ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年9号
軽トラ入門
未確認走行物体“軽運送”とは

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2005 62 軽運送とは何ぞや? 世間では?荷主〞とは「荷物の持ち主」というニュ アンスで使われていますね。
しかし私たち軽運送業者 がこれをイメージする際は少々ちがいます。
むしろ 「荷の出元」というイメージです。
私たちにとって荷 主は入金源そのもの。
「仕事( 荷物)の沸く泉」で あり、いわば本丸(ホンマル)なのです。
私は平成元年に軽トラックを使用する運送業を開 業しました。
軽運送業です。
それ以来、法人客をメー ンに様々な依頼を取り扱いました。
こうして備わった 経験・感覚・ノウハウを「実録・軽トラ1台で年収 1200万円稼ぐ」(かんき出版刊)と題した一冊の 本にまとめて昨秋に出版しました。
本を書くだけにあ き足らず、軽運送のノウハウを得たいという方や、軽 運送フランチャイズに頼らないで自分で中古車を購入 し、手作りで起業したいという方を対象に、日本軽運 送学校という組織を作り講義もしています。
このほか別事業ですが、会社で余ったハイウェイカ ード、テレカ、切手や商品券、株主優待券といった金 券の通信買取もやっています。
不要な金券を来店せず に現金化するサービスです。
金券ショップへ行けない 運輸関係者から好評を博しています。
さて、今回は荷主企業のマネジャー層や有力物流業 者の経営層を主な読者とするロジビズ誌への寄稿です から、「荷の出元相手には、日頃は口に出せないこと」 や、「軽運送業者よりも荷主がトクしてしまう話」に も触れていこうと思います。
どうぞおつき合い下さい。
≒ まず軽運送業とは何ぞや、という話から入ります。
未経験者や、運送を頼む側に立つ者から、軽運送 業界というのは実態のよく分からない「ブラックボッ クス」だという指摘を受けることがあります。
運送を 頼まれる側にいる私から見ても、そう思われても仕方 がないと感じます。
ロジビズ誌の読者で軽運送に荷物を出す人の立場 は、恐らく次の三つに分けられるはずです。
A)日通・西濃・ヤマト・佐川などのいわゆる路線便 会社の人 B)路線便を運行していない、一般運送会社や運輸倉 庫会社の人 C)メーカーなどの物流部や出庫・出荷担当の人 この分類ごとに軽運送業者の使いかた、あるいは使 わざるを得なくなる事情は違ってきます。
そのことが 軽運送の実態を分かりにくいものにしている面がある と思います。
ゆえに紐解いてみます。
ボッタクリFCが成立する理由 まず前述のAの場合。
自社が路線業者の場合です。
仮に、大阪の荷主から「一個五〇〇円」という個建 て運賃で荷物を預かったとします。
それを翌日に東京 の着地営業店に輸送する。
そこからは自社トラックの ドライバーが営業店テリトリー内の末端の届け先に一 軒一軒配達する。
それが路線業者の仕事です。
このうち「着地営業店から末端の届け先」の配達を、 未確認走行物体“軽運送”とは 軽トラック運送は日本で唯一、個人営業を認められている運送 事業です。
個人タクシーの貨物版とも言える軽トラの“一人親方” が、国内に約10万人いると言われています。
荷主にとっても身 近な存在です。
しかし、その実態は意外に知られていません。
自 らハンドルを握った経験を持ち、この業界の裏の裏まで熟知した 実務家が、軽トラ市場を案内します。
第1 回 63 SEPTEMBER 2005 路線業者は軽運送業者にやらせたがります。
中元・ 歳暮の配達を「一個いくら」でやるようなイメージで す。
その使い方には会社によってパターンがあります。
中元・歳暮期などの繁忙期限定で軽運送屋を使う会 社。
三六五日すべて任せる会社。
自社便で届けるアル バイトや社員が急に辞めた時だけ頼む会社。
おおむね こんな具合です。
