ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2007年7号
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2007年3月期物流企業決算ランキング

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JULY 2007 38 国際・国内ともに増収傾向続く 上場物流企業六二社(図1:海運を除く 上場物流企業七一社のうちで、二〇〇三年九 月期以降、継続的に連結・単独中間業績を 発表している企業)の〇七年三月期の連結売 上高の合計は、前期比五%増の七兆八五四 八億円となった。
全体の事業環境を俯瞰してみると、新興諸 国の経済成長に伴う世界的な好景気を追い風 に国際物流事業が好調であったほか、国内で も景気回復に伴う貨物量の増加を背景として、 全般的に増収傾向が続いている。
特に、港湾運送事業や構内物流、機工事 業などが好調であった山九(前期比十二%増 収)、物流事業に加え不動産事業でマンショ ン販売が好調であった三菱倉庫(同一四%増 収)の増収幅が相対的に大きかった。
また、 国際航空貨物大手の郵船航空サービス(同 八%増収)と近鉄エクスプレス(同八%増 収)や、国際物流に強みを持つアルプス物流 (同九%増)なども順調な決算となった。
企業買収による増収寄与が見られる企業が 増加傾向にあることも特徴といえよう。
例え ば、住友倉庫が遠州トラックを子会社化した ことで前期比一五%増収となったほか、企業 買収効果でワールド・ロジが同五五%増収、 アートコーポレーションも同一四%増収と大 幅な伸びとなった。
今後もメーカーなどの物 流子会社再編に伴う買収や、機能補完型の企 業買収は続く可能性が高いと考えている。
六二社の連結営業利益率を見てみると、前 期より〇・二ポイント改善し四・三%となっ た。
連結売上高は前期比で五%の増加であっ たが、連結営業利益の総額が三四〇四億円で 同九%の増加となったためである。
国内事業において運賃単価低迷や燃油費の 高騰、傭車費の上昇等を背景に前期比減益 となった企業は多かったものの、コンテナ貨 物やバルク貨物の増加を背景に港湾運送事業 特別編 成田康浩 野村證券金融経済研究所 アナリスト 2007年3月期 物流企業決算ランキング 上場物流企業の二〇〇七年三月期決算が出そろった。
新興諸国の経済 成長を追い風に、各社とも国際物流が好調だ。
海上貨物の取扱量拡大で港 湾運送も景気がいい。
国内でも景気回復から物量が増加しているが、トラ ック運送はコスト増と単価下落から利益面で苦戦を強いられている。
39 JULY 2007 が好調であった上に、世界的な好景気で国際 物流事業や海外現地法人の増益が利益寄与 した企業も大手を中心に多かった。
特に、全 体の営業利益を押し上げた企業としては、国 内事業の堅調さに加えて海外現地法人の利益 貢献が見られた日本通運(同一七%増益)や、 港湾運送大手の上組(同一〇%増益)、素材 産業の旺盛な設備投資の恩恵を享受した山九 (同二三%増益)、マンション販売が好調であ った三菱倉庫(同四二%増益)、海外発の航 空貨物が好調であった近鉄エクスプレス(同 三九%増益)などが挙げられる。
六二社の連結当期利益率は二・五%で、前 年同期に比べ一・六ポイント改善した。
当期 利益の総額は一九七三億円で、〇六年三月 期の六七九億円から大幅に改善した。
改善の 要因としては、昨年にヤマトホールディング スやセイノーホールディングスといった国内 トラック運送会社が、減損処理や保有土地の 再評価などにより大幅な特別損失を計上した ことの反動が大きい。
六二社全体の連結ベースの有利子負債は、 〇六年三月期末より二三五億円減少し一兆 四〇五七億円となった。
全体的には依然とし て減少傾向が続いている。
六二社の株主資本 比率は四七・一%と、〇六年三月期末の四 六・八%からはやや改善したものの、ほぼ同 水準での推移となっているという印象を受け る( 図2)。
港湾・倉庫 川上産業の運賃負担力が改善 次に、業界別に今決算の詳細を振り返って いきたい。
港湾・倉庫、大手トラック、航空貨物の三分野について解説する。
港湾・倉庫企業の業績は相対的に好調と の認識である。
