ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年5号
座談会
SCMの10年-成果と展望

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

れに関わるサプライヤーの供給活動 を企業間にまたがって同期化してい くマネジメントであると理解していま す。
その取り組み過程の中で在庫を 適正化し、また物流コストが減って、 結果的にはキャッシュフローに改善 をもたらす、といったものであろうと いう解釈です。
そういったマネジメントの中で、I Tの分野では需要予測ですとか、C RP(Continuous Replenishment System:連続補充方式)、または生 産管理システムなどのソフトが関連 してきます。
また物流分野でいえば、 クロスドッキング、VMI(Vendor Managed Inventory:ベンダー主導 型在庫管理)、3PLの活用、WMS (Warehouse Management System: 倉庫管理システム)の導入といった技術が出てきている。
このような認識の下で、日本の過 去一〇年間を振り返った時に、SC Mの取り組みは本当のところどうだっ たのか。
非常に上手くいっている事例 が紹介される一方、実はそうではない という意見も多数聞こえてきます。
そ のあたりのところを実際に実務に携わ ってこられた皆様から率直なご意見を お聞かせいただければと思います。
サプライチェーンロジスティクス研究 会 保高英児代表(以下、SCL・ 保高) 事実上、SCMは、SCM という概念が日本に入ってきた九〇 年代後半以前にも存在していたと思 います。
流通全体の効率化という観 点から、メーカー、卸、小売業など、 個々の企業の立場を超えて効率化を 図ろうという志向は、前からあった。
企業内の最適化ではなく企業間、最 終的には末端の消費者の動向から始 まる、そして原材料調達にまで遡る 取り組みです。
しかし、そういう形で 成功しているといえるケースは、まだ 非常に少ない。
SCMといっても実 際は一企業内の取り組みにとどまっ ていて最終顧客から原材料の調達ま で含めたSCMというのはまだ少な いですね。
司会・山田 食品業界で取り組まれ てきた川島さんいかがでしょうか。
東京海洋大学大学院 食品流通安全 管理専攻 川島孝夫教授(以下、海 洋大・川島) 私はずっとAGF一本でございましたので、食品メーカー、 食品流通業の観点から、お話しさせ ていただきます。
SCMの定義につ いては私も山田さんとほぼ同じような 考え方をしています。
SCMという のは顧客から原料・包材のところま での一貫した流れだと思っておりまし て、これは味の素グループであれ、私 共のパートナーのアメリカのクラフト であれ、変わりません。
ロジスティク ■■SCMは機能しているか? 日通総合研究所 山田健経営コンサ ルティング部長(以下、司会・山田) SCMは今も様々な解釈がされてい ます。
最初にその点を整理させてい ただきたいと思います。
非常に単純 化して言ってしまえばSCMという のは、顧客、店頭を起点として、そ MAY 2007 66 山田健 日通総合研究所 経営コンサルティング部長 79年横浜市立大学商学部卒業後、日本 通運入社。
営業部門勤務を経て、現在、 日通総合研究所経営コンサルティング部 にて物流コスト削減コンサルティング、教 育研修講師などに携わる。
スというと、原料・包材からカスタ マーのディストリビューションセンタ ー、あるいはカスタマーの小売店頭ま での効率化だというとらえ方です。
実は日本の大手食品メーカーの中 でロジスティクス部を名乗ったのは九 〇年のAGFが第一号でした。
それ までは一般的には物流部と名乗って おりましたし、あるいは管理部と名 乗っているところが圧倒的に多かっ た。
ところがその後、国際化という 時流で、あるいは消費者の関心の変 化によって、否応なしにロジスティク スに対する機運が高まっていった。
そ んな食品メーカーが圧倒的に多いの ではないかと思います。
ロジスティクスの基本である在庫 管理ができないと命取りになる。
いっ たん不祥事を起こすと社会的に糾弾 を受けて、滅亡・縮小するといった ケースがここ数年顕著です。
今回の 不二家さんもそうでしたね。
原料と して卵が何個、牛乳は毎日何を使っ てこういう管理をしています、という ことを記者会見の段階で的確に説明 できていたら、杜撰な管理だとニュー スであれほど非難されることはなかっ たはずです。
