ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年9号
特集
中国&インドの物流 DHL――国際インテグレータのマーケティング

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2006 22 アウトソーシング需要の拡大 積極的な貿易と経済イニシアチブが中国の物流マー ケットを刺激している。
WTO(世界貿易機構)への 加盟、経済協力協定、国外からの生産移転、グロー バルマーケットに対する中国企業の関心の増大、新た な米中航空協定など、好条件が揃っている。
当社は二〇〇五年から二〇一〇年の中国物流マー ケットにおいて、領域別の成長と利益を 図1のように なると予想している。
横軸は成長率、縦軸はEBIT (Earnings Before Interests and Taxes:金融収支 前経常利益)率だ。
当社は、グラフの右上部分、つま り、成長と利益の両方が期待できる領域に焦点を合 わせている。
具体的には、国際および国内のエクスプ レス、ロジスティクス、国際の航空および海上輸送だ。
現在の中国の物流業界は、効率の悪さとサービスレ ベルの低さを露呈している。
その要因として挙げられ るのは、計画経済による統制の歴史と保護主義による 各種の制限、専門的な知識と技術の欠如、領域や地 域別に分断された市場、整備途上のインフラだ。
先進 国ではGDPの一〇%である物流コストが中国では一 九%に上り、サービスレベルがグローバルスタンダー ドに立ち後れるという現状を招いている。
オンタイム の配達率は低く、損傷率は高く、可視性に乏しい。
我々は、サプライチェーンのソリューションが、大 口顧客を獲得して固定客とするための重要なカギにな ると見ている。
中国のサプライチェーンは極めて非効 率的だ。
EUのサプライチェーンコストを一〇〇とし た場合、中国は一三六だ。
それだけソリューションが 価値を生む潜在性に富んでいると言える。
アウトソー シングの需要は増し、二〇一〇年までに三五%に達す ると予想される。
アウトソーシングビジネスの成功に不可欠な要素が ある。
LLP(リード・ロジスティクス・プロバイダ ー)として、顧客のニーズと収益性を満足させること。
国内でのサプライチェーンのノウハウと実行能力が、 最高レベルの国際ネットワークとシームレスにつなが っていること。
ビジネスルールの設定やサプライチェ ーンのビジビリティ、イベント管理を含む、サプライ チェーンの全面的な判断力と管理能力を備えているこ とだ。
DHLはこれらを兼ね備え、アウトソーシング 市場の拡大に対して万全の体制を取っている。
ハードとソフトに積極投資 当社はこれまで、中国の経済成長を支えつつ、エ ア・エクスプレス業界の発展における重要な役割を果 たしてきた。
一九八〇年にシノトランスとエージェン ト契約を結び、中国において外国企業として最初のエ クスプレスカンパニーとなった。
一九八六年十二月に、 シノトランスと五〇:五〇の出資で中国初の国際エクスプレスのジョイントベンチャー(JV)を設立した。
二〇〇三年には、上場したシノトランスの株を五%保 有し、同社との強力なパートナーシップを明確にした。
JVは、国際及び国内のエア・エクスプレスから、あ らゆる業界における顧客企業の拠点へのロジスティク スサービスまで、幅広いサービスを提供している。
中国におけるエクスプレスの先駆者として、JVの パートナーとビジョンを合わせて投資を継続的に行っ た結果、中国のエクスプレス分野で三七%のシェアを 占める、誰もが認めるマーケットリーダーになった。
そのJVが、過去五年間に年間三五〜四五%の強固 な成長を遂げている。
市場の成長を上回るペースでの 成長と収益は、近年の投資と発展、マネジメントチー ム強化の賜物だ。
DHL――国際インテグレータのマーケティング DHLは競合他社に先駆けて中国に進出し、エア・エ クスプレス分野で圧倒的なシェアを誇っている。
