ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年10号
進化のゆくえ
ホームセンター三社統合の意味

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2005 52 インズの売上高二〇〇二億円を抜いてトップに 躍り出る。
北海道から九州にかけて三七三店舗 を擁する全国規模のホームセンターとなり、し かも三社の間で店舗の重複はない。
店舗のない空白県は一五県で、福島、栃木、 神奈川、長野、山梨、鳥取、島根、九州全域、 沖縄となる。
このうち福島、山梨、鳥取には提 携関係にあるホームセンターがある。
三社がそ れぞれに提携しているホームセンターは、ホー マック二社、カーマ一社、ダイキ四社の計七社。
提携企業の合計店舗数は一三八店で、それだけ でも合計売上高は約一〇〇〇億円になる。
二〇〇六年九月以降、こうした提携企業もD Jホールディングスに統合されていく見込みだ。
全国規模のホームセンターが誕生 ホームセンター業界に巨大企業が誕生する。
業界六位のホーマック(本社・北海道)、七位 のカーマ(愛知県)、九位のダイキ(愛媛県) の三社は今年七月、持株会社方式で経営を統 合する基本合意書に調印した。
予定では二〇〇 六年九月一日に共同持株会社「DCM Ja pan ホールディングス」(以下、DJホール ディングス)を設立し、三社の株式を移転する。
これにより三社は上場廃止となり、代わって新 会社が上場する。
統合新会社の売上高は四二〇七億円(二〇 〇四年度決算の三社合計)。
現状で最大手のカ そうなれば売上高は五〇〇〇億円を超え、一兆円も視野に入ってくる。
統合予定の三社は今後、 それぞれ積極的にM&Aを展開し、新会社への 参加を同業他社に働きかける方針だ。
新会社の 売上規模は短期間に拡大すると考えられる。
なかでも注目すべきは、ホーマックによるケ ーヨーへの働きかけだ。
両社は以前、商品の共 同開発に取り組んだ経験があるなど友好的な関 係にあり、ケーヨーがどう動くかは今後のホー ムセンター業界の勢力図を見極めるうえで注目 の的だ。
仮に売上高一九四二億円のケーヨーが 参加すれば、新会社の売上規模は一気に七〇〇 〇億円を超す。
他にも、ダイキが担当する九州 でも提携企業を探す動きが進められている。
第13回 ホームセンター三社統合の意味来年九月、ホームセンター業界に圧倒的なトップ企業が出現する。
ホ ーマック、カーマ、ダイキの三社が統合して生まれる新会社だ。
同社は 多くの意味で注目の的だ。
その影響はホームセンター業界だけに止まら ず、関連する産業全体に波及する。
寡占化の遅れた日本の流通の将来を 占う意味でも、新会社の成否から目が離せない。
53 OCTOBER 2005 今回の三社統合でイニシアチブをとったのは ホーマックだった。
同社の前田勝敏社長は、以 前からホームセンターの全国規模の統合構想を 温めていた。
その前田氏がホーマック社長に就 任した九五年五月以降、各社への働きかけを本 格化し、曲折を経ながら現在に至っている。
繰り返されてきた業務提携 当初のホーマックは、第一段階としてケーヨ ーとの経営統合をしようとしていた。
両社のそ もそもの関係は、イオンを介してスタートした。
一九九〇年代にイオン(当時のジャスコ)は北 海道と東北のドミナント化戦略に打って出た。
同社の得意とする大型ショッピングセンターの 設置に加えて、スーパーマーケットとホームセ ンターを展開。
さらにドラッグストアを核とす る近隣型商業施設である小型のネイバフッドシ ョッピングセンターを作り、同地域における存 在感を高めようとした。
この新しい戦略を展開するに当たってイオン は、北海道・東北地域のホームセンターなどとの提携を活発化した。
その結果、ホーマックの 前身である石黒ホーマ(当時)との提携にもこ ぎつけた。
このとき石黒ホーマが提携に踏み切 った最大の理由は、イオンの物件開発力に乗っ て共同出店の機会を増大することだった。
両社は資本提携し、イオンは石黒ホーマの十 二・七%の株式を保有する第三位株主となった。
さらに両社は青森県に出店するために「イシグ ロジャスコ」という合弁会社を設立。
その後、 イオンと石黒ホーマは、岩手県のホームセンタ ーのメイクとも資本提携した。