そのように、ここ数年の大変大き な社会潮流、消費者の健康安全安心 志向によって、食品メーカーにおける ロジスティクスの位置付けはガラッと 変わっている。
ロジスティクスに関心 を持たないでいられる時代はほぼ終わ りました。
今ではどこも必死です。
社 内の有能な人材をロジスティクス戦 略部長や担当役員に起用するなんて ことは従来では考えられませんでした。
この傾向はこれからも続くと思います。
現在の我が国の食品メーカーの問 題点を言えばトレーサビリティ、ある いは品質管理と言っても同じなので すけれど、そこにあると思います。
欧 米のトレーサビリティの定義で言うと、 日本の食品メーカーがやっているのは 工程管理です。
決して社会的なトレ ーサビリティになってない。
自分の工場の工程管理から始まっ て、出て行くところまでは一所懸命 管理している。
だけど、例えばタイか ら水産物を買った。
どういう衛生状 態で、どういう衛生管理がされてい て、安全管理をどうしているのかとい うところについては、ほとんど他人任 せです。
しかも消費者や貿易代理業 など、本来専門家でない人に任せて いる。
問題が起こるのは原包材のと ころで起こる場合が多いんです。
農 薬残留問題であれ、何であれ。
その ことを完璧にできているメーカーは我 が国にはまだないと思います。
これか らの課題です。
■■当初の五年はIT偏重 司会・山田 特に海外調達の部分というのは。
海洋大・川島 まだですね。
原産地 から食卓までの管理が出来ているかと 言うと、国内については出来ていると 思います。
しかし海外についてはどう ですかと言われたら、無関心を装って いるというのが実態だと思います。
司会・山田 保高様、川島様のお二 人に医薬品業界、食品業界というと ころからお話しをいただきましたが、 コンサルティングの立場から関わって こられたアクセンチュアの稲垣様、い かがでしょうか。
アクセンチュア 稲垣雅久 経営コ ンサルティング本部SCMグループ統 括エグゼクティブ・パートナー(以下、 ACN・稲垣) 私はこれまで特に ハイテク業界のSCMに携わって参 りました。
その経験から言わせていた だくと、この一〇年間では、前半の 五年と後半の五年とでSCMの流れ が大きく変わったという感想を持っ ています。
前半の五年は、ERP(Enterprise Resource Planning:基幹業務パッケ ージソフト)やSCP(Supply Chain Planning:サプライチェーン計画ソフ ト)など、ITがSCMにドライブを かけた時代でした。
またSCMという 言葉が流行ったひとつの契機は、コン ピュータメーカーのデルの台頭でした。
製品力ではなく、サプライチェーンの 優れた仕組みによってマーケットで勝 ちに行く、デル・モデルが大きな注目 を浴びたことで、多くの企業でSCM に注目が集まりました。
しかし、この最初の五年間は、今 になって振り返ると、少し踊らされて いたような気もいたします。
サプライ チェーンの本来の目的である、顧客 起点からサプライヤーまで含めた在 庫の適正化やリードタイムの短縮よ りも、IT導入といった手段が目的 化していた部分は否定できません。
それに対して後半の五年は、それ までITを中心としてサプライチェー ンにいろんな投資をしてきたが、本当 に効果が出ているのかと、SCMの 効果そのものに着目していった時代 でした。
我々コンサルティングに与え られた仕事も後半の五年は、大規模 67 MAY 2007 保高英児 サプライチェーンロジスティクス研究会 代表 早稲田大学理工学部卒業後、武田薬品で 流通関連諸システムの開発・運用に従事。
98年同社退社後、「サプライチェーンロ ジスティクス研究会」を設立し、コンサ ル・講演・執筆活動中。
ェーンです。
二つの企業がひとつにな ることで増す購買力をいかに効果的 に使うか、急増する物量に対してい かに効率的なロジスティクスを組むか といった取り組みが、すでに欧米では どんどん進んでいます。
それに対して 日本企業はどうするのか。
これからの 大きな課題だと思います。
■■物流の再評価 司会・山田 下村様、お願いします。
マンハッタン・アソシエイツ 下村幸 夫ソリューションコンサルティング部 部長(以下、MA・下村) ちょう どこの一〇年にわたって、私は物流 関連ソフトの販売に携わってきました。
現在はマンハッタン・アソシエイツで 米国のWMSを販売しております。
S CMやWMSという言葉も、この一 〇年の仕事を通じて知りました。
それ まで日本にはなかった言葉だと思いま す。
いまだに色んな定義があり、どな たにお聞きしてもはっきりしません。
