ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2012年7号
メディア批評
小泉・竹中「改革」が生んだ社会問題に頬被り無自覚に新自由主義に与する朝日新聞経済部

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高 信 経済評論家 JULY 2012  70  先日『朝日新聞』が大々的に竹中平蔵のイ ンタビューを載せていて驚いた。
『竹中平蔵こ そ証人喚問を』(七つ森書館)と主張してい る私としては見逃すことができない。
 とくに経済面に於いて『朝日』は『日経』 や『産経』と変わらない新自由主義路線である。
それが日本をダメにしたことはハッキリして いるのに、『朝日』にはまったくその自覚が ないらしい。
私は『小泉純一郎と竹中平蔵の罪』 (毎日新聞社)という時評集も出したが、『朝 日』の罪も加えなければならない。
 私は『週刊金曜日』の二〇〇九年一月三〇 日号で「『朝日新聞』経済部の皮相」を問題 にした。
思想ならぬ皮相である。
 当時、宮内義彦率いるオリックス・グルー プの不動産屋が「かんぽの宿」を一括購入し ようとしていたことに関してだった。
 以下、要旨を引用する。
 〈民営化ならぬ会社化、規制緩和ならぬ安 全緩和を「改革」と称して、小泉純一郎や竹 中平蔵と共にその旗を振ってきた宮内が、そ の果実を手に入れるのはあまりにあさまし いと私は思うが、それに「待った」をかけ た総務大臣の鳩山邦夫に対して、『朝日』は 二〇〇九年一月一八日付の社説で「筋通らぬ 総務相の横やり」と異議を唱えた。
多分、経 済部出身の論説委員が書いたものだろう。
「過 去の経歴や言動を後になってあげつらうので は、政府に協力する民間人はいなくなってし まう」と言うが、この言い方は翌一九日付の『産 経新聞』に竹中が書いた「いったん政策が決 められたとして、それに関係する経済活動が その後できないとなると、民間人はだれも政 府の委員会メンバーになどならなくなる」と 酷似する。
九日付の『日本経済新聞』の社説 にも同じような表現があったが、これは「政 府に協力する民間人」がいずれも?役得?目 当てであることを問わず語りに告白している ということではないか。
とりわけ『朝日』の 経済面と『日経』の論調は見分けがつかない ほどに似通っている。
小泉・竹中の「新自由 主義」支持ということで一致しているのであ る。
それで私は『サンデー毎日』のコラムで「日 経?竹中?新聞」と「朝日?オリックス?新 聞」と皮肉った。
いわゆる派遣切りの問題を 社会面などで大きく取り上げても、それが小 泉・竹中、そして宮内らの「改革」が生んだ ものだと経済部が指摘しなければ、そのバラ バラは読者を惑わすだけである〉  宮内の醜悪さを小説という形で描いたのが 高杉良の『虚像』(新潮社)であり、竹中の 弟分として、遂には獄に落ちた日本振興銀行 の木村剛の軌跡をドラマ化したのが、やはり 高杉の『破戒者たち』(講談社)である。
 『朝日』に盲目的信仰を抱く読者と、『朝日』 の経済部の記者はこれらを熟読して、竹中平 蔵の罪を頭に叩き込むべきだろう。
 経済部に比して、政治部はまだまともであ る。
二〇一二年六月五日付のオピニオン欄の 田中秀征(元首相特別補佐)インタビューは 秀逸だった。
 「約束破る首相に世論は失望」という見出 しで、野田のやり方は「自民党は民主党より 正しかった」と言っているようなものだ、と 批判する。
 「総選挙で民主党に投票した人は、身の置 き所がないだろう」と続けているが、巧みな 表現である。
 「消費増税について、野田さんは代表選で 約束したというが、これは党内の約束であって、 国民との約束ではないことが分かっていない。
財務省は野田さんの決断で自民党も取り込め て、増税がうまくいくと思っているのだろうが、 大震災後、いっそう懸命になった世論を甘く みることはできない」  これもその通りだろう。
保守の政治家で 財務省にコントロールされなかったのは田中 秀征と野中広務ぐらいと私は指摘してきたが、 それを裏づける野田内閣論である。
小泉・竹中「改革」が生んだ社会問題に頬被り 無自覚に新自由主義に与する朝日新聞経済部

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