ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年3号
特集
第2部 注目5カ国の物流市場勢力図 インドネシア──内需向け自動車物流から消費財に拡大

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

 インドネシア経済を牽引する自動車産業は日系メーカーが 上位を席巻。
今後も増産が見込まれる。
これに伴い、日系物 流企業の存在感はますます高まっている。
足下では食品や消 費財分野の日系メーカーの進出によって、小売店や消費者に 向けた川下の物流ニーズも生まれている。
     (石鍋 圭) 自動車の国内販売はASEANで首位  インドネシア経済の主役は二〇〇〇年頃を境に電機 関連から自動車関連へとシフトしている。
一一年の 国内自動車販売台数は八九万台を超え、タイ(同七 九万台)を抜いて初めてASEAN域内で首位に躍 り出た。
しかも、同国の自動車販売シェアは、トヨ タ、ダイハツ、三菱、ホンダ、いすゞなどの日系メー カーが九割以上を占めている。
 インドネシアは世界有数のバイク王国でもある。
一 一年の二輪車の国内販売台数は九〇〇万台にもう一 歩というレベルに達している。
中国、インドに続いて 世界第三位の規模だ。
ここでもホンダとヤマハが圧倒 的な二強として市場を席巻している。
 インドネシアで生産される自動車やバイクは大半が 内需向けだ。
そのため物流企業の役割は、主に輸入 業務と首都ジャカルタがあるジャワ島内での物流に集 約される。
そこでは既に日系物流企業が圧倒的な存 在感を示している。
七〇年代にいち早く進出した山 九をはじめ、日通や日立物流といった他の大手どこ ろも二〇〇〇年代初頭までに進出を済ませ、荷主の 業容拡大を支えている。
 物流企業と並び、日系商社も物流事業に意欲的に 取り組んでいる。
住友商事は首都ジャカルタから約三 〇キロの距離に工業団地「イーストジャカルタインダ ストリアルパーク」を九〇年に建設し、誘致した企業 の物流を取り込んでいる。
現在の入居企業は約一〇 〇社だが、そのうちの七〇〜八〇社が日系企業。
ア イシン精機や武蔵精密工業など自動車関連企業のほ か、パナソニックやセイコーエプソンなどが名を連ね ている。
 「進出準備段階から操業後まで物流も含めて支援で きる体制を敷いている。
これは荷主にとって大きな メリット。
商社系物流ならではの強みだ」と住友商 事の笠井雄介国際物流事業部事業企画チーム主任は 説明する。
 兼松も同じ九〇年に現地法人を開設し、八〇〇人 規模の物流スタッフを抱えて大々的に事業を展開して いる。
丸紅、伊藤忠も住友商事と同様の工業団地ビ ジネスを手がけている。
 製造業に続いて、二〇〇〇年代後半からは消費財 や食品分野でも日系メーカーの進出が目立ち始めて いる。
今では国内主要都市のショッピングセンターに は日本製の商品が多く陳列されるようになっている。
そうした流通業向けの物流需要を取り込む日系物流 企業も登場している。
 伊藤忠ロジスティクスもそのうちの一社だ。
現在の 事業領域はフォワーディングに留まっているが、今後 一〜二年の間に国内物流に踏み込む。
同社の鈴木義 巳グローバル事業・開発本部本部長代行は「勃興す る内需を取り込むためには輸出入業務だけでは不十 分。
倉庫、運送機能を整備し、インドネシアでの業 容をスピーディに拡大させる」と意気込みを語る。
 現在のインドネシアでは運送サービスはネガティブ リスト(外資規制分野)に載っており、外資企業は 最大四九%までしか資本参加することができない。
そのため国内企業との合弁設立を軸に検討を重ねて いるという。
 インドネシアは一万八〇〇〇以上の島々から成る 島嶼国家だ。
製造業の場合であれば産業が集積する ジャワ島に投資を集中すれば済んだが、消費財や食 品の国内物流を手がけるとなればどうしても島間輸 送が多く発生する。
管理の面で煩雑さが増すことは 避けられない。
それでも、鈴木本部長代行は「イン MARCH 2012  38 インドネシア ──内需向け自動車物流から消費財に拡大 注目5カ国の物流市場勢力図 第2部 ドネシア市場にはそれだけのことをする価値がある」 と判断している。