九五年七月には 石黒ホーマ、メイク、イシグロジャスコの三社 が合併し、現在のホーマックが誕生した。
これによって北海道と東北をカバーする広域 ホームセンターが生まれた。
イオンが演出した この統合は、後に始まるホームセンター大再編 の余震だったと位置づけることができる。
イオンはこの後、ケーヨーとの提携にも動き、 ケーヨー株を五・九%保有する第三位株主とな った。
イオンの狙いは、ホーマックとケーヨー の統合にあった。
実際、両社の間では短期間で はあったがPB商品の交流も図られたが、本格 的な提携に発展する前に交渉窓口だったケーヨ ー副社長の急死によって壁に当たってしまった。
ホーマックとイオンは共同で、ケーヨーの新経 営陣と協議したがまとまらなかった。
ケーヨーとの提携話が不調に終わったのを受 けて、ホーマックは独自に関東へ進出すること を決めた。
一方のケーヨーは、ホーマックの提 携戦略に触発される形で二〇〇二年に大阪のコ ーナン商事との提携に動いた。
だが業務提携の 考え方が一致せず、発表までしたもののすぐに 解消してしまった。
この頃、ホームセンター業 界では、複数の合従連衡の動きが浮かんでは消 えた。
ほどなくカーマと、DIY(Do It Your self)型の大型ホームセンターで有名な茨城県 のジョイフル本田との提携も発表されたが、結 果的にはこれも解消になった。
ホーマックの前田社長は業界内のこのような 動きを目の当たりにしながら、それでも統合に よる全国規模のホームセンター誕生の夢を捨て ずに水面下で他社との接触を続けた。
そして、 この動きが、二〇〇三年二月のホーマック、カ ーマ、ダイキ三社の業務並びに資本提携となって結実した。
三社は、同年五月に直ちに商品の 共同仕入れ・開発会社「DCMJapan」を 設立。
グローバルの商品調達力と物流を評価さ れた三井物産もここに加わった。
三社の提携は、近い将来の統合を前提にして いた。
それがDCMJapanの設立によって 具体的なステップを刻みはじめ、このDCMJ apanをかすがいとして、二〇〇六年九月の 統合へと進んできた。
提携から統合に到る道の りは、これまでのところ大きな問題も発生せず 順調だったと言える。
統合が順調に推移している理由の一つは、D OCTOBER 2005 54 商品部の機能は新会社に統合し、窓口を一本 化することになる。
集約により、取引先の数は 現在の半分程度の約二〇〇社に減る見込みだ。
地域卸への影響は大きく、有力地域卸の再編を 後押しすることになるはずだ。
大手卸への影響 も大きい。
パルタックはこれまで、ホーマック と取引がなかったが口座を開設した。
日用雑貨 品の仕入れ先が切り替わる可能性もありそうだ。
業績から見たホームセンター業界 ホームセンター各社の業績は不安定だ。
二〇 〇六年春を期末とする二〇〇五年度は、各社と も回復または増収を予想している。
しかし、こ れまでの業績の推移と、激化する競争環境を考 えると決して楽観はできない。
上場しているホームセンター各社の連結ベー スの業績をみると、減益傾向は明白で、業界全 CMJapanが狙い通りに機能したことだ。
三 社の商品開発部門はDCMJapanに集約さ れ、PB商品の開発、開発輸入、NB商品の共 同仕入の合計金額は、二〇〇五年二月期には 約七〇〇億円に上った。
これは三社の合計売上 高の約一五%に相当し、二〇〇六年二月期には 二〇%まで高める目標を掲げている。
さらに三 年後には八〇%まで引き上げる計画だ。
こうし た共同商品開発の拡大の成果は、三社の売上総 利益率の改善として表れている。
情報システムの見直しも進めている。
三社統 合のイニシアチブをホーマックが取ってきた背 景には、同社の物流と情報システムの評価が業 界内で高かったことが大きい。
情報システムの 優位性が、企業再編のイニシアチブにつながっ た事実は頭に入れておくべきだろう。
統合によってカーマとダイキは、ホーマック の先進的な情報システムを活用できるようにな る。
ホーマックが二〇〇四年秋に構築した基幹 システム「A ―PLan 21 」は外部との統合運用 が容易なことを特徴としており、提携やM&A を前提に開発されている。
今年一〇月には取引 先との在庫情報共有システムも立ち上がる。
統 合会社の情報システムは、ホーマックのシステ ムに統一する方向で進むことになる。