仕事を依頼する軽運送業者の探し方としては、電 話帳などを使って一軒一軒あたるか、あるいは軽トラ ック運送のフランチャイズ団体へ発注するかのどちら かです。
フランチャイズ団体に発注すると、指定した時間に オジサンがピカピカのワンボックス・タイプの軽自動 車を現場に持ちこんで来ます。
路線会社は、この人に 荷物一個いくらという金額で支払うわけです。
現状で は一個当たり一三〇〜二〇〇円支払うというのが一 般的でしょう。
ただしフランチャイズ団体の本部にマ ージンを引かれるため、実際にオジサンが手にする額 は、これを下回ることになります。
ところで、この「車を持ちこんだオジサン」の正体 を、あなたは知っていますか? 彼らは、新聞の折り込みチラシや求人誌などに掲載 されている「軽運送・独立開業者募集」というフラン チャイズ加盟店募集の広告を見て、軽運送を始めた 人たちです。
チラシを見てまず、フランチャイズ募集 説明会へ行く。
そして車両代金+入会金(加盟登録 料)+諸費用と称して、一〇〇〜三六〇万円(各団 体によってバラつきあり)を団体に支払います。
そうやって貨物軽自動車運送事業の営業ナンバー (黒ナンバー)をつけたピカピカの新車を購入します。
軽トラックは中古であれば、三〇〜五〇万円ぐらい が相場です。
なかには、それ以下の値段で買える出物 もあります。
それでも仕事は充分にできます。
当校の 受講者の中には、二〇万円で購入した中古の軽トラ ックで仕事をやり続けている手作り開業者もいます。
清掃の手間さえ惜しまなければ見た目も問題ありま せん。
フランチャイズ本部が加盟店に高額な新車を購入さ せる理由は、はっきり言って加盟店からボッタクルた めです。
そして車両購入後は加盟店に路線業者の下 請的な仕事を回す。
軽運送業者にとって、この手の下請け仕事は「割が合わない業務」に分類されます。
実際、当社なら依 頼が来ても「胸を張って断る」。
しかし断らない業者 もいる。
両者が混在しているのが軽運送業界の実状 です。
地域にもよりますが、断らないで応じるのは普通、経 験の浅い業者です。
客単価の高い業務の存在に、まだ 遭遇していない=知らない者。
あるいは固定客として 荷主を獲得するのが下手な者です。
路線業者の下請け 仕事は、そうした「くすぶっている人」か、フランチ ャイズ団体の従属下にある人がやる仕事と言えます。
実は、こういう軽運送屋の使い方をする荷主は、全 体からすると少ないのです。
路線業者と言っても、個 建ての末端配達業務を行っている会社は無数にはあり ません。
郵政公社にヤマト、佐川、日通、西濃、福通 SEPTEMBER 2005 64 など大所は限られています。
その仕事量は、メーカー や商社、問屋など、他の「荷の出元」の数に比すると 少ないのです。
にもかかわらず、この「中元歳暮の下請け配送みた いな仕事(個建て配達運送)」が、「軽運送屋であり軽 運送の仕事だ」と、実態を知らない荷主や未経験者 には思いこまれているようです。
そのような誤解が、 ボッタクリのフランチャイズ団体を成立させている要 因の一つにもなっています。
おいしい荷主 次に「B・路線便を運行していない一般運送会社 や運輸倉庫会社」と「C・メーカーの物流部や出庫・ 出荷担当」はどうでしょう。
「荷の出元」がBやCの 場合には、路線業者のように軽運送業者に「一個百 数十円で近所へ届けてほしい」というニーズはあまり ありません。
それでも軽運送業者に電話をかけて、仕 事を頼んだ経験はあるはずです。
どんな時か。
たとえば愛知県内にあるメーカーの大 工場――中心部のラインにトラブルが発生した。
つま り、製造現場サイドが原因で出荷が予定よりも遅れる 事態が生じた。
工場の中心から見て壁(外)側にある トラック寄せ(プラットフォーム)のすぐワキの部屋 で、物流センター長が怒鳴り出す――。
あなたは電話 に手をかけて軽運送屋をチャーターする。
