ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2010年2号
物流指標を読む
第14回 リーマンショックの爪跡は消えず

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

  物流指標を読む FEBRUARY 2010  74 リーマンショックの爪跡は消えず 第14 回 ●2010年度も景気回復ペースは微弱の見通し ●国内貨物輸送量は11年連続の減少が必至 ●国際貨物はプラス転換も正常水準には遠い さとう のぶひろ 1964 年生まれ。
早稲田大学大学院修了。
89年に日通 総合研究所入社。
現在、経済研究部研 究主査。
「経済と貨物輸送量の見通し」、 「日通総研短観」などを担当。
貨物輸 送の将来展望に関する著書、講演多数。
最悪期は脱したものの…  日通総合研究所は、昨年末に「2009・20 10年度の経済と貨物輸送の見通し」を発表した。
分析・予測結果を総括すると、足元においては、経 済、貨物輸送とも最悪期を脱し、持ち直しの動き をみせているものの、回復の基調は依然として弱 く、楽観できない状況が続くものとみられる。
 とくに国内貨物輸送量については、〇八、〇九 年度と大きく落ち込んだあと、一〇年度も引き続 き大幅減が予測される。
これに対して、国際貨物 輸送量については、外貿コンテナ、国際航空とも プラスへの転換が期待できる。
ただし、それは〇 八、〇九年度における大幅な減少に対する反動に よる部分が大きく、本格的に回復するまでにはま だ時間がかかりそうだ。
?経済  ?リーマンショック?で加速した百年に一度の金 融危機に、世界各国は積極的な金融緩和・景気対 策で対応している。
その効果により、一〇年の世 界経済は再びプラスの伸びに転じるものと見込ま れる。
ただし、屋台骨を大きく揺さぶられた欧米 の金融システムはなお再建途上にあるため、当面、 欧米主要国の本格的な景気回復は望めそうにない。
今後は、日本を含めて各国で発動された景気刺激 策の効果が減衰に向かうなかで、中国をはじめと する新興国経済の景気牽引力に、より多くの期待 がかかることになる。
ただし、先ごろ表面化した ?ドバイショック?、一部新興国で懸念されるバブ ル発生の可能性など、世界的な大幅金融緩和に伴 う不安定要因を抱えた世界経済の景気回復への道 のりは、決して平坦なものではない。
 日本経済の足元の成長を支えているのは、〇八 年度から〇九年度上期にかけて出動した景気対策 (=公共投資)の押し上げ効果であり、外需と国 内民需の寄与度は前年同期比ベースで依然として マイナスが続いている。
民主党鳩山政権の下では 公共投資の抑制が避けられないこと、雇用環境の 改善の遅れや政府によるデフレ宣言がなされた背 景にある大幅な需給ギャップの存在などから、今 後、公的需要が後退する一方、個人消費・設備投 資といった国内民需の力強い伸びも見込めない。
 こうしたことから、景気回復には世界景気の持 ち直しを背景とした輸出の伸びに一段と依存せざ るを得ない状況にある。
年明け以降も、外需頼み の緩やかな回復基調を持続するものとみられるが、 既往の景気対策効果一巡で一〇年度前半には?踊 り場?局面が避けられない。
一〇年度の経済成長 率は、実質ベースでは一・一%と三年ぶりにプラ ス成長に転じるものの、名目では〇・四%のマイ ナス成長が続くものと予測される。
?国内貨物輸送  内需の持ち直しのテンポが緩慢なことから、一〇 年度も荷動きの回復は見込めない。
総輸送量(ト ン数)は四・〇%減と十一年連続の減少が必至で あり、ピークであった一九九一年度(六九・二億 トン)の約三分の二の水準まで落ち込もう。
ただ し、総輸送量から若干特殊な貨物である建設関連 貨物を除いて試算してみると、同一・七%減とマ イナス幅はいくぶん縮小するものとみられる。
 品類別にみると、消費関連貨物は、消費マイン ドの盛り上がりが期待できないなかで、日用品な 日通総合研究所「2009・2010年度の経済と貨物輸送の見通し」 75  FEBRUARY 2010 般機械、輸送用機械、鉄鋼、石油製品などは水面 下の動きが続くとみられ、トータルでは二%台の 減少が避けられない。
建設関連貨物は、公共投資 が一割近く落ち込むことに加え、住宅、非住宅と も総崩れのなかで、砂利・砂・石材や建設廃土な どを中心に七%台の大幅なマイナスとなり、輸送 量を大きく下押ししよう。
外需にわずかな光 ?国際貨物輸送  一〇年度の外貿コンテナ貨物(主要九港)の輸 出は、世界経済が立ち直りの兆しをみせるなか、自 動車部品、電気機械など機械機器類が堅調な荷動 きとなり、地域的には中国などアジア向け貨物が 牽引役を果たすであろう。
その一方で、欧米向け 貨物の持ち直しが遅れることに加え、再び在庫調 整の動きが表面化する懸念もあって、回復テンポ は徐々に減速していき、年度全体では七・八%の 増加になるものと予測される。
輸入は、個人消費 の伸び悩みを反映して、主力である生鮮貨物、加 工食品、衣料品などの消費財に力強い回復が期待 できないほか、設備投資が小幅増にとどまること を受けて、機械機器にも大きな増加が見込めない ことから、四・九%増と輸出を下回る伸びになる ものとみられる。