さらに新会社は、共同仕入の拡大や、物流セ ンターの共有、売場の棚割りの共通化なども進 めていく。
メーカーとの協働体制の拡大、新店 フォーマットの共通化、そして新しい店舗フォ ーマットの開発などにも取り組んでいく計画だ。
体が業績の悪化に苦しんでいる。
業績が安定し ているのはコメリだけで、同社の突出した安定 成長経営は注目に値する。
その他の有力企業と しては、カーマは減収ながら利益率を改善し、 二桁増益を続けている。
ナフコもしっかりして いる。
コーナン商事は積極出店により高成長を 続けてきたが、二〇〇五年二月期は大幅減益と なった。
連続減益の企業が多いのもホームセンター業 界の特徴の一つだ。
過去三期のうち二期連続の 減益となったのは、ダイキ、ジュンテンドー、 サンワドー。
そして三期連続減益だったのはケ ーヨー、ホーマック、エンチョー、サンデーと なっている。
一方で、本業の利益率をあらわす 営業利益率を改善した企業も、ナフコ、カーマ、 ダイキ、アークランドサカモト、サンワドーと 少なからずある。
だが業界内のほとんどの企業 は、販管費率の上昇を押さえられず営 業利益率を悪化させている。
営業利益率の水準が最も高いのはコ メリの五・九%だ。
これに次いでナフ コ、アークランドサカモトの三社も 五%台にある。
島忠が一〇・五%と高 いのは、粗利益率の高い家具部門が全 体の粗利益率を押し上げているためで、 ホームセンターの業績としては区別し てみるべきだろう。
そして三%台はカ ーマ、二%台はエンチョー、ダイキ、 コーナン商事となっている。
ドラッグストアの上位企業が四〜 55 OCTOBER 2005 五%台の営業利益率を確保しているのと比べる と、ホームセンター業界の水準は全体として低 い。
さらに営業利益率の企業間格差が大きいこ とが、今後の淘汰、統合、再編の可能性をうか がわせる。
営業利益率改善のカギは販管費率の 引き下げもさることながら、売上総利益率(粗 利率)の改善だ。
営業利益率の高いホームセン ターに共通しているのは、粗利率の高いDIY 用品の構成比が大きい点だ。
ホームセンターの 利益率改善の一つの方向を示しているといえる だろう。
大多数が業績不振に苦しんでいる本質的な原 因は、ホームセンターという業態が日本でまだ 確立されていないところにある。
この業態は、 金物屋や雑貨屋などをベースに、アメリカのホ ームセンターをモデルにして生まれた。
だが住 宅が狭く貧弱な日本では、住宅関連の消費は遅れている。
その結果、本来は最も中心にすべき DIY製品を含むホームインプルーブメントと 呼ばれる部門の拡充が、予想されたほど進まな かった。
大多数のホームセンターの主力は雑貨部門と いう商品構成になり、結果として、総合量販店 やスーパーマーケット、ドラッグストアなどの 他業態との激しい競争に直面した。
このことが 業績低迷の一因になっている。
多くのホームセンターが、メガドラッグスト アと呼ばれる大型ドラッグストアや、フルライ ンの大型ディスカウントストアであるスーパー センターに押されている。
スーパーセンターと いう業態は、西友を買収して日本に進出したウ ォルマートやイオン、そして北陸地方に展開し ているプラント、さらにホームセンターのカイ ンズなどがすでに展開を開始したり計画してい る。
いずれもホームセンターには脅威だ。
こうした中で、ホームセンター各社が利益率 を改善する道は次の二つに収斂される。
一つは 合併や統合によって企業規模を拡大し、商品開 発や調達で規模のメリットを追求し、仕入コス トを引き下げるというものだ。
そして、このよ うな動きが業界再編の引き金になっていく。
もう一つはスケールメリットを追求しつつ、 粗利率の高いDIYや農業資材、ホームインプ ルーブメントの商品構成を高めることだ。
雑貨 の売上構成比が高いバラエティ型のホームセン ターから、本来のホームセンターらしい業態を 確立する作業ともいえる。
この戦略を進める際 に、品揃えをマーケットに合わせることが重要 なことは言うまでもない。
日本でも、都市部に比べると農村を中心とす る地方では持家比率が高く、DIYの需要があ ると考えられる。
また農家が必要とする農業資 材という大きな需要もある。
ちなみに現在の農 業資材の市場規模は約二兆六〇〇〇億円ある。
