ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年3号
ケース
コスト削減サンデン

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2007 42 森と共存する物流センター サンデンは、カーエアコン用コンプレッサ ーで世界シェア二五%、自動販売機で同三 〇%を誇る機械メーカーだ。
米国、ヨーロッパ、アジア、オセアニアの各地に生産・販売 拠点を展開し、海外売上比率は七割近くに達 している。
国内には群馬県に八斗島事業所と赤城事 業所の二工場を設けている。
八斗島事業所は 主にコンプレッサーや熱交換機などの自動車 用機器、もうひとつの赤城事業所は自販機、 冷凍・冷蔵ショーケース、住宅用の暖房・空 調システムなどを生産している。
このうち赤城事業所は、サンデンが二つの コンセプトを実現するため、〇二年四月に稼 動した新しい工場だ。
コンセプトの一つは、 環境との調和だ。
同工場には「サンデンフォ レスト」という別名も付けられている。
周囲 の自然と共存する工場を目指した。
赤城山南の山麓に広がる六四万平方メート ルの広大な敷地のうち、工場用地は二二万平 方メートルに過ぎない。
作家でナチュラリス トとして知られるC・W・ニコル氏を開発ア ドバイザーに招き、野生生物の生息域を残す など周囲の自然環境に配慮した。
用地の造成 には近自然工法を用い、伐採した木材も廃棄 せずに事務所で使う家具の材料や池の浄化剤 などに利用している。
昨年一〇月に同敷地内に稼働した物流加 工センターにも、このコンセプトが適用され ている。
センターの屋根には太陽光発電シス テムを設置、工場などで使用する電気の供給を行っている。
環境との調和を目指した「森 の中の物流センター」という位置付けだ。
同事業所のもう一つのコンセプトは、もの づくりの革新だ。
従来の生産計画方式を改め、 後工程からプル型で生産指示を出す?後補充 生産方式〞を採用。
同時に業務プロセスを改 革して、最短のリードタイムでの生産を目指 している。
工場敷地内に物流加工センターを 建設し、生産と物流の一貫体制を構築すると いうのも当初からの構想だった。
自販機、ショーケースなどの主なユーザー は、小売店や飲食店、外食産業など。
店舗が コスト削減 サンデン 9カ所の倉庫を集約し横持ち解消 ミルクラン導入で生産革新も支援 サンデンは昨年10月、群馬県内の工場敷地内 に物流センターを新設し、それまで工場周辺の9 カ所に分散していた在庫を集約した。
横持ち輸 送の解消により、年間2億円以上の物流コストを 削減できる見込みだ。
同社は09年度までに生産 革新による在庫の半減を目指しており、その一 環で今後、調達物流の見直しに取り組む。
サンデンフォレスト・赤城事業所の全景 43 MARCH 2007 新規にオープンする際には需要が集中して発 生する。
こうした完成品の注文に、同社は基 本的に翌日納品で対応している。
工場倉庫から全国に五カ所あるブロック別 の物流センター(北海道・首都圏・中部・関 西・九州)を経由し、ユーザーに配送する。
ブロック別センターには一部の商品を除いて 極力在庫を持たない方針をとっている。
その ため北海道や東北、九州などの遠隔地では、 支店の倉庫に在庫を持って対応しているケー スもある。
物流加工センターを新設するまで、赤城事 業所では周辺にある九カ所の倉庫に分散して 製品を保管していた。
工場からラインアウトした製品を格納するために、九カ所の倉庫を 回ると、トラックの輸送距離は一回当たり四 五キロに達する。
年間に使用される車両の延 べ台数は一〇トン車で四五〇台に上っていた。
製品をブロック別センターに出荷する際に も、同じように各倉庫を巡回する必要があっ た。
赤城事業所の出荷に使用される車両台数 は一〇トン車が年間延べ六六〇〇台、四トン 車が同五七〇〇台ある。
これらの車両は出荷 積み込みのたびに倉庫を巡回し、平均二五キ ロを走行していた。
工場敷地内にセンターを設置することで在 庫拠点を集約、横持ち輸送を解消した。
輸送 コストはもちろん、環境負荷の軽減にもつな がる。
同社の試算によれば年間でCO 2 の排 出量を三一五トン削減できる見込みだ。
サン デンの今村英徳執行役員物流本部本部長は 「これでようやく、環境保全という工場のコ ンセプトに相応しい物流体制が整った」と強 調する。
巡回集荷が不要になったことは、出荷の配 車にも好影響を及ぼした。