それだけ奥の深い概念なのでしょう。
私自身はSCMを、サプライチェ ーンを市場の動向に同期化させるマ ネジメントのことだと考えています。
従って、あらゆる業界のSCM、ま たはSCMを構成するプレイヤーた ちを経営的に評価しようという場合 には、どの程度市場に同期化できて いるかということが、評価基準になる と思います。
これが現状では全く上 手くいっていない。
一部の先進企業 を例外として、圧倒的多数はSCM に辿り着くことさえできていません。
つまり、一〇年は経ったものの日本 においてSCMは、まだ始まったばか りなのだという認識です。
ITの視点からこの一〇年を振り 返ると、先程稲垣さんがおっしゃったように、最初の五年と後の五年で は、かなり印象が違います。
最初の 五年は「計画系」、「SCP」という 言葉がずいぶん流行りました。
ところ がその後五年が経過し、計画系はだ いぶ元気を失くしてしまったような印 象を受けます。
それとは対照的に、モノに近い世 界が見直され、地位がだいぶ上がっ てきた。
物流の世界はまだまだ発展 途上です。
しかしSCMがどう変わ っていこうが、インターネットで世界 中から注文をもらうようになろうが、 あるいは中間マージンをカットしよう が、物流をしないわけにはいかない。
物流は難しい世界ではあるけれども、 失われることはありません。
この一〇年で有名になった本に 「ザ・ゴール」があります。
そこにこ んなくだりが出てきます。
少年達がキ ャンプに行くことになりました。
ハー ビーという少年が隊列の中で一番体 力がない。
足も遅いので隊列全体の 進行のスループットを決めてしまう要 因になっている。
そこでハービーの荷 物を、物語の主人公であるアレック ス・ロゴが背追ってやる。
それによっ て、隊列全体のスピードを上げようと するわけです。
有名なTOC (Theory Of Constraints:制約)理 論です。
これを現在のSCMにあてはめて 考えてみますと、先導者となっている 企業は果たしてハービーにあたる企業が出現した時に、彼を助けようと するでしょうか。
ハービーを助けるの ではなく、むしろ排除するビジネスモ デルも多いと思います。
それがデルや アマゾン、アスクルのビジネスモデル の現実だと思います。
それなのに企業は少し危機意識が 足りないのではないでしょうか。
大手 企業はSCMの支配企業になってい きますが、そうでない企業は下手をす な情報システムの仕組みに加えて、い ままでの仕組みともっとうまくつなげ ないか、あるいは投資を抑え、それま での投資を回収していくという方向 のものまでと、多岐に渡るようになっ てきました。
一方、海外ではグローバル化・企 業間連携といった流れがさらに加速 したと感じます。
ロジスティクス分野 で言えば、ドイツポストやUPSやフ ェデックスなどの有力ロジスティクス 企業がグローバルに進出していき、ど んどん大きくなっていったのがちょう どこの五年間でした。
その結果、グ ローバルのロジスティクス企業と日本 のロジスティクス企業とでは、大きな 差がついてしまった。
さらにもうひとつ、欧米では大手の 小売りが取引メーカーの選定に際し て、SCMへの取り組み度合いを明 確に評価するようになりました。
VM Iの高度化など、小売業にとってプ ラスになるようなSCMを仕掛けても らえば、取引を増やしますよというよ うな取り組みを急速に進めたわけです。
日本もデフレからインフレへと経 済環境が変わり、SCMもスイッチ を切り替えて、改める時期だと思い ます。
例えば、今後はさらにたくさん のM&Aが起きる。
そしてM&Aで 効果を発揮するポイントはサプライチ MAY 2007 68 66年大阪外語大学卒業、米ゼネラルフ ーヅ(GF)に入社。
86年情報物流部長、 90年インフォメーション・ロジスティクス 部長、95年理事、2002年常勤監査役、 05年AGFを退社し同社非常勤顧問。
川島孝夫 東京海洋大学大学院 食品流通安全管理専攻教授 ると淘汰されてしまう。
その時に急 所となるのは、永遠に変わらない物 流だろうと感じております。
司会・山田 意識の上ではSCMも しくはロジスティクスがかなり浸透し てきているのに、行動が伴っていない。
実際のSCMが理想の形になってい ないのは、いったい何が課題になって いるのでしょうか。
SCL・保高 SCMの仕組みを構 築するためには、リーダーが必要です。
リーダーはメーカーでも卸でも小売り でも構わないけれど、業界に対して 影響力を持っているところでないとい けません。