都市や地方といった立地とは無関係に、建築 や各種工事関連のいわゆる業務用資材もホーム センターにとって重要な営業ターゲットだ。
す でに各社は、こうした需要こそホームセンター が取り込むべきものと考え、専門度が高く、売 場面積は三〇〇〇坪前後と従来より広い大型 店を次々に展開している。
上記二つのアプローチによる利益率の改善は、 別個ではない。
常に規模の拡大を伴う。
淘汰、 統合、再編の動きと、業態確立の取り組みは、 実際には互いに絡みあいながら進行していく。
結果としてホームセンターの店舗フォーマット は現在、次の三タイプに集約されつつある。
?売場面積三〇〇〇坪前後の大型店(場合に よっては四〇〇〇坪のものもある)。
一般に はスーパーホームセンターと呼ばれる。
農村 マーケットや大都市郊外に立地し、農業資材 やDIY関連商品の構成比が圧倒的に高い。
?売場面積一〇〇〇〜一五〇〇坪の標準型ホ OCTOBER 2005 56 六〇〇億円でホーマック一社分に相当する。
推 定三・九兆円のホームセンター市場において、 新会社のマーケットシェアは一〇・八%となり、一般に規模のメリットが表れる目安と考えられ ているシェア一〇%を超える。
一社でシェアが一〇%を超えた小売業の例と しては、家電専門店のヤマダ電機の十三%があ る。
ヤマダのスケールメリット効果は、経常利 益率の改善となってすでに表れはじめている。
DJホールディングスもヤマダと同じような立 場に置かれることになり、利益率の改善傾向は 鮮明になっていくものと考えられる。
ホームセンター業界には多数の企業がひしめ き合ってきた。
売上高が一〇〇〇億円を超える 上場企業は九社あるが、上位グループの売り上 げは接近しており、ドングリの背比べとなって いる。
このような業界構造のなかで、突出した 売上規模を持つ企業の誕生は、競合他社に対す る大きな圧力となる。
前掲の通り新会社は、M&Aを積極的に展開 することを明言している。
DJホールディング スには、これまで友好的な関係を構築してきた 中小のホームセンターがあり、将来これらの企 業が合流して一大勢力になる可能性は高い。
ライバル企業で、ホームセンター業界のグル ープ化の動きの中心を担いそうなのはコーナン 商事とコメリだろう。
カインズは店舗フォーマ ットの標準化にこだわって、出店による拡大戦 略に固執しているためM&Aには動きそうにな い。
未公開企業ながらジョイフル本田を中心と ームセンター。
従来は七〇〇〜八〇〇坪が標 準だったが、一回り大きなタイプが標準にな ったことで従来型店舗の競争力は一気に低下 してしまった。
?売場面積三三〇坪前後の小型店舗。
ホームセ ンターのコンビニエンスストアという位置づ けで、農村部の店としてコメリが開発した業 態。
以前は農協の市場だった。
コメリの総店 舗数七〇八店のうち五七六店が小型店で、ジ ュンテンドーも同様の店舗が多い。
主に大型 店や標準型の衛星店舗として配置され、小商 圏で高いシェアを獲得できることと、多店舗 展開によるスケールメリットによって強固な ビジネスモデルとなる。
業績が安定している コメリの収益力の柱は「ハードアンドグリー ン」という名の小型店だ。
DJホールディングス誕生の意義 来年九月に、圧倒的なトップ企業が誕生する 影響は大きい。
ホームセンター業界のみならず 小売業界全体に影響は及ぶはずだ。
DJホール ディングスの誕生は、単に三社による経営統合 に止まらず、その目的や、統合までの道筋、経 営一体化の成果、所有と経営の分離、そして後 継者問題への対応など、多くの注目すべき点を 含んでおり意義が深い。
統合会社の誕生がホームセンター業界の再編 を一気に加速させることは間違いない。
DJホ ールディングスの売上規模は、これまで業界一 位だったカインズの一・六倍ある。
その差は一 する一群も、グループ形成の中心になると考え られている。
すでにジョイフル本田は、アーク ランドサカモトなどDIY型の店舗を展開する 複数のホームセンターと業務提携している。
もっとも、ホーマックを中心とする統合三社 がこれまで他社に持ちかけてきた戦略的で長期 的な提携の働きかけを考えると、一気にDJホ ールディングスによる寡占体制へと進む可能性 もある。
仮にそうなれば、メーカーや卸は深刻 な影響を免れない。