従来は巡回に要す る時間を考慮し、受注の締め切り時間を早め に設定していた。
だが実際には、締め切った 後に緊急の追加注文が入るケースがしばしば あった。
その都度、別便を仕立てなければな らず、輸送コストの上昇を招いていた。
集約 によって受注の締め切り時間を三時間延長で きるようになった。
これによって配車の柔軟 性が増した。
サンデンでは、九カ所の倉庫を集約するこ とによる保管料の低減、および倉庫へ格納す るための巡回車両の削減だけで、年間に二億 五〇〇〇万円のコストを削減できるとみてい る。
これに配車の効率化などを含めると、さ らに大きなコスト削減効果が期待できる。
製品と補修・再生用部品の共同輸送の検 討も進んでいる。
同社では、製品物流のオペ レーションを主に子会社のサンデン物流に委 託している。
一方、補修・再生用部品の需要 予測から調達・受注・出荷まではパーツセン ターが管理している。
パーツセンターは組織 上は物流本部に属するが、保管基地がもともと工場内にあり、製品物流とは出荷場所が異 なるため、物流管理は別々だった。
物流加工センターの新設を機に、完成品と パーツセンターの物流管理を統合した。
ショ ーケースなどの商品は、完成品の新規需要だ けでなく、?再生需要〞が多いのも一つの特 徴だ。
一定の使用年数が経過した後も主要部 品を交換し、塗装をし直すことによって使用 期間の延長を図るユーザーが多い。
パーツの荷姿は、自動販売機の冷却用部品 のように三〇キロもある大物からビスのよう な小物まで様々だが、大半は路線便や宅配便、 MARCH 2007 44 坪。
これに対して従来は九カ所の倉庫を合わ せて一万四〇〇〇坪の保管スペースがあった。
在庫を減らすことを前提に従来よりも規模を 大幅に縮小した。
現時点では、まだ二〇〇〇 坪の旧倉庫を残したまま運用しているが、〇九年度までには集約を完了する計画だ。
そしてこの〇九年度を目標に赤城事業所で は、在庫の五割削減をめざしている。
既に自 動車用機器を製造する八斗島事業所では、赤 城事業所に先立ち生産革新と部品調達の見 直しに取り組んできた。
サンデンの顧客となる自動車組み立てメー カーでは、VMI(Vendor Managed Inventory:ベンダー主導型在庫管理)を活 用して、工場へJIT(ジャスト・イン・タ イム)で多頻度納入する形が一般的だ。
これ に対応してサンデンでも、八斗島事業所から 顧客のVMI倉庫へ毎日、製品の補充を行っ ている。
しかし従来は、八斗島事業所での自動車用 機器の生産サイクルは一〜二週間単位で、ロ ット生産に近く、顧客の生産サイクルとは乖 離していた。
サンデンの工場へ部品を納める ベンダーも大半は一〜二週間に一度まとめて 納品するといった形態をとっていた。
これを 改善するため八斗島事業所では近年、生産の 技術革新を進めながら、顧客が?欲しいもの を、欲しい時に、欲しい分だけ〞生産する方 式に切り替えてきた。
多品種少量生産を実現するためには、部品 調達にもJITの考え方を取り入れる必要が ある。
しかしベンダーが個別に多頻度納品を 行うのでは効率が悪い。
運賃の上昇を招き、 その分が仕入れ単価に上乗せされる可能性も ある。
そこでサンデンは、調達品の仕入れ単 価と運送費を分離し、ミルクラン(巡回集 荷)方式によって自ら部品を引き取りにいく かたちに改めることにした。
この調達方式を導入するには、まず従来の 仕入れ単価に含まれていたベンダー側の運送 費を明らかにする必要がある。
しかし運送費 は、燃料の購入方法や車両の減価償却方法、 メール便を使ってユーザーへ届けている。
そ れだけ集荷のために工場構内へ出入りする車 両台数は多くなる。
そこで大物部品を中心に 製品との共同輸送を図ることにした。
ただし、共同輸送には課題も多い。
自販機 やショーケースの製品の設置場所と、補修・ 再生用部品の納品先は必ずしも同じではない。
後者は主にユーザーが修理を委託するメンテ ナンス業者の拠点や飲料メーカーのサービス センターだ。
しかも修理作業のスケジュール にあわせて配送の時間帯を指定されることが 多く、緊急性が高い。
それだけ共同化の制約 を受けやすい。
肝心のコスト面でも問題が生じる。
製品と 共同輸送できるのは工場から各地のブロック 別センターまでの幹線輸送のみ。
ブロック別 センターから配送先までは別便で二次輸送し なければならない。
