 2月には上海市郊外に新センターも稼働。
現場作業員の数を従来の倍 に増やした。
作業生産性を高めるため、日本の物流センターと同様の 「日替わり班長制度」の導入を進めていくことにした。
アパレルの中国シフトに対応 上海市宝山区――。
市内の中心部から車で一時間 ほど離れた同区内の小さな町の一角に、日系企業が 運営する物流センターがある。
もともと役所の事務所 だった施設を改良するかたちで造られたこのセンター では、検品や「検針」と呼ばれる作業を請け負ってい る。
工場で生産されたアパレル製品などに針が残って いないか、注文通りに縫製されているかなどをチェッ クする。
ジーンズ、Tシャツ、ベビー服など中国各地で生産 されたアパレル製品が毎日大量に運び込まれてくる。
センターではこれを中国人女性スタッフ約九〇人で処 理している。
製品はすべて日本に向けて輸出されると いう。
主な納品先は「しまむら」や「赤ちゃん本舗」 といった大手量販店。
出荷量は一日に平均で一万五 〇〇〇枚に達する。
センターを運営しているのは「上海浜神服飾整理有 限公司」。
ハマキョウレックスと、現地のアパレルメ ーカー「上海阪神服装貿易有限公司」の共同出資で 設立された会社だ。
二〇〇二年三月に検品センター 事業を開始し、中国に委託生産工場を持つ日系アパ レルメーカーから業務を受託している。
もともと中国で生産されるアパレル製品は中国と日 本でそれぞれ検針・検品が行われてきた。
これを人件 費の安い中国のみ一回で済ませて、中国から直接日 本の納品先に出荷する体制に改める。
それによって検 針・検品の作業コストを大幅に削減する。
さらに作業 工程を一つ減らし納品までのリードタイム短縮を実現 することで、顧客企業に貢献するのが狙いだ。
ハマキョウではそれまで千葉県成田市の物流センタ ーでアパレル向けの検針・検品、値札付け業務を請け 負ってきた。
中国製アパレル製品の本格的な輸入が始 まった九〇年代後半になると、同センターは「いくら パートさんを増やしても追いつかないくらい仕事が忙 しかった」(ハマキョウレックスの小山眞一関東営業 部長代理)という。
ところが、二〇〇一年の春シーズンを境に、同セン ターの検針・検品作業は急激に減り始めていった。
こ の頃から日系アパレルメーカーの多くが上海を中心と した中国・華東地区で検針・検品作業を開始したた めだ。
アパレル業界では人件費の安い中国で作業を済 ませて、日本ではノー検品で得意先に商品を届けると いう仕組みが徐々に浸透しつつあった。
このまま放置しておけば、日本での検針・検品の仕 事が減っていくのは確実だった。
それを食い止めるた めにはアパレルメーカーの新たなニーズに対応するし かない。
中国からの商品調達を加速させている流通業 とのパイプを維持するためにも、中国への進出は避け られなかった。
「流通の川上部分となる中国を抑えておかないと日 本国内での物流の仕事が減っていくのは明らか。
黙っ て指をくわえて見ているわけにはいかなかった。
中国 には世界の工場という顔と、世界最大の消費地という 顔がある。
今後、中国国内の物流需要も拡大してい く。
大きなビジネスチャンスがあるから中国に進出さ せてほしいと経営陣に訴えた」と小山部長代理は中国 に検品センターを開設した経緯を説明する。
目標処理数を宣言させる 現在、「上海浜神」ではタキヒヨーや伊藤忠商事な ど六社の検針・検品作業を請け負っている。
年商は 約六〇〇〇万円。
年間出荷量は五〇〇万枚に上る。
二 〇〇二年三月のセンター稼働以来、出荷量は右肩上 やらまいか物流通業《特別編》第2部独自モデルでニッチ市場を開拓 21 MARCH 2004 がりで増え続けているという。
「中国人スタッフたち の作業レベルは格段に向上している。
それに伴い、既 存の取引先から委託量を増やしたいという依頼や、新 規の引き合いも多くなってきている」(上海浜神服飾 整理有限公司の楠本清一副総経理)。
取扱量の拡大でセンターが手狭になってきたため、 今年二月には同じ宝山区内に新センターを稼働させた。
延べ床面積三二〇〇平方メートルの二階建て。
既存 のセンターの二倍の広さを確保した。
作業員の数を一 気に一五〇人にまで増やし、月間の処理能力を三〇 万枚から六〇万枚にまで引き上げる計画だという。
既存のセンターはいわば「町工場」ほどの規模だっ た。
そのため、作業の進捗管理や技術指導を日本人 スタッフ三人でカバーすることができた。
これに対し て、新センターはフロア、作業員ともにほぼ二倍の規 模。
管理スタッフの目が届きにくい環境になってしま う。
現場では作業生産性が低下するのではないかと懸 念された。
そこで「上海浜神」は日本のハマキョウの物流セン ターで広く浸透している「日替わり班長制度」を導入 してみることにした。
この「日替わり班長制度」とは 現場のスタッフたちに毎日交代で職場のリーダーに就 いてもらうルール。
全員に責任ある仕事を任せる。
自 分たちで自主的に作業の進捗を管理させる。
それによ って職場を活性化させ、作業生産性の向上につなげて いこうというものだ。
ハマキョウではこの取り組みを 通じて物流現場のコスト競争力強化を図っている。
「上海浜神」のセンターでは手始めに毎日の朝礼を 義務付けた。
各班は朝礼の場でその日の「目標処理 枚数」を宣言する。
達成できた場合は終業時にその班 を誉める。
反対に未達の場合には何故できなかったの か。
その要因を班のメンバーで徹底的に話し合っても らうことにした。
日本で実行している仕組みやノウハ ウを中国のセンターはそのまま?輸入〞した格好だ。
中国版・日替わり班長制度と日本版との違いは作 業員の「帽子の色」くらい。
センターではその日の班 長が誰なのか判別できるように現場スタッフが身につ ける帽子の色を変えた。
一般のスタッフはピンク。
班 長は青。
そして班長たちを統括して作業指示などを出 す現場監督者には黄色い帽子を被らせている。
当初センターではこうした日本的な現場管理のやり 方をなかなか受け入れてもらえなかったという。
決め られた時間内に目標枚数を処理できなくても私には関 係ない。
出荷残は明日作業すればいいじゃないか。
終 業時間になったからさっさと家に帰ろう――。
そんな 姿勢で働いている現場スタッフがほとんどだった。
しかし最近では「お客さんに迷惑が掛かるから何と か出荷を済まそうと呼び掛ければ残業してくれるスタ ッフが増えてきた。
仕事に対する意識に変化が見られ る。
リーダーも育ってきた。
日本の物流現場に少しずつ近づいている」と佐藤悦男副総経理は説明する。
こうして日替わり班長制度の効果は徐々に出始め てきているものの、肝心の作業生産性はまだ満足でき る水準にはないという。
現地視察にも訪れるハマキョ ウの大須賀正孝社長の評価はとりわけ厳しい。
現場は 常に「中国だから日本と同じようにセンターを運営で きませんというのは言い訳にすぎない。
改善活動の繰 り返しで出荷処理能力を高めていくように」と発破を 掛けられている。
言葉はもちろん、文化や習慣、そして仕事に対する 意識が日本とは大きく異なる中国でハマキョウ流のセ ンター運営手法が本当に通用するのか。
上海浜神によ る「中国的日替班長制度」の導入はその試金石とな りそうだ。
特 集 今年2月に稼働した新検品センター1日平均で15,000枚を処理する

購読案内広告案内