ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2007年12号
メディア批評
労働者には「改悪」でしかない小泉・竹中「改革」メディアの本義を忘れ礼賛に終始する朝日・日経

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高 信 経済評論家 61  DECEMBER 2007  高杉良の『亡国から再生へ』(光文社)は「亡 国」の犯人として小泉純一郎と竹中平蔵を名 指しする痛烈な弾劾の書である。
そして、そ れを批判するどころか、持ち上げつづけるメ ディアへの激しい挑戦状でもある。
小泉・竹 中「改革」の応援団長を気取る田原総一朗に 至っては「バカに付けるクスリはない」とま で断罪される。
 「小泉改革の実態」について、高杉はこう指 摘する。
 「小泉政権下で始まった景気拡大の間に、企 業の経常利益は五年間で一・八倍に増え、役 員賞与も二・七倍、株主への配当金も二・八倍 という伸びを見せた。
しかし、労働者への報 酬はこの間に三・八%減少したうえ、過労に よる精神障害などの労災認定件数は二〇〇六 年度に過去最高を記録している」  これでも、「改革」と言うのだろうか。
確か に、「企業」や「経営者」や「株主」にとっ てはありがたい「改革」なのだろう。
しかし、 「労働者」にとっては「改悪」以外のなにもの でもないではないか。
 それなのに、とりわけ、『朝日新聞』と『日 本経済新聞』は小泉・竹中コンビを賞賛しつ づける。
 それに対して、高杉と私が『世界』の 二〇〇六年三月号でやった「偽りの改革とメ ディアの責任を問う」対談の一節を高杉は引 いている。
 〈高杉 (地方では)どんどん商店がなくな っていく。
こんなふうな国にしてしまった小 泉・竹中の責任というのは、昔だったら一揆 が起きてもおかしくないことですよ。
ところ が、マスメディアがそれをまったく批判しない んですから。
むしろ迎合しているわけでしょう。
日経新聞なんかは「今年は構造改革の総仕上 げの年だ」とか言って、構造改革があたかも 進んでいるようなことを書いている。
 ぼくは朝日新聞もひどいと思う。
日経と 朝日は、この国を痛めつけていると思います。
佐高 ひどいですね。
高杉 まさに原理主義に染まってしまった。
市場原理主義に取り込まれてしまったという のが、ぼくらの認識ですよね。
佐高 一時、「朝日の読売化」とか言われた けれども、そうではなくて、「朝日の日経化」 ですね〉  「朝日の読売化」は主に政治面で、朝日が批 判精神を失ってきたのではないかという疑念 から言われた。
護憲もそう明確に主張しなく なったからである。
それに続く「朝日の日経化」 は経済面についての主張の変化を指している。
 高杉は『乱気流――小説・巨大経済新聞』 (講談社文庫)を書いて、モデルと思しき日 経の元社長、鶴田卓彦から訴えられた。
それ に関連して、高杉は『週刊文春』の二〇〇六 年十一月三〇日号に載った記事に噴き出した と書いている。
 〈九月二二日、日経役員のOB会が開催され、 そこに鶴田氏も姿を現した。
出席者の一人が 語る。
 「杉田亮毅社長をはじめ日経の役員四、五 人とOB五〇人ほどで昼食をともにしました。
その後、杉田社長の挨拶と経理担当役員から 事業報告がありました。
それが終わって、『何 か質問はありますか』との呼びかけに鶴田氏 が手を挙げて話し始めたのです」  ところが鶴田氏は事業報告への質問ではな く、不祥事が最近頻発していることについて、 現経営陣を前にして「官僚化や責任回避に陥 らぬように」と“お説教”を始めたのだという。
 「みんなしばらく黙って聞いていましたが、 見るに見かねたのか鶴田氏より年長の元役員 が『反省すべきは自分のほうじゃないのかね。
人のことを言えるのか。
泥棒が泥棒に説教し ているみたいだ』と苦言を呈したんです。
場 はシーンと静まりかえって、会はお開きとな りました」〉  苦く笑うしかない逸話である。
労働者には「改悪」でしかない小泉・竹中「改革」 メディアの本義を忘れ礼賛に終始する朝日・日経

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