ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2011年3号
メディア批評
政治家による笑止千万な過去の無責任発言「新聞」だけではなく「旧聞」検証の必要性

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高 信 経済評論家 MARCH 2011  74  二〇〇三年十一月に出た『政権交代のシナ リオ』(PHP研究所)という本がある。
小 沢一郎と菅直人の共著である。
 いま読むと、ブラックユーモアでしかない。
それぞれが交互に発言する。
嗤えるものを拾 っていこう。
まず、菅である。
 「私が最も驚いたのは、二〇〇三年一月の 衆院予算委員会での小泉首相の発言です。
小 泉首相が『国債発行三十兆円枠』『終戦記念 日の靖国神社参拝』『ペイオフ全面解禁』と いった公約を次々に破っていることについて 問い質したところ、『この程度の約束を守れ なかったことは大したことではない』と開き 直ったことです」  これに小沢は「言語道断であり、日本の 憲政史上、最低の首相答弁」と応じているが、 いま、次々とマニフェストを破っている菅は この発言を抹消したいだろう。
私が菅を?愛 嬌のない小泉?と規定した意味が、この点で も当たってくることになる。
 この本は民主党と、小沢率いる自由党が合 併した直後に出されているが、菅は合併大会 で「脱官僚宣言、五つの約束、二つの提言」 なるものを出したらしい。
多分、これも菅は 消したいのではないか。
 『週刊ポスト』の二月一八日号に、アメリカ の格付け会社「スタンダード・アンド・プア ーズ(S&P)」が日本国債の格付けを引き 下げたことについて問われた菅が、  「そういうことには疎いので改めてにして ください」  と言い放ったことに触れて、菅が九年前に 自分のホームページで書いた「恥ずかしい」 指弾を引いている。
 「景気回復が見込めず財政悪化に歯止めが かからないと見られた結果、(中略)外国に 資金が流出し始めれば一挙に国債は暴落する 恐れがある。
能天気な総理や財務大臣には 分かっているのだろうか」(二〇〇二年五月 三一日)。
あるいは菅は自分でこれを書いたのではない のかもしれない。
 『週刊ポスト』は、菅を、「疎い」どころか、 時の首相・小泉純一郎や財務相・塩川正十郎 を?格付けの意味を知らないアホ?と一刀両 断していた、と皮肉り、「九年の歳月は、そ こまで菅氏の脳を衰えさせたのだろうか」と 嘲笑している。
 そしてこの囲み記事の結びはこうである。
 「政治家は言葉に責任を持つべき――とは、こ れまた過去に菅氏が繰り返してきたフレーズで ある。
『疎い』発言は、菅氏の政治家としての 格付けを大きく引き下げたことは間違いない」  前掲の共著には、小沢の「能天気な」発 言も載っている。
小選挙区制は必然的に似て くる二大政党を産むので私は大反対だが、民 主党が勝った場合は二大政党制にはならない、 と小沢は言う。
 「なぜかというと、自民党がなくなってし まうからです。
自民党は権力の座にあること だけでまとまっている政党です。
権力から離 れれば、必ず分裂します。
いまは多数派で結 束の固い参院自民党も、自民党そのものが野 党に転落すれば、次第に解体のプロセスに向 かうでしょう。
その結果、政党は必然的に再 編が始まる」  とくに政治家の発言は、私は少しカメラを 引いて、何年か前のそれと対比して検証すべ きだと思う。
この点では「新聞」ではなく、「旧 聞」でいいのである。
そうしなくては、彼ら の発言の?賞味期限?を測れない。
 菅はこんなことも言っている。
 全国遊説を行うと、まず最初に、  「菅さん、おめでとう」  と祝福される。
結婚したわけでもないのに、  「小沢さんと一緒に戦うということで、間 違いなく国民の期待が高まっている」のだと いう。
しかし、一〇年も経たずに?離婚?も しくは?家庭内別居?になったわけである。
政治家による笑止千万な過去の無責任発言 「新聞」だけではなく「旧聞」検証の必要性

購読案内広告案内