脆弱な物流インフラ  物流企業が一様に頭を悩ませているのが脆弱なイ ンフラだ。
ジャカルタ中心部から北東約一〇?に位 置する最大の港湾「タンジュンプリオク港」では、キ ャパシティの限界や機材の老朽化が取り沙汰されて いる。
港に到着する荷物がオーバーフローし、周辺倉 庫へ半ば押し込み的に転送されることが常態化して いる。
その転送や保管にかかるコストは荷主持ちだ。
機能の拡充や代替となる港の新設が各方面から提案 されているが、本格的な実施には至っていない。
 ジャカルタの西方二〇?に位置する基幹空港「スカ ルノハッタ空港」においても、カーゴターミナルの施設 スペックやサービスに対する評価は決して満足のいく ものではないと物流企業の担当者は口を揃える。
「照 明器具が不十分で作業に支障をきたす」「トラックド ックの奥行きが狭い」といった問題が山積している。
 ジャカルタから東に伸びる「チカンペック高速道路」 は沿線に多数の工業団地を抱える基幹産業道路とし て機能している。
ここでは交通渋滞が慢性化してい る。
ある物流関係者は「わずか二〇?進むのに半日 以上かかる。
迂回ルートも無いため我慢して通るし か無い」と頭を抱える。
 タンジュンプリオク港やスカルノハッタ空港からチ カンペック高速道路にアクセスする道路でも同様の渋 滞が常態化している。
物流企業はリードタイムを読 むことができない。
現地のマネジメント層にとっては 頭痛の種だ。
道路自体もまだ未舗装地帯が多いため、 貨物へのダメージが発生しやすい。
道路整備の推進 やメンテナンスの強化が求められている。
39  MARCH 2012 代表的な現地法人 日本通運 山九 日立物流※3 近鉄エクスプレス 日新 三菱倉庫 郵船ロジスティクス※5 バンテック 日本梱包運輸倉庫 会社名都市・ 拠点数 倉庫延べ床 面積合計スタッフ数運用車両台数 (うち自社保有台数) 6,200? 16,310?※2 約39,000? 828? 220? 13,000? 1800? なし 19,998? 5 都市 12 拠点 11 都市 14 拠点※1 4 都市 9 拠点 4 都市 5 拠点 2 都市 2 拠点 2 都市 2 拠点 6 都市 7 拠点 1 都市 1 拠点 2 都市 2 拠点 日本人12 人、 現地採用398 人 日本人24 人、 現地採用1105 人※1 日本人11 人、 総スタッフ約400 人 日本人10 人※4、 現地採用130人 日本人2 人、 現地採用15人 日本人1 人、 現地採用22人 日本人6 人、 現地採用320人 日本人1 人、 現地採用なし 日本人3 人、 現地採用180人 40 台 (34 台) ─ ─ ─ ─ 20 台 (0 台) 約30 台 (2 台) 21 台 (9 台) なし Kintetsu World Express Indonesia、 Kintetsu Logistics Indonesia インドネシア日本通運 日通インドネシア物流 山九インドネシア国際 Berdiri Matahari Logistik NISSIN TRANSPORT INDONESIA インドネシア三菱倉庫会社 YUSEN AIR & SEA SERVICE INDONESIA 駐在員事務所 NIPPON KONPO INDONESIA スマトラ島 メダン ジャカルタ(タンジュンプリオク港、 スカルノハッタ空港) バンドン ジャワ島 デンバサール (バリ島) ティモール島 ニューギニア島 スラウェシ島 カリマンタン島 スマラン スラバヤ チカンペック マレーシア シンガポール ブルネイ 主要物流企業のインドネシア展開 ※1 2012 年1月時点 ※2 2011 年 9月時点(外注先の運用車両台数は一定ではないため、ヒアリングベースの概数) ※3 2011 年9月30日時点、持ち分法適用会社含む、バンテックグループを除く ※4 日本人スタッフには現地採用日本人も含む ※5 2011 年12月末時点 ※2 伊藤忠ロジスティクスの 鈴木義巳グローバル事業・ 開発本部本部長代行 物流大手の 特集

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