ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年12号
keyperson
プラネット物流 児玉博之 社長

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

DECEMBER 2007  2 要がない。
また情報と違い、物流は 昔からやっていることもあり、しが らみが強い」 ──最もしがらみを多く抱えていたの は、参加メーカーで一番物量のあるラ イオンだったのでは。
 「その通りです。
ライオンは、もと もと物量があるだけに共同化するメリ ットも他のメーカーに比べて小さいか も知れない。
そのライオンが我々のプ ランに理解を示してくれたことは本当 にありがたかった」 ──プラネット物流側の姿勢にも変化 はあったのでしょうか。
 「はい。
利益志向から顧客志向へ、 当社の考え方もガラっと変わりまし た。
それまで当社は共同物流で得た 利益を自分で抱え込んでいました。
値 下げによる利益還元もしていました が、自分自身もしっかり儲けていた。
実際、一株当たりの時価総額は三倍 に膨らんでいました。
そのため会社 として偉そうにしていたところがあ る。
その結果、特に二〇〇〇年以降、 当社の活動は停滞していたといってい い。
メーカー、卸の物流の責任者と具 体的な話ができていませんでした」  「それを大きく方針転換しました。
共同化によって下がったコストは我々 の利益ではなく荷主のものにした。
も ちろん利益ゼロでは当社も困ります 共同化の利益は全て荷主へ ──二〇〇八年一月、埼玉に「北関 東流通センター」を開設します。
いよ いよ関東へ本格進出ですね。
 「はい。
昨年の四月から一年半にわ たり、日雑・化粧品メーカーに対し 『北関東流通センター』への参加を打 診して来ました。
現在、ライオン、エ ステー、サンスターなど十一社のメー カーが参入を表明しています。
同セン ターが本格稼働することで、当社の 年商はこれまでの約四五億円から八 〇億円近くまで伸びる見込みです」 ──これまでの二〇年近くにわたる プラネット物流の共同物流の取り組み は地方が舞台でした。
首都圏には手 をつけられなかった。
 「もともと都市部に関しては、大手 メーカーは共同化しなくても物量がま とまる。
コスト削減などのメリットも ないのに参入しても意味がないという ことで、当社の出番はありませんで した。
しかし、メーカーのモノの運び 方は今や大きく変化しています。
一つ は工場からの直送が増えてきた。
ト ラックが満載になる単位で発注すれば 安くするという取引条件が浸透して きたことで、大ロット品は工場から直 接、顧客に運ぶようになっている」  「残る小・中ロット品、あるいは中 小メーカーの商品は、荷受け側にまと めて持って来てほしいというニーズが ある。
メーカーごとのバラバラの配送 では、コストもかかるし環境にも良く ない。
これを当社の共配の仕組みに変 えることで、問題を解決できる。
そ うした議論を約一年半かけてメーカー 各社と重ね、ようやくかたちにする ことができました」 ──プラネット物流は共同物流を、業 界VAN(付加価値通信網)の活動 と並行して進めてきました。
このう ち情報の共同化は先に進み、VAN の成功でプラネットは株式の公開まで 果たしている。
それに対して物流は、 随分時間がかかっています。
 「同じ共同化といっても物流の場合 は、情報と違って部分部分でも利用 できる。
全国共通の仕組みにする必 プラネット物流 児玉博之 社長  二〇〇八年一月、埼玉県でプラネット物流の「北関東流通センター」 が稼働する。
これによって日用雑貨品メーカー十一社による関東圏の 共同物流が実現する。
一九八七年に共同配送の実験をスタートしてか ら二〇年。
これまで単独メーカーでは物量のまとまらない地方都市だ けを対象としたニッチな共配会社だった同社が、日雑業界の物流プラッ トフォームに変身しようとしている。
      (聞き手・柴山高宏) 北関東流通センターの延べ床面積は約4 万平米。
プラネット物流最大の物流拠点 となる 「共同物流のビジネスモデルを革新する」 3  DECEMBER 2007 が、若干のマージン以外は全て値下げ によって荷主に還元するかたちにし た。
そうやって当社の共同配送を公 共性の高いものにして、規模を大き くしていくという考え方です。
それ がなければライオンも当社の話に乗っ てはこなかったでしょう」 ──しかし、それではプラネット物流 の利益は限られたものになってしまう。