大中華 圏の戦略責任者が、ハード・ソフト両面での積極的な 投資と今後の戦略について語る。
DHL 陳奮禎大中華圏・韓国担当副総裁 第2部CSCMP第2回中国大会報告 23 SEPTEMBER 2006 強大な国際ネットワークに支えられた国内最高レベ ルの能力によって、DHLは、中国でも優れたドア・ ツー・ドアのデリバリーサービスを保証している。
専 用インフラのネットワークは中国最大だ。
支店が五六 カ所、拠点が一六三カ所、コールセンターが三カ所、 車両が一六〇〇台ある。
プロフェッショナルなサービ スを提供する専属スタッフは、六〇〇〇人から更に増 え続けている。
カバー地域は広く三一八都市に及ぶ。
DHLエク スプレスの地理的なネットワークは中国の九五%をカ バーしており、すべて専属かつ直接の管理を行ってい る。
労働集約型産業の顧客企業は、競争力を高める ために内陸部に移動してきている。
そうしたトレンド もしっかりカバーする体制が取れている。
また、国際ゲートウェイが北京・上海・広州・深 にあるほか、第二ゲートウェイが七カ所にある。
輸送 品質を管理するための「クオリティーコントロールセ ンター」を設置し、出荷の一つ一つをリアルタイムで モニタリングし、二四時間体制であらゆる事故に迅速 な対応が取れるようにしている。
昨年、「DHL・ロジスティクス・マネジメント・ ユニバーシティ」という、企業内大学を上海に設立し た。
これは我が社の人材戦略の重要な構成要素であり、 アジア環太平洋地域における未来のリーダーを生み出 す基盤となるものだ。
ロジスティクスとサプライチェ ーンのスペシャリストを持続的に確保するのに重要な 役割を果たす。
優秀な人材は、アジア環太平洋、特に 中国における我が社の成長に欠かせない。
この取り組みは、我が社の業績につながるだけでな く、環太平洋地域全体と中国の両方における、業界 のプロフェッショナル・スタンダードを引き上げる役 割も果たす。
さらに、ロジスティクスとサプライチェ ーン・マネジメントの専門知識を顧客に提供する。
こ の投資は、大中華圏(中国本土、香港、台湾の総称) と環太平洋地域における人材とビジネスへの我が社の コミットメントを示す代表的なものだ。
ハイテクとアパレル狙う 大中華圏において、国際および国内のエア・エクス プレスとロジスティクス・ソリューションで真っ先に 選ばれるプロバイダーになることを強く願っている。
そのために、中小企業セグメントにおける現在の優位 性を維持しつつ、ハイテクとアパレル産業にフォーカ スを当てて多国籍企業セグメントのシェアを高めてい く。
アジア圏での地位を堅持し、アジアからEUの路 線と米国部門を強化して、信頼できる国際輸送とロ ジスティクス・ソリューションを必要とするユーザー に集中して取り組んでいく。
一方で、再投資を可能に するプロセスの強化と生産性の向上を通して、コスト リーダーシップを続けていく。
巨大な規模とダイナミズム、世界への開放で、中国 は誰もが重点的に取り組む必要のある経済大国になっ た。
その勢いは留まるところを知らない。
当社は大中 華圏において、市場の発展よりも速いペースで成長を 続けていく。
競合他社に対しては、サービスの能力と 顧客とのつながりで優位性の幅を広げていく。
地理的 な拡大だけでなく、さらに強力で無双のマネジメント 能力とオペレーション機能を作り上げることにもこだ わっていく考えだ。
将来的な発展に備え、大中華圏においてリーダーで あり続けるための戦略と投資計画を完成させた。
中国 へのフォーカスと、本土におけるイニシアチブのオペ レーション支援が、我々の顧客と株主にとって非常に 大きな価値を生み出すと自信を持っている。
DHLの 陳奮禎副総裁 ※このレポートは2006年度CSCMP中国会議での講義内容を本誌がまとめたものです。

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