その点で日本は欧米に比 べて、リーダーが全体的に少ないと 思います。
原材料購入から小売りま で一貫してリードできる、リーダーた りうる企業が少ない。
司会・山田 確かに成功している事 例を見ると、デルのように圧倒的な バイイングパワーを持っている企業が 中心になって、VMIでも何でも構 成している。
アメリカのウォルマート にしても小売市場に占めるシェアは 圧倒的です。
海洋大・川島 消費財を耐久消費財 と、食品・生活雑貨のような日常消 耗品の二つに分けるとすると、自動 車や家電などの耐久消費財の世界は、 日本もほぼ欧米に近いモデルになっ ている。
既に寡占化されています。
そ れだけ効率性の追求もやりやすい。
し かし日常消耗品の世界は違います。
今 後についても私は悲観的です。
日本 の日常消耗品の世界で寡占化が進行 することはないと見ています。
またリーダー不在の問題以前に、欧 米と日本では食生活があまりにも違 う。
欧米は肉食で、加工食品が中心 です。
したがって何でも冷凍で流通 できるので、在庫型で展開できます。
それに対して日本は魚民族で、生鮮 食品中心です。
そのため大量生産に よる在庫型の展開が出来ません。
そ の地域の自己完結型になってしまい ます。
そのため小売りも地域毎で自 己完結型になります。
そうした環境で、ロジスティクスや SCMの効率性を進める時に、やる べきことのひとつは標準化だと思いま す。
既に日本でもEDI(電子デー タ交換)の標準化は進んでいる。
ロ ジスティクスだってできるはずです。
標準化したからといって、別に私企 業の主権がなくなるというわけではあ りません。
標準化に成功したら、共 有化してもいい。
コストは安くなるは ずです。
また国際化についても、日本は大 変遅れている。
国際港が国内に六八 港もある。
しかも通関するのに下手を すれば一週間以上もかかる。
同じこと を、お隣の韓国の釜山港では二四時 間で処理している。
その結果、東京・横浜・神戸の物量を足して、やっと 釜山とイコールになるレベルまで日本 の港は置いて行かれてしまった。
国際 化についてもリーダーが必要です。
■■リーダー企業の不在 司会・山田 標準化、国際化という ことについて、誰かが主導しなければ ならないということですよね。
SCM を構成するいろいろなプレイヤーがい るわけなのですが、それぞれがどんな 役割を果たすべきなのか、もしくは誰 がリーダーになるべきかという観点か らのご意見はありませんか。
ACN・稲垣 国際化における役割 分担を論じる上で、まずは日本企業 の国際化のやり方についてコメントし たいと思います。
欧米をはじめとする 先進企業と比べてかなり非効率が多 いと感じます。
日本企業の場合、多 くが日本の工場で使っていた生産管 理の仕組み、日本独特の調達方法ま で、そのまま海外に持って行ってしま う。
それが現地企業との取引をすると きに障害になってしまう。
そのため中 国展開ひとつとっても、物凄く苦労 しています。
しかも、これからロシア や南アフリカに進出する際には、また 同じ苦労を繰り返さなければならない。
先進企業はどうやっているかという と、生産管理、受給調整、調達、物 流など全てに渡ってグローバルに通用 するやり方を徹底追求しています。
我々の会社のSCMはこうあるべきだ という背骨を持っていて、世界のどこ へ行っても商売ができる型があります。
それに対して一般的に日本企業は、 これまで比較的製品力が強く、ブラ ンド力もあったので、そのような型が なくても売れたため、その都度パッチ ワークしていったところがあります。
自分たちのビジネスのやり方を本当 につきつめてSCMという背骨をつ くっている企業は意外と少ない。
思 想性の違いを感じます。
司会・山田日本企業が背骨を作ろ うとする場合、どこに留意すべきでし ょうか。
ACN・稲垣 まずはやはり、その 会社が他社の動きに踊らされること なく、グローバルで何をしたいのか、 69 MAY 2007 稲垣雅久 アクセンチュア 経営コンサルティング本部SCMグル ープ統括エグゼクティブパートナー 1988年アクセンチュア入社。
日本にお けるグローバル企業を中心に、サプライ チェーン構築をテーマとした各種コンサ ルティングに従事。
買側の値引き攻勢に晒されました。
卸 は粗利を減らし続け、コスト削減、な かでもMS削減をしてきた。
そういう 経営危機の結果として、再編が急速 に進み、卸が今どんどん大きくなって います。
この一〇年間で、上位四つ のグループのシェアは二〇%弱から 九五%近くに高まりました。
日本の 医薬品業界では卸がリーダーになる 可能性が十分に出てきています。
