ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2009年5号
物流不動産市場レポート
西欧 ハイグレード大型物流施設へシフト傾向賃料下落を機に各企業が物流効率化を推進

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

物流不動産市場レポート MAY 2009  84 需要が減ったため需給のバランスを保ち、賃料 は横ばいに終わった。
〇九年前半だけで十二 万平米の新規供給が予定されているが、長期 的にみて今後の複数拠点の統合の動きと共に、 戦略的立地の大型需要は増加の予測。
ベルギー  オランダと同様、小型で老朽化した倉庫が多 く、今後の新規大型施設の供給が望まれてい る。
工業集積地であるブリュッセル、アントワ ープ、ヘント間のゴールデン・トライアングル 内では空室率が非常に低く、賃料は前年同期 比二%上昇。
景気の悪化の影響は周辺市場に 集まり、戦略的立地であるゴールデン・トライ アングル内の需要は今後も続くと予想される。
フランス  新規供給面積が前年同期比二五%増加に 対し景気悪化が影響し、多くの大型案件が中 止もしくは延期され、空室率が五・三%上昇。
一万平米以下の需要が比較的堅調であったが、 ボーダレス化が商機に  二〇〇四年に始まったEUの拡大は、物流 セクターにも変革を起こした。
欧州各地の商業 圏は統合され、企業にとってビジネスチャンス が拡大した。
それに伴い戦略的な物流網の開 拓が急務となり、物流セクターが個々の企業に 与えるウェイトが高まった。
配置、統一した国 際物流ネットワーク網の開拓とクオリティの追 求など、従来まで自社内で賄っていた物流部 門の業務はアウトソーシングされる方向へ急展 開をみせた。
 欧州各地において、まだ小型で老朽化した 倉庫が多くみられるが、近年はハイグレードな 大型物流施設へのシフト傾向が高まり、プロロ ジス、AMBプロパティなど米系デベロッパー も参入し、数々の新規開発が始まった。
景気 悪化と共に全体的な空室率が上昇する一方で、 包括的なコスト削減と効率化を目指して、大型 でハイグレードな倉庫の需要は、ベネルクス諸 国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ)と ドイツを中心に〇八年末時点においても堅調 な推移をみせた。
対して、スペイン、イタリア、 フランスにおいては、大幅な空室率の上昇と賃 料下落が見られた。
主要国の〇八年末までの 動向は、次のとおりだ。
オランダ  世界最大級のロッテルダム港と、欧州三大空 港の一つであるアムステルダム・スキポール国 際空港があるオランダ。
ベルギー、ルクセンブ ルグと並び重要な物流拠点とされるが、なか でも、物流市場としての歴史がいちばん長く、 最もアクティブな市場である。
交通インフラの 質は群を抜くが、倉庫は特に小型で老朽化が 目立つ。
国土の狭さから新規の大型開発用地 が不足しており、今後の大型化する需要増加 に対する懸念があった。
しかし、〇八年は景 気悪化でアムステルダムもロッテルダムも大型 第23回 西 欧 ハイグレード大型物流施設へシフト傾向 賃料下落を機に各企業が物流効率化を推進 シービー・リチャードエリス インダストリアル&ロジスティックス ヨーロッパ ガイ・フランプトン シービー・リチャードエリス グローバル・ロジスティックス&インダストリアル部 三宅昌子    85  MAY 2009 去数年再開発が活発であったが、不況の影響 でストップがかかった。
しかし、再開発の多く は契約済みのBTSであったために、未契約 の空き物件が溢れるといった状況は免れた。
今 後のイタリアの位置付けとしては、北部を中心 に需要が伸びるとされている。
東端にウクライ ナのキエフと西端にポルトガルのリスボンを結 ぶ「トランス・ヨーロピアン・コリドー5」は、 イタリア北部のトゥーリン、ミラノ、ベローナ、 トリエステを経由するため、今後数年に渡り、 複合輸送が可能な汎用性のある物流施設の需 要が増加すると予測されている。
スペイン  欧州全体的に経済の悪化は明確だが、中で もスペインの製造業は特に痛手が大きいようだ。
各地で各種製造業の撤退が多く、残る物流業 のテナントも縮小とコスト削減を余儀なくされ、 賃料の値下げや、その他契約条件を緩和して でもテナントを確保したいオーナーとの間で交 渉が進んでいるようだ。
