ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2007年10号
メディア批評
憲法問題も郵政民営化にもまったく一貫性なし党派性も思想も戦略もない自民党という「政党」

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

佐高 信 経済評論家 61  OCTOBER 2007  ほとんどメディアに取り上げられない護憲 のキャンペーンをする会として「憲法行脚の 会」がある。
先ごろ亡くなった城山三郎も呼 びかけ人の一人で、今度、城山に代わって内 橋克人が呼びかけ人になった。
ちなみに、他 の呼びかけ人はアイウエオ順に、落合恵子、 香山リカ、姜尚中、斎藤貴男、辛淑玉、高橋 哲哉、高良鉄美、土井たか子、三木睦子、森 永卓郎、そして私である。
 城山は『論座』の二〇〇四年九月号掲載の 田英夫との対談で、  「やはり憲法は守らないといけない。
だから 最近、佐高信さんに言われて『憲法行脚の会』 に名を連ねました。
小泉さん(当時首相だっ た純一郎)が戦争の怖さを知っていれば、個 人情報保護法のような言論弾圧なんか考えませ ん」  と語っている。
 ある程度の人数が集まった集会でも、メデ ィアが取り上げなければ、多くの人は知らな いで過ぎてしまう。
つまり、「なかったこと」 にされてしまうのである。
 この「行脚の会」が各地で開いた集会や講 演をまとめたものの第二集『君、殺したまう ことなかれ』(七つ森書館)が出た。
 歌人の与謝野晶子は、弟が出征する時に、  「君、死にたまうことなかれ」と歌った。
し かし、平和のためにはもう一歩踏み込んで、  「君、殺したまうことなかれ」と歌うことが 必要だと思って、こういうタイトルにしたの である。
 中で姜尚中が「安倍晋三とナショナリズム」 について語っている。
講演の日付は昨年の十二 月八日。
言うまでもなく、開戦の日だが、被 害者の立場からではなく、むしろ、加害者の 立場から戦争を語ろうと思って、私たちはこ の日にした。
日本のメディアは、なかなか加 害体験として戦争を捉えないと思っているから でもある。
その欠点を突くように、姜はこう 指摘した。
 「岸信介という人が、満州国のある種の経済 の帝王といわれ、満州国において大きな役割 を果たしたことも、みなさん知っての通りです。
韓国の朴 パク 正 チョン煕 ヒ 大統領は、日本名を高木正雄と いい、満州軍官学校の出身でした。
岸が満州 にいた時代と少しずれますが、少なくとも二 人の共通点は満州にいたことです」  この会に飛び入り参加した白川勝彦の話が 興味深かった。
白川は護憲派で自民党の代議 士だった人である。
いまは弁護士をしている。
 香山リカが、小泉が訴えかけたのは都市の 浮遊層で、彼らに情動的に呼びかけたのが「小 泉劇場」だと姜さんは言ったが、と白川に尋 ねたら、白川は言下にこう否定した。
 「あのね、そんな上等なものじゃないんです よ(笑)。
自民党という党に、そんな戦略家な んていません。
たとえば新進党と闘えば、新 進党は創価学会党であるということを使って、 徹底的にやり抜きました」  白川によれば、その時、新進党寄りだった 政治評論家の森田実から、白川は、  「自民党は憲法を守ると言ったから、新進党 との闘いに勝ったんですよ」  と言われたという。
つまり、創価学会の政 治参加、いや、政治占拠の問題は、憲法二〇 条に触れるからである。
 郵政「民営化(会社化)」反対派の復党問題 についての白川の指摘にも、なるほどと思った。
 「自民党というのは、そういう意味での党派 性は全然ない政党ですから(笑)。
だから、あ の時、除名じゃなくて、離党勧告だったでしょ。
普通の政党なら、除名ですよ」  たしかに、そうだろう。
離党だから簡単に 戻れるのである。
 しかし「民営化」に反対して当選した議員が、 すぐに国会で、今度は賛成にまわれるのだから、 どうなっているのか。
白川の言うように、自 民党は「政党」とは言えない、融通無碍の集 団だということだろうか。
憲法問題も郵政民営化にもまったく一貫性なし 党派性も思想も戦略もない自民党という「政党」

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