今後、DJホールディング スとメーカーの関係は、情報を共有してより一 体化していくはずだ。
こうした関係は売上高一 兆円が視野に入ってくれば、さらに密接なもの になっていくことだろう。
統合を軌道にのせた成功要因 DJホールディングスの統合には、いくつかの成功要因がある。
まず最初にあげるべき要因 は、三社の社長がいずれも創業者ではなかった ことだ。
ホーマックの前田社長(会長に就任) は創業の一員でオーナーと姻戚関係にあるが、 オーナーではない。
企業の合併や統合は、オーナー社長が現役だ ったり、強い影響力を持っている場合はむずか しい。
それぞれのエゴが障害になるためだ。
そ の点、サラリーマン経営者は客観的な視点を持 つことが可能だ。
だからこそ創業者の引退を契 機に、企業再編の動きが活発化するケースは多 い。
もちろん統合の裏ではオーナーの承認があ ったわけで、そうした英断も評価すべきである 57 OCTOBER 2005 ことは言うまでもない。
第二の成功要因は、三社統合構想を推進した ホーマックの前田社長の存在だ。
前田社長に対 する市場の評価は、社長就任を境にホーマック の業績が低迷しているこ とから決して高くはない。
しかしこれは、北海道を 地盤としていたホーマッ クが東北地方や関東へ進 出する過程の話で、数回 の合併などに伴う経費増 の結果だ。
今ようやく評 価してもらえるようにな った拡大戦略のための我 慢の時期だったと言える。
同時にホーマックは、 規模の拡大に合わせて、 基幹情報システムや人事 体制の整備なども進めて きた。
これはDJホール ディングスの統合を前提 とする 21 世紀体制づくり だった。
ホームセンター の大統合は前田社長の一 〇年来の構想だ。
筆者は 取材を通じてこの構想を 聞かされて以来、その推 移を注視してきた。
前田社長の壮大な構想 は、ホーマックという会 社の業界に対する影響力とも無関係ではない。
前身の石黒ホーマの時代から、同社は物流と情 報システムについて業界で高く評価されていた。
過去には、何社ものホームセンターが、進んだシステムを学ぶために石黒ホーマを訪れている。
このような関係が今日ではホーマックとの友好 的な関係となって発展している。
ダイキも石黒 ホーマに勉強に行った会社の一つだ。
このような友好関係が大統合構想の基盤にな っている。
これを無理をせずに実現させた前田 社長の功績は大きい。
この構想の骨子は、統合 によるスケールメリットを互いに享受しようと いうもので、各社にとって受け入れやすい内容 だった。
イニシアチブはとったものの、ホーマ ック中心の統合ではない点がポイントだ。
統合を成功させた第三の要因として、三社の 社長が大きな目的の実現に向かって、エゴを対 立させることなく息を合わせたことも忘れるわ けにはいかない。
年齢的に近いことも、話が円 滑に進んだ要因だったのかもしれない。
いずれ にせよ、なかなか実現しにくい三社の一挙統合 であっても、条件さえ整えばスムーズに実現す るという事例を示した。
三社が共同持株会社による統合という道を選 んだことも重要な点だ。
古典点な手法としては 合併という手法もあるが、企業同士の役割調整 が難航するなどして実現しにくい。
とくに今回 のように戦略的な同盟では難しい。
共同持株会社方式の統合のモデルは、金融業 界のメガバンクにある。
興銀、長銀、第一勧銀 の統合で誕生したみずほ銀行のやり方は、再編 に直面していた小売業界にとって大きなヒント になった。
同じ共同持株会社方式による統合は、 家電専門店のデオデオ(本社・広島県)とエイ デン(名古屋)によるエディオンの例もある。
小売業界では第二号となるが、エディオンが統 合の成果をなかなか出せなかったこともあり、 DJホールディングスへの注目度は高い。
オーナー企業の多い小売業界でウィン ―ウィ ン志向の戦略同盟を結ぶためには、共同持株会 社が適している。
DJホールディングスは、小 売業界に共同持株会社方式による巨大企業誕 生の道筋を示すという重要な意味がある。
今後、 同方式をとるのではないかと考えられる巨大統 合としてはイオンのウエルシアドラッグストア 連合が控えている。
その意味でも、新会社の行 く末から目が離せない。

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