ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2007年7号
物流不動産市場レポート
首都圏大型拠点の新設ラッシュでテナント獲得競争も

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JULY 2007 36 着工量は三年で一・六倍に 日本の物流不動産市場が大きな変革期を迎 えている。
物流用地も例外なく値上がりしたバ ブル期が終焉して以降、長期低迷が続いていた が、二〇〇〇年頃から徐々に新たな兆しが見ら れるようになった。
首都圏や関西圏などの主要 物流エリアでは大型物流施設が次々と開発され ている。
しかし一部では供給過剰も懸念され、 需給動向の先行きに不透明感が増している。
この連載では、著しい変化の真っ只中にある 物流不動産市場ついて、物流不動産開発状況 や物流施設の供給量推移など、様々なデータを 用いてエリア別に物流不動産市況を解説してい く。
初回は日本で最も物流施設が集積する首 都圏を取り上げる。
首都圏とは、埼玉県、千葉県、東京都、神 奈川県の一都三県を指す。
三四〇〇万人を超 える人口集積を誇る世界有数の都市規模圏域 である。
この巨大な消費地への物流を東京港、 横浜港、川崎港、千葉港といった主要港湾や、 羽田・成田の両空港とともに担っているのが、 首都圏湾岸エリアに集積する物流施設である。
その供給量が近年、急速に拡大している。
図1は、首都圏の物流施設の年間供給量の 推移を示したものである。
二〇〇三年時点で年 間一四〇万平米であったものが、二〇〇六年に は二二九万平米と、三年間で約一・六倍にま で拡大している。
この供給量を大幅に押し上げているのが、首 都圏湾岸エリア各地で供給されている延床面積 一万平米(約三〇〇〇坪)以上の大型物流施設 である。
また二〇〇六年五月に竣工したプロロ ジスによる「プロロジスパーク東京(約一〇万 三千平米)」や、同年六月に竣工したラサール インベストメントマネジメントによる「ロジポー ト柏(約一五万平米)」など、延床面積一〇万 平米を超える超大型物件も新設されている。
首都圏 大型拠点の新設ラッシュで テナント獲得競争も シービー・リチャードエリス インダストリアル営業本部 橋詰仁郎 生駒データサービスシステム 曽田貫一 第1回 37 JULY 2007 く分布しているが、特に浦安市や船橋市を中心 とする千葉県の湾岸エリアに大型物流施設の供 給が集中している。
図3は今後予測される大型物流施設の供給 量の推移を示している。
二〇〇七年の竣工予 定は二〇〇六年を上回ることがほぼ確実であり、 二〇〇八年以降についても大型物流施設の開 発案件が多数控えていることがわかる。
賃料相場は弱含み これだけの物流施設が供給されれば、自ずと 懸念されるのは需給ギャップの拡大である。
図 4 は首都圏の三三〇〇平米(一〇〇〇坪)以 上の中・大型物流施設を対象とした募集賃料 の推移である。
二〇〇三年上期で四七二〇円/ 坪であった募集賃料は、二〇〇六年下期で四 二三〇円/坪となり、三年間で坪当たり五〇 〇円程度下落している。
特に、二〇〇五年上 期より前期比でマイナスが続いていることは、 昨今の物流施設の供給増と無縁であるとは考 えにくい。
このように物流施設の賃貸市況が弱含みにな っているにもかかわらず、物流施設の供給に衰 えがみえないのは、必要とされる物流施設のタ イプが変わりつつあることが影響している。
建築物は、一度竣工してしまうと三〇年から 五〇年は市場に残る。
そのため効率性の劣る物 流施設が現在でも数多く市場内に残存している。
一方で、昨今の物流では、リードタイム短縮 や物流業務の効率化の要請が途絶えることなく、 物流コストの上昇を受け入れる雰囲気もほとん ど感じられない。
物流コストを落とすには、配 図2は、延床面積一万平米を基準として、不 動産開発会社や不動産投資家による大型物流施 設の供給先・開発予定地を地図上にプロット したものである。
内陸部より湾岸エリアに幅広 送・仕分け・軽作業など一連の物流工程の効率 化が欠かせず、その拠点となる効率性の高い物 流施設に対するニーズが非常に高くなっている。
このような旺盛な実需を背景として、活発な 物流施設の供給が行われている。
もっとも、同 時期に最新鋭の物流施設が数多く供給される ことの影響は無視できない。
供給される物件同 士でのテナント獲得競争が想定される。
今後の 物流施設の賃貸市況は目を離せない状況が続 く。
近年新たに供給された大型物流施設には、 コンビニエンスストアが併設されるケース が多い。
以前の物流エリアといえば、ドラ イバーが中心で就労人口も少なかったが、今は倉庫内での軽作業が増えて、パート・ アルバイト等も含め労働人口が大きく増え たことが背景にあるようだ。
建物内に併設 されるケース以外にも、トラック用の大き な駐車場を備えたロードサイド型のコンビ ニエンスストアも増えている。
ちなみに物流エリアのコンビニエンスス トアは客単価が高いそうだ。
ドライバーの 方々が長距離運転に備えて、弁当や飲み物 などをいくつも買い込む姿をよく見かける。
休憩中に読むスポーツ新聞や雑誌、着替え などもよく売れているようだ。
以前は小休 憩に困った我々も今は大助かりである。
物流エリアのコンビニ事情

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