「今から愛 知県××市で引き取ってそのまま直行で茨城県○○ 市の納入先へ届けてほしい」と。
受注した軽運送業者は、距離制運賃プラス高速代 と消費税込みで、概算で六〜七万円を請求してくる はずです。
宅配便の翌日着でかまわなければ一個一〇 〇〇円程度で送れるにもかかわらず、納期などが区切 られているため他に方法が見あたらない。
仕方なく、 荷主は泣く泣く軽運送屋に数万円支払うことを了解 するわけです。
ロジビズ誌の読者には、この手の「荷の出元」の皆 さんが数多く含まれているはずです。
おそらく今、苦 笑しながらうなずいていることでしょう。
こんな使い 方をするメーカーや商社、問屋が世間には、たくさん 存在します。
しかし、そのことが意外や知られていな いようです。
このように軽運送事業には、前述の「個建て運送の 配達」があります。
これは限られた有名路線運送会社 の下請けとして配達するものです。
そして別に「距離 制運賃による直行配達」があります。
このほか、「一 日貸切制」や「時間貸」もあります。
軽運送にはたく さんのメニューがあり、工夫と努力次第で儲けること もできるのです。
ところが、開業段階からフランチャイズ本部に言わ れるままに「何となく業者になった人」は、何も分か らないまま個建て配達を続けていきます。
彼らを見て、 世間一般の素人は軽運送の勝手なイメージを作ってい るようです。
そのために外部からは?未知の世界〞と 感じるのかも知れません。
上手な?軽運送屋操縦法〞 さて、ここで物流マネジャーサイドが優位になる、 65 SEPTEMBER 2005 「対・軽運送屋操縦術」を少しレクチャーしましょう。
フランチャイズ系配車センターや、外注庸車を使っ ている軽運送業者に発注しているが、依頼のたびに別 人ドライバーが来るというケース。
このような状況で、 しかも車両はピカピカの新車、ドライバーも制服を着 てとても清潔だっだとしたら、物流マネジャーのあな たはどう思いますか? 「車も制服(身なり)もきれいだ。
いい仕事をして くれるはずだ」と、安心するのは間違いです。
ピカピ カの新車そしてピカピカの制服――ここから見ぬくべ きは「コイツ新人かもしれないぞ」ということです。
軽運送業者へ支払う料金額は、ドライバーが新人で もベテランでも同額です。
?新人割引〞などありませ ん。
年齢もアテになりません。
最近ではリストラで職を 失ったため、嫌々ながら軽運送業を開業した「元デス クワーカー」なんていう人も少なくありません。
いく ら人当たりが良くても、この手の新人に急ぎの荷を託 すとトラブルを招く場合があります。
やはり新人は道 中でモタモタする確率が高い。
納期ギリギリの急送に 使っているときは着地の受取り担当者を怒らせるハメ になることもあります。
もしピカピカの新車と、ピカピカの制服に気づいた ら、「がんばって下さいね。
いつ始めたのですか?」な どと、さりげなく相手の経歴を聞き出した方がいいで しょう。
ただし、この方法はプライドが高そうな年配 者には通じにくいトークパターンですから、そんな相 手方には「この車の次の車検はいつですか?」と聞い てみるのも手です。
「いやあ〜、まだ二年近く先ですよ」とか「一年半 後」などと言い出したら要注意です。
さりげなくスピ ードメーターの走行距離を確認してみることをお奨め します。
場合によっては走行九〇〇?、つまりほとん ど未経験なんていう人もいたりします。
時間に余裕のあるタイミングで、新人が姿を現した 場合であれば、「差しかえ」を求めるのも手です。
ち なみに、自分が元請け運送人をやって外注庸車を配 車していると、荷主の一部から「どうせ支払う金額は 同じですよ。
宅配便より高い金額でチャーターするん ですよ。
新人は配車しないで下さい。
おじいさんは配 車しないで下さい」と注文をつけてくる荷主も希にい ます。
メーカーや卸業の物流マネジャーである貴方が軽運送業者を使うシーンに出くわした時には、ぜひお 試しあれ。

購読案内広告案内