世界的な景気の回復で日本発 着の海上貨物も増加傾向にあり、コンテナ貨 物などの取扱量拡大が業績に寄与している。
大手港湾・倉庫企業の営業利益では、輸 出入貨物の取扱拡大に加え港湾一体型の倉 庫事業が好調な上組が前期比一〇%増益と なったほか、機工事業でメンテナンス工事が 好調であった山九が同二三%増益、注力する 医薬品向け配送センターの増収効果やマンシ ョン販売の好調が利益寄与した三菱倉庫が同 四二%増益となった。
また、港湾事業や構内物流、機工事業での JULY 2007 40 荷主である鉄鋼メーカーや化学メーカーとい った川上産業では、世界的な需要の高まりか ら製品価格が大幅に上昇している。
荷主企業 の製品価格の高騰は、運賃負担力の改善とい う点から、物流企業にとってもポジティブだ。
一方で、国内では川下産業のデフレ傾向が 依然として続いており、消費貨物が主体のト ラック業界では運賃単価が下落傾向にある。
そのため、港湾・倉庫業界とは事業環境にや や格差が生じていると考えている。
構内物流 や機工事業などを手がける日本通運や山九、 上組といった企業の〇七年三月期の業績は相 対的に好調に推移した。
大手トラック 運賃は下げ止まるか トラック業界では、国内の景気回復を背景 にトラック運送事業の取扱数量は増加基調に ある。
しかし、燃油費や傭車費の増加といっ たコストアップ要因がある一方で、過当競争 を背景に運賃単価は下落傾向にある。
環境は 依然として厳しい。
大手企業の営業利益では、メール便事業で の先行的な人員投入でヤマトホールディング スが前期比二%減益となった。
ただし、〇六 年四〜六月期に人員を投入して以降、増収効 果で先行的な人件費の増加をカバーし、〇七 年三月期下期は増益となるなど、一過性の影 響に留まっている。
特積み大手では、セイノーホールディング スの営業利益が前期比七%増益となった。
と はいえ、自動車販売事業における利益計上方 は、営業利益で郵船航空サービスが前期比横 這い、近鉄エクスプレスが同三九%増益と格 差が生じた。
背景には日本発貨物の伸び悩み があると考えている。
〇七年三月期の下期以 降、一部貨物の海上シフトやエレキ関連貨物 の在庫調整などを背景に、日本発の航空貨物 輸出量の低迷が続いている。
一方で、海外発 着の航空貨物は依然として拡大傾向にあり、 現在の利益成長の牽引役は海外セグメントと なっている。
業界に先駆けて海外展開を積極化してきた 近鉄エクスプレスの海外セグメントの営業利 益構成比は、〇七年三月期で六八%まで上昇 しており、相対的に高い利益成長となってい る。
日本発貨物の低迷は懸念されるものの、 今後もアジアを中心に海外発着の航空貨物で は増加傾向が続くと見ており、航空貨物企業 は物流業界の中でも相対的に高い利益成長を達成すると考えている。
法の変更による影響などを考慮すれば厳しい 状況にある。
一方で、福山通運は燃油費など コストアップ分の荷主への転嫁が一部で浸透 した上に、積載効率の低い路線での減便などコスト抑制施策が寄与して同四二%増益とな った。
今後の動向としては、運賃単価に注目して いる。
〇八年三月期決算では税制改正に伴い 減価償却費が各社増加する上に、燃油費の高 止まりやドライバー不足に起因する人件費の 上昇など、様々なコストアップが予想される。
輸送品質が低い特積み業者では、同業他社間 での競争に加え区域事業者との競合が続くと 予想され、コストアップを荷主に転嫁するこ とは難しい。
そのため運賃単価の下落傾向が 続く可能性が高いと見ている。
一方で、ヤマトホールディングスで宅急便 の単価下落のスピードが鈍化していることは ポジティブである。
具体的には、〇七年三月 期決算の宅急便単価は前期比〇・九%下落 で、〇六年三月期の同二%下落と比較しても 鈍化傾向にある。
背景には、燃油費の上昇や傭車費の上昇と いったコストアップに伴い競合他社の値下げ 対応力が限定的となっていることがあろう。
運賃単価の下げが限定的となれば、同社が取 り組んでいる生産性の改善施策による効果が 増益に素直に反映されることとなろう。
航空貨物 海外事業が利益成長を牽引 航空貨物の専業二社の〇七年三月期決算 41 JULY 2007 JULY 2007 42 43 JULY 2007 JULY 2007 44

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