 一〇年度の国際航空の輸出は、半導体等電子部 品、半導体製造装置などIT関連貨物をはじめと する機械機器の着実な伸びに支えられ、上期は一 〇%を超える高い伸びが期待されるものの、世界 経済の持ち直しに時間がかかり、本格的な需要回 復が見込めないことから、輸送量自体は前年度下 期をいくぶん上回る程度にとどまる見通しだ。
さ らに下期には、増勢が大幅にペースダウンすること から、年度全体では八・八%の増加となろう。
輸 入は、IT関連貨物など機械機器については着実 な荷動きが予測されるが、内需の回復基調が弱い なかで、回復テンポは徐々に鈍化していくものと みられる。
また盛り上がりに欠ける消費マインド を反映して消費財にも高い伸びが期待できないこ とから、三・七%の小幅な増加にとどまりそうだ。
?企業物流短期動向調査  国内向け出荷量『荷動き指数』は、〇九年一〇 〜十二月実績(見込み)ではマイナス二八となり、 前期(〇九年七〜九月)実績からは二八ポイント 上昇した。
また、一〇年一〜三月見通しではマイ ナス一五とさらに十三ポイントの改善が見込まれる。
 業種別にみると、一〇年一〜三月見通しでは、 その他の製造業や輸送用機械など三業種において 『荷動き指数』がプラスを示す見込みである。
総 じて、生産財に改善の傾向が窺える一方で、消費 財については改善のテンポがやや鈍い。
 一〇年一〜三月見通しの輸送機関別『利用動向 指数』は、国内航空以外の輸送機関については前 期(〇九年一〇〜十二月)実績よりも改善が見込 まれ、とくに一般トラックおよび特別積合せトラッ クではそれぞれ一〇ポイント以上上昇する見通し である。
 一〇年一〜三月見通しの輸出入貨物量『荷動き 指数』は、国際航空の輸入で前期(〇九年一〇〜 十二月)実績よりも若干下降する一方で、外貿コ ンテナの輸出・輸入および国際航空の輸出では改 善する見通しである。
どには引き続き低調な推移が予測されるほか、食 品類にも大きな伸びが見込めないことから、三年 連続で前年度水準割れとなろう。
生産関連貨物は、 鉱工業生産が輸出の増加などを背景に盛り返すほ か、設備投資も若干のプラスに反転するため、化学 製品などには小幅ながら増加が予測されるが、一 年度・期 機関 2009 年度 2010 年度 2008 年度 2009 年度 2010 年度 上期 下期 上期 下期 総輸送量 鉄道 自動車 内航海運 国内航空 建設関連貨物 を除く輸送量 JR その他 営業用 自家用 国内貨物輸送量の見通し単位:百万トン、( )内は対前年同期比増減率(%) 注)1. 原系列 2. 2008 年度まで実績値 3. 実績値は国土交通省の各種統計・資料による 4. 端数の関係で合計が合わない場合がある 2,406.6 2,406.3 2,306.0 2,314.9 5,144.2 4,812.9 4,620.9 (△8.1) (△4.7) (△4.2) (△3.8) (△4.6) (△6.4) (△4.0) 1,362.7 1,431.5 1,329.6 1,418.4 3,050.6 2,794.2 2,747.9 (△11.7) (△5.0) (△2.4) (△0.9) (△4.1) (△8.4) (△1.7) 19.9 21.8 19.4 21.4 46.2 41.8 40.9 (△14.0) (△5.4) (△2.6) (△1.7) (△9.1) (△9.7) (△2.1) 14.4 15.6 14.1 15.6 32.9 30.0 29.7 (△12.7) (△4.7) (△1.6) (△0.1) (△8.6) (△8.7) (△0.8) 5.6 6.2 5.3 5.9 13.4 11.8 11.1 (△17.0) (△7.0) (△5.2) (△5.6) (△10.2) (△12.0) (△5.4) 2,228.5 2,223.5 2,138.4 2,141.4 4,718.3 4,452.0 4,279.8 (△7.1) (△4.2) (△4.0) (△3.7) (△4.3) (△5.6) (△3.9) 1,317.6 1,327.6 1,284.4 1,310.7 2,808.7 2,645.1 2,595.1 (△7.8) (△3.7) (△2.5) (△1.3) (△4.1) (△5.8) (△1.9) 910.9 895.9 854.0 830.7 1,909.7 1,806.8 1,684.7 (△6.0) (△4.8) (△6.2) (△7.3) (△4.7) (△5.4) (△6.8) 157.7 160.6 147.7 151.6 378.7 318.3 299.3 (△20.4) (△11.1) (△6.3) (△5.6) (△7.6) (△16.0) (△6.0) 0.465 0.478 0.471 0.487 0.996 0.942 0.958 (△ 8.0) (△ 2.6) ( 1.4) ( 1.9) (  4.7) (△ 5.4) ( 1.6)

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