■■3PLには逆風も 司会・山田 SCMにおいて3PL が果たすべき役割というのはどうでし ょうか。
3PLはリーダーたりえない のでしょうか。
MA・下村 私は本当の意味での3 PLは、日本にはまだ少ないのでは ないかと思っています。
例えば在庫。
在庫をいかに減らすかというときにも、 物流事業者は在庫=物流が減ると、売 り上げが減ってしまうとしか考えてい ない。
荷主にとって在庫は余分にな いほうがいいに決まっています。
ある 製品の売り上げが減ってきたら、在 庫も減らして、物流も減って、倉庫 のスペースも減る、輸送量も減ると いうように、コストを変動費化できれ ばベストです。
つまり3PLというのであれば、物 流コストの変動費化を推進していか なければならないと思うのですが、そ ういう大胆な提案をされる日本の3 PLさんを、私は知りません。
自社の アセットとして倉庫を持ったり、物流 要員を抱えたり、例えばトラックを持 ったりしているので、それができない。
また日本の3PLははっきり言っ て丼勘定です。
届けてなんぼみたいな ところがある。
海外では先進的な3 PLも登場しつつあり、アクティビティベースでの請求、見積もり、コスト 計算を行って変動費化のニーズに対 応している。
海外の3PLが、今後 本格的に日本に進出してくるように なると、恐らく大きな戦いが生じてく るでしょう。
商慣習の問題もあります。
欧米で 価格というのは工場からの出荷価格 のことを言い、運賃は別というのが 当たり前です。
そのため買う方は、い かに安く取りに行くかを工夫するの ですが、日本では全然そんなものは 関係ない。
納品先が横浜と千葉では 全然物流費が違うのに、値段は同じ、 つまり日本では運賃込み価格が平気 でまかり通っていて、中国に行っても 同じことをやろうとしている。
やはり そこは3PLが物流費と本来の商品 コストを、きちんと分けられるような 仕組みを積極的に作っていくべきだ と思います。
海洋大・川島 食品業界においては、 3PLに対する逆風も吹いています。
今や食品の安全上の理由から、コス トは二の次になっている。
リスクマネ ジメントやコーポレートガバナンスと いう見地から、3PLの利用が遠の いているのが現状です。
自分らでもっ と仕切り、拡充していこうという考 え方の方が強い。
配送輸送過程で何 かトラブルが起こると、全部メーカー の親会社の社長の責任になってしま う。
とてもじゃないけど、そんなリス クはとれません。
司会・山田 話は尽きませんが、そ ろそろ時間ですので、最後に私から感 想を述べさせていただきます。
これま でのお話から日本のSCMはリーダー シップ、標準化、国際化など様々な 問題を抱えていることがわかりました。
しかし、数多くの三文字言葉が登 場しては消えてしまっている中、S CMという言葉が一〇年間消えるこ となく存続しているのも事実です。
そ れはSCMという言葉が企業として の非常に本質的な部分を捉えている 概念だからだろうと思います。
従って 今後もSCMの概念は生き残ってい くであろうし、我々もそれを全力でバ ックアップしていかないといけないと 考えているところでございます。
本日 はありがとうございました。
自社流をしっかり考えることだと思 います。
その際に外部の人間を適材 適所で使うのがいいと考えます。
今 や一つのソリューションで全てが解決 できるような時代ではありません。
司会・山田 SCMのリーダーとな るプレイヤーについて意見はございま せんか。
SCL・保高 日本の医薬品流通で も似たことを感じます。
日本の卸は MS(Marketing Specialist:医薬 品卸売業の営業担当者)という、メ ーカーと連携した販促機能を持って いる。
この機能があるのは日本だけで、 アメリカにもヨーロッパにもありませ ん。
アメリカやヨーロッパの医薬品卸 はあくまで物流機能を中心に展開し ています。
日本の外資系メーカーは、 卸のこの機能への対応に大変苦労し ています。
一方、日本はグローバル化の一環 で、一九九二年から価格決定権が卸 に移り、薬価切り下げと相まって、購 MAY 2007 70 下村幸夫 マンハッタン・アソシエイツ ソリューションコンサルティング部部長 国際大手コンピュータ・メーカーのシス テム・エンジニアを出発点に、一貫して IT業界で活動。
アスキーIT部長、外資系 ERPベンダーを経て現職。
SCMコンサル ティング活動に従事。

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