 「共同配送をベースに、付加価値を つけた新サービスで差別化を図りま す。
この付加価値サービスは、利益を 全て還元する必要はない」 ──共同物流をベースにした付加価 値サービスとはどのようなものですか。
 「例えば関西・中部エリアでは、当 社のセンターに在庫を置かないメーカ ーの商品を、クロスドッキングで混載 して卸店へ一括配送しています。
事 の発端は交通渋滞です。
卸の大型セ ンター周辺では各メーカーの納品時間 が朝に集中するためトラックの渋滞が 起こっている。
調べてみると納品の トラックは、センターに入った後も積 み降ろしなどで二時間近く待たされ、 結局、現地についてからセンターを出 るまで六時間近くかかっている。
こ こにビジネスチャンスが眠っていると 考えました」  「メーカーと卸の取引条件はそれま で注文翌朝の納品でした。
しかし卸 が不足していても気にしない。
投資 もしない。
そこにコストが寝ていると 我々は認識しています。
裏返せばそ こを解決すれば皆が助かる」  「共同物流はギアチェンジの時期を 迎えています。
単にまとめて運べば いいという時代は過ぎました。
例え ば、返品から廃棄に至る集荷・検品 といった一連のフローを当社が一手に 引き受ける『返品の共同化』。
帰り便 でパレットを回収し、パレット管理会 社にまとめて届ける『パレット管理』。
このようなユニークなサービスも用意 しています」 ──これらの新サービスはいつ頃から 開始しますか。
 「〇八年の一月の『北関東流通セン ター』の稼働と同時に始動させたい と考えています」 では納品された商品をその日に出荷す るわけではなく、翌日に使っている。
そこで我々は納品を朝に集中するので はなく、九時、十二時、一五時の一 日三回に分けようと提案した。
このう ち一五時の便は注文当日に納品する。
そのため、卸には当社専用にトラック バースを一つ空けてもらいました」  「それによって一台のトラックをピ ストン輸送で一日三回転させる。
さら に三回目の納品の帰り便で、当社のセ ンターに在庫を置いていないメーカー の拠点を回り、翌日の朝に納品する 荷物を集荷する。
この仕組みを実現 したことで当社の共配の参加メーカー は、それまでの一七社から三五社に 増えた。
当社のセンターに在庫しない メーカーが一八社加わったわけです」 路線便から専用便へ ──中小ロットの納品は従来なら路線 便を使っていたところですね。
 「それが専用便に変わる。
安価に小 口貨物を輸送してもらえる路線便は 確かに便利です。
しかし今や卸はメー カーに対してファイブナイン(九九・ 九九九%)の物流精度を求めていま す。
中継輸送の発生する路線便はど うしても物流精度が落ちる。
しかも 連休などは休みになってしまう。
専 用便であれば正月と日曜日以外は配 送できる体制が作れる。
中継輸送が ないため物流精度は高い」  「すでに日用雑貨卸は、小売りに納 品する物流でファイブナインを実現し ている。
出荷に関しては自動仕分け 機やJANコードによるスキャニング はもちろんのこと、重量検品まで入 ってきて、歯ブラシ一本入ってなくて もわかる世界を構築している。
加工 食品業界などと比べても極めて高い レベルの物流を実現していると思いま す。
ところが、それだけの技術力を 持つ日雑卸も川上の調達物流には余り 手を付けていない。
荷受場には従来 通りのエレベーターと台車しかない」  「なぜそうなるか。
流通センターに 荷物が入って初めて卸の商品原価に物 流費が入ってくるからです。
それま での物流費は自分たちの原価ではな い。
そのためメーカーから納品に来る トラックを待たせても、車両スペース こだま・ひろゆき 1970 年3 月、慶應義塾大学商学部卒。
同年 4 月、ライオン歯磨(現ライオン)入社。
東京 本店に配属。
86 年9 月、同大学ビジネススク ール・MDP( Management Development Program)コース終了。
87 年7 月、東京本店流 通システム推進室長、94 年3 月、仙台支店販売 促進部長、98 年4 月、本社流通機能開発センタ ー室長、2000 年4 月、本社流通統括部長。
02 年3 月、本社役員と名古屋支社長を兼務。
04 年 3 月、本社役員とLOCOS(Low Cost Supply) 推進部長を兼務。
06 年3 月、プラネット物流社 長付部長。
同年10 月、プラネット物流社長就任。
現在に至る。
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