ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年8号
特集
ICタグはどこまできたか 量販店が主導する米国型の限界

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2006 12 物流管理用の本命タグ 第二世代、「Gen2」と呼ばれるUHF帯のIC タグの普及が始まっている。
これまで使用されていた 第一世代のタグには、複数の標準規格が乱立していた。
国ごとに電波使用のルールも違うため、ユーザーはタ グの種類に合わせて、それぞれ仕組みを構築する必要 があった。
「Gen2」では、それが世界的に一本化 される。
この動きに日本も歩調を合わせている。
一個五円の ICタグインレットを国産する狙いで、経済産業省が 総額一八億円を投じて進めている「響(ひびき)プロ ジェクト」。
ここで開発されているのも「Gen2」 規格に準拠したUHF帯のタグだ。
日立製作所が開 発の委託を受け、今年中の製品化が予定されている。
UHF帯のタグは他の周波数帯と比べて通信距離 が長い。
他の周波数帯のタグの最大通信距離が数十 センチから二メートル程度であるのに対し、UHF帯は最大六メートル届く。
そのため検品時のタグの一括 読み取りや、フォークリフトでの庫内作業など、物流 管理に適しているとされる。
実際、米ウォルマートや 米ターゲット、独メトロなど、タグの本格導入に踏み 切った欧米の大手量販店は、いずれもUHF帯のタグ を使用している。
それに対して日本では、これまで電波の割り当て等 の問題からUHF帯のタグが使用できなかった。
しか し二〇〇五年四月に総務省がUHF帯の解禁を発表。
今年一月に電波法を改正したことで、日本でもUH F帯のタグが使用できるようになった。
これと並行し て「Gen2」のデファクト化が決定的になったこと で、物流管理の本命タグがハッキリしてきた。
この動きを受けて今年五月三〇日、ヨドバシカメラ 量販店が主導する米国型の限界 欧米に続き日本でも、大手量販店が調達先のベン ダーにICタグの貼付を要請し始めた。
“情・物一致” によるサプライチェーンの革新がその目的だ。
しかし、 現状はメーカー側のコスト増を招いているだけ。
突 破口はあるのか。
13 AUGUST 2006 はUHF帯ICタグの実用化に踏み切った。
「Gen 2」に準拠した米シンボル社製のICタグ読み取り機 を丸紅子会社のマイティカードから購入。
川崎市に昨 年新設した物流センターに設置した。
ヨドバシの協力要請に対応し、取引先メーカーのひ とつ、日本ヒューレット・パッカード(HP)は、同 センター向け製品のケースに「Gen2」タグを貼付 して出荷。
センターの入荷口で、納品したケースのタ グをリーダーに読み込ませることで検品作業を自動化 した。
この取り組みによって従来は実証実験の域を出 ていなかった日本の大手量販店によるICタグ活用は 実用段階に入った。
もっとも現状では、同センターにおけるICタグの 読み取り率は九六%程度と言われる。
一〇〇ケースに つき四ケースは従来通りの検品作業が発生しているこ とになる。
しかも、ヨドバシの取り組みに積極的に協 力しているメーカーは今のところHPだけ。
検品を自 動化した効果は限定的にならざるを得ない。
HPが使 用するタグの単価も現状では一個二五円程度に高止 まりしている模様だ。
HPはICタグの活用に最も積極的なメーカーとし て知られている。
既に北米市場で同社は全出荷量の 約二五%にタグを貼付している。
大手量販店のウォル マートとターゲット向けに加え、今年夏には家電量販 店のベストバイもタグの本格導入を始める。
さらに今 年後半は米国防総省に納品する製品にもタグが貼付 されることになる。
「今後全出荷量の過半数にタグを貼付するようにな った時点で、顧客からの要請があるかどうかに関わら ず、全商品にタグを貼付することになるだろう。
そう 先の話ではない」と日本HPの三宅信一郎マーケティ ング統轄本部インダストリーマーケティング本部RF IDビジネスリーダーは予測する。
北米市場ではICタグの導入に伴う投資対効果も、 イニシャルコストを除いた運用コストだけ見れば、二 〇〇五年初頭時点で既にプラスに転じているという。
現在、同社がICタグシステムを導入している拠点は 世界三〇カ所に及んでいる。
今後、適用範囲が拡大 するのに伴って、物流コストの削減効果はさらに拡大 していく。
タグの購入単価も大幅に下がる。
そう同社 では見ている。
メーカー側はコスト増 しかし、日本では今のところ、出荷時点でヨドバシ 向けの製品だけにタグを貼付する作業が追加的に発生 するだけで、完全にコストオンの状態。
全出荷量のう ちヨドバシ向け製品が占める割合はわずかで、クリテ ィカル・マスを確保するメドは立たない。
しかも運用 上の課題は山積している。
「米国はほとんどの取引がパレット単位。
それに対して日本では、工場出荷の段階でも荷姿に三〇種類 以上のバリエーションがある。
パレットだけでなくカ ゴ車や折り畳み式コンテナ(オリコン)など物流ユニ ットだけでも複数ある。
さらに複数のケースをセット にして構成される商品などをどう扱うか。
タグを貼付 するルールを作るだけでもアメリカほどシンプルには いかない」と三宅RFIDビジネスリーダーは、日本 市場における運用の難しさを説明する。
HPを除けば北米市場でさえ、ICタグ投資はメー カー側に全くメリットを生んでいない。
メーカーのオ ペレーションは従来のバーコード管理のまま。
大手顧 客からメーカー負担で専用値札の貼付を義務付けられ ているに過ぎない。
ICタグに関して、メーカーは大 手量販店にただ振り回されているのが現状だ。
日本HPの三宅信一郎マー ケティング統轄本部インダス トリーマーケティング本部 RFIDビジネスリーダー

購読案内広告案内