ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2007年2号
特集
物流企業番付 平成19年版 三菱電機ロジスティクス

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

イケア日本1号店を荷主に獲得 ――順調に売り上げが伸びています。
「当社は事業を大きく三つの柱に分けています。
一 つが親会社を含めたグループ向け事業、これが売り上 げ全体の約七割を占めています。
二つ目が外販事業、 三つ目が国際物流事業です。
いずれも、ここ数年は扱 いが伸びています。
やはり景気回復でグループ向けを 含めた既存荷主の物量が増えたことが大きい。
とりわ けFA関連機器などは中国をはじめ海外の需要が旺 盛で、注文に生産が追いつかず、割り当てをしている ような状態です。
そうした海外需要が間接的に国内の 物量増に影響している」 「また当期利益は、〇六年度は厚生年金の代行返上益、 〇五年度は資産売却益と、それぞれ特殊要因が入っ ているため、その分は割り引かないといけない。
それ でも過去四年にわたって増収増益傾向であるのは事実 です。
今期(二〇〇七年三月期)も売上高は若干伸 びます。
利益は特別利益がなくなるため当期利益とし ては減益にはなりますが、営業利益は横ばい程度を見 込んでいます」 ――九〇年代後半から二〇〇〇年初頭にかけて、三 菱電機をはじめとした電機メーカーはいずれも業績低 迷に苦しんでいました。
ずいぶん環境が変わりました。
「この三年で環境は大きく好転しました。
ITバブ ルが弾けた二〇〇〇年前後には電機産業全体が非常 に厳しい状況にありました。
当時やり玉に挙げられた のが、?総合電機〞という看板、総花的な経営展開と いう批判でした。
その点、三菱電機は比較的早い時 期に選択と集中を進めたために回復も早かった」 ――家電メーカーが揃って赤字に転落した九八年には、 物流子会社の売却が本格的に検討されていました。
御 社も例外ではなかったのでは。
「その点でも環境は大きく変わりました。
家電系メ ーカーの物流子会社をまとめることで効率化を進める べきだという議論は当時からあったようです。
しかし 現在はむしろ、物流というものを、SCMの根幹であ り、生産や販売と一体とのものとしてとらえる機運が 強くなっている。
製品を顧客にどうやって届けるか。
それを抜きにして販売戦略・製品戦略は考えられなく なっている」 ――株の公開は? 「株式公開は計画に上がっていません。
当社の中長 期の計画としては、二〇一〇年をメドとして一〇〇〇 億円の売り上げを目指しています。
外販比率は三〇% で三〇〇億円。
国際物流、ただし日本から海外に出 荷する輸出物流や逆に日本に調達する輸入物流も含 めた数字ですが、これが二〇〇億円。
そして国内のグ ループ向け事業が五〇〇億円という内訳です」 ――国内のグループ向けは増えない計算ですね。
「親会社やグループ会社からの物流効率化の要請は 依然として強い。
そこは当社の売上高が下がることに なっても貢献しなければならないと覚悟しています。
ただし、現状でグループ会社の国内物流を一〇〇% 受託できているわけではないので、それは取り込んで いく。
三菱電機の連結売上高は二〇〇六年三月期で 約三兆六〇〇〇億円です。
物流コストは少なく見積 もっても年間一〇〇〇億円近いと思われ、まだかなり の部分を取りこぼしている」 ――昨年八月には三菱電機の拠点集約の一環で、三 菱電機ロジ自らが三〇億円を投じて千葉県野田市に 「北関東ロジスティクスセンター」を建設しました。
こ れも荷主にとってはコスト削減ですが、三菱電機ロジ にとっては売り上げ減になる。
FEBRUARY 2007 18 親会社への売り上げ依存から脱却するため、約10年か けて外販比率を25%まで高めてきた。
これを30%まで拡 大する。
家電や家具などの嵩モノと重量物を対象にする。
それに並行して国際物流にも本格進出。
2010年に年商 1000億円を狙う。
(聞き手・大矢昌浩) 三菱電機ロジスティクス ――家電・家具量販店のエリア宅配で外販拡大 武藤晃三菱電機ロジスティクス社長 注目企業トップが語る強さの秘訣 「そうです。
しかし、集約によって空いた千葉県市 川の倉庫、約一〇〇〇坪のスペースに、新たに外資 系大手家具チェーンのイケア(IKEA)さんを迎え 入れることができました。
家具のような嵩モノの扱い には、当社が家電で蓄積したノウハウを活かせる。
倉 庫施設や車両などのインフラも馴染む」 ――イケアの物流は、一般消費者宅への配送です。
既 存の配送ネットワークでは対応できないのでは。
「確かに当社がグループ向け事業でメーンとするの はB to Bであって、B to Cではない。
しかし実績は あります。
中部地区では家電量販のギガスケーズデン キさんの宅配事業を請け負っています。
またインテリ アショップの『フランフラン』を展開するバルスさん の仕事も手がけている。
それを踏まえてイケアさんに も評価されたと考えています」 「家電や家具の量販店の物流は、宅配であってもモ ノが大きく、設置・組立て等の必要もあるために既存 の宅配便には乗らない。
専用車が必要になる。
その一 方で、配送エリアは店舗の商圏内に限られている。
そ こで当社が自社車両と協力会社を組み合わせて配送 ネットワークを構築しました」 ――外販営業の専任部隊はありますか? 「営業統括部を設けています。
一部と二部に分かれ ていて一部はグループ向け。
二部が外販専門部隊で現 在一〇名のスタッフがいます。
大部隊とは言えません が、社内でも優秀な人材を投入しています。
そのほと んどが親会社からの出向ではなく、プロパー社員です。
また同部への人事ローテーションによって全体の営業 人材レベルの底上げを図っています」 ――国際物流への進出について、家電系の物流子会社 は親会社の展開に大きく遅れた印象を持っています。
「それは否定できません。
しかし巻き返しを急いで います。
昨年十二月には、台北とタイに続き、当社と しては三つ目となる海外現地法人を香港に設立しまし た。
今年一月二日から稼働しています。
主に香港市 場向けの販売物流を手がけます。
中国本土では、グル ープの生産拠点がある大連の駐在員事務所を法人化 します。
一年がかりでやっと認可が下りて、この一月 に資本金を振り込みました。
また販売の拠点となる上 海の駐在所事務所の法人化も進めています。
いずれも 独資です」 中国物流に本格進出 ――日系物流会社の中国進出としては後発になります。
既存の協力会社を押しのけて割り込んでいけますか。
「当社のようなインハウスの物流会社でなければ、で きない仕事があります。
例えば現地で資本関係のない パートナーを使っている限り、荷主側には実際のオペ レーション・コストは見えない。
コストが不透明です。
そこに当社が入っていって、物流全体をスーパーバイズすることでコスト削減に貢献する、あるいは物流品 質を向上するといった役割を果たすことができる。
実 際にグループ会社から、それを期待されています」 ――無理に外販や国際物流を拡大しようとすれば利益 を圧迫するのでは。
「赤字になるぐらいならやりません。
初年度は投資 も必要になるので赤字でも、二年目以降は黒字になる 見込みがなければ手を出さない。
社内では『Speedy But Steady』という言葉で方針を説明しています。
ス ピードは必要ですけれど、それを急ぐあまり、見かけ だけの水ぶくれになってはいけない。
中身の伴った仕 事、3PL的な付加価値を発揮することができて、か つ一定の利益を確保できる仕事によって着実に事業 拡大を進めていきます」 19 FEBRUARY 2007

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