ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2009年10号
特集
第2部 消費者は知らない日本の異常な商慣行

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2009  14 赤字価格でも利益が出る仕組み  現在店頭に並んでいる加工食品のNB商品で、最 も強いとされているのが日清食品の「カップヌード ル」だ。
メーカーの希望小売価格が税込一七八・五 円。
それをコンビニは一六八円。
スーパーは一五〇円 前後で販売している。
小売りの仕入れ値は一二〇円 代といわれる。
日本の大手小売業の販管費比率は二 五%程度。
定価で販売しても販管費を引くと利益は ほとんど残らない。
しかし、トップブランドを店頭か ら排除するわけにもいかない。
メーカーや卸から販売 奨励金などのリベートを引き出し、店頭の赤字を後か ら補填することで、何とか安売りしている。
 小売業の販促キャンペーンに対してメーカーが協力 金を出すという取引制度は、世界共通だ。
しかし、通 常取引に対するバックマージンは欧米ではまず見られ ない。
逆に欧米では一般的な、注文ロットを輸送単 位にまとめることによる割引が、日本ではほとんど 定着していない。
日本の取引価格は、店舗に納品す るまでの流通サービスの費用を含めた「店着基準」だ。
小売りがどのような発注をしても仕入れ価格は変わら ない。
そのため小売りは発注を小口化することで在 庫負担を軽減し、なおかつ欠品を避けるために発注 から納品までのリードタイム短縮を卸などのベンダー 側に要求していった。
 近年はそこに「センターフィー」が加わった。
この 一〇年で日本のチェーンストアの多くが自社専用の一 括物流センターを設置した。
その運営費はベンダーが 負担している。
従来の店舗別納品からセンター一括納 品に変わることでベンダーの配送費は減る。
そこから センターフィーの原資は捻出できる、というのが小売 り側の言い分だ。
 実際には、リードタイムの条件が厳しいセンター納 品用に保管場所や車両を新たに用意する必要がある うえ、ベンダーは他に店舗別納品の顧客も持っている ので、配送先の一部がセンター納品に移ることで既存 のルート配送の効率が落ちてしまう。
 小売りの専用センターは大部分が在庫の保管機能 を持たないTC型だ。
マテハン機器もほとんど導入さ れていない。
庫内は体育館のようにガランとしてい る。
各ベンダーが仕分けを済ませて納品したオリコン やケースを、そこで店別にクロスドッキングしている。
 専用センターのスペースは限られているのでベンダー にはクロスドッキング作業の進捗に合わせた指定時間 納品が義務付けられている。
納品が時間に遅れると作 業が止まってしまうためペナルティを課せられる。
し かし早く到着し過ぎれば納品待ちが発生する。
発注 から納品までのリードタイムは数時間。
加工食品業界 においては三時間以内の納品まで求められるように なっている。
 ベンダーは納品先から一時間以内に配送できる場所 に倉庫を借りて在庫を用意しておく必要がある。
注 文を受けたらすぐにピッキングして、トラックの積載 率も構わず出荷する。
当然、コストはかさむ。
それで も顧客の要請には逆らえず、言われた通りにセンター フィーを支払っている。
 これに味をしめた小売りは、センターフィーの運営 費にマージンを載せてベンダーに請求するようになっ ている。
センターの運営を3PLにアウトソーシング し、その委託費にマージンを載せた金額を卸に請求し て利ザヤを抜く。
3PLへの委託費がいくら高くても、 小売りの懐は痛まない。
当初は物流効率化を目的に 始まったはずの一括物流が、いつの間にか新種のマー ジンを得る手段と化している。
消費者は知らない日本の異常な商慣行  ローコスト・オペレーションを進めようとする流通業者 は損をする。
コストを無視した過剰な要求をメーカーや 卸に突き付ける流通業者は得をする。
それが日本の流通 の現状だ。
しかし国内市場は縮小に向かい、ムダを放置 する余裕はもはやなくなっている。
    (大矢昌浩) 第2部 15  OCTOBER 2009  大手加工食品卸で現在、売上高の三%程度をセン ターフィーとして小売りに支払っている。
卸の利益率 は一%を切る。
とても三%ものマージンなど負担でき ない。
