ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年9号
特集
中国&インドの物流 日本人のいない中国SCM会議

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2006 18 主役はあくまで中国人 「二〇〇六年度CSCMP中国会議」が、高級ホテ ルの浦東シャングリ・ラ上海で開催された。
アメリカ で毎年数千人が参加するSCM会議の中国大会とあ れば、中国はもとより世界中からキーマンたちが集ま るはず。
中国物流の今を取材するには格好のチャンス だ。
英語モードのスイッチをオンにして、意気込んで 参加した。
八月二日。
受付開始は朝八時。
総勢五〇〇人の参 加者が集まった。
八割は中国からで、二割は欧米や他 のアジア諸国からだ。
日本人の姿は見あたらない。
周 りに聞いても見ていないと言う。
多くの日本人が中国 の物流に興味を持っているから取材に来たのだと言う と、ではなぜ日本人はあなただけなのかと冗談交じり に返されてしまった。
こっちが聞きたい。
講演は中国語と英語が半々くらい。
とはいえ、全体 的な印象として英語はあくまでおまけ扱い。
米国のC SCMP(カウンシル・オブ・サプライチェーン・マ ネジメント・プロフェッショナルズ)主催なのだから 英語は普通に通じるだろうと考えていたのは甘かった。
今更ながら、中国人の中国人による中国人のためのイ ベントだということに気づかされた。
開会は九時の予定。
だが、時間ちょうどには始まら ない。
五分や一〇分の遅れは、遅れのうちに入らない のだろう。
開会の挨拶に続く祝辞には、予定では九時 一五分までの一五分間しか割かれていない。
そもそも 四人しゃべるのに一五分という時間設定は無理がある。
しかも四人の祝辞は立派なプレゼンで、中国企業連合 会(日本の経団連に相当)の理事長による、中国の 経済成長と物流市場の発展についての熱弁に始まり、 CSCMP代表による宣伝が終わる頃には既に四十 五分オーバーの九時五〇分になっていた。
これくらいのことで驚いてはいけない。
講演中、会 場のあちこちで携帯電話の着信音が鳴りまくる。
口を 押さえて電話に出るだけグッドマナーなのかもしれな い。
二日間の会期中、携帯の着信音が鳴りやむことは なかった。
しかし、講演者も主催者もまるで意に介し ていない様子だった。
ある講演では、奇抜なキャラクターが登場した。
坊 主頭にスタイリッシュな額縁メガネ、アメフトでもや っていそうな体格にノーネクタイでシャツのボタンを 二つ三つ開けている。
アメリカに本社を置く食品流通 のハヴィ・フード・サービスの大中華圏総裁だ。
中国では食品物流の基盤が整っていないために野菜 や果物の三割をムダにしていると指摘。
中国でも最近、 輸入物のプレミアムアイスクリームを買う人が増えて きたが、高いお金を出して買っても、そのアイスは何 度も溶けて本来の味では無くなっている。
中国の食品 物流の質を上げるには、消費者の圧力がまだまだ足りていないと訴えた。
昼食会はブッフェスタイルの着席式。
みな思い思い の席に着く。
出会いを求める参加者にとっては、格好 のコミュニケーションの場だ。
多くの参加者に話を聞 いてくる使命を課せられた私は、会話に入りやすそう なテーブルを見つけて席に着いた。
日本人はいなかっ たが、自分と同じ年頃の女性が意外にも多く参加して いたのはありがたかった。
深 の倉庫業者の副総経理である賀さんは、顧客 を見つけに来たという。
カリフォルニアの農作物を輸 入するNPOのプロジェクトコーディネーターの さ んは北京から参加。
中国では何をするにも政府のコン トロールがあるのが厄介だとぼやいていた。
午後の部のスタートは午後二時三〇分。
予定の四 日本人のいない中国SCM会議 講演者も参加者も、中国ビジネスにおけるリレーショ ンシップ(関係性)の重要性を強調した。
