ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2012年10号
特集
Interview 「世界中の投資家が日本を向いている」 プロロジス 山田御酒 社長

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2012  18 もはやライバルはいない ──今年に入り、三菱地所や三井不動産が市場に参 入しました。
この動きをどう見ていますか。
 「彼らが手がけるに足る規模にまで物流不動産市場 が成長したということではないでしょうか。
遅いか 早いか、タイミングの問題だけで、いずれは参入し てくるはずだと思っていました。
オフィスや住宅を扱 う不動産事業は市況が大きくアップダウンします。
波 がボトムにある時にそれを補完する事業を総合ディベ ロッパーは必要としています」 ──御社にとって脅威になりますか。
 「一つ言えるのは、オフィスや住宅と物流施設とで は、同じ不動産業といっても全く異なる領域だとい うことです。
収益性も違えば、リーシング方法なども 全く違う。
物流不動産は他のアセットクラスに比べる と地味なビジネスです。
専門ノウハウも必要になる。
三菱や三井というブランドには大きな力があるのは確 かでしょうが、それだけで簡単にうまくいく世界で もないはずです」 ──そのため三菱地所はラサール、三井不動産はG LPと開発で手を組みました。
 「当社も財閥系等から共同プロジェクトを打診され ることはありますが、今のところその必要性を感じ ません。
物流不動産ビジネスに必要な機能はすべて 社内のスタッフで対応できます」 ──この二年ほどの間に新たなプレーヤーが次々に参 入し、それぞれ十分な資金を確保しています。
 「日本の物流不動産市場が一定のポジションを得た ということでしょう。
一〇年前と違って今や、世界 中で投資している一流の投資家たちが日本の物流不 動産市場を認識しています。
しかも今は日本の他に 投資先がない。
欧州は厳しい。
中国もリスクが大き い。
アメリカの不動産は、これから良くなると言われ ていますが、それが確実になるまで見極めたい。
そ うなると、日本だ、ということになる」 ──土地価格が高騰しそうです。
 「既にそういう傾向は出ていますが、我々はそうい った競争には付き合いません。
ファンドや新規参入者 は、投資家から資金を集めた以上、土地や建物の価 格が多少上がっても買わざるを得ない。
それに対して 当社には焦る理由は一つも無い。
自分達のペースで、 適格だと判断した案件にだけ投資していきます」  「土地の取得は入札が全てではありません。
リーマ ンショック前も同じように土地が高騰しましたが、そ の時に我々が何をしたかというと、市街化調整区域 から開発用地を確保したり、商社やリートと組んで プロジェクトファイナンスを実行するなど、アプロー チを代えて投資機会を得ていました。
現在も、次の ステップとして新たなカードを温めています」 ──プロロジスとAMBが昨年六月に経営統合して一 年が経ちました。
 「グローバルレベルでいうと、財務状況が改善してキ ャピタルマーケットからの評価が上がったことや、顧 客のパイが広がったこと等が大きな変化と言えます。
また、世界一位と二位の会社が統合したことで、ラ イバルと呼べる存在はいなくなりました。
以前のプロ ロジスとAMBは株価や賃料、開発件数など様々な 面で比較されることが多かったのですが、そういっ たこともなくなりました」 ──統合は日本市場における展開や体制にも影響し ますか?  「日本でのオペレーションに関しては、特に大きな 変化はありません。
基本的には今までの延長線上で 「世界中の投資家が日本を向いている」  日本の物流不動産市場の評価は定まった。
世界中の 投資家たちが今や日本を向いている。
プロロジスもポー トフォリオを組み替える。
これまで1割程度に過ぎな かったアジアの資産を3 割以上に引き上げる。
日本の 物流施設がその中核となる。
           (聞き手・大矢昌浩、石鍋圭) プロロジス 山田御酒 社長 19  OCTOBER 2012 す。
ただし、リーシング力は高まっている。
我々の 世界で何より大切なのは顧客との繋がりです。
例え ば『五〇〇〇坪のスペースを、坪当たり四〇〇〇円 で一〇年間賃貸する』という大型契約を結ぶとなる と、人と人との信頼関係が無ければなかなか実現し ません。
逆に言うと、信頼関係さえ構築できていれ ば、さらに次の契約にも繋がっていく」  「実際、当社が新規開発した施設に入るテナントの 八割は既に付き合いのある顧客です。
そういった信 頼関係を顧客との間に構築できている人材を多く抱 えていることは、当社の強みです。
特に日本には仲 介機能を担う外部の事業者があまり育っていないの で、リーシング機能を待たない、あるいはリーシング 機能の弱い他のプレーヤーとの差は大きい」 規模の拡大は追わない ──統合前後から、グローバルで大きな資産の入れ替 えを行っています。
 「市場ごとにメリハリをつけることが目的です。
今 後注力する市場、撤退する市場、現状を維持する市 場などを明確にし、それに沿って資産を入れ替える。
現在のポートフォリオは大まかにアメリカが七割、欧 州が二割、アジアが一割ですが、これをそれぞれ三 分の一ずつにする青写真を描いています。
それも以 前のように借入金を増やして開発し、全体の資産規 模を大きくしながら実現するのではなく、全体の大 きさはそのままに、例えばアメリカの資産を売却して アジアでの開発資金に充てるというように調整する 方針を採っています」 ──日本での投資スタンスは?  「景気の動向にかかわらず、年間で四〇〇〜 五〇〇億円をコンスタントに投資し、四〇〜五〇万? の床をマーケットに供給していきます。
開発する案件 は、できればBTS型をメインにしたい。
実際、こ の一年の当社の開発案件の多くはBTS型です。
特 に地方においてはBTSのリクエストを多数頂いてい るので、そのニーズに丁寧に応えていく」 ──他のプレーヤーの多くは投資効率の良い東京圏や 大阪圏に資金を集中する方針を立てています。
 「当社も投資の七〜八割ほどは東京圏・大阪圏にな りますが、ニーズのある地方への投資もおろそかに はできません。
自分の都合だけを優先し、投資効率 が良いから東京圏・大阪圏しかやらないというスタ ンスは、物流不動産を専門とするプレーヤーにあって はならないことだと個人的には考えています」 ──資金の調達方法としてはファンドの組成なども 視野に入っているのですか?  「現在、日本で新たなファンドの組成に向けて動い ています。
私募ファンドのほかにも、Jリート市場に 上場する可能性もあるし、自ら施設を保有するオプ ションも依然としてあります。
幸いなことに現在は 財務状況が良好なので、あらゆる選択肢がとれます」 ──日本では積極的に投資するというお話でしたが、 一〇棟以上の資産を売り出しているという話も聞こ えてきますが。
 「グローバルでの方針と同様、日本国内でも資産の 入れ替えを行います。
チャンスがあれば当社にとって 非戦略的な資産は売却し、新しい施設の開発に繋げ ていく。
繰り返しになりますが、以前のように規模 拡大を優先させるフェーズは終わっています。
大きい ことが必ずしもベストではありません。
古い資産を新 しい資産に置き換え、良い市場、良い顧客に提供し ていくことが当社の使命です」 楽天専用の「プロロジスパーク川西」(兵庫県川西市)。
楽天にとって西日本エリアをカバーする重要拠点となる。
2013 年11 月完成予定 「プロロジスパーク習志野4」はマルチテナント型の仕様だが、 ファッション通販のスタートトゥデイが全フロアを借り切る。
完成予定は2013年8月

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