ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2008年10号
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三井倉庫

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2008  56 九九年度を底に業績回復へ  三井倉庫は倉庫業のみならず、陸海空の 一貫したサービスを展開する総合物流企業だ。
過去の業績動向を振り返ってみると、営業利 益は一九九九年度をボトムに回復途上にある といえる。
同年度は収益源である不動産賃貸 業で主力物件の賃料減額改定が響き、主力 の物流事業では荷主企業の在庫圧縮スタンス、 全般的な料金引き下げ圧力等が影響。
営業利 益は九〇年度の一〇一億円から三八億円にま で減少した。
その後、合理化努力や物流拠点 整備を通じた事業規模拡大により物流事業の 採算が改善し、都心部を中心とした地価動向 から賃料下落に歯止めがかかったこともあり、 直近の二〇〇七年度の営業利益は六七億円ま で回復している。
 〇七年度を初年度とする三カ年計画「中期 経営計画2007」では企業価値の最大化を 目標に置き、基本方針として「既存事業の質 的転換の加速による収益の最大化」、「資本効 率の向上によるキャッシュリターンの最大化」、 「内部統制の確実な実行」を掲げた。
最終年 度に当たる〇九年度の数値目標は営業利益 九五億円(〇六年度実績は六五億円)、RO E(自己資本利益率)八・〇%以上(同五・ 七%)。
達成に向けては新規物流施設の建設 や既存物流施設の再開発を中心に、三〇〇億 円程度の設備投資を行うとした。
 同計画の中でも特徴的な取り組みの一つと して、個人情報が記載された契約書、取引履 歴などの重要文書や電子データを取り扱うB PO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング) 事業への注力が挙げられる。
個人情報保護法 や金融商品取引法などの施行により、金融機 関や地方公共団体をはじめとして高度なセキ ュリティ管理下での保管ニーズは強い。
実際、 〇四年十二月に稼働した町田レコードセンタ ー(東京都町田市)は高い収益性を獲得して いるもようである。
三井倉庫はさらなる事業 拡大を計画しており、町田レコードセンター の二期工事実施、辰巳事業所(同江東区)の 新設のほか、福岡や茨木(大阪府)等首都圏 以外での拠点整備も進めている。
〇八年度設備投資は三四〇億円  とはいえ、物流事業の事業環境の悪化もあ り、現段階では若干の苦戦を強いられている。
営業利益でみると、〇七年度は当初計画の七 〇億円に対し、六七億円で着地した。
〇八年 度は七八億円を目標としていたが、期初予想 は七三億円としている。
主な要因は、マレー シアや北米における主要貨物の一つであった ブラウン管テレビの取扱減、新規案件の立ち 三井倉庫 設備投資を積極化し資本効率向上図る 物流事業の規模拡大と収益向上は必須  設備投資の積極化に転じ、資本効率を重視 する姿勢が評価されている。
物流事業ではB PO(ビジネス・プロセス・アウトソーシン グ)といった特徴的なサービスを展開するが、 今後の成長には同事業の規模拡大と収益性向 上が不可欠だ。
一柳 創 大和総研 企業調査第一部 第43回 57  OCTOBER 2008 上げの遅れ等とみられる。
 〇八年度に入り、人員削減や拠点整理など のリストラに加え、代替貨物の取り込みによ り、不振の海外事業でも採算改善に一定のめ どが立ちつつある。
それでも計画達成には予 断を許さない状況だ。
 そうした中、三井倉庫は設備投資の積極化 によりキャッシュリターンの増加を図る方針を 示している。
〇一〜〇四年度の設備投資額は 年間五〇〜六〇億円規模だったのに対し、〇 五年度以降は一〇〇億円を超す水準で推移。
さらに〇八年度は総額三四〇億円規模を計画 している。
 七月には、都内の賃貸ビル三棟の取得を発 表した。
西池袋、赤坂、銀座といった立地で 安定した賃料収入 を見込め、営業利益 への通年寄与額は 七億円程度という。
また、同社の不動産 賃貸事業は「箱崎 ビル」(東京都中央 区)への依存度が高 いことから、保有資 産構成の分散とい った効果も狙ったよ うだ。
取得価額は総 額一九四億円と同 社が掲げるキャッシ ュリターンのハード ルを若干下回って いるが、将来的な再開発等によるバリューア ップも視野に入れたものと認識している。
 物流施設への投資は三郷、厚木、前述の辰 巳、町田等の首都圏を中心に展開することに なろう。
海外分野ではベトナムやインドでの 拠点増強など、アジア地域でのネットワーク 拡充を進めている。
海外ネットワークは一五 カ国・二八現地法人に達した。
 今後も持続的な成長を果たすためには、物 流分野の事業規模拡大、収益性向上が必須 となろう。
同社の管理会計上の区分によれ ば、一般物流の〇七年度の営業利益率は九・ 一%、港湾運送は八・三%、海外事業は一・ 一%。
昨今の生産拠点の海外シフト等を鑑み れば、港湾運送の改善に多くは期待できない。
不振の海外事業の立て直し、一般物流事業の 利益率向上が待たれる。
株価パフォーマンスは良好  景況感悪化による荷動き鈍化や料金の押し 下げ圧力を含め、事業環境は今後も楽観でき る状況にはない。
費用面では燃油価格高騰や それに伴う外注費負担増、派遣問題や労働需 給の逼迫による影響が懸念される。
加えて大 型倉庫の竣工に伴い、首都圏においても倉庫 の需給バランスが軟化しつつある。
 このため不動産事業を安定的な収益の源泉 としつつ、物流分野で国内外でのアウトソー シングニーズを取り込み、3PL事業の拡充 を図る中で、BPO事業のような差別化され たサービスを提供することが肝要となってこ よう。
契約ノウハウの蓄積や作業習熟度向上 による生産性の改善のほか、情報収集や提案 能力を含めた営業機能強化が求められる。
 株価動向に目を転じると、財閥系倉庫会社 の中では相対的な株価パフォーマンスは良好 だった。
保有資産の開発余力が焦点になりが ちだが、中島(大阪市)や戸田(埼玉県)な どを有しているものの、規模自体の優位性が 評価されたものではない。
むしろ、財務健全 性を維持しながらレバレッジを利かせること で、資本コストの低減を図るといった、資本 効率を重視する姿勢を明確に打ち出してきた ことがポイントであったと判断している。
 実際、有利子負債残高のみを取り出せば、 積極投資に転じた結果として、ここ数年で最 も低かった〇五年度末の二九二億円から、〇 七年度末には五七四億円と増加。
自己資本五 三六億円を上回る水準となった。
〇八年度末 には負債額が八五〇億円程度まで増加する見 通しだ。
しかし、一連の投資は安定的な収益 源の確保、将来の成長に向けた布石につなが っており、その意味では納得性が高いと考え ている。
引き続き、中期経営計画の完遂、さ らにその先に向けた舵取りに注目したい。
三井倉庫の過去10年間の株価推移 (円) 《出来高》 ひとつやなぎ・はじめ 一九九七年三月早稲田大 学理工学部土木工学科卒。
同年四月大和総研入社、 企業調査部インフラチー ムに配属。
九九年から物 流担当に。
著者プロフィール

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