路線便や宅配便に比べて、 かえってコストアップになってしまう可能性 もある。
物流本部では昨年十二月から大阪方面向 けなどでテスト輸送を行いながらこれらの課 題を検証し、共同輸送実現の可能性を探って いる。
今村本部長は「条件の合うケースをう まく組み合わせて、部品全体の二割程度を共 同便に乗せていきたい」考えだという。
部品調達にミルクランを導入 在庫削減の取り組みも本格化している。
物 流加工センターの保管スペースは約五〇〇〇 45 MARCH 2007 外部委託先との運賃契約内容など変動的な要 素が多く、ベンダーごとに事情が異なる。
こ のため物流本部では、独自に運送原価のコス トテーブルを作成し、これをもとに各ベンダ ーとの交渉を行った。
こうして八斗島事業所では昨年からミルク ランによる部品調達がスタートした。
従来、 部品を発注してからベンダーによる納品、生 産、ユーザーへの配送までには平均で一カ月 もかかっていた。
生産革新と調達方法の見直 しによって、このリードタイムを九日にまで 短縮することができた。
またミルクランの導入によって、部品の調 達にかかっていた物流コストは従来比で七割 削減した計算だという。
新たに発生すること になったミルクランを委託する輸送業者への 支払い費用は、ベンダーとサンデンとで応分 に負担するかたちにしている。
一方、物流加工センターの稼動によって生 産・物流一貫体制を実現した赤城事業所で は、これから本格的に部品調達の見直しがス タートする。
今村本部長は「物流加工センタ ーを活用してミルクランあるいはVMIなど の方法を検討していきたい。
ただし調達先の 数が多いと効率が悪く、環境への負荷軽減も 容易でない」ことから、調達物流の改革と並 行して生産部門に対しても部品のモジュール 化など一層の生産革新を働きかける考えだ。
国際輸送業者をルート別に集約 同社の物流本部は、国内の事業所や営業拠 点および海外の現地法人に対し物流政策の立 案や改善提案を行い、その実現を果たす組織 として位置づけられている。
傘下には企画部 門のスタッフのほか、輸出入業務や国内の受 注業務、ショーケース・自動販売機などの整 備業務やユーザーの店舗向けに什器メーカー などと共同配送を実施するオペレーション部 門を擁している。
かつては、物流本部のイニシアチブが海外 にまで十分に発揮されず、各現地法人が独自 の物流体制をとっていた。
グローバルに見れ ば、必ずしも効率的とはいえなかった。
これ を改め、物流本部の主導で、国際輸送のパー トナーをルート別に集約する国際入札を導入 した。
〇五年に各国間海上輸送のすべてのルート を対象に入札を実施。
応札した業者に対して ルートごとに年間の物量を提示した上で、輸 送品質やスピード、コストなどさまざまな要 件を吟味して最適な業者を選定した。
〇六年 には航空輸送でも入札方式をスタート。
毎年、 この方法で業者の見直しを行い制度の定着を 図っている。
グローバル・ロジスティクスの次のステッ プとして今後は日本国内でも、海外から輸入 する部品調達について、最適化の提案をして いく考えだ。
現在、物流本部ではサンデンが 海外から輸入する部品の一五%程度の調達物 流を管理している。
いずれも取引条件はCI F(Cost Insurance and Freight=運賃・保 険料込み渡し)建てだ。
東京の大井ふ頭で陸 揚げしたのち、貨物を保税蔵置所に搬入し、 輸入通関を済ませて群馬の工場へ輸送するま でを物流本部が一貫して管理している。
一方、商社経由で輸入する貨物については、 港に陸揚げしてから工場に納めるまでを商社 が管理している。
これらの業務は商社が外部 に委託しており、その費用は同社の仕入れ原 価に含まれている。
物流本部では、自動車用 機器のミルクランと同様の考え方に立ち、商社が外部に委託する国内での通関や輸送業務 を内製化することによってコスト削減が可能 になると見る。
またFOB(Free On Board=本船渡し) については、すでに入札方式の採用によって 日本までの輸送の最適化を実現していること から、陸揚げした後の国内物流を内製化する ことでさらにコスト削減を図りたい考えだ。
物流本部では、この内製化によってコンテナ 一本あたり五〇〜六〇%のコスト削減が可能 と見込んでいる。
( フリージャーナリスト・内田三知代) サンデンの今村英徳執行 役員物流本部本部長

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