結局、センターフィーは名目を変え、メーカー が卸に対して支払うリベートや販促企画費というかた ちでサプライチェーンを逆流している。
 流通問題に詳しい日本ロジスティクス研究所の市川 隆一代表は「センターフィーやマージン以外にも、買 取品の返品や、店頭作業員の派遣など、組織小売業 は様々な要求をベンダー側に強要している。
それをベ ンダーが呑んできたのは、メーカーが?三段階建値 制?を守りたかったからだ」と説明する。
 三段階建値制とは、?メーカーが卸に販売する価 格、?卸が小売りに販売する価格、?小売りが消費 者に販売する価格、という三つの価格をメーカーが決 定する制度だ。
各流通段階の仕入れ価格とマージンを、 メーカーがコントロールすることで全国一律の定価販 売を維持する。
同じ商品でも出荷ロットや輸送距離、 またピースピッキングや仕分けなどの流通加工処理に よって、店頭に並ぶまでのコストは違う。
しかし、従 来は店着基準の建値制をとることで、流通コストの差 をメーカーがならしていた。
巨大化し購買力を増した 小売りに対しても建値制は変えず、こっそりマージン で補填することで対応してきた。
 建値制のメリットは地方の小規模単独店でも、大 手チェーンと変わらない価格で販売できることにある。
大手もまた、一定のマージンが約束されているので、 在庫管理やバックヤードのことを気にせず、店舗を増 やし、売り上げを伸ばすことに集中できる。
 ただし、ローコストに向けたインセンティブは働か ない。
ピースピッキングが不要で人手のかかからない 店舗フォーマットを小売りが開発し、発注を車両単位 にまとめても、仕入れ価格は下がらない。
そのため、 サプライチェーン全体の最適化と逆行する取り組みば かりが広がってしまった。
小売りの専用センターが消える  市場が拡大を続けている間は建値制も有効に機能し た。
しかし今や国内人口はピークを過ぎ、市場規模は 縮小に向かっている。
二強とされるイオンやヨーカ堂 でさえ、GMS事業は赤字ギリギリだ。
中間流通では 淘汰が急速に進んだ。
低価格化で利益率の落ちたメー カーはマージンを渋り始めた。
サプライチェーンの非 効率を温存する余裕はなくなっている。
 流通論を専門とする寺嶋正尚産業能率大学経営学 部講師は「これまでの取引慣行では、どんなに小さ な小売りでも専用センターを持ちたがるのは当然だっ た。
専用センターを設置することで、収益を高めるこ とができるのだから、それが小売りにとっての最適化 だった。
しかしサプライチェーン全体から見ればこれ ほどの非効率はない。
実際、汎用センターに比べて専 用センターは明らかに稼働率が低い」と指摘する。
 年商一〇〇億円規模の小売りでも今では多くが専 用センターを設置している。
しかし、動いているのは 一日十二時間程度。
稼働中であってもキャパの六〜七 割しか利用していない。
市場規模縮小の影響を受け て今後取扱高が減っていけば、センターフィーの料率 引き上げが避けられない。
 しかし、ベンダー側はそれを受け入れるだろうか。
拒否されれば収益源のはずだった専用センターが負債 に変わる。
その運営を委託されている3PLや卸も ダメージを被る。
卸と同等以上の物量を確保できない 専用センターは、早晩立ち行かなくなる可能性が高い。
それを前提に物流戦略を立てる必要がある。
日本ロジスティクス研究所 の市川隆一社長 日米欧の取引制度比較 割戻・割引制度 種類 日本 米国 欧州 取引機能割引 基本手数料 販売機能割引 帳合手数料 あり なし なし 分荷手数料 物流条件割引 購買機能割引 決済条件割引 なし あり あり 発注条件割引 期間リベート 販促企画費 基本手数料 小売業との取引に対する割引・割り戻し 帳合手数料 二次卸との取引に対する割引・払い戻し 分荷手数料 物流業務が発生する取引に対する割引・払い戻し 物流条件割引 販売先の発注ロットに応じた割引・払い戻し 決済条件割引 販売先の代金決済期間に応じた割引・払い戻し 発注条件割引 EOS 発注などの発注形態・方式などに対する割引・払い戻し 期間リベート 年間・半期等の販売実績や貢献度に対する割引・払い戻し 販促企画費 個別の販促企画を対象とする割引 資料:寺嶋正尚氏作成 卸売業向け 小売業向け 卸売業向け 小売業向け あり なし なし あり なし あり あり なし なし あり あり あり 流通販促費

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