参加者の目 的は、理論の習得よりも人との出会い。
名刺コレクター と化し、講演者に群がって我先にと手を伸ばす姿には 凄まじいものがあった。
(森泉友恵) 第2部CSCMP第2回中国大会報告 19 SEPTEMBER 2006 十五分遅れだが、参加者はもちろん、進行役にもあま り急ぐ様子は感じられない。
シンガポールに本社を置 くYCHという物流企業の発表者は代理人だった。
そ の次に予定されていた宝供物流の講演は突然のキャン セル。
開会式には確かに席にいた発表者に、一体何が あったのか。
続いて、IT企業の 通国際が、グローバルネッ トワークにおける、データソリューションの必要性を 説明。
どの講演もいまいちぱっとしない。
隣の欧米人 に感想を尋ねると、「言葉ばかり並べ立てて、明確な アイデアがない」と酷評していた。
レセプションパーティ(晩餐会)も、昼食会同様ブ ッフェスタイルの着席式。
会話に入り込めそうなテー ブルを選んで席に着いた。
グローバル通信機器メーカ ーで中国SCMの責任者になった張さんは、こうした イベントに初めて出席したのか、いろいろな人と知り 合えて凄くいい機会だと興奮気味に語ってきた。
革製品メーカーの中国工場で代表を務めるアメリカ 人のベンさんは、SCM全般について学ぼうと福建省 から参加した。
イギリスでコンサルティング会社を経 営するリチャードさんは中国に出張に来ていたところ、 開催をたまたま知って参加したという。
ふと、テーブ ルの上に灰皿があることに気づいた。
隣のテーブルは 中国人のおじさんの団体。
当然のように食後の一服を 楽しんでいた。
さすがは愛煙家天国だ。
中国式名刺交換術に唖然 二日目の朝、会場前のロビーに着くと、前日に比べ て人が少ない。
九時になって講演が開始しても参加者 が増えることはなく、ざっと見渡したところ前日の三 分の一くらいに減っていた。
講演者の席は前方に固め られていたのだが、前日の講演者がほとんどいなくな ってしまったのも目立った。
午前の部が終わり昼食会場に移動しようと荷物を 整理していると、隣の席の中国人男性が名刺を差し 出してきた。
振り向くと、携帯電話で話している。
悪 びれるふうでもなく電話をしながら名刺を差し出し、 私が差し出した名刺を片手で受け取ると、そっぽを向 いてしまった。
電話が終わったら少し話を聞こうかと 思ったが、長引きそうだったので諦めた。
中国の参加 者たちがここぞとばかりに名刺を交換する姿には独特 のパワーを感じていたが、さすがにこれには参った。
昼食を挟んだ午後の部は、もはや祭りの後といった 雰囲気。
参加者は前日の四分の一くらいに減ってしま った。
会議は、ほぼ予定通りの午後二時半過ぎに終 了。
進行役の挨拶で締めくくられたが、来年の会議の 宣伝もなく最後の盛り上がりに欠けた。
会議が締めくくられた後の施設見学ツアーでは、三 つのコースに分かれてバスに分乗。
どのコースも、エ リアは新興工業地帯の臨港地区と洋山深水港。
私はキャタピラーロジスティクスの物流センターを含むコ ースに参加。
センター内のロケーションが整然と管理 されていたのが印象的だった。
次に向かった洋山深水 港ではこれといった説明があるわけでもなく、みな観 光気分で写真を取り合っていた。
帰りのバスで、アメリカの照明器具メーカーの中国 サプライチェーンマネジャーだという中国人男性と隣 になった。
現在アメリカにあるDCを一部中国に移す プロジェクトを進行中で、そのパートナーを探すため に会議に参加したのだという。
顧客探しを目的に参加 した物流企業の担当者は多かったはずだから人気者だ ったろうと聞くと、笑いながら「そうだね」と答えた。
バスがホテルに到着するとそのまま解散。
開催地は 未定だが、会議は来年も行われるという。
再見。

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