ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年10号
特集
激安物流 割高な国内輸送を回避――J&Kロジスティクス

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

国内物流を釜山にシフト 今年九月一日、ホームセンター大手のホーマック、 カーマ、ダイキの三社はDCMJapanホールディ ングスを設立し経営統合を果たした。
狙いの一つは物 流の効率化だ。
ホームセンターで扱う商品には長尺物 やカサ物など大型商品が少なくない。
それだけ輸送費 や保管費の負担が大きい。
経営統合に先立つ二〇〇四年に三社と三井物産が 出資する共同仕入会社のDCMジャパンは、韓国・ 釜山の甘川港に新拠点を着工している。
中国やAS EAN諸国で調達した商品を現地で保管し、三社分 を混載することでコンテナ単位に物量をまとめ、日本 に多頻度輸送を行っている。
これによって輸入品の在 庫回転率を高め、割高な国内物流を避けようという 狙いだ。
同様に今年七月、内田洋行は釜山新港における物 流オペレーションを開始した。
オフィス家具類を釜山 に保管。
現地で組み立てや流通加工を施して、日本 や海外のユーザーに直送する。
「日本国内の拠点を経 由していた従来と比べて、二割以上の物流コスト削減 ができるはずだ」と、釜山港のポートセールスをサポ ートするJ&Kロジスティクスの原瑞穂社長はいう。
食品スーパーの共同調達機構、CGCジャパンも 海外で調達した生鮮品を釜山で加工。
海上コンテナ 輸送で北海道や東北の地方港に陸揚げして、加盟ス ーパーに納品している。
既にコンテナ一〇〇〇本分の 処理実績がある。
従来、輸入食品は東京港などの主 要港で陸揚げし、国内の物流センターで加工・保管、 トラック輸送で各地のスーパーに納品していた。
それ を釜山から地方港への直送に切り替えたことで、割高 な保管費や流通加工費だけでなく、国内のトラック輸 割高な国内輸送を回避 ――J&Kロジスティクス 国内の在庫拠点を東アジアのハブ港に移し、日本のユー ザーに直送する。
これによって割高な日本国内の輸送やオ ペレーションを回避する物流の海外シフトが起こっている。
一定の条件を満たした案件では2割、3割の大幅なコスト 削減も夢ではないという。
(大矢昌浩) OCTOBER 2006 26 送の利用を抑えた。
一般に日本企業の物流コストは、トラック輸送の支 払い運賃が最も大きな割合を占めている。
多頻度小 口化の進展で、その負担は増す一方だ。
しかし運賃水 準は既に底値にはり付いている。
大幅な値下げは期待 できない。
むしろドライバー不足や燃料高騰の影響で 今後は値上がりが懸念されている。
国内の主要港を経由せずに、東アジアのハブ港から ユーザーに近い地方港へ直送することで、トラック輸 送の負担を軽減することができる。
末端配送に宅配便 を使う場合でも、東京から北海道や九州まで送付すれ ば一個一〇〇〇円以上かかる。
それを現地の地方港 からの発送に替えれば、同一エリア内料金で済む。
J&Kロジの試算によると、輸入品を北海道、東 北、九州の顧客に納品する場合には、物流拠点の海 外シフトによって一割〜三割のトータルコスト削減が 可能になるという。
日本市場向け輸入品の二割程度 がこれに該当する。
日本の地方港とのアクセスと海上輸送のリードタイ ムを考慮すると、国内拠点の移管先となるハブ港は上 海か釜山に絞られる。
いずれも出荷した翌日には日本 の港に届く。
注文から顧客に納品するまでのリードタ イムは、早ければ翌日、通常でも翌々日。
首都圏から 北海道や九州にトラック輸送する場合と、ほとんど違 いはない。
既に上海には多くの日系企業が在庫拠点を構えて いる。
現地で生産あるいは調達した商品を港湾地区で 保管、実需に応じて日本をはじめ欧米の消費地に輸 送するサプライチェーンが出来上がっている。