賃料は、バルセロナで 前年同期比六・五%減。
マドリードでは八% 減となった。
比較的新興のバレンシア、セビリ ア、サラゴサ、マラガ、ビルバオが発展してい たが、全土に及ぶ急激な空室率上昇と賃料低 下でマドリード、バルセロナにより近い地区へ の移転意欲が高まっている。
不況が各市場に影響  立地や産業構成により各国の景気悪化の影 響は様々な形で表れている。
オランダの例をみ ると、食品関連と各種機械関連の部品倉庫の 需要は堅調だ。
しかし、部品関連に関しては 一時的なもので、完成品の出荷が低迷してい るなか部品在庫があふれている状況で、一部 の賃料増加は、賃料を上乗せして短期の賃貸 契約を受け入れている結果に過ぎない。
主要 港湾内でも、小規模ではあるものの、出荷待 ちの各種物品を保管する倉庫の需要件数は増 えた。
更に、土地と建築費用の値上がりが原 因で賃料を値上げしている状況も見受けられる。
 全体的な傾向としては、景気回復を待ち 望むなか賃料が下降傾向であることを好機に、 今後はコスト削減と運用効率化へのプレッシャ ーから、港や都心部の近くのハイグレードな施 設への統合・移転へ向かう方向だと考えられる。
  それ以上の大型物件は前年同期比五%の賃料 低下に終わった。
特にパリ近郊の需要が前年同 期比三一%減り、郊外市場の需要が増加傾向 に。
今後も、賃料低下は続く予測。
ドイツ  欧州の最大の物流市場といわれるドイツ。
欧 州の物流施設の総面積のうち約二七%がドイ ツに集中しているといわれている。
ハンブルグ、 ベルリン、フランクフルト、ミュンヘン、デュ ッセルドルフといった従来からの拠点に加え、 ライプチヒ、ハノーバー、ライン・ネカール地 区など新たな拠点も注目され、一万平米以上 の需要も賃料も各地で安定的に推移している。
ハンブルグにおいては、賃料は上昇した。
イタリア  自動車、アパレル関連の繊維産業が活発なイ タリアでは、〇八年後半、ローマもミラノも需 要は小規模に留まり、賃料は前年同期比低下。
他国同様、新規大型施設が不足傾向にあり過 93 年 12 月 94 年 12 月 95 年 12 月 96 年 12 月 97 年 12 月 99 年 12 月 00 年 12 月 01 年 12 月 02 年 12 月 03 年 12 月 04 年 12 月 05 年 12 月 06 年 12 月 07 年 12 月 08 年12 月 98 年 12 月 (%) 図3 EU主要15カ国の産業用不動産の賃料 14.0 12.0 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0 -2.0 -4.0 -6.0 250 200 150 100 50 0 名目期間指標 変動率 ※1988年3月を100とする 図1 主要西欧諸国・2008 年第4 四半期の指標 図2 1 平方メートル当たりの賃料 フランス ドイツ ベルギー イタリア スペイン オランダ 需 要 空室率 賃 料 傾 向 利回り 上昇横ばい下落 ベルギー ブリュッセル デンマーク コペンハーゲン フィンランド ヘルシンキ フランス パリ ドイツ フランクフルト ドイツ ハンブルグ アイルランド ダブリン イタリア ミラノ オランダ アムステルダム オランダ ロッテルダム ポルトガル リスボン スペイン バルセロナ スペイン マドリード スウェーデン ストックホルム イギリス バーミンガム 47.00 48.00 48.00 70.42 70.38 70.49 132.00 132.00 132.00 55.00 52.00 52.00 70.80 70.80 70.80 66.00 67.20 68.40 129.00 130.00 118.00 62.00 58.00 58.00 70.00 70.00 70.00 65.00 65.00 65.00 54.00 54.00 54.00 95.00 96.00 90.00 102.00 96.00 94.00 50.36 51.11 46.72 87.10 80.96 68.74 2007 第4四半期 (単位:ユーロ) 2008 第4四半期 2008 第3四半期

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