さらに 近年では中国の国内市場向けの中央物流拠点として の機能も備えるようになってきている。
それに対して釜山は、これまで陰が薄かった。
人件 第2部物流アイデア商品の使いみち ` W 27 OCTOBER 2006 費、税制、規制、保管料、アクセスなどを比較すると、 人件費は上海のほうが安く、それ以外は釜山に分があ る。
ただし、上海は後背地に巨大市場を抱えている。
そのため例えば日系の大手食品メーカーは一時、釜山 に拠点を設置する方向に傾いていたが、中国の国内市 場への供給を重視して結局、上海を選んだ。
釜山はハブ港としての地理的条件には恵まれている。
日本の五七の地方港に定期航路も開設している。
九 〇年代中頃には、アジアのハブ港として日系企業をは じめとした外資系企業から注目を集めたこともあった。
J&Kロジの原社長も当時、福山通運の社員として 現地に赴いた一人だ。
合弁企業を設立する計画だっ た。
しかし「詳しく調べてみると、当時の釜山は法律 や税制が全く整備されていなかった。
他の日系物流企 業にしても、話題になっているわりに実際に進出して いるところは皆無といってよかった。
結局、合弁会社 の設立は実現しなかった」と振り返る。
その後、韓国は九七年のアジア通貨危機の影響で 深刻な構造不況に見舞われた。
同じ時期、お隣の中 国で猛烈な経済成長が始まった。
中国の台頭は韓国 とりわけ釜山港には大きな打撃となった。
国内企業が 拠点を海外に移管することで、突然荷主が消えてしま う。
そんな事態が繰り返された。
この間も統計上は釜山港の取扱量は増えている。
し かし「実際には、港の使用料を事実上タダにしたり、 躍起になってなんとか荷主をつなぎ止めてきたという のが実情だった」と原社長。
国内産業の空洞化は日 本の比ではなかった。
事態を重く見た韓国政府は、国 を挙げて産業振興策に動き出した。
その目玉が釜山の スーパーハブ港化だった。
今年開港した釜山新港のインフラ整備に韓国は官 民合わせて総額一兆円を投じる。
ハードと並行してソ フト面での整備も進めた。
新港の開港に合わせて法令 を改正。
外資とりわけ日系企業をターゲットに大胆な 優遇策を実施すると共に、自由貿易地区の施設を格 安で提供した。
土地の年間賃貸料が一平方メートルあたり四五円。
施設使用量が同七二五円という設定で、最長五〇年 間の使用が可能だ。
税制面では関税や付加価値税な ど間接税の免除に加え、当初三年間は直接税(法人 税、所得税、取得税、登録税、財産税、総合土地税) を一〇〇%免税。
その後二年間も五〇%免除する。
日系物流企業が入札に殺到 その第一陣として落札したのは、福岡運輸、バイク 便のダット・ジャパン、そして現地の大宇ロジスティ クスによるジョイントベンチャーだった。
冒頭の内田 洋行を主要荷主として、九州や北海道向けの家具や 加工食品などをターゲットに3PL事業の拡大を狙っ ている。
第二陣には十七グループが入札。
日本郵船や福岡の初村第一倉庫、一〇〇円ショップのダイソーな ど七グループが落札した。
今年秋には第三陣として十 一グループの落札が決まる。
これによって釜山新港に は計二〇万坪のセンターが日系合弁物流企業によっ て建設されることになる。
新港の一連の入札はこれでひとまず終了する。
今後 は荷主が新港への拠点移管を実施する場合には、土 地を落札した合弁物流企業を3PLとして利用する ことになる。
J&Kロジの原社長は「これまで当社は 韓国の監督官庁から依頼を受けて釜山新港の開発事 業をサポートしてきた。
今後は荷主に対して、現地の 適切な物流企業を紹介する役割を担って行きたい」と 考えている。
J&Kロジスティクスの 原瑞穂社長

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